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逆襲
122話
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「で? イルゼンさん、本当にザッカランを攻略することになったんですか?」
「ええ、本当です」
雲海の心核使いカオグルの言葉に、イルゼンはいつものように飄々とした笑みを浮かべて頷く。
そんなイルゼンの姿を見て、その話を聞いた多くの者が驚きの笑みを浮かべる。
当然だろう。
イルゼンが元々ザッカランの攻略を行うつもりだというのは前もって聞いていたが、それが実際に成功するとは思っていなかった者の方が多いのだから。
「ザッカランの近くの遺跡、通称大樹の遺跡は未だにまだ誰にも踏破されたことのない遺跡よ。また、ポーションの類が多く出ることでも知られているわね。……ただ、問題なのは……」
ふぅ、と。
話を聞いていたレオノーラは、アランの方を見てから息を吐く。
アランも大樹の遺跡は有名なので、そんなレオノーラの行為の理由は容易に想像出来た。つまり……
「狭いんだろ? それもかなり」
そんなアランの言葉は、間違いのない事実だ。
とはいえ、その狭さというのは普通の人にとっては行動に支障がない。
この場合の狭いというのは、あくまでもアランの……具体的には、ゼオンという全長十八メートルの人型機動兵器を使うアランにとっての狭さ。
アランの探索者としての才能は、心核使いに特化している形だ。
それだけに、心核使い以外の能力としては、毎日のように努力をしても、何とか平均にとどくかどうかといった程度の才能しかない。
そんなアランが、心核を使えないだろう大樹の遺跡に挑むとなれば、足手纏いにならないようにするのが精一杯といったところか。
ゼオンの全高が十八メートルなどという大きさではなく、もっと小さければ活躍の場は多かったのだろう。
だが、残念ながら全高が十八メートルである以上、心核使いとして遺跡の中で活躍出来る場所はどうしてもそこまで多くはない。
少なくても、大樹の遺跡でゼオンを使うのは無理だ。
……大きさだけで考えるならば、レオノーラが変身する黄金のドラゴンもゼオンと同等かそれ以上の大きさを持つので、大樹の遺跡では使うのは難しい。
だが、アランと違ってレオノーラは、心核使い以外……普通の探索者としての能力も一級品だ。
普通の人なら使いこなすのが難しい鞭を武器とし、魔法発動体でもあるその鞭を縦横無尽に使い、その実力は非常に高い。
そこがアランとレオノーラの違う場所であり、そういう意味ではレオノーラは大樹の遺跡に潜るとしても、そこまでの苦労はなかった。
「そうね。ゼオンのないアランの実力だとちょっと厳しいかしら」
アランの言葉にそう答えたのは、アランの母親にして師匠でもあるリア。
ハーフエルフであるがゆえに、その外見はまだ若々しい。
それこそ、アランと並んでいても母親ではなく姉と見間違えられることが多いくらいに。
そしてアランを鍛えているリアだからこそ、アランの実力が具体的にどれだけのものなのかを実際に知っている。
そんなリアから見て、アランがゼオン抜きで大樹の遺跡に挑むのは、自殺行為に等しいと思えた。
「ぴ!」
不意に、アランの懐の中でカロが鳴き声を上げる。
自分を忘れるなと、そう言っているのだろう。
「分かってるって。別に俺もお前の忘れている訳じゃないから、そこまで気にするな。……な?」
「ぴ? ぴぴ。ぴぴぴ」
アランのその言葉に、渋々といった様子で納得の声を上げるカロ。
そんなやり取りが面白かったのだろう。
見ていた者の多くが、笑い声を上げる。
……アランとしては、正直なところ自分が笑われた光景が面白いとは到底思えない。
思えないのだが……それでも、現在の状況を考えればこうして皆の緊張が多少なりとも解れるのなら、それもいいかと思い直す。
「ともあれ、アラン君は大樹の遺跡で苦労するかもしれませんね。……どうしますか? 今回は拠点の方に残っても構いませんが」
そう尋ねるイルゼンだったが、その言葉には挑発の色が強い。
そうなれば、当然のようにアランもそんなイルゼンの言葉に反発する。
「行きますよ。ゼオンが使えない今の状況では、俺はあまり役に立たないかもしれません。でも、全く何の役にも立たないってことはないですし、俺もまだ成長出来る筈です」
「結構。では、アラン君も探索組に入るということで」
あっさりと……そう、それはもうあっさりと、アランがそう言うのを最初から理解していたかのように、イルゼンはそう告げる。
(やられた)
イルゼンの掌の上で転がされたという思いが、アランの中にあった。
とはいえ、自分で決めたのだから、大樹の遺跡に向かうのを止めるといったことは思えない。
「それで、雲海の方はそのような感じで行く予定ですが……黄金の薔薇の方はどうします?」
イルゼンがそう尋ねたのは、黄金の薔薇を率いるレオノーラだ。
何だかんだと、今は雲海と一緒に行動している黄金の薔薇だったが、この先も自分たちと一緒に行動するのか。
そう尋ねたのだが、レオノーラはその言葉に当然といった様子で頷く。
「ええ、そのつもりよ、……もちろん、こっちが勝手に出て行った状況だから、雲海が私たちと一緒に行動するのが嫌だというのなら、それはしょうがないけど」
「いえいえ、構いませんよ。元々黄金の薔薇がラリアントから出て行ったのも、雲海に思うところがあったからではないのでしょう?」
「……そうね」
イルゼンも自分の立場から、レオノーラが何故ラリアントから出て行ったのかは、分かっている。
雲海の場合は、ガリンダミア帝国軍の狙っているのがゼオン……その心核使いたるアランである為に、逃げ出すような真似は出来なかった。
もしイルゼンがレオノーラの立場であれば、それこそ同じようにラリアントから一時的に離れていた可能性も高い。
そうである以上、イルゼンがレオノーラに対して不満を口にすることはない。
……実際にレオノーラが助けに来なければ、ラリアントの防衛戦は敗北していた可能性が高く、もしくはラリアントは持ち堪えていてもアランはガリンダミア帝国軍の心核使いに負けて捕虜になっていた可能性が高かった。
それを助けて貰った以上、イルゼンとしてはレオノーラに……そして黄金の薔薇に対して、思うところはなく、感謝しているくらいだった。
「さて、それでは話が決まりましたね。……そうなると、次の問題はどうやってザッカランを攻略するかですか……」
イルゼンの言葉に、それを聞いていた者たちは首を傾げる。
当然だろう。本来なら、その辺りを考えるのは自分達ではなくセレモーナのような者たちであるはずなのだから。
雲海と黄金の薔薇は、あくまでも緊急事態ということで、セレモーナ率いるラリアント軍に協力していたのであって、本来ならそこに自分たちが協力する必要はない。
だというのに、何故ここで自分たちがそのようなことを考えなければならないのか。
そんな不満がイルゼンに向けられるのは、当然のことだった。
だが、イルゼンはそんな視線を向けられても特に気にした様子もなく、口を開く。
「いいですか? ここで僕たちが協力してザッカランを占拠した場合、当然のように僕たちの発言力は大きくなります。そして発言力が大きくなれば、大樹の遺跡を攻略する際にも様々な優遇措置を受けることが出来ます。これは、普段なら出来ないことですよ」
イルゼンの説明に、聞いている者の多くが納得の表情を浮かべる。
同時に、雲海と黄金の薔薇の力があれば、その程度の優遇は特に必要がないのではないかと、そう思う者もいる。
当然のように、イルゼンもそのような思いを感じている者がいるというのは知っていたので、そのような者たちを相手に再び口を開く。
「今後探索者として活動していく上で優遇を受ける機会というのもあるでしょうから、それに慣れておいた方がいいでしょうね。何より、ザッカランはガリンダミア帝国の都市です。そこに所属する冒険者や探索者といった面々は、少なからず前回の戦いに参加していた可能性があります」
『う』
そこまで言われれば、イルゼンが何を言いたいのか聞いている者たちも理解したのだろう。
全員が言葉に詰まりながらも、イルゼンの説明に納得する。
冒険者ギルドや探索者ギルドというのは、基本的に国のいう枠の外にある組織だ。
だが、その国にあるギルドである以上、当然ながらそこのギルドを利用している者は、その国に住んでいる者が大半だ。
中には旅をしながら依頼を受けている冒険者や探索者といった面々がいるのも事実だが、そのような者は少数でしかない。
そんなザッカランに、自分たちの仲間を殺した勢力の者たちがやってきたらどうなるか。
ましてや、ザッカランはこれからセレモーナ率いる部隊によって占領することを目的としている。
そうである以上、友好的に接して貰えると考える方が間違いだろう。
いや、無視されるだけならまだしも、家族や友人、恋人の仇といった風に攻撃される可能性すらある。
そのような相手に頼るよりは、やはりラリアント防衛戦で一緒に戦った戦友たちを頼った方がいいのは間違いない。
「なるほど。それでザッカランを攻める部隊に恩を売るってことね」
リアが納得したように頷く。
他の者たちも、リアの言葉に同意していた。
いつ襲ってきても分からないような相手より、一緒の戦場で戦った相手の方が信頼出来るというのは、間違いのない事実なのだ。
それを思えば、ザッカランの攻略に積極的に協力するというイルゼンの言葉には強い説得力がある。
ラリアントの領主代理を務めているセレモーナにしても、雲海や黄金の薔薇といった高い戦闘力を持つ者たちが協力してくれるのなら、それに不満を抱くことはないはずだった。
(いや、あるいは最初から俺たちが協力するのを前提としてザッカランの攻略を考えてるかも? ゼオンとかがあれば、攻城戦はかなりかなり有利なんだし。……何より、イルゼンさんが持ってきた話だから、最初からもう大体の話は決まっていてもおかしくないんだよな)
アランはイルゼンの姿を見ながら、しみじみとそう思うのだった。
「ええ、本当です」
雲海の心核使いカオグルの言葉に、イルゼンはいつものように飄々とした笑みを浮かべて頷く。
そんなイルゼンの姿を見て、その話を聞いた多くの者が驚きの笑みを浮かべる。
当然だろう。
イルゼンが元々ザッカランの攻略を行うつもりだというのは前もって聞いていたが、それが実際に成功するとは思っていなかった者の方が多いのだから。
「ザッカランの近くの遺跡、通称大樹の遺跡は未だにまだ誰にも踏破されたことのない遺跡よ。また、ポーションの類が多く出ることでも知られているわね。……ただ、問題なのは……」
ふぅ、と。
話を聞いていたレオノーラは、アランの方を見てから息を吐く。
アランも大樹の遺跡は有名なので、そんなレオノーラの行為の理由は容易に想像出来た。つまり……
「狭いんだろ? それもかなり」
そんなアランの言葉は、間違いのない事実だ。
とはいえ、その狭さというのは普通の人にとっては行動に支障がない。
この場合の狭いというのは、あくまでもアランの……具体的には、ゼオンという全長十八メートルの人型機動兵器を使うアランにとっての狭さ。
アランの探索者としての才能は、心核使いに特化している形だ。
それだけに、心核使い以外の能力としては、毎日のように努力をしても、何とか平均にとどくかどうかといった程度の才能しかない。
そんなアランが、心核を使えないだろう大樹の遺跡に挑むとなれば、足手纏いにならないようにするのが精一杯といったところか。
ゼオンの全高が十八メートルなどという大きさではなく、もっと小さければ活躍の場は多かったのだろう。
だが、残念ながら全高が十八メートルである以上、心核使いとして遺跡の中で活躍出来る場所はどうしてもそこまで多くはない。
少なくても、大樹の遺跡でゼオンを使うのは無理だ。
……大きさだけで考えるならば、レオノーラが変身する黄金のドラゴンもゼオンと同等かそれ以上の大きさを持つので、大樹の遺跡では使うのは難しい。
だが、アランと違ってレオノーラは、心核使い以外……普通の探索者としての能力も一級品だ。
普通の人なら使いこなすのが難しい鞭を武器とし、魔法発動体でもあるその鞭を縦横無尽に使い、その実力は非常に高い。
そこがアランとレオノーラの違う場所であり、そういう意味ではレオノーラは大樹の遺跡に潜るとしても、そこまでの苦労はなかった。
「そうね。ゼオンのないアランの実力だとちょっと厳しいかしら」
アランの言葉にそう答えたのは、アランの母親にして師匠でもあるリア。
ハーフエルフであるがゆえに、その外見はまだ若々しい。
それこそ、アランと並んでいても母親ではなく姉と見間違えられることが多いくらいに。
そしてアランを鍛えているリアだからこそ、アランの実力が具体的にどれだけのものなのかを実際に知っている。
そんなリアから見て、アランがゼオン抜きで大樹の遺跡に挑むのは、自殺行為に等しいと思えた。
「ぴ!」
不意に、アランの懐の中でカロが鳴き声を上げる。
自分を忘れるなと、そう言っているのだろう。
「分かってるって。別に俺もお前の忘れている訳じゃないから、そこまで気にするな。……な?」
「ぴ? ぴぴ。ぴぴぴ」
アランのその言葉に、渋々といった様子で納得の声を上げるカロ。
そんなやり取りが面白かったのだろう。
見ていた者の多くが、笑い声を上げる。
……アランとしては、正直なところ自分が笑われた光景が面白いとは到底思えない。
思えないのだが……それでも、現在の状況を考えればこうして皆の緊張が多少なりとも解れるのなら、それもいいかと思い直す。
「ともあれ、アラン君は大樹の遺跡で苦労するかもしれませんね。……どうしますか? 今回は拠点の方に残っても構いませんが」
そう尋ねるイルゼンだったが、その言葉には挑発の色が強い。
そうなれば、当然のようにアランもそんなイルゼンの言葉に反発する。
「行きますよ。ゼオンが使えない今の状況では、俺はあまり役に立たないかもしれません。でも、全く何の役にも立たないってことはないですし、俺もまだ成長出来る筈です」
「結構。では、アラン君も探索組に入るということで」
あっさりと……そう、それはもうあっさりと、アランがそう言うのを最初から理解していたかのように、イルゼンはそう告げる。
(やられた)
イルゼンの掌の上で転がされたという思いが、アランの中にあった。
とはいえ、自分で決めたのだから、大樹の遺跡に向かうのを止めるといったことは思えない。
「それで、雲海の方はそのような感じで行く予定ですが……黄金の薔薇の方はどうします?」
イルゼンがそう尋ねたのは、黄金の薔薇を率いるレオノーラだ。
何だかんだと、今は雲海と一緒に行動している黄金の薔薇だったが、この先も自分たちと一緒に行動するのか。
そう尋ねたのだが、レオノーラはその言葉に当然といった様子で頷く。
「ええ、そのつもりよ、……もちろん、こっちが勝手に出て行った状況だから、雲海が私たちと一緒に行動するのが嫌だというのなら、それはしょうがないけど」
「いえいえ、構いませんよ。元々黄金の薔薇がラリアントから出て行ったのも、雲海に思うところがあったからではないのでしょう?」
「……そうね」
イルゼンも自分の立場から、レオノーラが何故ラリアントから出て行ったのかは、分かっている。
雲海の場合は、ガリンダミア帝国軍の狙っているのがゼオン……その心核使いたるアランである為に、逃げ出すような真似は出来なかった。
もしイルゼンがレオノーラの立場であれば、それこそ同じようにラリアントから一時的に離れていた可能性も高い。
そうである以上、イルゼンがレオノーラに対して不満を口にすることはない。
……実際にレオノーラが助けに来なければ、ラリアントの防衛戦は敗北していた可能性が高く、もしくはラリアントは持ち堪えていてもアランはガリンダミア帝国軍の心核使いに負けて捕虜になっていた可能性が高かった。
それを助けて貰った以上、イルゼンとしてはレオノーラに……そして黄金の薔薇に対して、思うところはなく、感謝しているくらいだった。
「さて、それでは話が決まりましたね。……そうなると、次の問題はどうやってザッカランを攻略するかですか……」
イルゼンの言葉に、それを聞いていた者たちは首を傾げる。
当然だろう。本来なら、その辺りを考えるのは自分達ではなくセレモーナのような者たちであるはずなのだから。
雲海と黄金の薔薇は、あくまでも緊急事態ということで、セレモーナ率いるラリアント軍に協力していたのであって、本来ならそこに自分たちが協力する必要はない。
だというのに、何故ここで自分たちがそのようなことを考えなければならないのか。
そんな不満がイルゼンに向けられるのは、当然のことだった。
だが、イルゼンはそんな視線を向けられても特に気にした様子もなく、口を開く。
「いいですか? ここで僕たちが協力してザッカランを占拠した場合、当然のように僕たちの発言力は大きくなります。そして発言力が大きくなれば、大樹の遺跡を攻略する際にも様々な優遇措置を受けることが出来ます。これは、普段なら出来ないことですよ」
イルゼンの説明に、聞いている者の多くが納得の表情を浮かべる。
同時に、雲海と黄金の薔薇の力があれば、その程度の優遇は特に必要がないのではないかと、そう思う者もいる。
当然のように、イルゼンもそのような思いを感じている者がいるというのは知っていたので、そのような者たちを相手に再び口を開く。
「今後探索者として活動していく上で優遇を受ける機会というのもあるでしょうから、それに慣れておいた方がいいでしょうね。何より、ザッカランはガリンダミア帝国の都市です。そこに所属する冒険者や探索者といった面々は、少なからず前回の戦いに参加していた可能性があります」
『う』
そこまで言われれば、イルゼンが何を言いたいのか聞いている者たちも理解したのだろう。
全員が言葉に詰まりながらも、イルゼンの説明に納得する。
冒険者ギルドや探索者ギルドというのは、基本的に国のいう枠の外にある組織だ。
だが、その国にあるギルドである以上、当然ながらそこのギルドを利用している者は、その国に住んでいる者が大半だ。
中には旅をしながら依頼を受けている冒険者や探索者といった面々がいるのも事実だが、そのような者は少数でしかない。
そんなザッカランに、自分たちの仲間を殺した勢力の者たちがやってきたらどうなるか。
ましてや、ザッカランはこれからセレモーナ率いる部隊によって占領することを目的としている。
そうである以上、友好的に接して貰えると考える方が間違いだろう。
いや、無視されるだけならまだしも、家族や友人、恋人の仇といった風に攻撃される可能性すらある。
そのような相手に頼るよりは、やはりラリアント防衛戦で一緒に戦った戦友たちを頼った方がいいのは間違いない。
「なるほど。それでザッカランを攻める部隊に恩を売るってことね」
リアが納得したように頷く。
他の者たちも、リアの言葉に同意していた。
いつ襲ってきても分からないような相手より、一緒の戦場で戦った相手の方が信頼出来るというのは、間違いのない事実なのだ。
それを思えば、ザッカランの攻略に積極的に協力するというイルゼンの言葉には強い説得力がある。
ラリアントの領主代理を務めているセレモーナにしても、雲海や黄金の薔薇といった高い戦闘力を持つ者たちが協力してくれるのなら、それに不満を抱くことはないはずだった。
(いや、あるいは最初から俺たちが協力するのを前提としてザッカランの攻略を考えてるかも? ゼオンとかがあれば、攻城戦はかなりかなり有利なんだし。……何より、イルゼンさんが持ってきた話だから、最初からもう大体の話は決まっていてもおかしくないんだよな)
アランはイルゼンの姿を見ながら、しみじみとそう思うのだった。
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