201 / 422
ザッカラン防衛戦
200話
しおりを挟む
ガリンダミア帝国軍の撤退。
最初にそれを見たザッカランの兵士たは、一瞬それを欺瞞か何かではないかと思った。
ザッカランの城壁が頑丈で、しかも空には黄金のドラゴンがいるのだ。
それを考えれば、このまままともに戦うよりも、一度撤退したと見せて自分たちを油断させようとしているのだろうと。
そのように思ったのは、一人の兵士だけではなく、他にも大勢がその様子から同様の疑問を抱く。
だが……実際にガリンダミア帝国軍は、見せかけではなく本気で撤退していったと理解したのは、数時間後。
ザッカランから見えない場所までガリンダミア帝国軍が移動したのだ。
あるいは、見えない場所で疲れを癒やし、時間を潰して黄金のドラゴンがいなくなったらまたやってくるのではと警戒もしたが、黄金のドラゴンの姿が降雨中から消えても、ガリンダミア帝国軍が戻ってくることはない。
本当に撤退したのかどうかは、もう少し様子を見る必要があるが、それでも兵士たちの中に安堵の気持ちが広がったのは間違いのない事実だ。
だが……そうして安堵しているのは、事情を知らない兵士たちだけだ。
何故ガリンダミア帝国軍が撤退したのかを知っている者……特に当事者たる雲海や黄金の薔薇の面々は、その理由を理解しているがゆえに、現在の状況を最悪だと理解出来ていた。
「イルゼンさん、どうするんだよ! このままアランを見捨てるのか!?」
雲海の面々……だけではなく、黄金の薔薇の者たちも集まっている領主の館にある会議室の一室。
その会議室の中には、探索者の面々だけではなくボーレスの姿もある。
ザッカランを占領したドットリオン王国軍のトップで、現在は実質ザッカランを治めている立場にいる者だ。
そのような人物やその側近――あるいは取り巻き――がここにいるのは、アランが誘拐されたというのがそれだけ大きいからだろう。
何よりもボーレスが危惧しているのは、アランがガリンダミア帝国軍の戦力として出て来ないかということだ。
普通に考えれば、それはとてもではないがありえない。
だが、世の中には相手の意思を奪ったり洗脳したりといったような方法は多数存在する。
そのような能力を使って、アランが敵の戦力として出て来た場合……ゼオンがどれだけの力を持っているのかを理解しているからこそ、それを危惧するのは当然だった。
ボーレスにとっては、レオノーラが変身する黄金のドラゴンにも恐怖や畏怖を覚えるが、アランの操縦するゼオンはそれ以上の恐怖を抱くべき存在だった。
黄金のドラゴンであれば、まだかろうじてその存在は理解出来る。
だが、ゼオンは……あまりにも異質なのだ。
無理矢理分類するのであれば、ゴーレムということになるのだろうが……そもそも、ゴーレムは肩や腕の上に乗ったりすることはあっても、その内部に乗るようなこととはない。
ましてや、ゼオンのように光の一撃……いわゆるビームを撃ったりもしない。
ザッカランを占領したときにも見た、その圧倒的な性能。
それを行ったゼオンが敵として現れる可能性を考えると、現在ザッカランを治めているボーレスとしても、この話し合いに参加しないという選択肢は存在しなかった。
「まさか、そんな訳がないでしょう? アランは僕たちの家族です。それを見捨てるなどという真似をするつもりは、一切ありません」
探索者の言葉にイルゼンがそう答え、それを聞いていた多くの者たちは安堵する。
……だが、中にはイルゼンの言葉の意味を理解し、厳しい表情を浮かべる者もいた。
それはつまり、雲海が……そして恐らく黄金の薔薇の面々もザッカランから出て行くということを意味していたためだ。
アランを見捨てない。つまり、助けに行く。どこに? それは当然のように、ガリンダミア帝国の領土内だった。
いや、領土内というだけではなく、そこは恐らくガリンダミア帝国の首都たる帝都だろう。
もちろん、可能なら帝都に到着するよりも前にアランを助け出すことが出来れば最善だったのだが、アランを連れ去った者も当然のようにその辺りのことは分かっている。
だからこそ、敵に追いつかれないように……可能な限り素早くアランを帝都に運び、防御が万全な場所で戦いを行うというのが、向こうにとっては最善なのだ。
それを追うとなると、雲海や黄金の薔薇の面々も全力を出す必要がある。
そして全力を出すためには、当然のようにクラン全員の力が必要となり……つまり、ザッカランの防衛戦には強力出来なくなるということを意味していた。
現在はガリンダミア帝国軍の姿はない。
撤退もザッカランにいる者たちを誘き寄せるための罠ではなく、本当に撤退しているということが確認されている。
だが……撤退したあとで、再び態勢を整えてまた攻めてくるという可能性は十分にあるのだ。
イルゼンの言葉に厳しい表情を浮かべている者は、その辺りの事情をしっかりと理解している者たちなのだろう。
「では、私たちはすぐにでも出発の用意をしますので、この辺りで失礼します。……ドットリオン王国からの援軍が出来るだけ早く来ることを祈っています」
『なっ!?』
イルゼンが言った先程の言葉の意味をようや理解した者たちの口から、驚きの声が上がる。
アランを捜すことを諦めないと言っていたことが、言葉通りの意味だったと理解したのだ。
だが、自分たちもそんなイルゼンの言葉に問題ないと頷いていた以上、ここで不満を口には出来ない。
もしここでそれを口に出来るとすれば、現在ザッカランにいるドットリオン王国軍のトップにして、実質的にザッカランを治めているボーレスだろう。
にもかかわらず、そのボーレスは何を言うようなこともない。
まるでイルゼンの行動を認めているかのような態度だ。
……いや、この場合はまるでではなく、実際にイルゼンの行動を認めているのだろうが。
そもそもも、ボーレスと雲海、黄金の薔薇は雇用契約の類を結んでいる訳ではなく、あくまでも雲海や黄金の薔薇の思惑……ガリンダミア帝国軍がアランに手を出してくるという行為に対して、自分たちに手を出したら大きな被害を受けるというのを、思い知らせるため一緒に行動していたのだ。
……ザッカランに存在する遺跡が目当てというのも、あったのだが。
ともあれ、ガリンダミア帝国軍が目指す最大の目的たるアラン奪われてしまった以上、それを奪還しないという選択肢は存在しない。
もし何らかの手段で雲海や黄金の薔薇の行動を束縛しようとすれば、その場合は二つの有力なクランの牙の向けられる先が自分たちになってしまう。
ボーレスは、そう確信してもいたのだろうし……実際、それは間違いという訳でもない。
……もっとも、ボーレスは雲海や黄金の薔薇に感謝こそすれ、無理矢理に行動を拘束するようなつもりは最初からなかったのだが。
あるいは、現在進行形でザッカランが攻められている最中なら、もしかしたらボーレスも無理を承知でもう少し残ってくれるように頼んだかもしれないが、幸いにして今はガリンダミア帝国軍の姿も消えている。
「では、失礼します」
「そちらも無事を祈る」
頭を下げて部屋を出ていくイルゼンに、ボーレスは短くそれだけを告げる。
そして雲海と黄金の薔薇の面々がいなくなると、会議室の中には色々な者たちの様々な声が響くのだった。
「さて、ではこれから忙しくなりますね。……一応念のために聞いておきますが、黄金の薔薇は今回僕たちと一緒に行動をするという認識でいいのでしょうか?」
「当然そうさせてもらうわ」
廊下を進みながら尋ねるイルゼンに、レオノーラは即座にそう言葉を返す。
その後ろに続く黄金の薔薇の探索者たちの中には、そんなレオノーラの言葉が面白くないと思っているような者もいた。
だが、黄金の薔薇を率いるのがレオノーラであり、自分たちが忠誠を誓っているのがレオノーラである限り、その言葉に否はない。
間違いなく、今の状況ではレオノーラがアランを助けに行くと、そう言うのは分かりきっていたのだから。
黄金の薔薇の面々にしてみれば、レオノーラとアランの仲が近すぎるというのが面白くないと思う者もいる。
だが、それとは反対にアランという人物のおかげで、レオノーラが力を抜くことを覚えたことを喜んでいる者もいた。
レオノーラがアランと話しているとき、少女らしい笑いを浮かべているのを見た者も多い。
それを嬉しく思う者もいれば、アランに対して嫉妬する者もいる。
色々と理由はあれど、今の状況は決して楽という訳ではないのは分かっている。
だが、それでも……たとえアランに嫉妬している者がいても、だからといってレオノーラが悲しんでいる顔を見たいと思う者はいない。
「なら、まずは準備をする必要があるね。僕たちの方は今回の会議の前からもう準備をしていたけど……黄金の薔薇の方はどうかな?」
「問題ないわ。私たちの方でも、もう準備はさせてるから、すぐにでも出発出来るはずよ」
イルゼンの言葉に、レオノーラは自信に満ちた笑みを浮かべる。
……それでも、レオノーラの浮かべている笑みのいくらかには強がっているのがレオノーラと親しい者には理解出来てしまう。
レオノーラ本人もそれは実感している。
だが、それでも今の状況でそのようなことを口にしても意味はない。
だあらこそ、今は自分のやるべきこと……アランを取り返すというのを最優先に考える必要があった。
「アラン君が心核を取り戻すことが出来れば、僕たちの心配もいらないんだけどね」
「そうね。でも今この状況になってもまだアランが戻ってこないということは……間違いなく心核とアランは離されているはず。それをどうにかしないと」
アランを助けるのは当然だが、そのアランの心核たるカロを取り戻すことも優先する必要がある。
アランにとって、カロはすでに単なる心核ではなく、仲間という認識なのだから。
「助けるわ。必ず。……そしてガリンダミア帝国には、アランを連れ去ったことを後悔して貰う必要があるでしょうね」
凄惨な笑みを浮かべて呟くレオノーラは、それでもなお美しかった。
最初にそれを見たザッカランの兵士たは、一瞬それを欺瞞か何かではないかと思った。
ザッカランの城壁が頑丈で、しかも空には黄金のドラゴンがいるのだ。
それを考えれば、このまままともに戦うよりも、一度撤退したと見せて自分たちを油断させようとしているのだろうと。
そのように思ったのは、一人の兵士だけではなく、他にも大勢がその様子から同様の疑問を抱く。
だが……実際にガリンダミア帝国軍は、見せかけではなく本気で撤退していったと理解したのは、数時間後。
ザッカランから見えない場所までガリンダミア帝国軍が移動したのだ。
あるいは、見えない場所で疲れを癒やし、時間を潰して黄金のドラゴンがいなくなったらまたやってくるのではと警戒もしたが、黄金のドラゴンの姿が降雨中から消えても、ガリンダミア帝国軍が戻ってくることはない。
本当に撤退したのかどうかは、もう少し様子を見る必要があるが、それでも兵士たちの中に安堵の気持ちが広がったのは間違いのない事実だ。
だが……そうして安堵しているのは、事情を知らない兵士たちだけだ。
何故ガリンダミア帝国軍が撤退したのかを知っている者……特に当事者たる雲海や黄金の薔薇の面々は、その理由を理解しているがゆえに、現在の状況を最悪だと理解出来ていた。
「イルゼンさん、どうするんだよ! このままアランを見捨てるのか!?」
雲海の面々……だけではなく、黄金の薔薇の者たちも集まっている領主の館にある会議室の一室。
その会議室の中には、探索者の面々だけではなくボーレスの姿もある。
ザッカランを占領したドットリオン王国軍のトップで、現在は実質ザッカランを治めている立場にいる者だ。
そのような人物やその側近――あるいは取り巻き――がここにいるのは、アランが誘拐されたというのがそれだけ大きいからだろう。
何よりもボーレスが危惧しているのは、アランがガリンダミア帝国軍の戦力として出て来ないかということだ。
普通に考えれば、それはとてもではないがありえない。
だが、世の中には相手の意思を奪ったり洗脳したりといったような方法は多数存在する。
そのような能力を使って、アランが敵の戦力として出て来た場合……ゼオンがどれだけの力を持っているのかを理解しているからこそ、それを危惧するのは当然だった。
ボーレスにとっては、レオノーラが変身する黄金のドラゴンにも恐怖や畏怖を覚えるが、アランの操縦するゼオンはそれ以上の恐怖を抱くべき存在だった。
黄金のドラゴンであれば、まだかろうじてその存在は理解出来る。
だが、ゼオンは……あまりにも異質なのだ。
無理矢理分類するのであれば、ゴーレムということになるのだろうが……そもそも、ゴーレムは肩や腕の上に乗ったりすることはあっても、その内部に乗るようなこととはない。
ましてや、ゼオンのように光の一撃……いわゆるビームを撃ったりもしない。
ザッカランを占領したときにも見た、その圧倒的な性能。
それを行ったゼオンが敵として現れる可能性を考えると、現在ザッカランを治めているボーレスとしても、この話し合いに参加しないという選択肢は存在しなかった。
「まさか、そんな訳がないでしょう? アランは僕たちの家族です。それを見捨てるなどという真似をするつもりは、一切ありません」
探索者の言葉にイルゼンがそう答え、それを聞いていた多くの者たちは安堵する。
……だが、中にはイルゼンの言葉の意味を理解し、厳しい表情を浮かべる者もいた。
それはつまり、雲海が……そして恐らく黄金の薔薇の面々もザッカランから出て行くということを意味していたためだ。
アランを見捨てない。つまり、助けに行く。どこに? それは当然のように、ガリンダミア帝国の領土内だった。
いや、領土内というだけではなく、そこは恐らくガリンダミア帝国の首都たる帝都だろう。
もちろん、可能なら帝都に到着するよりも前にアランを助け出すことが出来れば最善だったのだが、アランを連れ去った者も当然のようにその辺りのことは分かっている。
だからこそ、敵に追いつかれないように……可能な限り素早くアランを帝都に運び、防御が万全な場所で戦いを行うというのが、向こうにとっては最善なのだ。
それを追うとなると、雲海や黄金の薔薇の面々も全力を出す必要がある。
そして全力を出すためには、当然のようにクラン全員の力が必要となり……つまり、ザッカランの防衛戦には強力出来なくなるということを意味していた。
現在はガリンダミア帝国軍の姿はない。
撤退もザッカランにいる者たちを誘き寄せるための罠ではなく、本当に撤退しているということが確認されている。
だが……撤退したあとで、再び態勢を整えてまた攻めてくるという可能性は十分にあるのだ。
イルゼンの言葉に厳しい表情を浮かべている者は、その辺りの事情をしっかりと理解している者たちなのだろう。
「では、私たちはすぐにでも出発の用意をしますので、この辺りで失礼します。……ドットリオン王国からの援軍が出来るだけ早く来ることを祈っています」
『なっ!?』
イルゼンが言った先程の言葉の意味をようや理解した者たちの口から、驚きの声が上がる。
アランを捜すことを諦めないと言っていたことが、言葉通りの意味だったと理解したのだ。
だが、自分たちもそんなイルゼンの言葉に問題ないと頷いていた以上、ここで不満を口には出来ない。
もしここでそれを口に出来るとすれば、現在ザッカランにいるドットリオン王国軍のトップにして、実質的にザッカランを治めているボーレスだろう。
にもかかわらず、そのボーレスは何を言うようなこともない。
まるでイルゼンの行動を認めているかのような態度だ。
……いや、この場合はまるでではなく、実際にイルゼンの行動を認めているのだろうが。
そもそもも、ボーレスと雲海、黄金の薔薇は雇用契約の類を結んでいる訳ではなく、あくまでも雲海や黄金の薔薇の思惑……ガリンダミア帝国軍がアランに手を出してくるという行為に対して、自分たちに手を出したら大きな被害を受けるというのを、思い知らせるため一緒に行動していたのだ。
……ザッカランに存在する遺跡が目当てというのも、あったのだが。
ともあれ、ガリンダミア帝国軍が目指す最大の目的たるアラン奪われてしまった以上、それを奪還しないという選択肢は存在しない。
もし何らかの手段で雲海や黄金の薔薇の行動を束縛しようとすれば、その場合は二つの有力なクランの牙の向けられる先が自分たちになってしまう。
ボーレスは、そう確信してもいたのだろうし……実際、それは間違いという訳でもない。
……もっとも、ボーレスは雲海や黄金の薔薇に感謝こそすれ、無理矢理に行動を拘束するようなつもりは最初からなかったのだが。
あるいは、現在進行形でザッカランが攻められている最中なら、もしかしたらボーレスも無理を承知でもう少し残ってくれるように頼んだかもしれないが、幸いにして今はガリンダミア帝国軍の姿も消えている。
「では、失礼します」
「そちらも無事を祈る」
頭を下げて部屋を出ていくイルゼンに、ボーレスは短くそれだけを告げる。
そして雲海と黄金の薔薇の面々がいなくなると、会議室の中には色々な者たちの様々な声が響くのだった。
「さて、ではこれから忙しくなりますね。……一応念のために聞いておきますが、黄金の薔薇は今回僕たちと一緒に行動をするという認識でいいのでしょうか?」
「当然そうさせてもらうわ」
廊下を進みながら尋ねるイルゼンに、レオノーラは即座にそう言葉を返す。
その後ろに続く黄金の薔薇の探索者たちの中には、そんなレオノーラの言葉が面白くないと思っているような者もいた。
だが、黄金の薔薇を率いるのがレオノーラであり、自分たちが忠誠を誓っているのがレオノーラである限り、その言葉に否はない。
間違いなく、今の状況ではレオノーラがアランを助けに行くと、そう言うのは分かりきっていたのだから。
黄金の薔薇の面々にしてみれば、レオノーラとアランの仲が近すぎるというのが面白くないと思う者もいる。
だが、それとは反対にアランという人物のおかげで、レオノーラが力を抜くことを覚えたことを喜んでいる者もいた。
レオノーラがアランと話しているとき、少女らしい笑いを浮かべているのを見た者も多い。
それを嬉しく思う者もいれば、アランに対して嫉妬する者もいる。
色々と理由はあれど、今の状況は決して楽という訳ではないのは分かっている。
だが、それでも……たとえアランに嫉妬している者がいても、だからといってレオノーラが悲しんでいる顔を見たいと思う者はいない。
「なら、まずは準備をする必要があるね。僕たちの方は今回の会議の前からもう準備をしていたけど……黄金の薔薇の方はどうかな?」
「問題ないわ。私たちの方でも、もう準備はさせてるから、すぐにでも出発出来るはずよ」
イルゼンの言葉に、レオノーラは自信に満ちた笑みを浮かべる。
……それでも、レオノーラの浮かべている笑みのいくらかには強がっているのがレオノーラと親しい者には理解出来てしまう。
レオノーラ本人もそれは実感している。
だが、それでも今の状況でそのようなことを口にしても意味はない。
だあらこそ、今は自分のやるべきこと……アランを取り返すというのを最優先に考える必要があった。
「アラン君が心核を取り戻すことが出来れば、僕たちの心配もいらないんだけどね」
「そうね。でも今この状況になってもまだアランが戻ってこないということは……間違いなく心核とアランは離されているはず。それをどうにかしないと」
アランを助けるのは当然だが、そのアランの心核たるカロを取り戻すことも優先する必要がある。
アランにとって、カロはすでに単なる心核ではなく、仲間という認識なのだから。
「助けるわ。必ず。……そしてガリンダミア帝国には、アランを連れ去ったことを後悔して貰う必要があるでしょうね」
凄惨な笑みを浮かべて呟くレオノーラは、それでもなお美しかった。
0
お気に入りに追加
163
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる