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獣人を率いる者
326話
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ゴールスからの使者たるシスターナが立ち去ってから、数日が経つ。
しかし、それでも特に何かが起きるといったようなことはない。
アランとしては、てっきりゴールスが……具体的にはゴールスが従えている獣牙衆が襲ってくると思っていたのだが、生憎と特に何かが起こるといったようなことはなかった。
(あるいは、こうして時間が経過してこっちの警戒が緩むのを待ってるとか? それは有り得るかもしれないけど)
部屋の窓から外の様子を見ながら、アランはそんなことを思う。
実際、窓の外から見える兵士たち……ワストナの生首が置かれていた一件で戦力が足りないと判断したギジュが雇った傭兵たちなのだが、その傭兵たちは仲間と笑いながら話しており、見るからに集中力を欠いている。
もし今この瞬間にも獣牙衆が襲ってくるといったようなことがあった場合、間違いなく抗うことが出来ずに死ぬだろう。
元々、傭兵と獣牙衆が戦った場合は、獣牙衆の方が強いのだ。
つまり、生身の状態でも不利だというのに、そんな状況で油断をするといったような真似をして勝ち目がある筈もない。
とはいえ、そうして誰かが死んでも騒動が起きるという意味では、相手が侵入してきたというのが分かる。
ある意味で警報的な役割と考えれば、アランとしても納得出来ないことはなかった。
「傭兵はそういう扱いをされたりすることも多いんだろうな。……とはいえ、本当に腕の立つ傭兵なら、そういう扱いをされたりといったようなこともないんだろうけど」
傭兵の中でも本当に腕利きの者は、当然のように最大限の礼を持ってもてなされる。
それは傭兵だけではなく、冒険者や探索者といった者たちも同様だ。
例えば、アランが所属している雲海や、一緒にこの屋敷にいるジャスパーの所属している黄金の薔薇といったクランはまさにその典型だろう。
アランの場合は、偶然両親が雲海に所属している探索者だったのでそこに所属するといった形をとっていて、実際にはアランは少し前……具体的には心核を入手するまでは、雲海に所属するだけの実力はなかったのだが。
そんなことを考えていると、不意に部屋の扉がノックされる。
「誰です?」
今は自分に対して、特に何らかの仕事はないはずだった。
だというのに、こうして誰かが来たとなると、何かがあったのでは? と、そんなことを思うには十分だった。
だが……
『私です、アランさん』
「クラリス!?」
扉の向こうから聞こえてきた声に、アランは驚く。
当然だろう、てっきりメイドか誰か……もしくは、ロルフか誰かだと思っていたのだが、まさかその相手が護衛対象のクラリスだったのだから。
慌てて扉を開けると、そこには……普段のクラリスの格好とは全く違う姿をしたクラリスの姿があった。
声が聞こえたからこそ、アランにはクラリスだと理解出来たが、もし声も何も聞こえていない状況で目の前に今のクラリスが姿を現したら、クラリスであると判断するのは難しかっただろう。
狐の獣人としての耳はそのままだが、ウィッグの類を使っているのか、髪の毛が以前よりも長くなっている。
また、服装もいつもと大分雰囲気が違うものとなっており、その様子を見るだけでまさかクラリスであるとは思いにくいだろう。
「はい、アランさん。……少し外出しませんか?」
「は? 本気か?」
いっそ本気か? ではなく、正気か? と言ってやりたいアランだったが、相手は仮にも雇い主だし、同時に自分の妹のような存在でもある。
それだけに、取りあえず本気か? という言葉にしたのだ。
そんなアランの言葉に、クラリスは頬を膨らませ、いかにも不機嫌ですといった様子で口を開く。
「本気に決まってるじゃないですか。こうして変装してるから、他の人にも私がクラリスだとは分からないでしょうし」
「……そもそも、護衛はどうした? 外に出るのなら、ロルフとかを連れていった方がいいんじゃいか?」
より正確には、連れていくというよりはロルフなら絶対に一緒に行くと言うだろうと、そうアランは思って言葉だったのだが。
アランの言葉に、クラリスは笑みを浮かべてから口を開く。
「ロルフたちは、最近の疲れが溜まっていたのか、ゆっくりと休んで貰ってます」
「ゆっくり休む? ……おい」
クラリスの言葉に、何をしたのかを理解したアランは、思わずといった様子でそう呟く。
当然だろう。今の話の流れからすると、ほぼ確実にクラリスはその力……相手を言葉だけで操る言霊を使ったのだと、理解したためだ。
「お前、本気か? 何だってそんな真似をしたんだ?」
自分の護衛を眠らせてまで、何故外出したいのか。
それがアランには全く分からなかった。
とはいえ、今の状況を考えればクラリスが何の意味もなくそんなことをしているとは思えなかったが。
「少し、デルリアという街を見てみたいと思ったので。それに……今日か明日にはレオノーラさんが来るんですよね? だから、今のうちにアランさんと二人で外出してみたかったんです。駄目……ですか?」
上目遣いでそう言ってくるクラリスを見て、アランは駄目だと言うようなことは出来なかった。
「駄目とまでは言わないが、それでも護衛が俺一人というのは色々と不味いだろ。出来れば、他にも何人か連れていった方がいい」
「でも、今の私はクラリスではありません。……でしょう?」
改めてそう言われると、実際に今のクラリスの姿を見てクラリスだと思う者はいない……といった訳ではないだろうが、それでもかなりの者はクラリスと呼べないだろう。
ましてや、そもそもクラリスの顔を知っている者が少ないというのも、この場合は大きい。
であれば、このクラリスはそのままにして外に出ても、問題ないのでは?
一瞬そう思ったアランだったが、すぐに首を横に振る。
「その姿を見て、クラリスだと認識するのは難しい。けど、お前は自分の重要性を考えろ。万が一のときは……」
「アラン、その辺にしたらどうだい?」
クラリスに言い聞かせようとするアランだったが、そんな中で言葉を挟んでくる相手がいた。
それが誰なのかというのは、考えるまでもなく明らかだ。
聞き覚えのある声だったし、何よりアランの部屋の前でそんな風に言ってくる相手となると、そう数は多くない。
そして実際、声の聞こえてきた方に視線を向けたアランが見たのは、予想通りの人物だった。
「ジャスパーさん、どうしたんです?」
「どうしたも何も、私の部屋の横でこんなやり取りをしていれば、それに気が付くなという方が無理だろう?」
「それは……」
ジャスパーの言う通りだったので、アランとしてもその言葉に反論する訳にはいかない。
ジャスパーとアランの二人は、護衛としてギジュの屋敷に滞在しているのだ。
そうである以上、屋敷で何らかの異変が起きた場合はすぐ動けるように、部屋は完全防音といったようなものはなく、外の声も普通に聞こえてくる。
そんな中、アランの部屋の中でやり取りをするのならまだしも、こうして廊下で話していたのだから、それがジャスパーの部屋の中に聞こえるというのは、そうおかしな話ではないだろう。
「さて、話が分かったところで……こうしたらどうです? クラリス様とアランは二人で出かける。私は護衛として一緒に行きますが、二人の邪魔をしないように離れて移動する。これなら完全に満足は出来ないかもしれませんが、それでも何人もが護衛として一緒に移動するよりはいいのでは?」
そんなジャスパーの言葉に、クラリスは少し考えてから頷く。
「分かりました。では、そのようにお願い出来ますか? ……アランさんもそれでいいですよね?」
「え? いや、その……本当にいいんですか?」
クラリスの言葉に、アランはジャスパーに視線を向けて尋ねる。
本来なら、ロルフを始めとしてしっかりと護衛を連れて出歩くといったようなことが普通なはずだ。
だというのに、ジャスパーはクラリスの背中を後押しするかのように、提案したのだ。
普通に考えれば、ジャスパーがクラリスの提案を却下してしかるべきだろう。
だというのに、ジャスパーの方が寧ろ自分から進んでクラリスの言葉に賛成しているのだから、アランとしては混乱するなという方が無理だった。
「構いませんよ。私も街中の様子を見てみたかったので、ある意味ちょうどよかったですし」
そんなジャスパーの言葉に押されるようにアランは頷かされ、外出の準備を進める。
「……ありがとうございました」
アランが外出の準備をしている中、クラリスは自分と同じように部屋の外で待っているジャスパーに感謝の言葉を口にする。
そんなクラリスに対し、ジャスパーは優雅な笑みを浮かべて、首を横に振る。
「構いませんよ。アランはかなり鈍感ですから。クラリス様もそれはお分かりでしょう?」
「ええ」
ジャスパーの言葉に、クラリスはしみじみと頷く。
今回クラリスがアランを誘ったのは、街中の様子を自分の目で見てみたいといった思いがあったのは事実だが、同時に兄のように慕っているアランと一緒に出かけたいといった思いがあったのも事実だ。
何よりも大きいのは、やはりクラリスにとってのライバルたるレオノーラが合流するからだろう。
クラリスにしてみれば、レオノーラは自分が兄のように慕っているアランを奪おうとしているように思える相手だ。
実際には、そもそもアランと出会ったのはクラリスよりもレオノーラの方が先だし、何よりもレオノーラはアランの前世を追体験したことにより、唯一アランの真実を知る者だ。
そういう意味で、クラリスよりもレオノーラの方がアランとの繋がりは太いのだが、クラリスにとってはそれも面白くない。
もちろん、レオノーラがアランの秘密を知っているといったようなことは、クラリスにも分からないのだが、幼くても女だということだろう。
女の勘によって、アランとレオノーラの間には二人だけしか知らない秘密があるというのは、何となく理解出来ている様子だった。
「ジャスパーさん、今回の件はありがとうございます」
そう、クラリスはジャスパーに感謝の言葉を口にするのだった。
しかし、それでも特に何かが起きるといったようなことはない。
アランとしては、てっきりゴールスが……具体的にはゴールスが従えている獣牙衆が襲ってくると思っていたのだが、生憎と特に何かが起こるといったようなことはなかった。
(あるいは、こうして時間が経過してこっちの警戒が緩むのを待ってるとか? それは有り得るかもしれないけど)
部屋の窓から外の様子を見ながら、アランはそんなことを思う。
実際、窓の外から見える兵士たち……ワストナの生首が置かれていた一件で戦力が足りないと判断したギジュが雇った傭兵たちなのだが、その傭兵たちは仲間と笑いながら話しており、見るからに集中力を欠いている。
もし今この瞬間にも獣牙衆が襲ってくるといったようなことがあった場合、間違いなく抗うことが出来ずに死ぬだろう。
元々、傭兵と獣牙衆が戦った場合は、獣牙衆の方が強いのだ。
つまり、生身の状態でも不利だというのに、そんな状況で油断をするといったような真似をして勝ち目がある筈もない。
とはいえ、そうして誰かが死んでも騒動が起きるという意味では、相手が侵入してきたというのが分かる。
ある意味で警報的な役割と考えれば、アランとしても納得出来ないことはなかった。
「傭兵はそういう扱いをされたりすることも多いんだろうな。……とはいえ、本当に腕の立つ傭兵なら、そういう扱いをされたりといったようなこともないんだろうけど」
傭兵の中でも本当に腕利きの者は、当然のように最大限の礼を持ってもてなされる。
それは傭兵だけではなく、冒険者や探索者といった者たちも同様だ。
例えば、アランが所属している雲海や、一緒にこの屋敷にいるジャスパーの所属している黄金の薔薇といったクランはまさにその典型だろう。
アランの場合は、偶然両親が雲海に所属している探索者だったのでそこに所属するといった形をとっていて、実際にはアランは少し前……具体的には心核を入手するまでは、雲海に所属するだけの実力はなかったのだが。
そんなことを考えていると、不意に部屋の扉がノックされる。
「誰です?」
今は自分に対して、特に何らかの仕事はないはずだった。
だというのに、こうして誰かが来たとなると、何かがあったのでは? と、そんなことを思うには十分だった。
だが……
『私です、アランさん』
「クラリス!?」
扉の向こうから聞こえてきた声に、アランは驚く。
当然だろう、てっきりメイドか誰か……もしくは、ロルフか誰かだと思っていたのだが、まさかその相手が護衛対象のクラリスだったのだから。
慌てて扉を開けると、そこには……普段のクラリスの格好とは全く違う姿をしたクラリスの姿があった。
声が聞こえたからこそ、アランにはクラリスだと理解出来たが、もし声も何も聞こえていない状況で目の前に今のクラリスが姿を現したら、クラリスであると判断するのは難しかっただろう。
狐の獣人としての耳はそのままだが、ウィッグの類を使っているのか、髪の毛が以前よりも長くなっている。
また、服装もいつもと大分雰囲気が違うものとなっており、その様子を見るだけでまさかクラリスであるとは思いにくいだろう。
「はい、アランさん。……少し外出しませんか?」
「は? 本気か?」
いっそ本気か? ではなく、正気か? と言ってやりたいアランだったが、相手は仮にも雇い主だし、同時に自分の妹のような存在でもある。
それだけに、取りあえず本気か? という言葉にしたのだ。
そんなアランの言葉に、クラリスは頬を膨らませ、いかにも不機嫌ですといった様子で口を開く。
「本気に決まってるじゃないですか。こうして変装してるから、他の人にも私がクラリスだとは分からないでしょうし」
「……そもそも、護衛はどうした? 外に出るのなら、ロルフとかを連れていった方がいいんじゃいか?」
より正確には、連れていくというよりはロルフなら絶対に一緒に行くと言うだろうと、そうアランは思って言葉だったのだが。
アランの言葉に、クラリスは笑みを浮かべてから口を開く。
「ロルフたちは、最近の疲れが溜まっていたのか、ゆっくりと休んで貰ってます」
「ゆっくり休む? ……おい」
クラリスの言葉に、何をしたのかを理解したアランは、思わずといった様子でそう呟く。
当然だろう。今の話の流れからすると、ほぼ確実にクラリスはその力……相手を言葉だけで操る言霊を使ったのだと、理解したためだ。
「お前、本気か? 何だってそんな真似をしたんだ?」
自分の護衛を眠らせてまで、何故外出したいのか。
それがアランには全く分からなかった。
とはいえ、今の状況を考えればクラリスが何の意味もなくそんなことをしているとは思えなかったが。
「少し、デルリアという街を見てみたいと思ったので。それに……今日か明日にはレオノーラさんが来るんですよね? だから、今のうちにアランさんと二人で外出してみたかったんです。駄目……ですか?」
上目遣いでそう言ってくるクラリスを見て、アランは駄目だと言うようなことは出来なかった。
「駄目とまでは言わないが、それでも護衛が俺一人というのは色々と不味いだろ。出来れば、他にも何人か連れていった方がいい」
「でも、今の私はクラリスではありません。……でしょう?」
改めてそう言われると、実際に今のクラリスの姿を見てクラリスだと思う者はいない……といった訳ではないだろうが、それでもかなりの者はクラリスと呼べないだろう。
ましてや、そもそもクラリスの顔を知っている者が少ないというのも、この場合は大きい。
であれば、このクラリスはそのままにして外に出ても、問題ないのでは?
一瞬そう思ったアランだったが、すぐに首を横に振る。
「その姿を見て、クラリスだと認識するのは難しい。けど、お前は自分の重要性を考えろ。万が一のときは……」
「アラン、その辺にしたらどうだい?」
クラリスに言い聞かせようとするアランだったが、そんな中で言葉を挟んでくる相手がいた。
それが誰なのかというのは、考えるまでもなく明らかだ。
聞き覚えのある声だったし、何よりアランの部屋の前でそんな風に言ってくる相手となると、そう数は多くない。
そして実際、声の聞こえてきた方に視線を向けたアランが見たのは、予想通りの人物だった。
「ジャスパーさん、どうしたんです?」
「どうしたも何も、私の部屋の横でこんなやり取りをしていれば、それに気が付くなという方が無理だろう?」
「それは……」
ジャスパーの言う通りだったので、アランとしてもその言葉に反論する訳にはいかない。
ジャスパーとアランの二人は、護衛としてギジュの屋敷に滞在しているのだ。
そうである以上、屋敷で何らかの異変が起きた場合はすぐ動けるように、部屋は完全防音といったようなものはなく、外の声も普通に聞こえてくる。
そんな中、アランの部屋の中でやり取りをするのならまだしも、こうして廊下で話していたのだから、それがジャスパーの部屋の中に聞こえるというのは、そうおかしな話ではないだろう。
「さて、話が分かったところで……こうしたらどうです? クラリス様とアランは二人で出かける。私は護衛として一緒に行きますが、二人の邪魔をしないように離れて移動する。これなら完全に満足は出来ないかもしれませんが、それでも何人もが護衛として一緒に移動するよりはいいのでは?」
そんなジャスパーの言葉に、クラリスは少し考えてから頷く。
「分かりました。では、そのようにお願い出来ますか? ……アランさんもそれでいいですよね?」
「え? いや、その……本当にいいんですか?」
クラリスの言葉に、アランはジャスパーに視線を向けて尋ねる。
本来なら、ロルフを始めとしてしっかりと護衛を連れて出歩くといったようなことが普通なはずだ。
だというのに、ジャスパーはクラリスの背中を後押しするかのように、提案したのだ。
普通に考えれば、ジャスパーがクラリスの提案を却下してしかるべきだろう。
だというのに、ジャスパーの方が寧ろ自分から進んでクラリスの言葉に賛成しているのだから、アランとしては混乱するなという方が無理だった。
「構いませんよ。私も街中の様子を見てみたかったので、ある意味ちょうどよかったですし」
そんなジャスパーの言葉に押されるようにアランは頷かされ、外出の準備を進める。
「……ありがとうございました」
アランが外出の準備をしている中、クラリスは自分と同じように部屋の外で待っているジャスパーに感謝の言葉を口にする。
そんなクラリスに対し、ジャスパーは優雅な笑みを浮かべて、首を横に振る。
「構いませんよ。アランはかなり鈍感ですから。クラリス様もそれはお分かりでしょう?」
「ええ」
ジャスパーの言葉に、クラリスはしみじみと頷く。
今回クラリスがアランを誘ったのは、街中の様子を自分の目で見てみたいといった思いがあったのは事実だが、同時に兄のように慕っているアランと一緒に出かけたいといった思いがあったのも事実だ。
何よりも大きいのは、やはりクラリスにとってのライバルたるレオノーラが合流するからだろう。
クラリスにしてみれば、レオノーラは自分が兄のように慕っているアランを奪おうとしているように思える相手だ。
実際には、そもそもアランと出会ったのはクラリスよりもレオノーラの方が先だし、何よりもレオノーラはアランの前世を追体験したことにより、唯一アランの真実を知る者だ。
そういう意味で、クラリスよりもレオノーラの方がアランとの繋がりは太いのだが、クラリスにとってはそれも面白くない。
もちろん、レオノーラがアランの秘密を知っているといったようなことは、クラリスにも分からないのだが、幼くても女だということだろう。
女の勘によって、アランとレオノーラの間には二人だけしか知らない秘密があるというのは、何となく理解出来ている様子だった。
「ジャスパーさん、今回の件はありがとうございます」
そう、クラリスはジャスパーに感謝の言葉を口にするのだった。
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