239 / 422
囚われの姫君?
238話
しおりを挟む
ロッコーモがカロの奪還に成功した頃……リアとニコラスは二人の騎士と向かい合っていた。
連れ去られた息子を探し、帝城の中を移動していた二人は、親の直感……そしてリアの女の直感によるものか、多少迷いながらも目的の場所に到着したのだ。
当然の話だが、その目的の場所というのは、アランが閉じ込められている貴族用の客室だ。
「そこを通してくれないかしら?」
リアが長剣を手にそう尋ねるが、当然のようにグヴィスとクロスの二人が素直にその言葉に従うはずもない。
そもそも、最近ではアランの友人兼訓練相手といったような感じになっていたが、実際にはアランが逃げ出さないための見張りであり、同時にアランを奪いに来た相手を阻止するのが仕事なのだから。
「そう言われて、こっちがはいそうですかと言うとでも思ってるのか?」
グヴィスは、目の前にいるのがアランの母親だとは思っていない。
……当然だろう。何の事前知識もなければ、リアというのまだ二十代の女にしか見えない。
ハーフエルフの特徴たる、人間より長くエルフよりも短い耳も髪によって隠れている以上、とてもではないがアランのような子供がいる年齢であるとは思えないのだ。
「君も彼と同じ答えかな?」
ニコラスの問いに、クロスは言葉を発するのではなく小さく頷くことで答える。
「そうか。……けど、悪いがこちらも訳ありだ。手加減については、期待しないでくれよ」
そう言い、杖を手にしたニコラスは、鋭い視線をクロスに向ける。
クロスもまた、長剣を手に、その切っ先をニコラスに向けた。
普通に考えれば、ここまで接近している状況では魔法使いのニコラスよりも、騎士のクロスの方が有利だ。
だが、それはあくまでも普通ならではの話で、探索者として活動しているニコラスを普通の魔法使いと同じ扱いにして、いいはずがなかった。
そんな二人の横では、グヴィスとリアの二人がそれぞれ長剣を手に睨み合い……最初に動いたのは、リアだった。
普段ならリアももう少し相手の動きを見るといったようなことをしただろう。
だが、今のリアはアランを助け出すことだけを考えており、相手との駆け引きに乗るといったような真似をするつもりがなかった。
……あるいは、グヴィスがリアよりも強い相手なら、そのような方法を取っていた可能性もあるが。
だが、グヴィスは強い相手ではあるが、今のリアにしてみれば楽に……とは言わないまでも、戦えば勝てる相手だ。
アランが模擬戦ではどうやってもグヴィスに勝てなかったのを考えれば、息子と母親の間にある絶対的な差は非常に分かりやすいだろう。
「じゃあ、行くわよ」
その言葉と共に、リアは真っ直ぐ前に進む。
相手を全く警戒する様子もなく前にでるその姿からは、リアは自分がグヴィスよりも圧倒的に上だと、そう態度で示しているのが明らかだ。
当然の話だが、グヴィスもまたそのような対応を取られれば面白い筈もない。
相手が女であっても……いや、妙齢の美人に見えるからこそ、ここまで侮られるのは面白いとは思わず、迂闊に近付いてきたリアに向かって長剣を振るう。
その一撃は鋭く、アランであれば……いや、それこそその辺の戦士であれば何とか受けることが出来るといった程のものだろう。
だが、グヴィスの相手をしているのはリアだ。
奪われた息子を取り戻すべくやってきたそんなリアにとって、グヴィスは自分の目的を果たすための障害でしかない。
普通なら回避出来ないくらいに鋭い一撃を、リアはあっさりと回避し、グヴィスの胴体に向かって長剣を振るう。
……そんなカウンターを回避出来たのは、グヴィスもまた腕利きの騎士だからだろう。
ただし、完全に回避するといった訳にはいかず、グヴィスの胴体は皮一枚切断される。
そう、鎧をあっさりを斬り裂かれ、その下にある服も斬り裂かれ、結果として胴体の怪我は皮一枚ですんだのだ。
「嘘だろ。化け物め」
まさか、ここまであっさりと鎧を斬られるとは思っていなかったのか、グヴィスの口からは驚愕の声が上がる。
「化け物ね。これくらい出来る者は結構な数いるわよ。……さて、それじゃあ負けたんだし、そこをどいてちょうだい。それとも……死ぬまでやってみる? 私の息子を守るためにそこまでやるのなら、それはそれで……いや、やっぱり複雑な心境なのは間違いないわね」
「……は?」
リアの口から出た言葉に、グヴィスの口から間の抜けた声が出る。
当然だろう。グヴィスの前にいるリアは、とてもではないがアランのような息子がいる年齢には思えなかったのだから。
とはいえ、エルフのような寿命の長い存在が普通にいるこの世界において、外見と実際の年齢が一致しないのは、そんなに珍しい話でもない。
それでもグヴィスが驚いたのは、アランの外見が普通の人間にしか見えなかったからだろう。
これでアランの耳が長かったり、もしくは寿命の長い獣人族の特徴といったものがあったりすれば、まだ納得出来たのだろうが。
ともあれ、いくら予想外のことだったからとはいえ、今のリアを前にして集中を乱すというのは、致命傷以外のなにものでもない。
一瞬にして近付かれ、首の後ろを手刀で叩かれて意識を失うグヴィス。
「グヴィス!?」
まさかの展開に驚きの声を上げるクロスだったが、こちらもまたその隙を突かれてニコラスの放った風の魔法によって吹き飛ばされ、壁に身体を叩きつけられて意識を失う。
「行きましょう」
「ああ」
夫婦は短く言葉を交わし、そして扉の前に移動すると……そこに鍵がかけらているのを見たリアが長剣を振るい、鍵ではなく扉を切断する。
「うおっ!」
瞬間、部屋の中から聞こえてきた声に、リアは長剣を構え……そして聞き覚えのある声だと理解して長剣を下ろしかけ、だがその状況から再度長剣を振るう。
「うおわっ! ちょっ、何をするんだよ、母さん!」
アランのその言葉に、しかしリアは心配していたといった様子を全く表情に出さずに長剣を振り続ける。
ただし、グヴィスに振るったような鋭い一撃ではなく、アラン……以前のアランなら何とか回避出来るといったような、そんな攻撃だったが。
そんなリアの攻撃を回避しながら、アランはリアから少し離れた場所で黙って様子を見ているニコラスに声をかける。
「ちょっ、父さん! 母さんを何とかしてくれよ!」
必死に叫ぶアランだったが、ニコラスがそんな息子の言葉を聞く様子はない。
アランが暮らしていた部屋を、じっと観察するように見ているだけだ。
そのまま一分ほどが経過し、母親の攻撃を回避し続けていたアランだったが、やがてその攻撃が不意に止まったことで安堵する。
そろそろ攻撃の回避を続けるのが、難しくなってきていたからだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……俺を助けに来たのか、殺しにきたのか、はっきりとしてくれよな」
「馬鹿なことを言ってないで、さっさと行くわよ。早く脱出しないと、混乱が収まる」
今まで一方的にアランを攻撃していたとは思えないほどに、平然とした様子でリアが息子に向かって言う。
そんなリアに、アランとしては言いたいことはいくらでもあった。
だが、今の状況で何を言っても、それを聞いて貰えるとは思えない。
それに……この騒動が自分を助けるために起こされたものだというのは、アランにも当然のように理解出来る。
だからこそ、今この状況で部屋を脱出しないという選択肢は、アランにはない。
「アラン様」
そうして部屋から出ようとしたアランに、部屋の中からメローネが声をかける。
そんなメローネの言葉に、アランは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
今までアランの世話をしてくれた相手だと、そう理解しているためだ。
だが、アランはそんなメローネに対して申し訳なく思いつつも、帝城からの脱出という行為を止めるつもりはない。
ガリンダミア帝国に従うのであればともかく、今のアランにそんなつもりは一切ないのだから。
「すいません。俺、行きますね。色々とありがとうございました」
アランも、メローネが自分を懐柔するためにつけられた人材だと理解している。
それこそ、ハニートラップの一種でもあり、もしアランが望めば抱かれたのだろうことも。
当然の話だが、それはアランに対して好意を抱いているからではなく、あくまでもガリンダミア帝国の上層部にそのように命じられていたためだ。
アランもそれが分かっているので、実際に手を出すような真似はしなかった
「……分かりました。では、またお会いしましょう」
メローネは深々と一礼し、それ以上アランに対して何かをするような真似はしなかった。
リアとニコラスは、そんなメローネの様子を一瞥すると、複雑な表情を浮かべながらも軽く頭を下げてから、部屋を出る。
リアとニコラスも、メローネがアランを懐柔するためにつけられたメイドだというのは理解した。
それでも結局アランはすぐ脱出することを承知したのだから、それはつまり懐柔が上手くいかなかった……もしくは、意図的に懐柔しなかったかのどちらかなのだろう。
それでも、アランに向かって深々と頭を下げる様子を見せられれば、このメイドがアランの世話を真摯にしていたのは分かる。
「私の息子が迷惑をかけたわね。ありがとう」
「いえ。アラン様はお仕え甲斐のある方でした。出来れば、本当にそうしたかったくらいに」
リアの言葉に、メローネは頭を上げてそう告げる。
そんなメローネの様子に、リアは笑みを浮かべて口を開く。
「なら、私たちと一緒に来る? それなら、うちの馬鹿息子と一緒にいられるけど」
「いえ。残念ですが、私の家は代々ガリンダミア帝国に仕えてきた一族ですので、そのような真似は出来ません」
申し訳なさそうに告げるメローネだったが、リアは残念そうにしつつも、それ以上は言わない。
元々、今の誘いは駄目で元々のつもりで言ったのだから、当然だろう。
「そう。じゃあ……今度は戦場で会わないことを祈ってるよ」
リアの強さがあれば、メローネが相応の強さを持っているというのには気が付いたのか、そう言い……分かっていない様子のアランを引き連れて、部屋を出るのだった。
連れ去られた息子を探し、帝城の中を移動していた二人は、親の直感……そしてリアの女の直感によるものか、多少迷いながらも目的の場所に到着したのだ。
当然の話だが、その目的の場所というのは、アランが閉じ込められている貴族用の客室だ。
「そこを通してくれないかしら?」
リアが長剣を手にそう尋ねるが、当然のようにグヴィスとクロスの二人が素直にその言葉に従うはずもない。
そもそも、最近ではアランの友人兼訓練相手といったような感じになっていたが、実際にはアランが逃げ出さないための見張りであり、同時にアランを奪いに来た相手を阻止するのが仕事なのだから。
「そう言われて、こっちがはいそうですかと言うとでも思ってるのか?」
グヴィスは、目の前にいるのがアランの母親だとは思っていない。
……当然だろう。何の事前知識もなければ、リアというのまだ二十代の女にしか見えない。
ハーフエルフの特徴たる、人間より長くエルフよりも短い耳も髪によって隠れている以上、とてもではないがアランのような子供がいる年齢であるとは思えないのだ。
「君も彼と同じ答えかな?」
ニコラスの問いに、クロスは言葉を発するのではなく小さく頷くことで答える。
「そうか。……けど、悪いがこちらも訳ありだ。手加減については、期待しないでくれよ」
そう言い、杖を手にしたニコラスは、鋭い視線をクロスに向ける。
クロスもまた、長剣を手に、その切っ先をニコラスに向けた。
普通に考えれば、ここまで接近している状況では魔法使いのニコラスよりも、騎士のクロスの方が有利だ。
だが、それはあくまでも普通ならではの話で、探索者として活動しているニコラスを普通の魔法使いと同じ扱いにして、いいはずがなかった。
そんな二人の横では、グヴィスとリアの二人がそれぞれ長剣を手に睨み合い……最初に動いたのは、リアだった。
普段ならリアももう少し相手の動きを見るといったようなことをしただろう。
だが、今のリアはアランを助け出すことだけを考えており、相手との駆け引きに乗るといったような真似をするつもりがなかった。
……あるいは、グヴィスがリアよりも強い相手なら、そのような方法を取っていた可能性もあるが。
だが、グヴィスは強い相手ではあるが、今のリアにしてみれば楽に……とは言わないまでも、戦えば勝てる相手だ。
アランが模擬戦ではどうやってもグヴィスに勝てなかったのを考えれば、息子と母親の間にある絶対的な差は非常に分かりやすいだろう。
「じゃあ、行くわよ」
その言葉と共に、リアは真っ直ぐ前に進む。
相手を全く警戒する様子もなく前にでるその姿からは、リアは自分がグヴィスよりも圧倒的に上だと、そう態度で示しているのが明らかだ。
当然の話だが、グヴィスもまたそのような対応を取られれば面白い筈もない。
相手が女であっても……いや、妙齢の美人に見えるからこそ、ここまで侮られるのは面白いとは思わず、迂闊に近付いてきたリアに向かって長剣を振るう。
その一撃は鋭く、アランであれば……いや、それこそその辺の戦士であれば何とか受けることが出来るといった程のものだろう。
だが、グヴィスの相手をしているのはリアだ。
奪われた息子を取り戻すべくやってきたそんなリアにとって、グヴィスは自分の目的を果たすための障害でしかない。
普通なら回避出来ないくらいに鋭い一撃を、リアはあっさりと回避し、グヴィスの胴体に向かって長剣を振るう。
……そんなカウンターを回避出来たのは、グヴィスもまた腕利きの騎士だからだろう。
ただし、完全に回避するといった訳にはいかず、グヴィスの胴体は皮一枚切断される。
そう、鎧をあっさりを斬り裂かれ、その下にある服も斬り裂かれ、結果として胴体の怪我は皮一枚ですんだのだ。
「嘘だろ。化け物め」
まさか、ここまであっさりと鎧を斬られるとは思っていなかったのか、グヴィスの口からは驚愕の声が上がる。
「化け物ね。これくらい出来る者は結構な数いるわよ。……さて、それじゃあ負けたんだし、そこをどいてちょうだい。それとも……死ぬまでやってみる? 私の息子を守るためにそこまでやるのなら、それはそれで……いや、やっぱり複雑な心境なのは間違いないわね」
「……は?」
リアの口から出た言葉に、グヴィスの口から間の抜けた声が出る。
当然だろう。グヴィスの前にいるリアは、とてもではないがアランのような息子がいる年齢には思えなかったのだから。
とはいえ、エルフのような寿命の長い存在が普通にいるこの世界において、外見と実際の年齢が一致しないのは、そんなに珍しい話でもない。
それでもグヴィスが驚いたのは、アランの外見が普通の人間にしか見えなかったからだろう。
これでアランの耳が長かったり、もしくは寿命の長い獣人族の特徴といったものがあったりすれば、まだ納得出来たのだろうが。
ともあれ、いくら予想外のことだったからとはいえ、今のリアを前にして集中を乱すというのは、致命傷以外のなにものでもない。
一瞬にして近付かれ、首の後ろを手刀で叩かれて意識を失うグヴィス。
「グヴィス!?」
まさかの展開に驚きの声を上げるクロスだったが、こちらもまたその隙を突かれてニコラスの放った風の魔法によって吹き飛ばされ、壁に身体を叩きつけられて意識を失う。
「行きましょう」
「ああ」
夫婦は短く言葉を交わし、そして扉の前に移動すると……そこに鍵がかけらているのを見たリアが長剣を振るい、鍵ではなく扉を切断する。
「うおっ!」
瞬間、部屋の中から聞こえてきた声に、リアは長剣を構え……そして聞き覚えのある声だと理解して長剣を下ろしかけ、だがその状況から再度長剣を振るう。
「うおわっ! ちょっ、何をするんだよ、母さん!」
アランのその言葉に、しかしリアは心配していたといった様子を全く表情に出さずに長剣を振り続ける。
ただし、グヴィスに振るったような鋭い一撃ではなく、アラン……以前のアランなら何とか回避出来るといったような、そんな攻撃だったが。
そんなリアの攻撃を回避しながら、アランはリアから少し離れた場所で黙って様子を見ているニコラスに声をかける。
「ちょっ、父さん! 母さんを何とかしてくれよ!」
必死に叫ぶアランだったが、ニコラスがそんな息子の言葉を聞く様子はない。
アランが暮らしていた部屋を、じっと観察するように見ているだけだ。
そのまま一分ほどが経過し、母親の攻撃を回避し続けていたアランだったが、やがてその攻撃が不意に止まったことで安堵する。
そろそろ攻撃の回避を続けるのが、難しくなってきていたからだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……俺を助けに来たのか、殺しにきたのか、はっきりとしてくれよな」
「馬鹿なことを言ってないで、さっさと行くわよ。早く脱出しないと、混乱が収まる」
今まで一方的にアランを攻撃していたとは思えないほどに、平然とした様子でリアが息子に向かって言う。
そんなリアに、アランとしては言いたいことはいくらでもあった。
だが、今の状況で何を言っても、それを聞いて貰えるとは思えない。
それに……この騒動が自分を助けるために起こされたものだというのは、アランにも当然のように理解出来る。
だからこそ、今この状況で部屋を脱出しないという選択肢は、アランにはない。
「アラン様」
そうして部屋から出ようとしたアランに、部屋の中からメローネが声をかける。
そんなメローネの言葉に、アランは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
今までアランの世話をしてくれた相手だと、そう理解しているためだ。
だが、アランはそんなメローネに対して申し訳なく思いつつも、帝城からの脱出という行為を止めるつもりはない。
ガリンダミア帝国に従うのであればともかく、今のアランにそんなつもりは一切ないのだから。
「すいません。俺、行きますね。色々とありがとうございました」
アランも、メローネが自分を懐柔するためにつけられた人材だと理解している。
それこそ、ハニートラップの一種でもあり、もしアランが望めば抱かれたのだろうことも。
当然の話だが、それはアランに対して好意を抱いているからではなく、あくまでもガリンダミア帝国の上層部にそのように命じられていたためだ。
アランもそれが分かっているので、実際に手を出すような真似はしなかった
「……分かりました。では、またお会いしましょう」
メローネは深々と一礼し、それ以上アランに対して何かをするような真似はしなかった。
リアとニコラスは、そんなメローネの様子を一瞥すると、複雑な表情を浮かべながらも軽く頭を下げてから、部屋を出る。
リアとニコラスも、メローネがアランを懐柔するためにつけられたメイドだというのは理解した。
それでも結局アランはすぐ脱出することを承知したのだから、それはつまり懐柔が上手くいかなかった……もしくは、意図的に懐柔しなかったかのどちらかなのだろう。
それでも、アランに向かって深々と頭を下げる様子を見せられれば、このメイドがアランの世話を真摯にしていたのは分かる。
「私の息子が迷惑をかけたわね。ありがとう」
「いえ。アラン様はお仕え甲斐のある方でした。出来れば、本当にそうしたかったくらいに」
リアの言葉に、メローネは頭を上げてそう告げる。
そんなメローネの様子に、リアは笑みを浮かべて口を開く。
「なら、私たちと一緒に来る? それなら、うちの馬鹿息子と一緒にいられるけど」
「いえ。残念ですが、私の家は代々ガリンダミア帝国に仕えてきた一族ですので、そのような真似は出来ません」
申し訳なさそうに告げるメローネだったが、リアは残念そうにしつつも、それ以上は言わない。
元々、今の誘いは駄目で元々のつもりで言ったのだから、当然だろう。
「そう。じゃあ……今度は戦場で会わないことを祈ってるよ」
リアの強さがあれば、メローネが相応の強さを持っているというのには気が付いたのか、そう言い……分かっていない様子のアランを引き連れて、部屋を出るのだった。
0
お気に入りに追加
163
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる