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逃避行
269話
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ダーズラが部隊を率いて帝都を出撃した頃……アランたちは遺跡の調査を無事に終えてゆっくりとした時間をすごしていた。
結局人形の製造設備をきちんとした手順で停止させるのには、十日程かかっている。
その間に、アランは何度かグヴィスと遭遇した遺跡に仲間と共に顔を出してみたのだが、幸か不幸か敵を見つけることは出来なかった。
これは、グヴィスが残していった兵士たちが、本当に遠くから遺跡を見張っていて、遺跡からアランたちが出て来たらすぐにその場を離れて報告に向かったから、というのが大きい。
ともあれ、向こうの遺跡に顔を出しても結局アランたちでは兵士を見つけることが出来なかったため、グヴィスたちは完全に撤退したと判断し……その後も、向こうに顔を出すようなこともなくなっていた。
「はあぁっ!」
そんな声と共に穂先を切断された槍……最早棍と呼ぶのが相応しい武器が振るわれる。
カオグルの振るう棍は、アランの振るった長剣の一撃を回避すると、手首を打ち……そのまま長剣が手から吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
そんな呻き声を上げるアランだったが、カオグルもきちんと手加減はしている。
……いや、むしろ手加減という意味ではロッコーモより数段上だ。
実際、アランが握っていた長剣を吹き飛ばされるだけの一撃だったが、その一撃を受けた手首は痺れているものの、痛みは特にない。
「今のは惜しかったな」
「……カオグルさんが棍を使うとか、ちょっと卑怯だと思います」
「は? 何でだ?」
「だって、カオグルさんは白猿に変身しますし」
「いや、それが何の関係がある?」
不満と疑問の両方が混ざった視線を向けるカオグルだったが、アランにしてみれば白猿という猿のモンスターで棍を使うとなると、前世で非常に有名な物語を思い出す。
「カオグルさん、白猿に変身したら、体毛を引き抜いて息を吹きかけると、それが小さな白猿になって敵に襲いかかるとか、頭に輪を嵌めて呪文を唱えるとそれが締め付けられるとか、そういうのってありません?」
「……何を言ってるんだ?」
アランが何を言ってるのか全く分からない。
そう告げるカオグルだったが、そんな二人を少し離れた場所で眺めていたレオノーラは、笑みを浮かべる。
アランの記憶……前世を追体験したレオノーラだけが、アランが何を言ってるのかを理解していた。
だからといって、それを他の者に教えるつもりは全くなかったが。
「全く、困ったわね」
「……何がですか? 何かありました?」
レオノーラの側にいた女が、いきなり笑みを浮かべた様子を見て不思議そうに尋ねる。
だが、レオノーラはそんな相手に、笑みを浮かべるだけで何も言わない。
レオノーラにしてみれば、アランの前世は自分とアランだけの秘密だ。
それを他人に教えるつもりは……少なくても、今は全くない。
「いえ、何でもないわ。ただ、アランの模擬戦を見ていただけよ」
「ああ、アランの。……こう言っては何ですけど、アランは正直……」
言いにくそうにしているが、レオノーラは何を言いたいのか分かる。
つまり、アランは生身での戦闘の才能は高くないと言いたいのだろう。
実際には、アランも探索者として何とかやっていけているので、その辺の盗賊といった者たちよりは強いし、兵士を相手にしても勝てるだけの実力はある。
だが、それでも探索者として考えれば、その実力はどうしても低いのだ。
「そうね。心核使いとしては凄く頼りになるんだけど」
「それは否定しません。……もっとも、ゼオンの巨体を考えると、遺跡の中でも小さな場所では出せないというのが残念ですが」
その言葉は間違いのない事実だった。
ゼオンは非常に強力な心核であり、アランもそれを十分に使いこなすことが出来る。
だが……言ってみればその能力を発揮出来る場所は本当に限られているのだ。
それこそ、遺跡の中でゼオンが活躍出来るような場所は少ない。
遺跡よりも、遺跡の外……このような大空の下での方がゼオンの運用環境として向いているのは間違いない。
「ゼオンが今の半分……いえ、四分の一くらいの大きさなら、遺跡の中でも使える場所が多かったんでしょうけどね。まぁ、それは私にも言えることだけど」
「それは……」
レオノーラの言葉を否定しようとした女だったが、それは出来ない。
実際、黄金のドラゴンはアランのゼオンよりも体積的に上だ。
その辺の遺跡で変身しようものなら、それこそ遺跡が崩れてしまう程には。
「ですが、レオノーラ様はアランと違って生身でも強いではないですか」
慌てたように言葉を発する女だったが、それは間違いのない事実でもあった。
レオノーラは生身でもかなりの強さを持つ。
それこそ、アランの母親にして生身では雲海最強の戦士のリアとも互角に戦える程度には。
その上で心核を使えば黄金のドラゴンとなり、その戦闘力はゼオンと肩を並べる程だ。
そう考えると、ある意味でレオノーラは万能の天才と呼ぶべき存在だろう。
とはいえ、レオノーラは才能だけでその強さを手に入れた訳ではない。
才能があるのはもちろんだが、それ以上に努力を重ねてここまでの力を手に入れたのだ。
……心核使いの件は、純粋に才能だけのものだったが。
「そうね。そう言って貰えると私も助かるわ。けど……あら?」
何かを言いかけたレオノーラだったが、不意にその言葉が止まる。
そして不思議そうな視線を向け……そんなレオノーラに釣られるように、近くにいた女もそちらに視線を向ける。
するとそこには、馬に乗ってこの野営地に近付いてくる男の姿があった。
「誰かしら? 知ってる?」
「いえ、レオノーラ様も知らないとなると、イルゼン殿の手の者でしょうか」
若干呆れながらそう告げる女。
とはいえ、その呆れの中には頼もしいという思いもある。
イルゼンの持つ情報収集能力や情報操作能力、そして相手の行動を読んで手を打つといった能力は、黄金の薔薇の面々にとっても非常に頼りになる能力だったからだ。
ただし、その能力があまりに凄すぎて、それで呆れの表情が浮かんだのだろうが。
だが……馬に乗ってきてやって来た男が向かったのは、イルゼンではなくこの遺跡の警備を命じられている兵士。
つまり、レジスタンスからガリンダミア帝国軍に入り込んでいる人物の下だった。
「あら?」
「おかしいですね」
レオノーラの声に、女もまたそんな疑問を抱く。
てっきりイルゼンの手の者だと思っていたのに、実は違ったのだから当然だろう。
野営地で休憩したり、訓練をしたり、話していてたりといったことをしていた者たちも、馬でやって来た男を気にしていた。
これがイルゼンの下に行ったら、そこまで気にする必要もなかったのだろうが……イルゼンではなく兵士に会いに来たというのが、やはり疑問だったのだろう。
「ちょっと話を聞いてくるわね」
「お供します」
そう告げる女を引き連れ、レオノーラは兵士のいる場所に向かう。
ただし、やって来た男と話している兵士の表情が真剣なものに変わっているのを見ると、何か問題が起きたのは確実だろうと予想出来る。
「さて、何が起きたんでしょうね」
「……貴方も来たの」
いつの間にか近くにいたイルゼンに、レオノーラは少しだけ驚きながら声をかける。
イルゼンはそんなレオノーラの様子を特に気にした様子もなく頷く。
「ええ。あの様子を見ると何かあったのは間違いないでしょうし。そして今この状況で何かがあってここに連絡に来たということは、間違いなく僕たちに影響しているでしょう」
「そうね。……で? イルゼンは何も掴んでないの? イルゼンのことだから、何かの情報を掴んでるんじゃないかと思ったんだけど」
「僕も何だって出来るという訳ではありませんよ?」
「……これほど説得力がない言葉も、また珍しいわね」
呆れの視線をイルゼンに向ける。レオノーラ。
今まで何度となくイルゼンはとんでもない行為をしてきた。
それを知ってるだけに、イルゼンであれば今の状況でも何らかの情報を持っているのではないかと、そう思うのは当然だろう。
「それは少しどうかと思いますけどね。……ともあれ、僕に話を聞かなくても、あそこにいる人から話を聞けばはっきりしますよ」
その言葉は事実だった。
そもそも情報を持ってきた人物がいるのだから、わざわざイルゼンに聞かなくてもそちらから聞けばいいだけの話なのだから。
レオノーラはその言葉に素直に納得したのだが、レオノーラの部下の女はそんなイルゼンの態度が面白くなかったのか、不満そうな様子を見せている。
レオノーラの部下にしてみれば、イルゼンとレオノーラが同格であるというのは理解しているのだが、それでもレオノーラは自分たちにとっては忠誠を誓うべき相手だ。
そんなレオノーラにこうも気安く話しかけるというのは、とてもではないが面白いものではない。
……もっとも、それを口に出すといったことは基本的にしないのだが。
とはいえ、当然イルゼンとレオノーラはそんな女の様子に気が付いており、レオノーラはイルゼンに申し訳ないと目配せをし、イルゼンは気にしてないと笑みを浮かべる。
そんなやり取りを行ったタイミングで、丁度三人はこの遺跡を守っている兵士と、その兵士に会いに来た男のいる場所に到着する。
向こうもイルゼンたちが来るのは分かっていたためか、特に驚いた様子は見せない。
「それで、そんなに急いでいるということは……何かあったんですか?」
「ああ。……ここに、ガリンダミア帝国軍が来る」
「……ほう」
兵士の口から出た言葉を聞いても、イルゼンは驚かない。
いや、驚いてはいるのだろうが、そこまで大きな驚きではなかった
そんなイルゼンとは裏腹に、レオノーラと部下の女は予想外の展開に口を大きく開いて驚く。
「何故ここに? この場所は見つかっていないはず。……もしかして、貴方が?」
レオノーラの鋭い視線を向けられた兵士は、慌てて首を横に振る。
もしここで返事をするのに躊躇してしまったら、色々と不味いことになると、そう思ったためだ。
幸い、そんな兵士の様子を信じたのか、レオノーラはすぐに視線を外したのだが。
結局人形の製造設備をきちんとした手順で停止させるのには、十日程かかっている。
その間に、アランは何度かグヴィスと遭遇した遺跡に仲間と共に顔を出してみたのだが、幸か不幸か敵を見つけることは出来なかった。
これは、グヴィスが残していった兵士たちが、本当に遠くから遺跡を見張っていて、遺跡からアランたちが出て来たらすぐにその場を離れて報告に向かったから、というのが大きい。
ともあれ、向こうの遺跡に顔を出しても結局アランたちでは兵士を見つけることが出来なかったため、グヴィスたちは完全に撤退したと判断し……その後も、向こうに顔を出すようなこともなくなっていた。
「はあぁっ!」
そんな声と共に穂先を切断された槍……最早棍と呼ぶのが相応しい武器が振るわれる。
カオグルの振るう棍は、アランの振るった長剣の一撃を回避すると、手首を打ち……そのまま長剣が手から吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
そんな呻き声を上げるアランだったが、カオグルもきちんと手加減はしている。
……いや、むしろ手加減という意味ではロッコーモより数段上だ。
実際、アランが握っていた長剣を吹き飛ばされるだけの一撃だったが、その一撃を受けた手首は痺れているものの、痛みは特にない。
「今のは惜しかったな」
「……カオグルさんが棍を使うとか、ちょっと卑怯だと思います」
「は? 何でだ?」
「だって、カオグルさんは白猿に変身しますし」
「いや、それが何の関係がある?」
不満と疑問の両方が混ざった視線を向けるカオグルだったが、アランにしてみれば白猿という猿のモンスターで棍を使うとなると、前世で非常に有名な物語を思い出す。
「カオグルさん、白猿に変身したら、体毛を引き抜いて息を吹きかけると、それが小さな白猿になって敵に襲いかかるとか、頭に輪を嵌めて呪文を唱えるとそれが締め付けられるとか、そういうのってありません?」
「……何を言ってるんだ?」
アランが何を言ってるのか全く分からない。
そう告げるカオグルだったが、そんな二人を少し離れた場所で眺めていたレオノーラは、笑みを浮かべる。
アランの記憶……前世を追体験したレオノーラだけが、アランが何を言ってるのかを理解していた。
だからといって、それを他の者に教えるつもりは全くなかったが。
「全く、困ったわね」
「……何がですか? 何かありました?」
レオノーラの側にいた女が、いきなり笑みを浮かべた様子を見て不思議そうに尋ねる。
だが、レオノーラはそんな相手に、笑みを浮かべるだけで何も言わない。
レオノーラにしてみれば、アランの前世は自分とアランだけの秘密だ。
それを他人に教えるつもりは……少なくても、今は全くない。
「いえ、何でもないわ。ただ、アランの模擬戦を見ていただけよ」
「ああ、アランの。……こう言っては何ですけど、アランは正直……」
言いにくそうにしているが、レオノーラは何を言いたいのか分かる。
つまり、アランは生身での戦闘の才能は高くないと言いたいのだろう。
実際には、アランも探索者として何とかやっていけているので、その辺の盗賊といった者たちよりは強いし、兵士を相手にしても勝てるだけの実力はある。
だが、それでも探索者として考えれば、その実力はどうしても低いのだ。
「そうね。心核使いとしては凄く頼りになるんだけど」
「それは否定しません。……もっとも、ゼオンの巨体を考えると、遺跡の中でも小さな場所では出せないというのが残念ですが」
その言葉は間違いのない事実だった。
ゼオンは非常に強力な心核であり、アランもそれを十分に使いこなすことが出来る。
だが……言ってみればその能力を発揮出来る場所は本当に限られているのだ。
それこそ、遺跡の中でゼオンが活躍出来るような場所は少ない。
遺跡よりも、遺跡の外……このような大空の下での方がゼオンの運用環境として向いているのは間違いない。
「ゼオンが今の半分……いえ、四分の一くらいの大きさなら、遺跡の中でも使える場所が多かったんでしょうけどね。まぁ、それは私にも言えることだけど」
「それは……」
レオノーラの言葉を否定しようとした女だったが、それは出来ない。
実際、黄金のドラゴンはアランのゼオンよりも体積的に上だ。
その辺の遺跡で変身しようものなら、それこそ遺跡が崩れてしまう程には。
「ですが、レオノーラ様はアランと違って生身でも強いではないですか」
慌てたように言葉を発する女だったが、それは間違いのない事実でもあった。
レオノーラは生身でもかなりの強さを持つ。
それこそ、アランの母親にして生身では雲海最強の戦士のリアとも互角に戦える程度には。
その上で心核を使えば黄金のドラゴンとなり、その戦闘力はゼオンと肩を並べる程だ。
そう考えると、ある意味でレオノーラは万能の天才と呼ぶべき存在だろう。
とはいえ、レオノーラは才能だけでその強さを手に入れた訳ではない。
才能があるのはもちろんだが、それ以上に努力を重ねてここまでの力を手に入れたのだ。
……心核使いの件は、純粋に才能だけのものだったが。
「そうね。そう言って貰えると私も助かるわ。けど……あら?」
何かを言いかけたレオノーラだったが、不意にその言葉が止まる。
そして不思議そうな視線を向け……そんなレオノーラに釣られるように、近くにいた女もそちらに視線を向ける。
するとそこには、馬に乗ってこの野営地に近付いてくる男の姿があった。
「誰かしら? 知ってる?」
「いえ、レオノーラ様も知らないとなると、イルゼン殿の手の者でしょうか」
若干呆れながらそう告げる女。
とはいえ、その呆れの中には頼もしいという思いもある。
イルゼンの持つ情報収集能力や情報操作能力、そして相手の行動を読んで手を打つといった能力は、黄金の薔薇の面々にとっても非常に頼りになる能力だったからだ。
ただし、その能力があまりに凄すぎて、それで呆れの表情が浮かんだのだろうが。
だが……馬に乗ってきてやって来た男が向かったのは、イルゼンではなくこの遺跡の警備を命じられている兵士。
つまり、レジスタンスからガリンダミア帝国軍に入り込んでいる人物の下だった。
「あら?」
「おかしいですね」
レオノーラの声に、女もまたそんな疑問を抱く。
てっきりイルゼンの手の者だと思っていたのに、実は違ったのだから当然だろう。
野営地で休憩したり、訓練をしたり、話していてたりといったことをしていた者たちも、馬でやって来た男を気にしていた。
これがイルゼンの下に行ったら、そこまで気にする必要もなかったのだろうが……イルゼンではなく兵士に会いに来たというのが、やはり疑問だったのだろう。
「ちょっと話を聞いてくるわね」
「お供します」
そう告げる女を引き連れ、レオノーラは兵士のいる場所に向かう。
ただし、やって来た男と話している兵士の表情が真剣なものに変わっているのを見ると、何か問題が起きたのは確実だろうと予想出来る。
「さて、何が起きたんでしょうね」
「……貴方も来たの」
いつの間にか近くにいたイルゼンに、レオノーラは少しだけ驚きながら声をかける。
イルゼンはそんなレオノーラの様子を特に気にした様子もなく頷く。
「ええ。あの様子を見ると何かあったのは間違いないでしょうし。そして今この状況で何かがあってここに連絡に来たということは、間違いなく僕たちに影響しているでしょう」
「そうね。……で? イルゼンは何も掴んでないの? イルゼンのことだから、何かの情報を掴んでるんじゃないかと思ったんだけど」
「僕も何だって出来るという訳ではありませんよ?」
「……これほど説得力がない言葉も、また珍しいわね」
呆れの視線をイルゼンに向ける。レオノーラ。
今まで何度となくイルゼンはとんでもない行為をしてきた。
それを知ってるだけに、イルゼンであれば今の状況でも何らかの情報を持っているのではないかと、そう思うのは当然だろう。
「それは少しどうかと思いますけどね。……ともあれ、僕に話を聞かなくても、あそこにいる人から話を聞けばはっきりしますよ」
その言葉は事実だった。
そもそも情報を持ってきた人物がいるのだから、わざわざイルゼンに聞かなくてもそちらから聞けばいいだけの話なのだから。
レオノーラはその言葉に素直に納得したのだが、レオノーラの部下の女はそんなイルゼンの態度が面白くなかったのか、不満そうな様子を見せている。
レオノーラの部下にしてみれば、イルゼンとレオノーラが同格であるというのは理解しているのだが、それでもレオノーラは自分たちにとっては忠誠を誓うべき相手だ。
そんなレオノーラにこうも気安く話しかけるというのは、とてもではないが面白いものではない。
……もっとも、それを口に出すといったことは基本的にしないのだが。
とはいえ、当然イルゼンとレオノーラはそんな女の様子に気が付いており、レオノーラはイルゼンに申し訳ないと目配せをし、イルゼンは気にしてないと笑みを浮かべる。
そんなやり取りを行ったタイミングで、丁度三人はこの遺跡を守っている兵士と、その兵士に会いに来た男のいる場所に到着する。
向こうもイルゼンたちが来るのは分かっていたためか、特に驚いた様子は見せない。
「それで、そんなに急いでいるということは……何かあったんですか?」
「ああ。……ここに、ガリンダミア帝国軍が来る」
「……ほう」
兵士の口から出た言葉を聞いても、イルゼンは驚かない。
いや、驚いてはいるのだろうが、そこまで大きな驚きではなかった
そんなイルゼンとは裏腹に、レオノーラと部下の女は予想外の展開に口を大きく開いて驚く。
「何故ここに? この場所は見つかっていないはず。……もしかして、貴方が?」
レオノーラの鋭い視線を向けられた兵士は、慌てて首を横に振る。
もしここで返事をするのに躊躇してしまったら、色々と不味いことになると、そう思ったためだ。
幸い、そんな兵士の様子を信じたのか、レオノーラはすぐに視線を外したのだが。
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