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ザッカラン防衛戦
178話
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「イルゼンさん!」
雲海が拠点としている宿に戻ると、アランは真っ直ぐにイルゼンの部屋に向かい、ノックもせずに部屋の中に入ってそう叫ぶ。
いきなりそのように呼ばれたイルゼンは、読んでいた書類を机の上に置いて困ったように口を開く。
「アラン君、ノックくらいはしましょう。もしここで僕が人に言えないようなことでもしていたら、どうするつもりですか?」
イルゼンの口調は、アランから見てゆっくりしているようにしか思えない。
まさか、表で起きている出来事が全く分かっていない訳でもないのだろうに、何故こんな態度なのか分からない。
イルゼンが有能だというのは、アランも分かっている。
だが、分かっていても今回の一件においてはそこまで暢気にしていていいのかと、そういう思いがあった。
「イルゼンさん、外で何が起きてるのか、分からないんですか!?」
「もちろん分かってますよ。だから、こうやって仕事をしている訳ですし。それに……恐らく今回の一件は誰かの暴走に近い形です。そうである以上、そこまで心配する必要はないと思いますよ」
外で起きてる騒動は全く気にしている様子もないイルゼンを見て、アランはようやく少し落ち着く。
それでも、やはり現在の外の状況を考えると、本当にそんなにゆっくりしていてもいいのかと、そんな風に思うのだが。
「外の件は放っておいても大丈夫なんですか?」
「大丈夫というか、今の状況で騒いでもほとんど意味がないでしょうね。それに……実際にあの騒ぎにかかわってる人は多くはないのでしょう?」
「まぁ、それは……」
ここに来る途中で雲海と黄金の薔薇をザッカランから追放するように言っている者たちの様子を見てきたアランだったが、それに参加している人数そのものはそこまで多くはない。
とはいえ、多くはないからといって無視出来るほどに少ないかと言われれば、その答えは否だ。
向こうがこうして明確に動きを見せている以上、自分たちも何らかの行動をとった方がいいのではないか。
そう思うアランだったが、イルゼンはそんなアランの様子を眺めつつ、これ見よがしに机の上に置かれた書類を読み始めた。
「イルゼンさん、本当にそこまでゆっくりしていてもいいんですか? それこそ、今の状況を考えれば、このままだと面倒なことになるのは確実ですよ?」
「そこまでの騒動にはならないと思いますよ。結局のところ、今回の一件は僕たちを邪魔だと思っている一部の者の暴走といったところでしょう。そのようなときに僕たちが改めて何らかの行動を取ろうものなら、それこそ面倒なことになりかねません」
あっさりと告げられたその言葉に、アランは本当にそうなのか? と若干の疑問を抱く。
今の状況で何もしないのであれば、それこそ後手に回ってしまうのではないか、と。
だが、いつものように胡散臭い笑みを浮かべているイルゼンの様子を見ると、何となくそれが正しいことのように思えてしまう。
実際、今までそのようなイルゼンの言葉で間違ったことは……ないとは言わないが、それでも基本的には任せておけば大丈夫だった。
「分かりました。けど、ガリンダミア帝国軍の方はどうするんです? 結局前の偵察では本隊を見つけることは出来ませんでしたし、向かってくる今の状況でなら対処出来ますけど」
「そうですね。そちらの方がいいでしょうか。……上の方に少し話を通してきましょう」
イルゼンにとっても、敵をこのまま近づけるというのは、あまり面白くはない。
だが同時に、こうも堂々と敵が姿を見せたというのは、違和感があるのも事実だった。
向こうも当然のようにゼオンについては、これまでの戦闘でその実力を知っているはずだ。
そうである以上、集団で固まって移動してくるような真似をすれば、ゼオンによって一網打尽になってしまうとういのは知っているはずなのだ。
だというのに、ガリンダミア帝国軍がザッカランに対して進撃したという情報をこうもあっさり知らせるというのは、イルゼンにしても疑問だった。
(まるで……いえ、間違いなく何か企んでいるのは間違いないでしょう。問題なのは、一体何を考えているかということですが……情報が足りませんね)
当然のように、イルゼンも色々と情報を集めてはいる。
だが、色々な情報を集めても、その企みに辿り着かないのだ。
イルゼンにしては、これは非常に珍しいことだった。
基本的に様々な情報を集め、その中から情報の欠片を抜き出し、それによって正しい情報を得る。
それがイルゼンの情報収集能力の優れているところだったのだが、問題なのは現在集まっている情報では、その点すら見つからないということだ。
つまり、敵はあえて情報を隠している。
そのような真似をする者が、何の意味もなく軍をザッカランに向けるとは思えない。
向こうが一体どのような罠で待ち構えているのかが分からない以上、出来ればアランを向かわせたくないという思いがあるのも事実だ。
だが、アランは……いや、ゼオンという存在は、あまりにも有名になりすぎた。
敵軍が近付いているに、最大戦力と言ってもいいゼオンを出撃させないとなれば、ザッカランの住人にも疑問を抱かれる。
(つまり、向こうは何らかの理由でゼオンを誘き寄せようとしている……のでしょうか?)
その可能性は高い。
実際、ゼオンの存在はこれまでガリンダミア帝国軍に大きなダメージを与えてきたし……何より、ガリンダミア帝国の皇帝がゼオンを手に入れたがっているというのはイルゼンも聞いてる。
そうである以上、ここでゼオンのパイロットたるアランを捕らえないという選択肢は存在しないのだ。
「じゃあ、俺はこれで失礼しますね。何かあったら、すぐ対処出来るように準備をしておく必要がありますし」
「ええ。何かあったらすぐに連絡しますので」
そう言い、アランが部屋を出ていく。
その後ろ姿を見送ると、イルゼンは再び書類に目を通そうとし……
「誰ですか?」
短く呟く。
最初、その言葉に反応する者はいなかった。
だが、数秒が経過すると、窓の外で微かに音がし……そのまま消えてしまう。
「ふぅ。どうやら向こうも派手に動いているようですね。……一体、何が狙いなのかは分かりませんが」
数秒までまでは、書類に触れていた手の片方が机の下に入れられていた。
窓の外にあった気配が消えたのを感じながら、イルゼンは机の下に貼り付けられていた短剣から手を離し、再び書類に目を通し始める。
たった今の出来事が何もなかったかのようなその態度は、全く動揺した様子がない。
イルゼンにとっては、この程度のことはそう珍しいことではない。
雲海という実力のあるクランを率いるイルゼンは、当然のように多くの者に注目されている。
そんな中では、当然のようにイルゼンにちょっかいを出そうとする者もいるし、情報を得るために近付こうとする者も多い。
そういう意味で、今のようなことはいつも通り……という訳ではないが、それでも珍しいことではない。
いつもならそのような者は泳がせ、結果として上手い具合に……イルゼンにとって有利になるように情報操作をしたりもするのだが、今の状況ではそのような真似をする余裕がなかった。
だからこそ、今回の一件においては意図的に相手を見つけたといった風な態度をとったのだ。
「さて、それはともかく……これから一体どうするべきでしょうね」
はぁ、と。
少し……いや、かなり面倒そうな様子を見せがら、イルゼンが呟く。
ガリンダミア帝国軍がザッカランに向けって攻めて来た以上、雲海としてもそれに対応する必要がある。
そして、雲海のことを考えると……このままザッカランから離脱するという訳にはいかない。
運命共同体とまではいかないものの、ザッカランを支配しているドットリオン王国軍とは共同歩調を取らざるを得ないのだ。
もしここで脱出するようなことがあれば、それこそガリンダミア帝国軍から延々と狙われかねないのだから。
「ガリンダミア帝国軍も、厄介な真似をしてくれますね。とはいえ、こちらも大人しく向こうの思い通りになる訳にはいきませんし」
次に自分たちがどう動くべきかを考えながら、イルゼンは喉の乾きを覚えて水を探すのだった。
「イルゼンさんが? それはまた……面倒なことになりそうだな」
雲海の探索者が、アランからいつでも動けるように準備を調えておくようにとイルゼンに言われたと告げると、それを聞いた者たちは面倒そうな表情を浮かべる。
だが、それでもすぐに行動に移す辺り、イルゼンを信頼していることの証だろう。
ましてや、このザッカランは大樹の遺跡を攻略したという意味で記念すべき場所でもあるし、それと同時に非常に暮らしやすい場所でもある。
……もっとも、現在街中では雲海と黄金の薔薇を出て行くようにと主張するデモが起こっているが。
「けど、イルゼンさんがいない場合、もっと面倒なことになるのは間違いないしな。覚えてるか? ゲオルスの丘の遺跡のでの一件」
「あー……そうだな」
話を聞いていた別の探索者が口にしていた、ゲオルスの丘の一件。
生まれたときから雲海と一緒に行動していたアランも、当然のようにその件については知っている。
いくつものクランが入り交じって大きな騒動になった一件だったが、イルゼンの言葉に従ったおかげで被害は最小限……怪我人はそれなりに出たが、死人は一人も出ずにすんだのだ。
……何気に、当時すでに探索者として活動していたアランだったが、自分の実力が高くないのは分かっていたので、身を守ることを第一に考えた結果として、無傷で騒動を乗り切っていたりする。
「そもそも、ガリンダミア帝国軍が近付いてきてるんだから、イルゼンさんがどうこう言わなくても、色々と大変なことになるのは間違いないだろ」
また別の探索者がそう告げると、その言葉には誰もが反対出来ない。
とはいえ、基本的に雲海は探索者の集団であって、傭兵のように戦いを求めている訳ではない。
その辺りを微妙に感じつつ……ともあれ、何があってもいいように準備をするのだった。
雲海が拠点としている宿に戻ると、アランは真っ直ぐにイルゼンの部屋に向かい、ノックもせずに部屋の中に入ってそう叫ぶ。
いきなりそのように呼ばれたイルゼンは、読んでいた書類を机の上に置いて困ったように口を開く。
「アラン君、ノックくらいはしましょう。もしここで僕が人に言えないようなことでもしていたら、どうするつもりですか?」
イルゼンの口調は、アランから見てゆっくりしているようにしか思えない。
まさか、表で起きている出来事が全く分かっていない訳でもないのだろうに、何故こんな態度なのか分からない。
イルゼンが有能だというのは、アランも分かっている。
だが、分かっていても今回の一件においてはそこまで暢気にしていていいのかと、そういう思いがあった。
「イルゼンさん、外で何が起きてるのか、分からないんですか!?」
「もちろん分かってますよ。だから、こうやって仕事をしている訳ですし。それに……恐らく今回の一件は誰かの暴走に近い形です。そうである以上、そこまで心配する必要はないと思いますよ」
外で起きてる騒動は全く気にしている様子もないイルゼンを見て、アランはようやく少し落ち着く。
それでも、やはり現在の外の状況を考えると、本当にそんなにゆっくりしていてもいいのかと、そんな風に思うのだが。
「外の件は放っておいても大丈夫なんですか?」
「大丈夫というか、今の状況で騒いでもほとんど意味がないでしょうね。それに……実際にあの騒ぎにかかわってる人は多くはないのでしょう?」
「まぁ、それは……」
ここに来る途中で雲海と黄金の薔薇をザッカランから追放するように言っている者たちの様子を見てきたアランだったが、それに参加している人数そのものはそこまで多くはない。
とはいえ、多くはないからといって無視出来るほどに少ないかと言われれば、その答えは否だ。
向こうがこうして明確に動きを見せている以上、自分たちも何らかの行動をとった方がいいのではないか。
そう思うアランだったが、イルゼンはそんなアランの様子を眺めつつ、これ見よがしに机の上に置かれた書類を読み始めた。
「イルゼンさん、本当にそこまでゆっくりしていてもいいんですか? それこそ、今の状況を考えれば、このままだと面倒なことになるのは確実ですよ?」
「そこまでの騒動にはならないと思いますよ。結局のところ、今回の一件は僕たちを邪魔だと思っている一部の者の暴走といったところでしょう。そのようなときに僕たちが改めて何らかの行動を取ろうものなら、それこそ面倒なことになりかねません」
あっさりと告げられたその言葉に、アランは本当にそうなのか? と若干の疑問を抱く。
今の状況で何もしないのであれば、それこそ後手に回ってしまうのではないか、と。
だが、いつものように胡散臭い笑みを浮かべているイルゼンの様子を見ると、何となくそれが正しいことのように思えてしまう。
実際、今までそのようなイルゼンの言葉で間違ったことは……ないとは言わないが、それでも基本的には任せておけば大丈夫だった。
「分かりました。けど、ガリンダミア帝国軍の方はどうするんです? 結局前の偵察では本隊を見つけることは出来ませんでしたし、向かってくる今の状況でなら対処出来ますけど」
「そうですね。そちらの方がいいでしょうか。……上の方に少し話を通してきましょう」
イルゼンにとっても、敵をこのまま近づけるというのは、あまり面白くはない。
だが同時に、こうも堂々と敵が姿を見せたというのは、違和感があるのも事実だった。
向こうも当然のようにゼオンについては、これまでの戦闘でその実力を知っているはずだ。
そうである以上、集団で固まって移動してくるような真似をすれば、ゼオンによって一網打尽になってしまうとういのは知っているはずなのだ。
だというのに、ガリンダミア帝国軍がザッカランに対して進撃したという情報をこうもあっさり知らせるというのは、イルゼンにしても疑問だった。
(まるで……いえ、間違いなく何か企んでいるのは間違いないでしょう。問題なのは、一体何を考えているかということですが……情報が足りませんね)
当然のように、イルゼンも色々と情報を集めてはいる。
だが、色々な情報を集めても、その企みに辿り着かないのだ。
イルゼンにしては、これは非常に珍しいことだった。
基本的に様々な情報を集め、その中から情報の欠片を抜き出し、それによって正しい情報を得る。
それがイルゼンの情報収集能力の優れているところだったのだが、問題なのは現在集まっている情報では、その点すら見つからないということだ。
つまり、敵はあえて情報を隠している。
そのような真似をする者が、何の意味もなく軍をザッカランに向けるとは思えない。
向こうが一体どのような罠で待ち構えているのかが分からない以上、出来ればアランを向かわせたくないという思いがあるのも事実だ。
だが、アランは……いや、ゼオンという存在は、あまりにも有名になりすぎた。
敵軍が近付いているに、最大戦力と言ってもいいゼオンを出撃させないとなれば、ザッカランの住人にも疑問を抱かれる。
(つまり、向こうは何らかの理由でゼオンを誘き寄せようとしている……のでしょうか?)
その可能性は高い。
実際、ゼオンの存在はこれまでガリンダミア帝国軍に大きなダメージを与えてきたし……何より、ガリンダミア帝国の皇帝がゼオンを手に入れたがっているというのはイルゼンも聞いてる。
そうである以上、ここでゼオンのパイロットたるアランを捕らえないという選択肢は存在しないのだ。
「じゃあ、俺はこれで失礼しますね。何かあったら、すぐ対処出来るように準備をしておく必要がありますし」
「ええ。何かあったらすぐに連絡しますので」
そう言い、アランが部屋を出ていく。
その後ろ姿を見送ると、イルゼンは再び書類に目を通そうとし……
「誰ですか?」
短く呟く。
最初、その言葉に反応する者はいなかった。
だが、数秒が経過すると、窓の外で微かに音がし……そのまま消えてしまう。
「ふぅ。どうやら向こうも派手に動いているようですね。……一体、何が狙いなのかは分かりませんが」
数秒までまでは、書類に触れていた手の片方が机の下に入れられていた。
窓の外にあった気配が消えたのを感じながら、イルゼンは机の下に貼り付けられていた短剣から手を離し、再び書類に目を通し始める。
たった今の出来事が何もなかったかのようなその態度は、全く動揺した様子がない。
イルゼンにとっては、この程度のことはそう珍しいことではない。
雲海という実力のあるクランを率いるイルゼンは、当然のように多くの者に注目されている。
そんな中では、当然のようにイルゼンにちょっかいを出そうとする者もいるし、情報を得るために近付こうとする者も多い。
そういう意味で、今のようなことはいつも通り……という訳ではないが、それでも珍しいことではない。
いつもならそのような者は泳がせ、結果として上手い具合に……イルゼンにとって有利になるように情報操作をしたりもするのだが、今の状況ではそのような真似をする余裕がなかった。
だからこそ、今回の一件においては意図的に相手を見つけたといった風な態度をとったのだ。
「さて、それはともかく……これから一体どうするべきでしょうね」
はぁ、と。
少し……いや、かなり面倒そうな様子を見せがら、イルゼンが呟く。
ガリンダミア帝国軍がザッカランに向けって攻めて来た以上、雲海としてもそれに対応する必要がある。
そして、雲海のことを考えると……このままザッカランから離脱するという訳にはいかない。
運命共同体とまではいかないものの、ザッカランを支配しているドットリオン王国軍とは共同歩調を取らざるを得ないのだ。
もしここで脱出するようなことがあれば、それこそガリンダミア帝国軍から延々と狙われかねないのだから。
「ガリンダミア帝国軍も、厄介な真似をしてくれますね。とはいえ、こちらも大人しく向こうの思い通りになる訳にはいきませんし」
次に自分たちがどう動くべきかを考えながら、イルゼンは喉の乾きを覚えて水を探すのだった。
「イルゼンさんが? それはまた……面倒なことになりそうだな」
雲海の探索者が、アランからいつでも動けるように準備を調えておくようにとイルゼンに言われたと告げると、それを聞いた者たちは面倒そうな表情を浮かべる。
だが、それでもすぐに行動に移す辺り、イルゼンを信頼していることの証だろう。
ましてや、このザッカランは大樹の遺跡を攻略したという意味で記念すべき場所でもあるし、それと同時に非常に暮らしやすい場所でもある。
……もっとも、現在街中では雲海と黄金の薔薇を出て行くようにと主張するデモが起こっているが。
「けど、イルゼンさんがいない場合、もっと面倒なことになるのは間違いないしな。覚えてるか? ゲオルスの丘の遺跡のでの一件」
「あー……そうだな」
話を聞いていた別の探索者が口にしていた、ゲオルスの丘の一件。
生まれたときから雲海と一緒に行動していたアランも、当然のようにその件については知っている。
いくつものクランが入り交じって大きな騒動になった一件だったが、イルゼンの言葉に従ったおかげで被害は最小限……怪我人はそれなりに出たが、死人は一人も出ずにすんだのだ。
……何気に、当時すでに探索者として活動していたアランだったが、自分の実力が高くないのは分かっていたので、身を守ることを第一に考えた結果として、無傷で騒動を乗り切っていたりする。
「そもそも、ガリンダミア帝国軍が近付いてきてるんだから、イルゼンさんがどうこう言わなくても、色々と大変なことになるのは間違いないだろ」
また別の探索者がそう告げると、その言葉には誰もが反対出来ない。
とはいえ、基本的に雲海は探索者の集団であって、傭兵のように戦いを求めている訳ではない。
その辺りを微妙に感じつつ……ともあれ、何があってもいいように準備をするのだった。
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