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逃避行
262話
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グヴィスとクロスの追撃隊は、帝都に戻る途中の草原で休憩していた。
雲海や黄金の薔薇……正確にはそれらに助け出されたアランを追っていたのだが、途中でもしかしたら何かを見逃しているのではないか。
そう思って戻っていたのだが……全員が馬に乗っているとはいえ、それでも休憩は必要だ。
特に馬は高価な生き物である以上、走り潰すといったような真似が出来るはずもない。
そのため、こうして休んでいたのだが……そんな中、不意に兵士の一人が遺跡を見つけたと、そう報告してくる。
本来であれば、今は余計なことにかかわっている余裕はない。
だが、それが遺跡となれば話は変わってくる。
古代魔法文明の遺跡というのは、この時代において厄介な存在であると同時に、非常に貴重なものだ。
それこそ、その遺跡からどのようなマジックアイテムが発掘されるのか分からないのだから。
ましてや、上手くいけば……本当に上手くいけばだが、心核という強力無比なマジックアイテムを入手出来る可能性もあった。
だからこそ、遺跡があると知ればしっかりと確認しておく必要があった。
(とはいえ……こうして見るかぎりだと、特にそれらしいのは見えないし、あったとしても小さな遺跡だろうな)
グヴィスはそう思いながらも、クロスと共に兵士たちが見つけたという遺跡に向かう。
この辺りは簡単な林となっており、だからこそ遺跡も今まで見つからなかったのだろう。
あるいは遺跡を見つけても、報告をするのが面倒だからといった理由や自分で秘密裏に攻略してお宝を独り占めにしようとした……といった理由で報告されなかった可能性もあったが。
出来れば相応に大きな遺跡であって欲しい。
そう思ったグヴィスだったが……実際にその場に到着してみれば、そこにあるのはかなり小さな遺跡。
とはいえ、これはそう珍しい話ではない。
古代魔法文明の遺跡というのは、それこそ大小合わせれば大量に存在する。
そんな中でも小さい遺跡の数は、かなりのものなのだ。
そうである以上、現在グヴィスの目の前にある遺跡もそう珍しいものではない。
「ちっ、これは期待出来ないな。……とはいえ、見つけてしまった以上はどうにかする必要があるか。上に報告するにも、今は色々と忙しいしな」
何しろ、帝城の中でレジスタンスが好き放題に暴れたのだ。
多くのレジスタンスは捕らえるか殺されるかしたが、その中でも無事に逃げ延びた者も多く、その追跡は必須だ。
それ以外にも、好き放題に暴れられた城の片付けや修復で現在の帝城は大わらわだった。
そんな状況では、当然小さな遺跡を一つ見つけましたといったようなことを報告しても、それが受理されるかどうかは……正直、非常に難しいだろう。
であれば、この遺跡のことは取りあえず今は置いておき、自分のやるべきことに専念するべきだと、そう判断し……
「え?」
と、不意にそんな声が聞こえてきた。
その声を発した相手にグヴィスは視線を向け、そして次に兵士の見ている方に視線を向ける。
「え?」
そして、グヴィスの口からもそんな声が漏れる。
当然だろう。何故なら、自分たちが見つけたばかりの遺跡から何人もが姿を現したのだから。
いや、それだけであれば驚きはしただろうが、それでもここまで唖然、呆然といった様子を見せる必要はなかった。
そこまでの状況になったのは、遺跡から姿を現した者の中に見覚えのある……どころか、自分たちが必死になって探している人物がいたからだ。
「アラン!?」
だからだろう。グヴィスがその人物の名前を思わずといった様子で叫んでしまったのは。
そして当然のように名前を呼ばれたアランは誰が自分を呼んだのかと周囲を見て……少し離れた場所にいた、グヴィスと視線が合う。
また、グヴィスの隣にいるクロスも同様にアランへと視線を向けていた。
「え? あ……えー……」
まさか、遺跡から出た瞬間に顔見知り……それも自分を追っているだろう相手と遭遇するとは思わなかったのか、アランの口からはそんな声が漏れる。
双方共に、今回の一件はあまりに予想外の遭遇だった。
そんな中、最初に我に返ったのは……アラン。
これはアランが他の二人よりも優れていたという訳ではなく、ちょうど遺跡という慎重に行動しなければならない場所から出て来たばかりだった、というのが大きい。
それに対して、グヴィスたちは休憩をしていたので気が緩んでいた。
遺跡があるというのは理解していたが、それでも小さな遺跡であるということもあってか自分たちなら何が起きても対処出来ると、そう思っていたのは。
実際にそれは正しく、もし遺跡にいた人形が外に出て来たとしても、グヴィスやクロスといった面々であれば容易に倒すことが出来ただろう。
……グヴィスたちには、遺跡の中に人形がいるということは知らなかったのだが。
「グヴィス……クロスも……」
アランにとっても、ここでグヴィスやクロスと遭遇するのは完全に予想外だったためか、二人の名前を呼ぶ声には驚きが強い。
アランがガリンダミア帝国に囚われの身となっていたとき、見張り兼護衛として行動した二人。
そんな二人ではあったが、最初はともかく最終的に二人とは友人と呼ぶべき関係になっていた。 それだけに、親しみを抱いていいる。いるのだが……それでも、アランとグヴィスたちでは立場が違う。
だからこそ……
「アラン、俺たちと一緒に来い。ガリンダミア帝国に仕えるんだ。そうすれば悪いようにはしない」
それは、グヴィスにとっては最大限の譲歩。
アランを捕らえるのではなく、自分からガリンダミア帝国に仕えるという形にすれば、少なくてもこのまま再度捕らえられた状態で帝都に連れていったときよりは、待遇が上がる。
しかし……アランはそんなグヴィスの気持ちを理解しながらも、首を横に振る。
「悪いけど、それは出来ない。俺は雲海の探索者で、ガリンダミア帝国に仕えるつもりはないんだ。出来れば、このまま大人しく帝都に戻ってくれると助かるんだけどな。……無理か?」
「無理だな」
アランの言葉にそう返しながら、グヴィスは鞘から長剣を引き抜く。
「残念だ。出来れば俺たちと一緒に来て欲しかった」
グヴィスの横では、クロスもまた同様に長剣を構えた。
そして自分たちを率いる二人が武器を構え……何よりも、アランの名前を口にして呼びかけているのを聞いたことから、他の兵士たちもそれぞれ武器を構える。
「駄目……か」
「当然だろう」
アランの言葉に即座にそう返すグヴィス。
その視線はすでに友人ではなく捕縛する対象に向けられるものになっており、甘さの類はない。
そして同時に、一欠片の油断すらもなかった。
普通に考えれば、アランは今まで模擬戦でグヴィスに勝ったことはない。
それでもこうしてグヴィスが油断もせずにいるのは……
(カロ、だよな)
アランは長剣を構えたまま、自分の胸元に存在する心核に意識を向ける。
そして次に……
「レオノーラ、ロッコーモさん……他の皆も、すいません」
アランの側にいた探索者たちが、その言葉を聞いて気にするなといったようにそれぞれ武器を構える。
そもそも、アランが意図的にここに来たのならまだしも、ここに……この遺跡に転移したのはあくまでも偶然なのだ。
当然のようにアランと一緒に来た者たちもここにはいる。
「気にしなくてもいいわよ。見たところ、この人たちがアランを追ってる人なんでしょう? 正直、ここがどこなのかも分からないから微妙に困るけど……とにかく、ここで倒しておいた方がいいのは間違いないわ。それにここでの戦いなら、負けるはずがないし」
そう断言するレオノーラに、アランも同意する。
生身での戦いとなれば、アランはグヴィスやクロスに勝つことは不可能だろう。
だが……その戦いが外での戦いとなれば話は変わる。
狭い場所ではない以上、アランの心核のゼオンやレオノーラの心核の黄金のドラゴンを普通に使えるのだ。
また、そんな二人ではなくオーガに変身するロッコーモもいる。
他の探索者は偵察や罠の発見、解除といったようなことを得意としている者が多いが、そんな状況でも雲海や黄金の薔薇の探索者だ。
その辺の兵士……いや、騎士と比べても間違いなく強い。
それだけの戦力が揃っているのだから、アランが自分たちの勝利を疑わないのは当然だった。
そもそも、グヴィスたちにこの人数でアランたちを捕らえろという方が難しい。
生身での戦闘ならある程度対抗出来るだろうが、アランを含めて多数の心核使いがいるのだ。
とてもではないが、正面から戦って勝てるはずもない。
……とはいえ、ガリンダミア帝国軍の心核使いはアランたちとの戦いでかなりの人数が死ぬか、戦闘不能になっている。
ましてや、アランが帝城から脱出する際には陽動として姿を現した黄金のドラゴンに変身したレオノーラにより、多数が倒されている。
帝城に残っていた戦力でそれなのだから、とてもではないがグヴィスたちに回せる戦力はなかったのだろう。
「グヴィス、ここは大人しく退いてくれないか? そうすれば、こっちも穏便にすませることが出来るんだが」
「馬鹿なことを言うな。俺たちの任務はアランを捕らえることだ。……お前が大人しく降伏しない限り、戦わないという選択肢はない」
その言葉に、周囲は緊張した雰囲気となる。
(どうする? ここでグヴィスたちとは、出来れば戦いたくない。そうなると……一端撤退するか? 遺跡の転移機能を使えば、イルゼンさんたちがいる人形の製造施設に戻るのは難しくないし。……いや、俺たちが逃げれば、グヴィスたちは当然追ってくるか)
グヴィスたちの目的がアランを捕らえることである以上、そのアランが逃げれば追うのは当然だろう。
そうなれば、かなり厄介なことになるのは間違いなく……やはり、ここで倒す必要があった。
とはいえ、アランもグヴィスやクロスを友人と思っている以上、当然だが殺すといった真似はしたくなく……
(気絶させる。……出来るか、俺に?)
そう思いつつも、アランは長剣を手にして一歩グヴィスたちのいる方に向かって踏み出すのだった。
雲海や黄金の薔薇……正確にはそれらに助け出されたアランを追っていたのだが、途中でもしかしたら何かを見逃しているのではないか。
そう思って戻っていたのだが……全員が馬に乗っているとはいえ、それでも休憩は必要だ。
特に馬は高価な生き物である以上、走り潰すといったような真似が出来るはずもない。
そのため、こうして休んでいたのだが……そんな中、不意に兵士の一人が遺跡を見つけたと、そう報告してくる。
本来であれば、今は余計なことにかかわっている余裕はない。
だが、それが遺跡となれば話は変わってくる。
古代魔法文明の遺跡というのは、この時代において厄介な存在であると同時に、非常に貴重なものだ。
それこそ、その遺跡からどのようなマジックアイテムが発掘されるのか分からないのだから。
ましてや、上手くいけば……本当に上手くいけばだが、心核という強力無比なマジックアイテムを入手出来る可能性もあった。
だからこそ、遺跡があると知ればしっかりと確認しておく必要があった。
(とはいえ……こうして見るかぎりだと、特にそれらしいのは見えないし、あったとしても小さな遺跡だろうな)
グヴィスはそう思いながらも、クロスと共に兵士たちが見つけたという遺跡に向かう。
この辺りは簡単な林となっており、だからこそ遺跡も今まで見つからなかったのだろう。
あるいは遺跡を見つけても、報告をするのが面倒だからといった理由や自分で秘密裏に攻略してお宝を独り占めにしようとした……といった理由で報告されなかった可能性もあったが。
出来れば相応に大きな遺跡であって欲しい。
そう思ったグヴィスだったが……実際にその場に到着してみれば、そこにあるのはかなり小さな遺跡。
とはいえ、これはそう珍しい話ではない。
古代魔法文明の遺跡というのは、それこそ大小合わせれば大量に存在する。
そんな中でも小さい遺跡の数は、かなりのものなのだ。
そうである以上、現在グヴィスの目の前にある遺跡もそう珍しいものではない。
「ちっ、これは期待出来ないな。……とはいえ、見つけてしまった以上はどうにかする必要があるか。上に報告するにも、今は色々と忙しいしな」
何しろ、帝城の中でレジスタンスが好き放題に暴れたのだ。
多くのレジスタンスは捕らえるか殺されるかしたが、その中でも無事に逃げ延びた者も多く、その追跡は必須だ。
それ以外にも、好き放題に暴れられた城の片付けや修復で現在の帝城は大わらわだった。
そんな状況では、当然小さな遺跡を一つ見つけましたといったようなことを報告しても、それが受理されるかどうかは……正直、非常に難しいだろう。
であれば、この遺跡のことは取りあえず今は置いておき、自分のやるべきことに専念するべきだと、そう判断し……
「え?」
と、不意にそんな声が聞こえてきた。
その声を発した相手にグヴィスは視線を向け、そして次に兵士の見ている方に視線を向ける。
「え?」
そして、グヴィスの口からもそんな声が漏れる。
当然だろう。何故なら、自分たちが見つけたばかりの遺跡から何人もが姿を現したのだから。
いや、それだけであれば驚きはしただろうが、それでもここまで唖然、呆然といった様子を見せる必要はなかった。
そこまでの状況になったのは、遺跡から姿を現した者の中に見覚えのある……どころか、自分たちが必死になって探している人物がいたからだ。
「アラン!?」
だからだろう。グヴィスがその人物の名前を思わずといった様子で叫んでしまったのは。
そして当然のように名前を呼ばれたアランは誰が自分を呼んだのかと周囲を見て……少し離れた場所にいた、グヴィスと視線が合う。
また、グヴィスの隣にいるクロスも同様にアランへと視線を向けていた。
「え? あ……えー……」
まさか、遺跡から出た瞬間に顔見知り……それも自分を追っているだろう相手と遭遇するとは思わなかったのか、アランの口からはそんな声が漏れる。
双方共に、今回の一件はあまりに予想外の遭遇だった。
そんな中、最初に我に返ったのは……アラン。
これはアランが他の二人よりも優れていたという訳ではなく、ちょうど遺跡という慎重に行動しなければならない場所から出て来たばかりだった、というのが大きい。
それに対して、グヴィスたちは休憩をしていたので気が緩んでいた。
遺跡があるというのは理解していたが、それでも小さな遺跡であるということもあってか自分たちなら何が起きても対処出来ると、そう思っていたのは。
実際にそれは正しく、もし遺跡にいた人形が外に出て来たとしても、グヴィスやクロスといった面々であれば容易に倒すことが出来ただろう。
……グヴィスたちには、遺跡の中に人形がいるということは知らなかったのだが。
「グヴィス……クロスも……」
アランにとっても、ここでグヴィスやクロスと遭遇するのは完全に予想外だったためか、二人の名前を呼ぶ声には驚きが強い。
アランがガリンダミア帝国に囚われの身となっていたとき、見張り兼護衛として行動した二人。
そんな二人ではあったが、最初はともかく最終的に二人とは友人と呼ぶべき関係になっていた。 それだけに、親しみを抱いていいる。いるのだが……それでも、アランとグヴィスたちでは立場が違う。
だからこそ……
「アラン、俺たちと一緒に来い。ガリンダミア帝国に仕えるんだ。そうすれば悪いようにはしない」
それは、グヴィスにとっては最大限の譲歩。
アランを捕らえるのではなく、自分からガリンダミア帝国に仕えるという形にすれば、少なくてもこのまま再度捕らえられた状態で帝都に連れていったときよりは、待遇が上がる。
しかし……アランはそんなグヴィスの気持ちを理解しながらも、首を横に振る。
「悪いけど、それは出来ない。俺は雲海の探索者で、ガリンダミア帝国に仕えるつもりはないんだ。出来れば、このまま大人しく帝都に戻ってくれると助かるんだけどな。……無理か?」
「無理だな」
アランの言葉にそう返しながら、グヴィスは鞘から長剣を引き抜く。
「残念だ。出来れば俺たちと一緒に来て欲しかった」
グヴィスの横では、クロスもまた同様に長剣を構えた。
そして自分たちを率いる二人が武器を構え……何よりも、アランの名前を口にして呼びかけているのを聞いたことから、他の兵士たちもそれぞれ武器を構える。
「駄目……か」
「当然だろう」
アランの言葉に即座にそう返すグヴィス。
その視線はすでに友人ではなく捕縛する対象に向けられるものになっており、甘さの類はない。
そして同時に、一欠片の油断すらもなかった。
普通に考えれば、アランは今まで模擬戦でグヴィスに勝ったことはない。
それでもこうしてグヴィスが油断もせずにいるのは……
(カロ、だよな)
アランは長剣を構えたまま、自分の胸元に存在する心核に意識を向ける。
そして次に……
「レオノーラ、ロッコーモさん……他の皆も、すいません」
アランの側にいた探索者たちが、その言葉を聞いて気にするなといったようにそれぞれ武器を構える。
そもそも、アランが意図的にここに来たのならまだしも、ここに……この遺跡に転移したのはあくまでも偶然なのだ。
当然のようにアランと一緒に来た者たちもここにはいる。
「気にしなくてもいいわよ。見たところ、この人たちがアランを追ってる人なんでしょう? 正直、ここがどこなのかも分からないから微妙に困るけど……とにかく、ここで倒しておいた方がいいのは間違いないわ。それにここでの戦いなら、負けるはずがないし」
そう断言するレオノーラに、アランも同意する。
生身での戦いとなれば、アランはグヴィスやクロスに勝つことは不可能だろう。
だが……その戦いが外での戦いとなれば話は変わる。
狭い場所ではない以上、アランの心核のゼオンやレオノーラの心核の黄金のドラゴンを普通に使えるのだ。
また、そんな二人ではなくオーガに変身するロッコーモもいる。
他の探索者は偵察や罠の発見、解除といったようなことを得意としている者が多いが、そんな状況でも雲海や黄金の薔薇の探索者だ。
その辺の兵士……いや、騎士と比べても間違いなく強い。
それだけの戦力が揃っているのだから、アランが自分たちの勝利を疑わないのは当然だった。
そもそも、グヴィスたちにこの人数でアランたちを捕らえろという方が難しい。
生身での戦闘ならある程度対抗出来るだろうが、アランを含めて多数の心核使いがいるのだ。
とてもではないが、正面から戦って勝てるはずもない。
……とはいえ、ガリンダミア帝国軍の心核使いはアランたちとの戦いでかなりの人数が死ぬか、戦闘不能になっている。
ましてや、アランが帝城から脱出する際には陽動として姿を現した黄金のドラゴンに変身したレオノーラにより、多数が倒されている。
帝城に残っていた戦力でそれなのだから、とてもではないがグヴィスたちに回せる戦力はなかったのだろう。
「グヴィス、ここは大人しく退いてくれないか? そうすれば、こっちも穏便にすませることが出来るんだが」
「馬鹿なことを言うな。俺たちの任務はアランを捕らえることだ。……お前が大人しく降伏しない限り、戦わないという選択肢はない」
その言葉に、周囲は緊張した雰囲気となる。
(どうする? ここでグヴィスたちとは、出来れば戦いたくない。そうなると……一端撤退するか? 遺跡の転移機能を使えば、イルゼンさんたちがいる人形の製造施設に戻るのは難しくないし。……いや、俺たちが逃げれば、グヴィスたちは当然追ってくるか)
グヴィスたちの目的がアランを捕らえることである以上、そのアランが逃げれば追うのは当然だろう。
そうなれば、かなり厄介なことになるのは間違いなく……やはり、ここで倒す必要があった。
とはいえ、アランもグヴィスやクロスを友人と思っている以上、当然だが殺すといった真似はしたくなく……
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そう思いつつも、アランは長剣を手にして一歩グヴィスたちのいる方に向かって踏み出すのだった。
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