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ザッカラン防衛戦
183話
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時は少し戻る。
城壁の上で兵士と共に去ったアランを見送ったレオノーラは、近付いてくるガリンダミア帝国軍を見ながら、一体どう対処するべきかと考えていた。
アランのゼオンばかりが注目されているが、自分が変身する黄金のドラゴンも、純粋な戦闘力という点ではゼオンに決して負けていないという自噴があった。
それを見せつけるためにも、いっそ自分が空中からレーザーブレスでも放つのはどうかと、そんなことを考えていると……
「レオノーラさん、アランを見ませんでしたか? イルゼンさんが呼んでるんですけど」
不意にそんな声をかけられる。
声のした方に視線を向けたレオノーラが見たのは、見覚えのある一人の男。
雲海の探索者の一人で、レオノーラも今まで何度か会話をしたことのある相手だった。
そんな男の言葉に、レオノーラは疑問を持つ。
いや、ただアランを見たのかと言われただけなら、そこまで気にするようなことはなかっただろう。
だが今回は違う。
その男は、アランがどこにいるのかと、そう聞いて来たのだ。
「あら? おかしいわね。ついさっき、兵士が来てイルゼンが呼んでいるからって一緒に行ったわよ? 途中で会わなかったの?」
「……え?」
それは男にとってもよほど意外な言葉だったのか、意表を突かれたかのような表情を浮かべる。
「一緒に頼まれた兵士が先にここに到着したんじゃない?」
基本的にこの世界に通信機の類は存在しない。
正確にはマジックアイテムの類でそのような機能を持った者は存在しているが、古代魔法文明の遺跡から発掘されるアーティファクトだけで、現在の技術で作ることは出来ないのだ。
ましてや、古代魔法文明の遺跡に存在するだけに、基本的には壊れている物が大半で、使えるものは本当に貴重だ。
それだけに、雲海も黄金の薔薇も、その手の物は持っていない。
だからこそ、アランを連れてくるようにとイルゼンが言っても、そのアランがどこにいるのか分からなければ、すぐに見つけることは出来ないのだ。
そのため、アランを見つけるように言ったイルゼンが、目の前の男の他に別の相手……先程アランを呼びに来た兵士に同じようなことを頼んでいても不思議ではない。
そう思っていたレオノーラだったが、男は首を横に振る。
「いえ、そんなことはないですよ。あまり人目につきたくない用事で呼んだらしく、アランを呼ぶのが頼まれたのは俺だけでしたし。もし他にも人を使うのなら、兵士じゃなくて雲海の探索者……どうしても人手が足りなくても、兵士じゃなくて黄金の薔薇の探索者に頼んでいたと思いますし」
「それは……」
男の説明に、話を聞いていたレオノーラの表情が次第に真剣な色を帯びていく。
ただアランを呼びに来ただけなら、それこそ兵士を使ってもいい。
だが目の前の男が言うように、もしどうしても秘密裏にアランを呼びたいのだとすれば……それに兵士を使うのは、明らかにおかしい。
「じゃあ、あの兵士は?」
「俺は見てないので、何とも言えませんが……その、そもそも本当にそれは兵士だったんですか?」
「見た限りでは、ザッカランの兵士たちと同じ装備をしてたけど……」
そう告げるレオノーラだったが、それだけでその兵士が本当にザッカランの者なのかどうかというのは、まず分からない。
それこそ、ザッカランの兵士から装備を奪えば、それですぐに変装出来るのだから。
「少し、不味いですね。……ちょっと探してみます。もしかしたら、最悪の結果が起きてるかもしれないので。いや、その前にイルゼンさんに報告する方が先ですね」
そう告げ、男は城壁の上から走り去る。
レオノーラもまた、少し考えたあとですぐにその場から走り出す。
まず向かうのは、黄金の薔薇の面々が泊まっている宿だ。
雲海の泊まっている宿とは違うが、場所としては近くにある。
(いっそ、さっきこっちにも伝えて貰えるように言っておけばよかったわね)
普段のレオノーラなら、そんな簡単なことを忘れるようなことはしない。
だが、アランがどうにかなったのかもしれないと聞き、一瞬頭の中が真っ白になったのは事実だ。
その結果として、二度手間となる。
もっとも、先程の男もイルゼンに事情を説明するのに多少時間がかかるので、それを考えれば結局レオノーラが直接黄金の薔薇の面々に説明をした方がいいと、そう思い直す。
実際、黄金の薔薇の中には未だに雲海と一緒に行動するのに納得していない者も少数だがいる。
そう考えると、やはりここはレオノーラが直接説明をするというのが最善の行動だったのだろうと。
自分でも少し急ぎすぎか? とは、思わないでもない。
これで、もし普通にアランだけでどこかに行って別れたのであれば、そこまで気にする必要もなかっただろう。
だが……この場合の問題は、やはりザッカランの兵士……正確にはその格好をした者がアランを呼びに来て、連れて行ったということだろう。
それが、気になる。
凄腕の探索者としての勘、もしくは女の勘、はたまたカロと一緒に安置されていた心核を持っているからこその勘。
様々な理由からの勘によって、レオノーラは恐らくアランが何らかのトラブルに巻き込まれているだろうと、そう判断したのだ。
「アランを探しなさい。恐らく、ザッカランの兵士の装備を身につけている者と一緒にいるはずよ。その兵士は恐らくザッカランに入り込んだガリンダミア帝国軍の者だと思うから、注意して」
宿にいた黄金の薔薇の面々に、素早くそう指示する。
もし先程の雲海の探索者が来たのであれば、もっと詳しい事情を説明する必要があっただろう。
だが、黄金の薔薇を率いるレオノーラであれば、その言葉だけで十分だった。
黄金の薔薇の面々がすぐに動き出したのを見ながら、レオノーラもまたその場から立ち去る。
本来なら、レオノーラはこの場に残って情報を集めるといったようなことをした方がいいのだろうが、今回に限ってはレオノーラが自分で直接どうにかしたかった。
自分の目の前にいたアランを、むざむざと連れて行かれというのもあるし、それ以外の感情もあった。
だが、レオノーラは自分の豊かな双丘の中から溢れ出るその感情に気が付かないままに、ザッカランの中を走る。
……ザッカランは、ドットリオン王国のと国境付近に作られた城塞都市だ。
当然その規模は大きく、人の数も多い。
ガリンダミア帝国軍が動いたという情報を聞いて結構な数が避難したが、それでもザッカランに残っている者の数は多い。
また、人も多いが、城塞都市ということでその規模も大きく、かなり街中はかなり複雑に入り組んでいる場所もあった。
そんな中から、一体どうやってアランを見つけ出すのか。
そう言われれば、レオノーラも明確に答えるようなことは出来ない。
出来ないのだが……それでも、レオノーラは自分が動かないという選択をすることは出来なかった。
ガリンダミア帝国軍が姿を見せたということで、戸惑っている者もいる中をレオノーラは走る。
当然のように、そんなレオノーラを見て声をかける者もいたが、今の状況ではそんな相手に構っていられるような余裕はない。
何人もから話しかけられるが、レオノーラはそれに対しては適当に返事をしつつ、アランの姿を満たなかったと尋ねる。
だが、レオノーラのような華のある派手な美人とは違い、アランはそこまで目立たない。
顔立ちが整っているかどうかで考えれば、間違いなく整っている方ではあるが。それでも絶世の美形とまではいかず、せいぜいが平均よりも上といった程度でしかない。
街中を歩いていてレオノーラを見れば、その美貌から強く印象には残るだろう。
だが、アランの場合は顔立ちが整ってはいるが、少し探せば街中に同じくらいの容姿の持ち主はいくらでも……とまでは言わないが、それでもそこまで珍しくはない。
だからこそ、レオノーラがアランについて聞いても、知ってる者は多くはなかった。
これはアランが無名という訳ではない。
ゼオンの存在を知らない者などほとんどいないのだから。
だが……それはあくまでもゼオンという人型機動兵器を知っている者がいるということであって、アランの顔を知っている者はどうして少なくなってしまう。
それは、アランの特徴を考えるとどこにいるのかといったことを聞くにしても、非常に難しくなる。
これがレオノーラなら、多くの者が見たかどうかというのはすぐに分かるのだが。
そうである以上、今の状況ではどうしようもないのは間違いのないことだった。
しかし、それでも今の状況でアランの存在を諦める訳にいかないレオノーラは、屋台をやっている者を中心に、次々と声をかけていく。
……ガリンダミア帝国軍の姿が見えている今このとき、それでも屋台をやっている者たちがいるというのはレオノーラには驚きであった。
だが、今の状況を考えれば、それはレオノーラにとって助かることでしかない。
「アランを知らない?」
「アラン? それって雲海の探索者だよな? あのゴーレムを操ってる。……顔は見たことないから、分からないな」
やはり、レオノーラが尋ねるもアランの顔を知っている者はいない。
何軒もの屋台に聞いていったのだが……そんな中、やがて十軒目くらいの屋台に尋ねたとき、ようやくアランを見たといった者を見つけることが出来た。
「アランってあれだよな? 以前お前さんと一緒にいた」
レオノーラが話しかけた店主は、以前アランと一緒に出かけたときに見ていたらしい。
アランと一緒にいてよかった。
そう思いながら、レオノーラは頷く。
「ええ、そうよ。そういう風に言うってことは、見たのよね?」
「ああ。兵士の人と向こうの方に行ったよ」
そう言い、店主が示した方を見てレオノーラの美しく整った眉が顰められる。
何故なら、店主が示したのはスラム街の方だったのだから。
そんな店主に短く礼を言い、情報量として少し多めに支払ったあとで、レオノーラは店主から教えて貰った方に走り……そして、見つけたのは、猿轡を嵌められ、手足を縛れて身動きが出来なくなっているアランの姿だった。
城壁の上で兵士と共に去ったアランを見送ったレオノーラは、近付いてくるガリンダミア帝国軍を見ながら、一体どう対処するべきかと考えていた。
アランのゼオンばかりが注目されているが、自分が変身する黄金のドラゴンも、純粋な戦闘力という点ではゼオンに決して負けていないという自噴があった。
それを見せつけるためにも、いっそ自分が空中からレーザーブレスでも放つのはどうかと、そんなことを考えていると……
「レオノーラさん、アランを見ませんでしたか? イルゼンさんが呼んでるんですけど」
不意にそんな声をかけられる。
声のした方に視線を向けたレオノーラが見たのは、見覚えのある一人の男。
雲海の探索者の一人で、レオノーラも今まで何度か会話をしたことのある相手だった。
そんな男の言葉に、レオノーラは疑問を持つ。
いや、ただアランを見たのかと言われただけなら、そこまで気にするようなことはなかっただろう。
だが今回は違う。
その男は、アランがどこにいるのかと、そう聞いて来たのだ。
「あら? おかしいわね。ついさっき、兵士が来てイルゼンが呼んでいるからって一緒に行ったわよ? 途中で会わなかったの?」
「……え?」
それは男にとってもよほど意外な言葉だったのか、意表を突かれたかのような表情を浮かべる。
「一緒に頼まれた兵士が先にここに到着したんじゃない?」
基本的にこの世界に通信機の類は存在しない。
正確にはマジックアイテムの類でそのような機能を持った者は存在しているが、古代魔法文明の遺跡から発掘されるアーティファクトだけで、現在の技術で作ることは出来ないのだ。
ましてや、古代魔法文明の遺跡に存在するだけに、基本的には壊れている物が大半で、使えるものは本当に貴重だ。
それだけに、雲海も黄金の薔薇も、その手の物は持っていない。
だからこそ、アランを連れてくるようにとイルゼンが言っても、そのアランがどこにいるのか分からなければ、すぐに見つけることは出来ないのだ。
そのため、アランを見つけるように言ったイルゼンが、目の前の男の他に別の相手……先程アランを呼びに来た兵士に同じようなことを頼んでいても不思議ではない。
そう思っていたレオノーラだったが、男は首を横に振る。
「いえ、そんなことはないですよ。あまり人目につきたくない用事で呼んだらしく、アランを呼ぶのが頼まれたのは俺だけでしたし。もし他にも人を使うのなら、兵士じゃなくて雲海の探索者……どうしても人手が足りなくても、兵士じゃなくて黄金の薔薇の探索者に頼んでいたと思いますし」
「それは……」
男の説明に、話を聞いていたレオノーラの表情が次第に真剣な色を帯びていく。
ただアランを呼びに来ただけなら、それこそ兵士を使ってもいい。
だが目の前の男が言うように、もしどうしても秘密裏にアランを呼びたいのだとすれば……それに兵士を使うのは、明らかにおかしい。
「じゃあ、あの兵士は?」
「俺は見てないので、何とも言えませんが……その、そもそも本当にそれは兵士だったんですか?」
「見た限りでは、ザッカランの兵士たちと同じ装備をしてたけど……」
そう告げるレオノーラだったが、それだけでその兵士が本当にザッカランの者なのかどうかというのは、まず分からない。
それこそ、ザッカランの兵士から装備を奪えば、それですぐに変装出来るのだから。
「少し、不味いですね。……ちょっと探してみます。もしかしたら、最悪の結果が起きてるかもしれないので。いや、その前にイルゼンさんに報告する方が先ですね」
そう告げ、男は城壁の上から走り去る。
レオノーラもまた、少し考えたあとですぐにその場から走り出す。
まず向かうのは、黄金の薔薇の面々が泊まっている宿だ。
雲海の泊まっている宿とは違うが、場所としては近くにある。
(いっそ、さっきこっちにも伝えて貰えるように言っておけばよかったわね)
普段のレオノーラなら、そんな簡単なことを忘れるようなことはしない。
だが、アランがどうにかなったのかもしれないと聞き、一瞬頭の中が真っ白になったのは事実だ。
その結果として、二度手間となる。
もっとも、先程の男もイルゼンに事情を説明するのに多少時間がかかるので、それを考えれば結局レオノーラが直接黄金の薔薇の面々に説明をした方がいいと、そう思い直す。
実際、黄金の薔薇の中には未だに雲海と一緒に行動するのに納得していない者も少数だがいる。
そう考えると、やはりここはレオノーラが直接説明をするというのが最善の行動だったのだろうと。
自分でも少し急ぎすぎか? とは、思わないでもない。
これで、もし普通にアランだけでどこかに行って別れたのであれば、そこまで気にする必要もなかっただろう。
だが……この場合の問題は、やはりザッカランの兵士……正確にはその格好をした者がアランを呼びに来て、連れて行ったということだろう。
それが、気になる。
凄腕の探索者としての勘、もしくは女の勘、はたまたカロと一緒に安置されていた心核を持っているからこその勘。
様々な理由からの勘によって、レオノーラは恐らくアランが何らかのトラブルに巻き込まれているだろうと、そう判断したのだ。
「アランを探しなさい。恐らく、ザッカランの兵士の装備を身につけている者と一緒にいるはずよ。その兵士は恐らくザッカランに入り込んだガリンダミア帝国軍の者だと思うから、注意して」
宿にいた黄金の薔薇の面々に、素早くそう指示する。
もし先程の雲海の探索者が来たのであれば、もっと詳しい事情を説明する必要があっただろう。
だが、黄金の薔薇を率いるレオノーラであれば、その言葉だけで十分だった。
黄金の薔薇の面々がすぐに動き出したのを見ながら、レオノーラもまたその場から立ち去る。
本来なら、レオノーラはこの場に残って情報を集めるといったようなことをした方がいいのだろうが、今回に限ってはレオノーラが自分で直接どうにかしたかった。
自分の目の前にいたアランを、むざむざと連れて行かれというのもあるし、それ以外の感情もあった。
だが、レオノーラは自分の豊かな双丘の中から溢れ出るその感情に気が付かないままに、ザッカランの中を走る。
……ザッカランは、ドットリオン王国のと国境付近に作られた城塞都市だ。
当然その規模は大きく、人の数も多い。
ガリンダミア帝国軍が動いたという情報を聞いて結構な数が避難したが、それでもザッカランに残っている者の数は多い。
また、人も多いが、城塞都市ということでその規模も大きく、かなり街中はかなり複雑に入り組んでいる場所もあった。
そんな中から、一体どうやってアランを見つけ出すのか。
そう言われれば、レオノーラも明確に答えるようなことは出来ない。
出来ないのだが……それでも、レオノーラは自分が動かないという選択をすることは出来なかった。
ガリンダミア帝国軍が姿を見せたということで、戸惑っている者もいる中をレオノーラは走る。
当然のように、そんなレオノーラを見て声をかける者もいたが、今の状況ではそんな相手に構っていられるような余裕はない。
何人もから話しかけられるが、レオノーラはそれに対しては適当に返事をしつつ、アランの姿を満たなかったと尋ねる。
だが、レオノーラのような華のある派手な美人とは違い、アランはそこまで目立たない。
顔立ちが整っているかどうかで考えれば、間違いなく整っている方ではあるが。それでも絶世の美形とまではいかず、せいぜいが平均よりも上といった程度でしかない。
街中を歩いていてレオノーラを見れば、その美貌から強く印象には残るだろう。
だが、アランの場合は顔立ちが整ってはいるが、少し探せば街中に同じくらいの容姿の持ち主はいくらでも……とまでは言わないが、それでもそこまで珍しくはない。
だからこそ、レオノーラがアランについて聞いても、知ってる者は多くはなかった。
これはアランが無名という訳ではない。
ゼオンの存在を知らない者などほとんどいないのだから。
だが……それはあくまでもゼオンという人型機動兵器を知っている者がいるということであって、アランの顔を知っている者はどうして少なくなってしまう。
それは、アランの特徴を考えるとどこにいるのかといったことを聞くにしても、非常に難しくなる。
これがレオノーラなら、多くの者が見たかどうかというのはすぐに分かるのだが。
そうである以上、今の状況ではどうしようもないのは間違いのないことだった。
しかし、それでも今の状況でアランの存在を諦める訳にいかないレオノーラは、屋台をやっている者を中心に、次々と声をかけていく。
……ガリンダミア帝国軍の姿が見えている今このとき、それでも屋台をやっている者たちがいるというのはレオノーラには驚きであった。
だが、今の状況を考えれば、それはレオノーラにとって助かることでしかない。
「アランを知らない?」
「アラン? それって雲海の探索者だよな? あのゴーレムを操ってる。……顔は見たことないから、分からないな」
やはり、レオノーラが尋ねるもアランの顔を知っている者はいない。
何軒もの屋台に聞いていったのだが……そんな中、やがて十軒目くらいの屋台に尋ねたとき、ようやくアランを見たといった者を見つけることが出来た。
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そう思いながら、レオノーラは頷く。
「ええ、そうよ。そういう風に言うってことは、見たのよね?」
「ああ。兵士の人と向こうの方に行ったよ」
そう言い、店主が示した方を見てレオノーラの美しく整った眉が顰められる。
何故なら、店主が示したのはスラム街の方だったのだから。
そんな店主に短く礼を言い、情報量として少し多めに支払ったあとで、レオノーラは店主から教えて貰った方に走り……そして、見つけたのは、猿轡を嵌められ、手足を縛れて身動きが出来なくなっているアランの姿だった。
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