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逆襲
159話
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「は? えっとそれ……本当ですか?」
アランの口から信じられないといったような声が出る。
だが、それも無理はない。
バードマンとの戦いが終わり、上空で激しい戦いがあったにもかかわらず地上を進んでいたイルゼンたちと合流したアランたちだったが、森の中に墜落したバードマンを捕らえて色々と事情を聞こうとしていたのに、肝心のそのバードマンがどこにもいなかったのだから。
もちろん、バードマンが地面に倒れた痕跡は、折れた木々でしっかりと確認することが出来た。
つまり、少し前までは間違いなくそこにバードマンがいたはずなのだ。
……そもそも、ゼオンや黄金のドラゴンよりも小さいとはいえ、それでも十メートル近い大きさを持つバードマンを見つけられないというのはおかしい。
「こちらでも色々と見て回ったんだけどね。やっぱり痕跡はあっても、本人はどこにもいなかったよ」
「そう、ですか。……俺がすぐに動いていれば、何とかなったかもしれないんですが……」
悔しげに呟くアラン。
いつも以上に集中してフェルスを動かした影響もあってか、戦闘後は暫く激しい頭痛に襲われたのだ。
何が原因かと考えれば、思いつくのはフェルスについてだけで、それが頭痛の原因と特定するのは難しくはない。
これからはフェルスの多用……いや、あそこまで深く集中してフェルスを使うのは、本当に危険なときだけにしようと、そう思う。
同時に、あの状態でフェルスを使うのに慣れれば、いずれは頭痛がない状態でフェルスを使いこなせるのではないかと、そんなこともあったが。
「気にしなくてもいいですよ。向こうが何を企んでいたのかは分かりませんが、ともあれ撃退出来たのです。聞いた話によれば、かなりのダメージを負わせたのでしょう?」
「それは、まぁ」
フェルスによって身体を内部から斬り裂かれ、ビームライフルの一撃を食らい、下からは黄金のドラゴンが放つレーザーブレスで貫かれたのだ。
それこそ、あのバードマンだからこそ原型を留めていたが、普通の敵なら間違いなく絶命し、それこそ肉片の一つも残さずに消滅していてもおかしくはない。
そう説明するアランに、イルゼンはそうでしょうと頷く。
あの戦いは、当然のように地上からえでも見えた。
はっきりとしたところまでは確認出来なかったが、最後にはバードマンがズタボロにやられていたのがしっかりと確認出来たのだ。
であれば、取りあえず自分たちがここにいる間に……それどころか、下手をすれば数ヶ月単位で動くことは出来ないだろうと予想するのは難しい話ではない。
「なら、今は気にする必要はありませんよ。……とはいえ、僕たちもいつまでもここにいる訳にはいかないので、大樹をどうするかという問題がありますが」
バードマンが大樹を攻撃していたのは明らかだ。
そうである以上、もしバードマンが今は動けなくても、アランたちがこの遺跡から出たあとで、また大樹を攻撃するようなことがあった場合、それを防ぐ方法はない。
「でも、そうするとどうします?」
「どうもしませんよ。いつまでもここにいられない以上、どうしようもないのは間違いないですし。僕たちに出来るのは、何かが起きるよりも前にさっさとこの遺跡を探索して脱出するだけです」
それは、言い方は悪いが自分たちが大樹の遺跡を出たあとでどうなっても構わないと、そう言ってるも同然だった。
とはいえ、それ以外に方法がないのも事実だ。
イルゼンが言うようにずっとここにいる訳にはいかないし、地上から誰か別の者を連れてきても、それこそバードマンが相手であれば、ゼオンや黄金のドラゴンといったくらいの強さがなければ、どうしようもない。
「とにかく、そんな訳で先を急ぎましょう。……あの大樹の根元に何があるのか。それを見つける必要がありますから」
そんなイルゼンの言葉に従い、雲海と黄金の薔薇の面々は大樹に向けて進むのだった。
「うお……これは……すげえ……」
大樹の側までやって来ると、まさに目の前に広がっているのは木ではなく壁と呼ぶに相応しいような、そんな光景が目の前に広がっていた。
探索者の一人が思わずといった様子で呟いたが、それは他の者にとっても同意するべき言葉だ。
遠くから見た時も、大樹と呼ぶに相応しい巨大さがあるというのは分かっていた。
だが、それでもこうして間近で見ると、その巨大さについては驚くべき姿だ。
「さて、皆さん」
ぱん、と。
イルゼンがそう言いながら、手を叩く。
その音に、大樹に目を奪われていた者たちも我に返る。
「大樹はたしかに素晴らしいですが、いつまでも見ている訳にはいきません。私たちは、元々この遺跡を攻略するために来たのですから」
遺跡の攻略というのは、特に何か規定がある訳ではない。
だが、一般的にはその遺跡の最深部まで到達し、古代魔法文明が残した何らかの遺産を持ち替えれば、それによって攻略したと見なされる。
イルゼンの言葉に、聞いていた多くの者たちが何らかの遺産を探すべく周囲を見て回り始めるのだが……
「おいおいおいおい、ここって何もないぞ? 大樹の遺跡ってくらいだから、大樹があるのは分かるけど、大樹しかないってのは、一体何なんだよ!」
探索者の一人が叫ぶ。
実際、その言葉は周囲にいる者達にとっても同意出来るものなのは間違いなかった。
大抵の遺跡なら、最下層には何らかのお宝の類があってもおかしくはないのに、現在いるここには本当に大樹しか存在しないのだ。
「まさか、この大樹を持っていく訳にはいかないし……」
「いえ、そうでもありませんよ」
探索者の一人が大樹を見上げながら呟いた言葉に、イルゼンが反応する。
は? といった視線を向けられたイルゼンだったが、大樹の皮を短剣で削って何かを確認するように口に運ぶ。
「やはり。……この大樹の皮はポーションの素材としては最適な代物です。それこそ、かなり効果の高いポーションを作れますよ。また、枝は……伐採するのが少し難しいですが、魔法使いが使う杖としては高性能になるでしょうね」
イルゼンの言葉に、大樹の周囲に何かないかと調べていた者たち全員が驚き、やがてアランが口を開く。
「じゃあ、イルゼンさん。この遺跡にあるお宝は、この大樹ってことなんですか?」
「そうでしょうね。これは僕にとっても予想外でした。てっきり、植物の生長を促す何かがあったり、もしくはこの遺跡のように空間を広げるといったアーティファクトがあると思ってたんですが」
イルゼンの口からは残念そうな声が漏れるが、そう言いながらも表情はいつものように飄々としており、本当に残念に思っているのかどうかは、アランには分からなかった。
ともあれ、今の状況を考えれば素材は採れるだけ採った方がいい。
この大樹の皮や葉、枝、それに外にも様々な素材は、間違いなく巨額の利益を得られるのだから。
「うーん、そうなるとこの遺跡はこの大樹を守るために作られた遺跡だった? だとすれば、砂漠のような階層があったのも納得は出来るのですが」
何かを考えているイルゼンをよそに、アランもまた素材となる部位を採取していく。
(古代魔法文明の遺跡なんだから、こういう感じでもおかしくはない……のか? 個人的には、出来れば心核とかがあってもおかしくはないと思ったんだけど)
心核使いというのは、個人の才能によって違うが、基本的に一人で戦場を覆すだけの能力を持つ。
それだけに、心核というのは多ければ多いほどいい。
それも、敵から奪ってすぐには使えない心核ではなく、入手してすぐにでも使えるような、そんな心核であればなおのこと。
これだけの深さを持つ遺跡で、空間を弄って内部には砂漠や森のような地形まであるのだから、心核があってもおかしくはなかった。
だが、実際には心核の類はどこにも存在せず……
「心核だ! 心核があったぞ!」
「……え?」
心核がないと、そう残念そうに考えていたアランだったが、まさにそのタイミングを狙ったかのように、そんな声が響く。
当然のように、そんな声が響けば周囲にいる皆がその声のした方に視線を向けるのは当然であり……
「うわ、マジでケラーノさん、心核持ってるよ」
アランは唖然として、ケラーノが手にしている心核を見る。
ケラーノ……それは雲海の探索者の一人だ。
植物に対する好奇心が旺盛で、大樹の採取についても嬉々として行っていた人物。
あるいは、そんな人物だからこそ心核を見つけたのかもしれないが。
「うおおおおおおっ! 凄ぇっ!」
「ケラーノって、とんでもないところで剛運だよな」
「羨ましいわね。本当に羨ましいわね。……月のない夜は気をつけてね」
「って、おい! 襲う気満々じゃねえか!」
そんなやり取りをしながら、皆がケラーノに駆け寄っていき、乱暴に叩いて祝福する。
……中にはかなり嫉妬の籠もった一撃もあったが。
ともあれ、そんなやり取りが終了すると、次に気になるのはケラーノが心核を使った場合、どのようなモンスターになるのかだろう。
アランのゼオンやレオノーラの黄金のドラゴンのことを思えば、期待が高くなるのは当然のことだった。
そして皆の期待の声を裏切るほどに、ケラーノも空気を読めない訳ではない。
……いや、むしろ自分がどのようなモンスターに変身出来るのかは、ケラーノ自身が一番知りたかっただろう。
皆に言われるように、心核に集中し……次の瞬間、その姿は一本の木に変わる。
正確には、木の幹に顔がある……トレントだ。
植物に強い興味を持つケラーノらしい結果と言われればそうなのだが、この場合問題なのは……
「トレントか、ケラーノらしいけど……なぁ、動けるか?」
カオグルがそんな疑問を口にする。
ジャスパーに対してはある程度丁寧な言葉遣いをするカオグルだったが、同年代のケラーノに対しては気安く呼び掛けていた。
そんなカオグルの言葉に、周囲の者達も気になったのかカオグルに視線を向ける。
トレントの中には根を足のようにして動く個体もいるが、そのような個体は少ない。
どちらかと言えば、動けずその場にいる者が大半であり……ケラーノの変身したトレントは、初めて心核を使った変身なのでまだ慣れておらず言葉を発するようなことはなかったが、その場から動くようなことはなかった。
アランの口から信じられないといったような声が出る。
だが、それも無理はない。
バードマンとの戦いが終わり、上空で激しい戦いがあったにもかかわらず地上を進んでいたイルゼンたちと合流したアランたちだったが、森の中に墜落したバードマンを捕らえて色々と事情を聞こうとしていたのに、肝心のそのバードマンがどこにもいなかったのだから。
もちろん、バードマンが地面に倒れた痕跡は、折れた木々でしっかりと確認することが出来た。
つまり、少し前までは間違いなくそこにバードマンがいたはずなのだ。
……そもそも、ゼオンや黄金のドラゴンよりも小さいとはいえ、それでも十メートル近い大きさを持つバードマンを見つけられないというのはおかしい。
「こちらでも色々と見て回ったんだけどね。やっぱり痕跡はあっても、本人はどこにもいなかったよ」
「そう、ですか。……俺がすぐに動いていれば、何とかなったかもしれないんですが……」
悔しげに呟くアラン。
いつも以上に集中してフェルスを動かした影響もあってか、戦闘後は暫く激しい頭痛に襲われたのだ。
何が原因かと考えれば、思いつくのはフェルスについてだけで、それが頭痛の原因と特定するのは難しくはない。
これからはフェルスの多用……いや、あそこまで深く集中してフェルスを使うのは、本当に危険なときだけにしようと、そう思う。
同時に、あの状態でフェルスを使うのに慣れれば、いずれは頭痛がない状態でフェルスを使いこなせるのではないかと、そんなこともあったが。
「気にしなくてもいいですよ。向こうが何を企んでいたのかは分かりませんが、ともあれ撃退出来たのです。聞いた話によれば、かなりのダメージを負わせたのでしょう?」
「それは、まぁ」
フェルスによって身体を内部から斬り裂かれ、ビームライフルの一撃を食らい、下からは黄金のドラゴンが放つレーザーブレスで貫かれたのだ。
それこそ、あのバードマンだからこそ原型を留めていたが、普通の敵なら間違いなく絶命し、それこそ肉片の一つも残さずに消滅していてもおかしくはない。
そう説明するアランに、イルゼンはそうでしょうと頷く。
あの戦いは、当然のように地上からえでも見えた。
はっきりとしたところまでは確認出来なかったが、最後にはバードマンがズタボロにやられていたのがしっかりと確認出来たのだ。
であれば、取りあえず自分たちがここにいる間に……それどころか、下手をすれば数ヶ月単位で動くことは出来ないだろうと予想するのは難しい話ではない。
「なら、今は気にする必要はありませんよ。……とはいえ、僕たちもいつまでもここにいる訳にはいかないので、大樹をどうするかという問題がありますが」
バードマンが大樹を攻撃していたのは明らかだ。
そうである以上、もしバードマンが今は動けなくても、アランたちがこの遺跡から出たあとで、また大樹を攻撃するようなことがあった場合、それを防ぐ方法はない。
「でも、そうするとどうします?」
「どうもしませんよ。いつまでもここにいられない以上、どうしようもないのは間違いないですし。僕たちに出来るのは、何かが起きるよりも前にさっさとこの遺跡を探索して脱出するだけです」
それは、言い方は悪いが自分たちが大樹の遺跡を出たあとでどうなっても構わないと、そう言ってるも同然だった。
とはいえ、それ以外に方法がないのも事実だ。
イルゼンが言うようにずっとここにいる訳にはいかないし、地上から誰か別の者を連れてきても、それこそバードマンが相手であれば、ゼオンや黄金のドラゴンといったくらいの強さがなければ、どうしようもない。
「とにかく、そんな訳で先を急ぎましょう。……あの大樹の根元に何があるのか。それを見つける必要がありますから」
そんなイルゼンの言葉に従い、雲海と黄金の薔薇の面々は大樹に向けて進むのだった。
「うお……これは……すげえ……」
大樹の側までやって来ると、まさに目の前に広がっているのは木ではなく壁と呼ぶに相応しいような、そんな光景が目の前に広がっていた。
探索者の一人が思わずといった様子で呟いたが、それは他の者にとっても同意するべき言葉だ。
遠くから見た時も、大樹と呼ぶに相応しい巨大さがあるというのは分かっていた。
だが、それでもこうして間近で見ると、その巨大さについては驚くべき姿だ。
「さて、皆さん」
ぱん、と。
イルゼンがそう言いながら、手を叩く。
その音に、大樹に目を奪われていた者たちも我に返る。
「大樹はたしかに素晴らしいですが、いつまでも見ている訳にはいきません。私たちは、元々この遺跡を攻略するために来たのですから」
遺跡の攻略というのは、特に何か規定がある訳ではない。
だが、一般的にはその遺跡の最深部まで到達し、古代魔法文明が残した何らかの遺産を持ち替えれば、それによって攻略したと見なされる。
イルゼンの言葉に、聞いていた多くの者たちが何らかの遺産を探すべく周囲を見て回り始めるのだが……
「おいおいおいおい、ここって何もないぞ? 大樹の遺跡ってくらいだから、大樹があるのは分かるけど、大樹しかないってのは、一体何なんだよ!」
探索者の一人が叫ぶ。
実際、その言葉は周囲にいる者達にとっても同意出来るものなのは間違いなかった。
大抵の遺跡なら、最下層には何らかのお宝の類があってもおかしくはないのに、現在いるここには本当に大樹しか存在しないのだ。
「まさか、この大樹を持っていく訳にはいかないし……」
「いえ、そうでもありませんよ」
探索者の一人が大樹を見上げながら呟いた言葉に、イルゼンが反応する。
は? といった視線を向けられたイルゼンだったが、大樹の皮を短剣で削って何かを確認するように口に運ぶ。
「やはり。……この大樹の皮はポーションの素材としては最適な代物です。それこそ、かなり効果の高いポーションを作れますよ。また、枝は……伐採するのが少し難しいですが、魔法使いが使う杖としては高性能になるでしょうね」
イルゼンの言葉に、大樹の周囲に何かないかと調べていた者たち全員が驚き、やがてアランが口を開く。
「じゃあ、イルゼンさん。この遺跡にあるお宝は、この大樹ってことなんですか?」
「そうでしょうね。これは僕にとっても予想外でした。てっきり、植物の生長を促す何かがあったり、もしくはこの遺跡のように空間を広げるといったアーティファクトがあると思ってたんですが」
イルゼンの口からは残念そうな声が漏れるが、そう言いながらも表情はいつものように飄々としており、本当に残念に思っているのかどうかは、アランには分からなかった。
ともあれ、今の状況を考えれば素材は採れるだけ採った方がいい。
この大樹の皮や葉、枝、それに外にも様々な素材は、間違いなく巨額の利益を得られるのだから。
「うーん、そうなるとこの遺跡はこの大樹を守るために作られた遺跡だった? だとすれば、砂漠のような階層があったのも納得は出来るのですが」
何かを考えているイルゼンをよそに、アランもまた素材となる部位を採取していく。
(古代魔法文明の遺跡なんだから、こういう感じでもおかしくはない……のか? 個人的には、出来れば心核とかがあってもおかしくはないと思ったんだけど)
心核使いというのは、個人の才能によって違うが、基本的に一人で戦場を覆すだけの能力を持つ。
それだけに、心核というのは多ければ多いほどいい。
それも、敵から奪ってすぐには使えない心核ではなく、入手してすぐにでも使えるような、そんな心核であればなおのこと。
これだけの深さを持つ遺跡で、空間を弄って内部には砂漠や森のような地形まであるのだから、心核があってもおかしくはなかった。
だが、実際には心核の類はどこにも存在せず……
「心核だ! 心核があったぞ!」
「……え?」
心核がないと、そう残念そうに考えていたアランだったが、まさにそのタイミングを狙ったかのように、そんな声が響く。
当然のように、そんな声が響けば周囲にいる皆がその声のした方に視線を向けるのは当然であり……
「うわ、マジでケラーノさん、心核持ってるよ」
アランは唖然として、ケラーノが手にしている心核を見る。
ケラーノ……それは雲海の探索者の一人だ。
植物に対する好奇心が旺盛で、大樹の採取についても嬉々として行っていた人物。
あるいは、そんな人物だからこそ心核を見つけたのかもしれないが。
「うおおおおおおっ! 凄ぇっ!」
「ケラーノって、とんでもないところで剛運だよな」
「羨ましいわね。本当に羨ましいわね。……月のない夜は気をつけてね」
「って、おい! 襲う気満々じゃねえか!」
そんなやり取りをしながら、皆がケラーノに駆け寄っていき、乱暴に叩いて祝福する。
……中にはかなり嫉妬の籠もった一撃もあったが。
ともあれ、そんなやり取りが終了すると、次に気になるのはケラーノが心核を使った場合、どのようなモンスターになるのかだろう。
アランのゼオンやレオノーラの黄金のドラゴンのことを思えば、期待が高くなるのは当然のことだった。
そして皆の期待の声を裏切るほどに、ケラーノも空気を読めない訳ではない。
……いや、むしろ自分がどのようなモンスターに変身出来るのかは、ケラーノ自身が一番知りたかっただろう。
皆に言われるように、心核に集中し……次の瞬間、その姿は一本の木に変わる。
正確には、木の幹に顔がある……トレントだ。
植物に強い興味を持つケラーノらしい結果と言われればそうなのだが、この場合問題なのは……
「トレントか、ケラーノらしいけど……なぁ、動けるか?」
カオグルがそんな疑問を口にする。
ジャスパーに対してはある程度丁寧な言葉遣いをするカオグルだったが、同年代のケラーノに対しては気安く呼び掛けていた。
そんなカオグルの言葉に、周囲の者達も気になったのかカオグルに視線を向ける。
トレントの中には根を足のようにして動く個体もいるが、そのような個体は少ない。
どちらかと言えば、動けずその場にいる者が大半であり……ケラーノの変身したトレントは、初めて心核を使った変身なのでまだ慣れておらず言葉を発するようなことはなかったが、その場から動くようなことはなかった。
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