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ザッカラン防衛戦
169話
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「ありがとうございます!」
馬車から降りた商人が、アランに向かって深く頭を下げる。
当然だろう。もしアランが助けに来なければ、間違いなく盗賊たちによって馬車に積んでいる商品は奪われていたのだから。
それどころか、馬車その物を奪われていた可能性もあり……最悪の場合は、命すら奪われていただろう。
そう考え、商人は憎々しげに自分を襲った盗賊たちを睨み付ける。
商人を襲った盗賊たちは、現在全員が手をロープで縛られており、数珠繋ぎとなっていた。
アランがゼオンで脅し、フェルスを使って商人を守りながら、ロープで結ばせたのだ。
隙あらば逃げよう、もしくは商人を人質にしようと企んでいた盗賊たちだったが、フェルスが数発地面をビームで撃ってその威力を見せれば、馬鹿なことは考えないようになった。
人型機動兵器同士の戦いでは、そこまで威力が高くはないフェルスのビーム砲だが、人間が相手であれば、それこそ一発命中しただけで、確実に殺せるだけの威力を持っている。
それを間近で見せられ、そのような状況で盗賊が動けるはずがない。
それだけの度胸、もしくは実力があるのなら、それこそ盗賊などやっておらず、傭兵、冒険者、探索者がやれるのだから。
もしくは、街中で普通の仕事をしてもいい。
……そのようなことが出来ないからこそ、結果として盗賊にまで落ちぶれてしまったのだろう。
「いえ、無事で何よりです。けど……ここより、もっと大きな道を通れば盗賊に見つからなかったんじゃないんですか? ザッカランに向かってるんですよね?」
「いやぁ、お恥ずかしいです。この道が危険なのは知ってましたが、やはり一番早くザッカランに到着出来るのはこの道だったので。……馬車で走れば、盗賊に襲われてもどうにか逃げ切れると思っていたんですが、少し考えが甘かったです」
なるほど、とアランは納得の表情を浮かべる。
実際、アランが見たときは馬に乗った盗賊たちに追いつかれてはいたが、それでもかなりの間逃げ続けていたのだ。
それを考えると、本人が言う通り逃げ切れると考えていたのは間違いないのだろうと判断する。
「それで、アランさん。この盗賊たちの身柄……本当に私が貰っていいのですか?」
「構いませんよ。俺はそこまで金に困ってませんし」
大樹の遺跡を攻略した影響や、ドットリオン王国軍の手伝いをした報酬を考えれば、雲海も黄金の薔薇もかなりの収入を得ている。
当然アランもまた、相応の分け前を貰っていた。
もちろん、金というのはあればあっただけいいのだが、アランの場合は特に使い道がないというのもある。
これが日本であれば、ゲームや漫画といったように趣味に使うようなこともできていたのだが、この世界の場合はその辺りがそこまで発展してはいない。
いや、本の類は売っていたりするのだが、印刷技術が発展していない影響からか、非常に高価だ。
それこそ、今のアランの所持金でも買えるかどうかは微妙といった程度には。
それでいながら、本は基本的に専門書の類しかないのだ。
楽しもうとして読む……といった真似は、この場合は出来ない。
……その手の専門知識がある者なら、専門書の類であっても、楽しんで読むような真似が出来るかもしれないが。
ともあれ、今のアランにとって金はそこまで必要ではない。
何より、盗賊達を犯罪奴隷として売り払うということは、奴隷達をザッカランまで連れていく必要がある。
現在はガリンダミア帝国軍に対する偵察をする為にここにいるアランだけに、今の状況で盗賊を連れてザッカランに戻るなどといった真似は……出来ない訳ではないが、色々と面倒なのは間違いなかった。
ならば、その面倒は全て商人に任せた方がいいと、そう判断したのだ。
「そうですか。では、盗賊たちの件はこちらに任せて貰いますね。ありがとうございます」
アランの言葉が本気だと理解した商人は、嬉しそうな表情を浮かべる。
護衛も何もなしで、ここからザッカランまで盗賊たちを運んでいく必要があるのだが、その辺は本当に大丈夫なのか? という思いがアランの中にない訳でもなかったが、本人の様子を見る限り問題はないのだろうと判断する。
商人にしてみれば、予想外の収穫といったところか。
(無事にザッカランまで到着出来ればだけど……この自信満々な様子を見れば、多分問題はないんだろ)
そう判断し、アランはそれ以上は何も言わないことする。
「じゃあ、俺はこの辺で失礼しますね」
「あ、ちょっと待って下さい。盗賊達のアジトについては……」
「その辺もお任せします。……もっとも、この盗賊達の言うことが本当なら、まだここに来たばかりでろくなお宝はないでしょうけど」
盗賊を討伐したり捕獲した場合、盗賊の持っているお宝は基本的に倒したり捕らえた者が所有権を得る。
だが、アランが軽く話を聞いたところ、この盗賊たちは以前いた場所で他の盗賊との縄張り争いに負け、這々の体でこの辺りまで逃げてきたと言っていた。
そのような状況で逃げてきた以上、以前のアジトに溜め込んでいたお宝の類は当然持ってくることは出来ない。
アランとしては、それこそよく馬を持ってきたなということで驚く。
ともあれ、そのような盗賊だけに得られるお宝の類は期待出来ない。
馬も、戦いの騒動で結構逃げてしまったので、残っている馬を金に換えることは出来るが、かなり面倒なのは間違いない。
なら、アランとしてはその辺も含めて全てを商人に任せてしまった方がいいと、そう判断したのだ。
……空を飛ぶゼオンに乗っているアランとしては、正直なところ、ここで盗賊たちを渡されても困るというのが大きいのだが。
「そうですか。では……せめて、これだけでもお持ち下さい」
そう言い、商人は馬車の中から一つの瓶を取り出す。
それが何なのかは、アランにもすぐに分かった。
今まで何度も使ってきたというのもあるし、同時に……今回の偵察に出るよ前に、父親のニコラスから同じような瓶を貰ったからだ。
「ポーション?」
「はい。それなりに効果は高いと思います。うちの自慢の商品の一つですよ」
そう言われば、アランも納得の表情を浮かべる。
商人だけに、商品を持っているのは当然だろう。
その商品がポーションだというのも、納得出来た。
実際、ポーションというのはどこで一定の需要はある。
もちろん、一定の需要があるということは、その需要を満たす供給先があるのだが……それでも、ある程度の量は需要に呑み込まれることになる。
「ありがとうございます。探索者をやってると、ポーションの類はいくらあっても足りませんからね。それに……このポーションが盗賊たちに奪われなかったというのも、助かりました」
アランが貰ったポーションは、父親のニコラスから貰った物に比べれば、随分と効果は落ちる。
だが、普通に店で売っているポーションと比べれば、間違いなく高い効果を持っていた。
そうである以上、もし商人の荷物が盗賊たちに奪わていた場合、それは盗賊に高い効果を持つポーションを渡すということになりかねないのだ。
そうなれば、どうなるか。
それは、考えるまでもなく明らかだろう。
商人の護衛や、討伐に来た相手に傷を負わされても、ポーションを使えば回復するのだ。
もちろん、手足を切断されたのがくっついたり、もしくは新しく生えてくるといったような効果はない。
だが、深い斬り傷のようなものであれば、ポーションで容易に回復するのだ。
「そう言って貰えると助かりますよ。では、ザッカランでポーションが必要になったら、是非私の店に来て下さい。勉強させて貰いますよ」
「あー……はい。分かりました」
さすが商人と言うべきか、アランに感謝の気持ちとしてポーションを渡したが、しっかりと宣伝をする。
アランが所属している雲海と、共に行動している黄金の薔薇。
その二つのクランに自分の顔と商品を売り込むことが出来たのだから、商人としてはむしろプラスだろう。
実際、アランも商人から渡されたポーションがきちんとした効果のあるものであれば、それを話題に出すだろうし、それを聞けば雲海の中でも補給を担当している者がこの商人からポーションを買ったりもするだろう。
もっとも、それはあくまでもポーションの効果がしっかりとしたものであれば、だ。
「じゃあ、俺はこの辺で失礼しますね。他に色々とやることがありますので。……盗賊の方はお任せします」
そう短く言葉を交わすと、商人から離れてゼオンを呼び出す。
……ゼオンを一度は見ている商人だったが、やはりいきなり目の前に全長十八メートルの人型機動兵器が現れれば驚くのだろう。
驚いている商人に、若干ながらしてやったりといった思いを懐きながら、アランはゼオンに乗り込む。
商人からは、かなり驚かされたのだ。
それに対する意趣返しと思えば、この反応はそう悪いものではなかった。
ゼオンの手を軽く振ってから、その場を離れる。
鳥型のモンスターが空を飛ぶというのであれば、商人もそこまで驚くようなことはなかっただろう。
だが、今回は違う。
商人にとっては巨大な人型のゴーレムにしか見えない存在が、空を飛んだのだから、それで驚くなという方が無理だった。
そして同時に、そんなゼオンを見た商人はいつガリンダミア帝国軍の攻撃が始まってもおかしくはないこの時期に、ザッカランに向かうという選択をしたことが決して間違ってはいなかったと判断する。
あのような見たことがない……それこそ、初めて見るような存在がいるのだから、ザッカランの防衛は恐らく自分が思っているよりも、間違いなく強固なのだろうと。
そんな風に考え……そして、なるべく早くザッカランに向かおうと、すぐに出発の準備を進める。
「行きますよ。……いいですか、貴方達に合わせるつもりはありません。死にたくないのなら……そして仲間に負担を掛けたくないのなら、しっかりと馬車についてきて下さい。私としては、馬が手に入っただけで十分な利益なのですから」
アランに向けていたのとは全く違う冷たい視線を盗賊たちに向け、商人はそう告げるのだった。
馬車から降りた商人が、アランに向かって深く頭を下げる。
当然だろう。もしアランが助けに来なければ、間違いなく盗賊たちによって馬車に積んでいる商品は奪われていたのだから。
それどころか、馬車その物を奪われていた可能性もあり……最悪の場合は、命すら奪われていただろう。
そう考え、商人は憎々しげに自分を襲った盗賊たちを睨み付ける。
商人を襲った盗賊たちは、現在全員が手をロープで縛られており、数珠繋ぎとなっていた。
アランがゼオンで脅し、フェルスを使って商人を守りながら、ロープで結ばせたのだ。
隙あらば逃げよう、もしくは商人を人質にしようと企んでいた盗賊たちだったが、フェルスが数発地面をビームで撃ってその威力を見せれば、馬鹿なことは考えないようになった。
人型機動兵器同士の戦いでは、そこまで威力が高くはないフェルスのビーム砲だが、人間が相手であれば、それこそ一発命中しただけで、確実に殺せるだけの威力を持っている。
それを間近で見せられ、そのような状況で盗賊が動けるはずがない。
それだけの度胸、もしくは実力があるのなら、それこそ盗賊などやっておらず、傭兵、冒険者、探索者がやれるのだから。
もしくは、街中で普通の仕事をしてもいい。
……そのようなことが出来ないからこそ、結果として盗賊にまで落ちぶれてしまったのだろう。
「いえ、無事で何よりです。けど……ここより、もっと大きな道を通れば盗賊に見つからなかったんじゃないんですか? ザッカランに向かってるんですよね?」
「いやぁ、お恥ずかしいです。この道が危険なのは知ってましたが、やはり一番早くザッカランに到着出来るのはこの道だったので。……馬車で走れば、盗賊に襲われてもどうにか逃げ切れると思っていたんですが、少し考えが甘かったです」
なるほど、とアランは納得の表情を浮かべる。
実際、アランが見たときは馬に乗った盗賊たちに追いつかれてはいたが、それでもかなりの間逃げ続けていたのだ。
それを考えると、本人が言う通り逃げ切れると考えていたのは間違いないのだろうと判断する。
「それで、アランさん。この盗賊たちの身柄……本当に私が貰っていいのですか?」
「構いませんよ。俺はそこまで金に困ってませんし」
大樹の遺跡を攻略した影響や、ドットリオン王国軍の手伝いをした報酬を考えれば、雲海も黄金の薔薇もかなりの収入を得ている。
当然アランもまた、相応の分け前を貰っていた。
もちろん、金というのはあればあっただけいいのだが、アランの場合は特に使い道がないというのもある。
これが日本であれば、ゲームや漫画といったように趣味に使うようなこともできていたのだが、この世界の場合はその辺りがそこまで発展してはいない。
いや、本の類は売っていたりするのだが、印刷技術が発展していない影響からか、非常に高価だ。
それこそ、今のアランの所持金でも買えるかどうかは微妙といった程度には。
それでいながら、本は基本的に専門書の類しかないのだ。
楽しもうとして読む……といった真似は、この場合は出来ない。
……その手の専門知識がある者なら、専門書の類であっても、楽しんで読むような真似が出来るかもしれないが。
ともあれ、今のアランにとって金はそこまで必要ではない。
何より、盗賊達を犯罪奴隷として売り払うということは、奴隷達をザッカランまで連れていく必要がある。
現在はガリンダミア帝国軍に対する偵察をする為にここにいるアランだけに、今の状況で盗賊を連れてザッカランに戻るなどといった真似は……出来ない訳ではないが、色々と面倒なのは間違いなかった。
ならば、その面倒は全て商人に任せた方がいいと、そう判断したのだ。
「そうですか。では、盗賊たちの件はこちらに任せて貰いますね。ありがとうございます」
アランの言葉が本気だと理解した商人は、嬉しそうな表情を浮かべる。
護衛も何もなしで、ここからザッカランまで盗賊たちを運んでいく必要があるのだが、その辺は本当に大丈夫なのか? という思いがアランの中にない訳でもなかったが、本人の様子を見る限り問題はないのだろうと判断する。
商人にしてみれば、予想外の収穫といったところか。
(無事にザッカランまで到着出来ればだけど……この自信満々な様子を見れば、多分問題はないんだろ)
そう判断し、アランはそれ以上は何も言わないことする。
「じゃあ、俺はこの辺で失礼しますね」
「あ、ちょっと待って下さい。盗賊達のアジトについては……」
「その辺もお任せします。……もっとも、この盗賊達の言うことが本当なら、まだここに来たばかりでろくなお宝はないでしょうけど」
盗賊を討伐したり捕獲した場合、盗賊の持っているお宝は基本的に倒したり捕らえた者が所有権を得る。
だが、アランが軽く話を聞いたところ、この盗賊たちは以前いた場所で他の盗賊との縄張り争いに負け、這々の体でこの辺りまで逃げてきたと言っていた。
そのような状況で逃げてきた以上、以前のアジトに溜め込んでいたお宝の類は当然持ってくることは出来ない。
アランとしては、それこそよく馬を持ってきたなということで驚く。
ともあれ、そのような盗賊だけに得られるお宝の類は期待出来ない。
馬も、戦いの騒動で結構逃げてしまったので、残っている馬を金に換えることは出来るが、かなり面倒なのは間違いない。
なら、アランとしてはその辺も含めて全てを商人に任せてしまった方がいいと、そう判断したのだ。
……空を飛ぶゼオンに乗っているアランとしては、正直なところ、ここで盗賊たちを渡されても困るというのが大きいのだが。
「そうですか。では……せめて、これだけでもお持ち下さい」
そう言い、商人は馬車の中から一つの瓶を取り出す。
それが何なのかは、アランにもすぐに分かった。
今まで何度も使ってきたというのもあるし、同時に……今回の偵察に出るよ前に、父親のニコラスから同じような瓶を貰ったからだ。
「ポーション?」
「はい。それなりに効果は高いと思います。うちの自慢の商品の一つですよ」
そう言われば、アランも納得の表情を浮かべる。
商人だけに、商品を持っているのは当然だろう。
その商品がポーションだというのも、納得出来た。
実際、ポーションというのはどこで一定の需要はある。
もちろん、一定の需要があるということは、その需要を満たす供給先があるのだが……それでも、ある程度の量は需要に呑み込まれることになる。
「ありがとうございます。探索者をやってると、ポーションの類はいくらあっても足りませんからね。それに……このポーションが盗賊たちに奪われなかったというのも、助かりました」
アランが貰ったポーションは、父親のニコラスから貰った物に比べれば、随分と効果は落ちる。
だが、普通に店で売っているポーションと比べれば、間違いなく高い効果を持っていた。
そうである以上、もし商人の荷物が盗賊たちに奪わていた場合、それは盗賊に高い効果を持つポーションを渡すということになりかねないのだ。
そうなれば、どうなるか。
それは、考えるまでもなく明らかだろう。
商人の護衛や、討伐に来た相手に傷を負わされても、ポーションを使えば回復するのだ。
もちろん、手足を切断されたのがくっついたり、もしくは新しく生えてくるといったような効果はない。
だが、深い斬り傷のようなものであれば、ポーションで容易に回復するのだ。
「そう言って貰えると助かりますよ。では、ザッカランでポーションが必要になったら、是非私の店に来て下さい。勉強させて貰いますよ」
「あー……はい。分かりました」
さすが商人と言うべきか、アランに感謝の気持ちとしてポーションを渡したが、しっかりと宣伝をする。
アランが所属している雲海と、共に行動している黄金の薔薇。
その二つのクランに自分の顔と商品を売り込むことが出来たのだから、商人としてはむしろプラスだろう。
実際、アランも商人から渡されたポーションがきちんとした効果のあるものであれば、それを話題に出すだろうし、それを聞けば雲海の中でも補給を担当している者がこの商人からポーションを買ったりもするだろう。
もっとも、それはあくまでもポーションの効果がしっかりとしたものであれば、だ。
「じゃあ、俺はこの辺で失礼しますね。他に色々とやることがありますので。……盗賊の方はお任せします」
そう短く言葉を交わすと、商人から離れてゼオンを呼び出す。
……ゼオンを一度は見ている商人だったが、やはりいきなり目の前に全長十八メートルの人型機動兵器が現れれば驚くのだろう。
驚いている商人に、若干ながらしてやったりといった思いを懐きながら、アランはゼオンに乗り込む。
商人からは、かなり驚かされたのだ。
それに対する意趣返しと思えば、この反応はそう悪いものではなかった。
ゼオンの手を軽く振ってから、その場を離れる。
鳥型のモンスターが空を飛ぶというのであれば、商人もそこまで驚くようなことはなかっただろう。
だが、今回は違う。
商人にとっては巨大な人型のゴーレムにしか見えない存在が、空を飛んだのだから、それで驚くなという方が無理だった。
そして同時に、そんなゼオンを見た商人はいつガリンダミア帝国軍の攻撃が始まってもおかしくはないこの時期に、ザッカランに向かうという選択をしたことが決して間違ってはいなかったと判断する。
あのような見たことがない……それこそ、初めて見るような存在がいるのだから、ザッカランの防衛は恐らく自分が思っているよりも、間違いなく強固なのだろうと。
そんな風に考え……そして、なるべく早くザッカランに向かおうと、すぐに出発の準備を進める。
「行きますよ。……いいですか、貴方達に合わせるつもりはありません。死にたくないのなら……そして仲間に負担を掛けたくないのなら、しっかりと馬車についてきて下さい。私としては、馬が手に入っただけで十分な利益なのですから」
アランに向けていたのとは全く違う冷たい視線を盗賊たちに向け、商人はそう告げるのだった。
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