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ザッカラン防衛戦
189話
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バトルアックスとういうのは戦斧の一種で、戦闘用に作られた斧だ。
当然その威力はリアが持つ長剣よりも上なのは間違いない。
だが……同時に、狭い場所では振り回しにくいという欠点もある。
……もちろん、振り回しにくいというだけであれば、リアが持つ長剣も部屋の中で振り回すのには決して向いてはいないが……それでも、応接室という普通よりも大きな部屋でなら問題なく振るうことが出来る。
「ハーフエルフだと知った瞬間に攻撃してくるなんて……もしかして、亜人はどうなってもいいと思ってる口なのかしら?」
バトルアックスの一撃を回避しながら、リアが告げる。
男の方はいそんなリアの言葉に意外そうな表情を浮かべて一旦バトルアックスの動きを止める。
「まさか。ただ、お前さんが強いってのははっきり分かったから、こっちも手加減をする必要がないと、そう思っただけだよ。そもそも、この屋敷に一人で乗り込んでくるような奴だ。考えてみれば、そんな奴を相手に手加減なんて考える方がおかしかったんだろうけどな」
「あら、それはちょっと言いすぎじゃないかしら?」
お互いに会話をしながらも、そこにはどう相手の隙を突くのかといったような思いしかない。
特に男にしてみれば、目の前に立つリアの技量は予想以上のものだった。
それこそ、このような部屋の中では自分が不利だと理解出来るくらいは。
……とはいえ、だからといって大人しく目の前の女に負けてやるといったようなつもりはない。
戦うのである以上、絶対に勝つというのが男の信念であり……同時に、この屋敷の主人を逃がす間の時間稼ぎも必要だった。
(ったく、借りさえなけりゃ、わざわざこんな真似をする必要もないんだけどな。……ただ、まぁ……今はこの女との戦いを楽しむとするか)
握っているバトルアックスの柄に力を込めて、いつ何があっても対処出来るように女を睨む。
目の前の女は力こそ自分には及ばないが、技術は自分が若干劣り、速度はかなり負けている。
そんな相手だけに、今のところ戦局は互角。
あとは、どうやって相手に大きなミスをさせるか。
そう認識し……男は、先程の会話を思い出す。
「お前の息子、今どうなってるか分かるか?」
男の口から出た言葉に、リアはピクリと反応する。
それを見た男は、この話題なら相手を動揺させることが出来ると判断し、言葉を続ける。
「悲惨だぜ? かなり酷い拷問をされていて、今頃は指の一本や二本……いや、手足の一本や二本、なくなっていてもおかしくはない」
その言葉はハッタリでしかない。
アランを誘拐してきたということは聞いているが、この屋敷にいる訳ではないし、具体的にどのような処遇を受けているのか知っている訳でもない。
ただ単純に、リアの動揺を誘えればそれでよかったのだ。
そう思っての言葉だったが……これは、完全に裏目に出た。
次の瞬間、リアは今まで以上の速度で一気に男に襲いかかったのだ。
「はああああぁぁぁっ!」
鋭い呼気と共に振るわれる長剣。
力では男が勝っているので、バトルアックスを使ってその一撃を防いではいたのだが……次第にそれも難しくなってくる。
長剣が振るわれるに従って、その速度だけではなく威力までもが上がっていったのだ。
バトルアックスを持っている男は、その攻撃を何とか防ぐものの、やがて一筋、二筋と身体に斬り傷がつけられていく。
筋肉がみっしりとつまっている身体を思えば、その程度の斬り傷は大した意味がない。
だが、それはあくまでも傷としては意味がないのであって、精神的に押されているという意味では十分に効果があるのも間違いなかった。
「くっ! やるな!」
「黙りなさい。こっちは時間がないの。とっとと死にさなさい」
普段とは全く違う、冷たい口調で冷酷に告げるリア。
その上、とっとと死ねと口にしてはいるが、その行動には急いで勝負を決めるといったようなことはなく、冷静に相手を攻撃していくだけだ。
次々と放たれる斬撃に、男の身体の傷は次第に増していく。
そのようなやり取りに、次第に苛立ちを覚えたのだろう。
男は不意に攻撃を止め、リアから距離を取るようにして応接室の中を走り、近くにあった窓を突き破って部屋の外に出る。
この世界の窓ガラスというのは、かなりの高級品なのだが……男がそれを気にした様子はない。
もちろん、リアもこのアランの拉致に協力したこの屋敷に遠慮するつもりはなく、別の窓を突き破って男を追う。
……ちなみに、男の破った窓を追わなかったのは、単純に男の通った場所を追えば、何らかの罠を仕掛けている可能性があると考えたためだ。
男が場所を変えようとしたのは、この応接室の中ではバトルアックスを思う存分振るえず、リアに一方的にやられていたからだと考えれば、男が窓の外で何らかの罠や不意打ちをしようとしても、おかしくはない。
結局窓を破ったリアには何の罠も不意打ちもなく、男は中庭の中央で待っていたが。
「ここなら、思う存分戦える」
そう言い、バトルアックスを振るう男。
そんな男を前にしても、リアは特に緊張した様子もなく長剣を手に前に出る。
その動きには、相手を恐れるといった要素は全くない。
……実際には、男はリアにとっても警戒すべき相手なのは間違いない。
普段のリアなら、もっと慎重に戦っていただろう。
だが……男にとって最大の失策は、アランの名前を出したことだ。
怒れる女獅子と化したリアは、本来持つ以上の実力を発揮し、男を圧倒する。
「うおりゃぁっ!」
力一杯振るわれたバトルアックスだったが、リアはその一撃をあっさりと回避し……男の懐に跳びこむ。
その踏み込みの鋭さは、男にとっても予想外だったのか、動きが一瞬遅れ……それでも、何とか直撃を防ぐべく、片手を自分とリアの間に入れることが出来たのは、男の技量の鋭さを示していた。
咄嗟の判断のおかげで、男が命を奪われることはなかったが、その代償として利き腕の右腕を肘から切断される。
どさり、と。そのような音を立てて地面に腕が落ちた音が、不思議と周囲に響く。
「ぐ……ぐぎゃ……」
男の口からそんな悲鳴が上がる中、リアは男が何とか左手で持っていたバトルアックスを長剣で打ち据え、それも地面に落とす。
「さて、じゃあ、貴方に時間をかけている暇はないのよ。そろそろ終わらせて貰うわね。それとも、アランのいる場所を知っているのかしら? それなら命を取らずにいてもいいけど」
「……ここにはいない。聞いた話だと、クレナ通りにある無人の屋敷に匿われているらしい」
「へぇ」
まさか、自分がピンチになった瞬間にこうもあっさりと口を割るとは思わなかったリアは、その情報が本物なのかどうかを考える。
だが、この状況で嘘を言ってもそれが意味がない。
そう理解出来るだけに、恐らくは本物だろうと予想出来た。
この状況で嘘を言えば、それこそ自分に命を奪われるだけだと、そう理解しているのだから。
「そう。なら、取りあえずその言葉は信じてあげるわ。それで次の質問だけど……」
「待ってくれ。せめて血止めをさせて欲しい」
切断された場所から血が大量に流れており、中庭に鉄錆臭を広げている。
その出血量はかなり多く、それこそこのままにしておけばそのうち出血多量で死んでしまうのは間違いない。
それを思えば、男が顔中に汗を浮かべつつも、そう言うのは納得出来た。
リアも、目の前の男から情報を聞き出す前に死なれてヘア困るので、その言葉には頷く。
「好きにしなさい。ただし、次に妙な真似をしたらどうなるか……分かるわね?」
「そんなことはしねえよ。言っちゃ悪いが、俺の役目はしっかりとこなした。ここまで時間を稼いだ以上、報酬分の仕事は終わっているからな」
そう告げる男の言葉は、真実のようにリアには思えた。
こうして短いながらも言葉を交わしているので、男の性格は何となく理解出来たのだ。
その認識から考えた場合、男は決して嘘を言っているようには思えなかった。
……もちろん、実際にはどう動くのか分からないが、今の戦いでリアを相手にしても勝てない……どころか、自分が死ぬだけだと理解した以上、男の性格から再度戦いを挑んでくるとは思えない。
実際には、リアと男の技量はそこまで隔絶している訳ではなく、アランの件を出されたリアが実力以上の力を発揮した、というのが正しいのだが。
ともあれ、リアの許しを貰った男は懐からポーションを取り出して腕にかける。
切断された場所がくっついたりはしないが、それでも必要以上に血が流れるといったような事はなくなった。
それを確認したリアは、冷たい表情で口を開く。
「さて、血止めも終わったでしょう。なら、次の質問よ。まずは確認だけど、今回の一件を仕組んだのはガリンダミア帝国軍。それは間違いないわね?」
「ああ。少なくても俺はそう聞いている」
これはリアが口にしたように、あくまでも確認のための質問だ。
そもそも、今の状況でアランを誘拐するなどといった真似をするのが、ガリンダミア帝国軍にいないのは間違いないのだから。
……もっとも、雲海は腕利きのクランとして知られており、今までに何度もトラブルに巻き込まれてきた。
そのトラブルの関係者が偶然このときに手を出してきた……という可能性も、決して否定は出来ないので、この質問は大事だったのだが。
「それで、問題なのは……どうやってアランを連れ去ったのかしら? 私が聞いた話だと、瞬時に消えたといった話だったけど。……まさか、転移魔法の使い手がいた、なんてことはないでしょうね?」
転移魔法は、失われた魔法として知られている。
古代魔法文明時代には、使える者がいたという話だったが、現在使えるものは……少なくても公には確認されれていない。
あえて似たようなものとなると、古代魔法文明の遺跡に存在する転移の罠といったところか。
アランとレオノーラも、その罠によって遺跡の奥深くに転移し、そこで心核を見つけたのだ。
「まさか。ただ、どんな風に連れ去ったのかってのは、俺も分からねえよ。そもそも、俺はただの雇われだ。そうである以上、そこまで詳しい事情を知る訳がないだろう?」
その言葉にはリアも納得し……その後、細々とした話を聞き出し、その代価として男を見逃すのだった。
当然その威力はリアが持つ長剣よりも上なのは間違いない。
だが……同時に、狭い場所では振り回しにくいという欠点もある。
……もちろん、振り回しにくいというだけであれば、リアが持つ長剣も部屋の中で振り回すのには決して向いてはいないが……それでも、応接室という普通よりも大きな部屋でなら問題なく振るうことが出来る。
「ハーフエルフだと知った瞬間に攻撃してくるなんて……もしかして、亜人はどうなってもいいと思ってる口なのかしら?」
バトルアックスの一撃を回避しながら、リアが告げる。
男の方はいそんなリアの言葉に意外そうな表情を浮かべて一旦バトルアックスの動きを止める。
「まさか。ただ、お前さんが強いってのははっきり分かったから、こっちも手加減をする必要がないと、そう思っただけだよ。そもそも、この屋敷に一人で乗り込んでくるような奴だ。考えてみれば、そんな奴を相手に手加減なんて考える方がおかしかったんだろうけどな」
「あら、それはちょっと言いすぎじゃないかしら?」
お互いに会話をしながらも、そこにはどう相手の隙を突くのかといったような思いしかない。
特に男にしてみれば、目の前に立つリアの技量は予想以上のものだった。
それこそ、このような部屋の中では自分が不利だと理解出来るくらいは。
……とはいえ、だからといって大人しく目の前の女に負けてやるといったようなつもりはない。
戦うのである以上、絶対に勝つというのが男の信念であり……同時に、この屋敷の主人を逃がす間の時間稼ぎも必要だった。
(ったく、借りさえなけりゃ、わざわざこんな真似をする必要もないんだけどな。……ただ、まぁ……今はこの女との戦いを楽しむとするか)
握っているバトルアックスの柄に力を込めて、いつ何があっても対処出来るように女を睨む。
目の前の女は力こそ自分には及ばないが、技術は自分が若干劣り、速度はかなり負けている。
そんな相手だけに、今のところ戦局は互角。
あとは、どうやって相手に大きなミスをさせるか。
そう認識し……男は、先程の会話を思い出す。
「お前の息子、今どうなってるか分かるか?」
男の口から出た言葉に、リアはピクリと反応する。
それを見た男は、この話題なら相手を動揺させることが出来ると判断し、言葉を続ける。
「悲惨だぜ? かなり酷い拷問をされていて、今頃は指の一本や二本……いや、手足の一本や二本、なくなっていてもおかしくはない」
その言葉はハッタリでしかない。
アランを誘拐してきたということは聞いているが、この屋敷にいる訳ではないし、具体的にどのような処遇を受けているのか知っている訳でもない。
ただ単純に、リアの動揺を誘えればそれでよかったのだ。
そう思っての言葉だったが……これは、完全に裏目に出た。
次の瞬間、リアは今まで以上の速度で一気に男に襲いかかったのだ。
「はああああぁぁぁっ!」
鋭い呼気と共に振るわれる長剣。
力では男が勝っているので、バトルアックスを使ってその一撃を防いではいたのだが……次第にそれも難しくなってくる。
長剣が振るわれるに従って、その速度だけではなく威力までもが上がっていったのだ。
バトルアックスを持っている男は、その攻撃を何とか防ぐものの、やがて一筋、二筋と身体に斬り傷がつけられていく。
筋肉がみっしりとつまっている身体を思えば、その程度の斬り傷は大した意味がない。
だが、それはあくまでも傷としては意味がないのであって、精神的に押されているという意味では十分に効果があるのも間違いなかった。
「くっ! やるな!」
「黙りなさい。こっちは時間がないの。とっとと死にさなさい」
普段とは全く違う、冷たい口調で冷酷に告げるリア。
その上、とっとと死ねと口にしてはいるが、その行動には急いで勝負を決めるといったようなことはなく、冷静に相手を攻撃していくだけだ。
次々と放たれる斬撃に、男の身体の傷は次第に増していく。
そのようなやり取りに、次第に苛立ちを覚えたのだろう。
男は不意に攻撃を止め、リアから距離を取るようにして応接室の中を走り、近くにあった窓を突き破って部屋の外に出る。
この世界の窓ガラスというのは、かなりの高級品なのだが……男がそれを気にした様子はない。
もちろん、リアもこのアランの拉致に協力したこの屋敷に遠慮するつもりはなく、別の窓を突き破って男を追う。
……ちなみに、男の破った窓を追わなかったのは、単純に男の通った場所を追えば、何らかの罠を仕掛けている可能性があると考えたためだ。
男が場所を変えようとしたのは、この応接室の中ではバトルアックスを思う存分振るえず、リアに一方的にやられていたからだと考えれば、男が窓の外で何らかの罠や不意打ちをしようとしても、おかしくはない。
結局窓を破ったリアには何の罠も不意打ちもなく、男は中庭の中央で待っていたが。
「ここなら、思う存分戦える」
そう言い、バトルアックスを振るう男。
そんな男を前にしても、リアは特に緊張した様子もなく長剣を手に前に出る。
その動きには、相手を恐れるといった要素は全くない。
……実際には、男はリアにとっても警戒すべき相手なのは間違いない。
普段のリアなら、もっと慎重に戦っていただろう。
だが……男にとって最大の失策は、アランの名前を出したことだ。
怒れる女獅子と化したリアは、本来持つ以上の実力を発揮し、男を圧倒する。
「うおりゃぁっ!」
力一杯振るわれたバトルアックスだったが、リアはその一撃をあっさりと回避し……男の懐に跳びこむ。
その踏み込みの鋭さは、男にとっても予想外だったのか、動きが一瞬遅れ……それでも、何とか直撃を防ぐべく、片手を自分とリアの間に入れることが出来たのは、男の技量の鋭さを示していた。
咄嗟の判断のおかげで、男が命を奪われることはなかったが、その代償として利き腕の右腕を肘から切断される。
どさり、と。そのような音を立てて地面に腕が落ちた音が、不思議と周囲に響く。
「ぐ……ぐぎゃ……」
男の口からそんな悲鳴が上がる中、リアは男が何とか左手で持っていたバトルアックスを長剣で打ち据え、それも地面に落とす。
「さて、じゃあ、貴方に時間をかけている暇はないのよ。そろそろ終わらせて貰うわね。それとも、アランのいる場所を知っているのかしら? それなら命を取らずにいてもいいけど」
「……ここにはいない。聞いた話だと、クレナ通りにある無人の屋敷に匿われているらしい」
「へぇ」
まさか、自分がピンチになった瞬間にこうもあっさりと口を割るとは思わなかったリアは、その情報が本物なのかどうかを考える。
だが、この状況で嘘を言ってもそれが意味がない。
そう理解出来るだけに、恐らくは本物だろうと予想出来た。
この状況で嘘を言えば、それこそ自分に命を奪われるだけだと、そう理解しているのだから。
「そう。なら、取りあえずその言葉は信じてあげるわ。それで次の質問だけど……」
「待ってくれ。せめて血止めをさせて欲しい」
切断された場所から血が大量に流れており、中庭に鉄錆臭を広げている。
その出血量はかなり多く、それこそこのままにしておけばそのうち出血多量で死んでしまうのは間違いない。
それを思えば、男が顔中に汗を浮かべつつも、そう言うのは納得出来た。
リアも、目の前の男から情報を聞き出す前に死なれてヘア困るので、その言葉には頷く。
「好きにしなさい。ただし、次に妙な真似をしたらどうなるか……分かるわね?」
「そんなことはしねえよ。言っちゃ悪いが、俺の役目はしっかりとこなした。ここまで時間を稼いだ以上、報酬分の仕事は終わっているからな」
そう告げる男の言葉は、真実のようにリアには思えた。
こうして短いながらも言葉を交わしているので、男の性格は何となく理解出来たのだ。
その認識から考えた場合、男は決して嘘を言っているようには思えなかった。
……もちろん、実際にはどう動くのか分からないが、今の戦いでリアを相手にしても勝てない……どころか、自分が死ぬだけだと理解した以上、男の性格から再度戦いを挑んでくるとは思えない。
実際には、リアと男の技量はそこまで隔絶している訳ではなく、アランの件を出されたリアが実力以上の力を発揮した、というのが正しいのだが。
ともあれ、リアの許しを貰った男は懐からポーションを取り出して腕にかける。
切断された場所がくっついたりはしないが、それでも必要以上に血が流れるといったような事はなくなった。
それを確認したリアは、冷たい表情で口を開く。
「さて、血止めも終わったでしょう。なら、次の質問よ。まずは確認だけど、今回の一件を仕組んだのはガリンダミア帝国軍。それは間違いないわね?」
「ああ。少なくても俺はそう聞いている」
これはリアが口にしたように、あくまでも確認のための質問だ。
そもそも、今の状況でアランを誘拐するなどといった真似をするのが、ガリンダミア帝国軍にいないのは間違いないのだから。
……もっとも、雲海は腕利きのクランとして知られており、今までに何度もトラブルに巻き込まれてきた。
そのトラブルの関係者が偶然このときに手を出してきた……という可能性も、決して否定は出来ないので、この質問は大事だったのだが。
「それで、問題なのは……どうやってアランを連れ去ったのかしら? 私が聞いた話だと、瞬時に消えたといった話だったけど。……まさか、転移魔法の使い手がいた、なんてことはないでしょうね?」
転移魔法は、失われた魔法として知られている。
古代魔法文明時代には、使える者がいたという話だったが、現在使えるものは……少なくても公には確認されれていない。
あえて似たようなものとなると、古代魔法文明の遺跡に存在する転移の罠といったところか。
アランとレオノーラも、その罠によって遺跡の奥深くに転移し、そこで心核を見つけたのだ。
「まさか。ただ、どんな風に連れ去ったのかってのは、俺も分からねえよ。そもそも、俺はただの雇われだ。そうである以上、そこまで詳しい事情を知る訳がないだろう?」
その言葉にはリアも納得し……その後、細々とした話を聞き出し、その代価として男を見逃すのだった。
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