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ラリアント防衛戦
096話
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敵を圧倒している巨大なオークだったが、それを見るモリクの表情は厳しい。
「誰が出撃を許可した! 心核使いの出撃は、敵が心核使いを出してきてからか、こちらからの命令があってからだと十分に言っておいたはずだぞ!」
苛立ちも露わに怒鳴るモリク。
参謀はそんなモリクに対し、冷静になりながら口を開く。
「どうやら独断で出撃したようですね。……正直なところ、今この状態で出撃する意味があるとは思えないのですが。ただ、心核使いの中にはアランに対して不満を持っていた者もいるので、それが爆発した形かと」
「それで暴走したのか? 厄介な真似をしてくれる。ああいう奴がいるから、面倒なことになる」
「それでどうします?」
見捨てるのですか? と参謀が視線で尋ねるが、モリクとしてはその意見を採用は出来ない。
個人的には、あのような自分勝手な者は見捨てたいと思わないでもなかったのだが、今のラリアント軍はただでさえガリンダミア帝国軍に戦力で負けている。
そんな中で心核使いをみすみす見捨てるような真似は、到底出来なかった。
「救う。向こうが心核使いを出すよりも前に、さっさと奴を回収しろ。今はいいが、これはそう長く保たないぞ」
今は一般の……それもガリンダミア帝国に占領された小国から徴兵された兵士が相手だから、こうして一方的に蹂躙出来ている。
だが、それは今だからこそだ。
心核使いを相手にするのは、よほどの腕利きではない限り心核使いが一般的であり……
「遅かったようです」
戦場を見て、参謀が冷静に呟く。
その言葉を聞いたグリムが参謀の視線を追うと、その先にあったのは、三匹のモンスター。
それがただのモンスターではなく、ガリンダミア帝国軍の心核使いであることは、モンスターたちの行動を見れば明らかだ。
ガリンダミア帝国軍の兵士たちには危害を加えるようなことはせず、前に……オークが暴れている場所に向かって進んでいるのだから。
「このままでは危険だ。すぐにこちらも心核使いを出せ! ただし、あくまでも目的はあの馬鹿者の救出だ! 敵の心核使いと本格的に戦うような真似をするな! ここで心核使い同士が戦うようなことになれば、心核使いの数が少ないこっちが不利になる!」
モリクの指示に従い、参謀は近くにいた伝令の兵士に素早く指示を出す。
走り去った伝令の後ろ姿を見ながら、モリクは今日まで十分に働いてくれたアランに期待する。
アランの心核で呼び出されるゼオンが極めて強力なのは、ザラクニアとの戦いで十分に理解している。
だからこそ、このような状況であってもどうにか出来るのではないか。……いや、して欲しい、と。
そんな風に思いながら、モリクは改めて戦場に視線を向ける。
モリクの視線の先では、やはりというべきかオークが三匹のモンスターによって圧倒されている。
つい先程までは兵士を蹂躙していたとは思えない光景。
兵士が振るう武器では、脂肪とその下にある厚い筋肉の鎧を貫くことは出来なかったが、相手が自分と同じ心核使いとなれば話は変わってくる。
防御に徹することで何とかまだ倒されていないが、それもいつまで頑張れるのかは分からない。
(あのような者でも、心核使いは貴重だ。……アラン、頼む)
戦場を眺めつつ、モリクはアランが出来るだけ早く戦場に出て来るように期待するのだった。
モリクがアランに期待している頃、そのアランは……
「え? 俺がですか? 別に俺じゃなくてもいいんじゃ?」
命令を持ってきた兵士に対し、アランはそう答える。
あのオークに変身した心核使いは、今まで何度もアランに絡んできた相手だ。
戦場に出る前にも、臆病者に本当の戦闘を見せてやるといった風に何度となく攻撃的な言葉を吐いてきた相手なのだ。
そうである以上、アランの気分的にはそんな相手を助けたいとは思えない。
だが、兵士としてはそうもいかない。
「頼む。あのような者であっても、今のラリアントには重要な戦力なんだ」
その言葉は決して大袈裟なものではない。
実際に心核使いというだけで十分な戦力として期待出来るのは間違いないし、事実兵士たちを相手にしてではあるが一方的に蹂躙していたのだから。
今も、三匹のモンスターを相手にしているので苦戦しているが、それはあくまでも三匹だからだ。
一匹が相手であれば、どうとでも対処出来た可能性はあった。
「行ってきたらどうだ? アランには面白くないかもしれないが、あいつが戦力として有用な存在なのも事実なんだ。そうである以上、その戦力をここで失うのはラリアントとしても面白くはない」
雲海の探索者の一人が、アランにそう言う。
アランに出撃して欲しいという要請を持ってきた兵士も、その探索者の言葉に何度も頷く。
「そうだ。ラリアントとしては、心核使いを失いたくはない」
「……けど、逃げようと思えば、逃げられるんじゃ?」
戦うのは無理だが、逃げようと思えば逃げられる。
それが、戦場を見たアランの正直な気持ちだった。
だが、そんなアランに兵士は首を横に振る。
「いや、それは難しい。逃げる気配を見せれば、それこそ逃がしてたまるかとより一層強力な攻撃をするだろう」
「アラン、いいか? お前に何度も絡んでくる奴だったが、ここでお前に助けられたらどうなる? アランに助けられた以上、これからは絡みにくくなるんじゃないか?」
「それは……まぁ、そうかもしれないけど」
「だろう? なら、お前が助けに行ってもいいんじゃないか?」
「……分かったよ」
アランとしても、自分の我が儘でラリアントを守る戦力が減るというのは好ましいものではない。
ラリアントが負けるということは、ゼオンの呼ぶことが出来る自分の身が危険に晒されるということを意味しているのだから。
そうである以上、アランとしてはこの一件について妥協をするしかない。
「じゃあ、そんな訳でっちょっと行ってきますね。あの暴れてるオークを連れ戻してくればいいんですよね?」
そう言うと、すぐに城壁に向かう。
現在アランがいた場所は、城壁からそう離れていない。
当然だろう。雲海はラリアントに残った戦力の中でも精鋭部隊の一つだ。
そうである以上、当然のようにいざとなったらすぐにでも出撃出来るように待機しておくのは当然だった。
「カロ、頼む」
「ぴ!」
城壁の上に上がると、すぐに心核を取り出してゼオンを呼び出すアラン。
……城壁の上に呼びだせば城壁が壊れてしまうというのは分かっていたので、呼びだしたのは城壁の外だ。
呼びだした次の瞬間、アランの姿はゼオンのコックピットの中にあった。
「さて、俺がやるべきなのは……まずはあっちだな」
呟き、ゼオンの映像モニタに視線を向ける。
そこに映し出されたのは、防御に徹しているオークと、そのオークを一方的に攻撃している三匹のモンスター。
まずやるべきなのは、今回俺が任された理由たるオークの救出。
ゼオンの姿が現れたというのに、三匹のモンスターは行動を止める様子はない。
いや、むしろゼオンが姿を現したからこそ、出来るだけ早く目の前のオークを倒してしまいたいという思いを抱いているのか、必死になって攻撃を行っていた。
向こうも、ゼオンの存在には当然気が付いてはいるのだろうが、そんなゼオンがオークを助けに来たというのは理解している以上、そのオークが助け出される前に倒してしまおうという考えなのだろう。
それはアランにも理解出来る。出来るが……だからといって、向こうの思い通りにさせる訳にはいかないのも事実。
周辺のガリンダミア帝国軍の兵士がゼオン姿に驚き、襲撃されたときのことを思い出しているのか半ば恐慌状態になっているを眺めつつ、アランはゼオンにビームライフルを構えさせる。
この状況で使える武器としては、やはりビームライフルが最適だったのが大きい。
本来なら腹部拡散ビーム砲を使うのがいいのかもしれないが、広範囲に攻撃出来る以上、下手をすればオークを巻き込む可能性もあった。
……アランの正直な気持ちとしては、散々絡まれた以上は、多少オークに被害を与えても構わないのではないかと思えたのだが。
それでもラリアントの数少ない心核使いという戦力である以上、それを放っておくといった真似は出来るはずもなかった。
ビームライフルのトリガーを引こうとし……瞬間、映像モニタの隅に表示された映像を見て、半ば反射的にアランはゼオンのスラスターを噴射させ、その場から退避する。
突然ゼオンを動かした影響で、少し離れた場所にいたガリンダミア帝国軍の兵士達にぶつかり、吹き飛ばしたのだが、今はそんなことに構ってはいられない。
そもそもガリンダミア帝国軍は敵である以上、それを気にする必要がなかったというのも大きい。
「ちっ、向こうも好きはさせてくれないか。……当然のことだけど」
ガリンダミア帝国軍も、ゼオンがどれだけ驚異的な存在なのかというのはこれ以上ないほどに理解している。
であれば、そのゼオンが現れた以上は出来る限り無効化させようと考えるのは、ある意味で当然だった。
ラリアント攻略において、現時点で一番の難関は何なのかと言われれば、ガリンダミア帝国軍は間違いなくアラン……いや、ゼオンだと告げるだろう。
ラリアントを守っている者たち、その中でも特に心核使いたちにしてみれば、とてもではないが許容出来ることではなかっただろうが。
ともあれ、そのような理由によって倒せるのなら今のうちにゼオンを倒してしまいたいという思いがあったのだろう。
咄嗟に回避したアランだったが、アランの背後……城壁には鋭い針が……それも人間の腕ほどの長さもある針が突き立っていた。
攻撃をしてきた方向に視線を向けると、そこにあったのは背中から無数の巨大な針を生やした、全長三メートルほどのハリネズミのモンスター。
心核使いが変身したモンスターの一匹だというのは、見るからに明らかだ。
「取りあえず、最低限の仕事はさせて貰う!」
スラスターを全開にし、ビームライフルを撃ちながら急速にオークに突っ込んでいくゼオン。
ビームライフルの一撃がオークを攻撃していたモンスターに命中し、そのうちの一匹の身体の中心を貫き、もう二匹も手足を失うといったダメージを与えることが出来た。
そうしてダメージを与えて相手が怯み、混乱した一瞬の隙を突き、アランはオークをゼオンで捕まえて強引にその場から退避する。
途中で先程と同じ針が飛んできたが、何とかそれを回避することには成功するのだった。
「誰が出撃を許可した! 心核使いの出撃は、敵が心核使いを出してきてからか、こちらからの命令があってからだと十分に言っておいたはずだぞ!」
苛立ちも露わに怒鳴るモリク。
参謀はそんなモリクに対し、冷静になりながら口を開く。
「どうやら独断で出撃したようですね。……正直なところ、今この状態で出撃する意味があるとは思えないのですが。ただ、心核使いの中にはアランに対して不満を持っていた者もいるので、それが爆発した形かと」
「それで暴走したのか? 厄介な真似をしてくれる。ああいう奴がいるから、面倒なことになる」
「それでどうします?」
見捨てるのですか? と参謀が視線で尋ねるが、モリクとしてはその意見を採用は出来ない。
個人的には、あのような自分勝手な者は見捨てたいと思わないでもなかったのだが、今のラリアント軍はただでさえガリンダミア帝国軍に戦力で負けている。
そんな中で心核使いをみすみす見捨てるような真似は、到底出来なかった。
「救う。向こうが心核使いを出すよりも前に、さっさと奴を回収しろ。今はいいが、これはそう長く保たないぞ」
今は一般の……それもガリンダミア帝国に占領された小国から徴兵された兵士が相手だから、こうして一方的に蹂躙出来ている。
だが、それは今だからこそだ。
心核使いを相手にするのは、よほどの腕利きではない限り心核使いが一般的であり……
「遅かったようです」
戦場を見て、参謀が冷静に呟く。
その言葉を聞いたグリムが参謀の視線を追うと、その先にあったのは、三匹のモンスター。
それがただのモンスターではなく、ガリンダミア帝国軍の心核使いであることは、モンスターたちの行動を見れば明らかだ。
ガリンダミア帝国軍の兵士たちには危害を加えるようなことはせず、前に……オークが暴れている場所に向かって進んでいるのだから。
「このままでは危険だ。すぐにこちらも心核使いを出せ! ただし、あくまでも目的はあの馬鹿者の救出だ! 敵の心核使いと本格的に戦うような真似をするな! ここで心核使い同士が戦うようなことになれば、心核使いの数が少ないこっちが不利になる!」
モリクの指示に従い、参謀は近くにいた伝令の兵士に素早く指示を出す。
走り去った伝令の後ろ姿を見ながら、モリクは今日まで十分に働いてくれたアランに期待する。
アランの心核で呼び出されるゼオンが極めて強力なのは、ザラクニアとの戦いで十分に理解している。
だからこそ、このような状況であってもどうにか出来るのではないか。……いや、して欲しい、と。
そんな風に思いながら、モリクは改めて戦場に視線を向ける。
モリクの視線の先では、やはりというべきかオークが三匹のモンスターによって圧倒されている。
つい先程までは兵士を蹂躙していたとは思えない光景。
兵士が振るう武器では、脂肪とその下にある厚い筋肉の鎧を貫くことは出来なかったが、相手が自分と同じ心核使いとなれば話は変わってくる。
防御に徹することで何とかまだ倒されていないが、それもいつまで頑張れるのかは分からない。
(あのような者でも、心核使いは貴重だ。……アラン、頼む)
戦場を眺めつつ、モリクはアランが出来るだけ早く戦場に出て来るように期待するのだった。
モリクがアランに期待している頃、そのアランは……
「え? 俺がですか? 別に俺じゃなくてもいいんじゃ?」
命令を持ってきた兵士に対し、アランはそう答える。
あのオークに変身した心核使いは、今まで何度もアランに絡んできた相手だ。
戦場に出る前にも、臆病者に本当の戦闘を見せてやるといった風に何度となく攻撃的な言葉を吐いてきた相手なのだ。
そうである以上、アランの気分的にはそんな相手を助けたいとは思えない。
だが、兵士としてはそうもいかない。
「頼む。あのような者であっても、今のラリアントには重要な戦力なんだ」
その言葉は決して大袈裟なものではない。
実際に心核使いというだけで十分な戦力として期待出来るのは間違いないし、事実兵士たちを相手にしてではあるが一方的に蹂躙していたのだから。
今も、三匹のモンスターを相手にしているので苦戦しているが、それはあくまでも三匹だからだ。
一匹が相手であれば、どうとでも対処出来た可能性はあった。
「行ってきたらどうだ? アランには面白くないかもしれないが、あいつが戦力として有用な存在なのも事実なんだ。そうである以上、その戦力をここで失うのはラリアントとしても面白くはない」
雲海の探索者の一人が、アランにそう言う。
アランに出撃して欲しいという要請を持ってきた兵士も、その探索者の言葉に何度も頷く。
「そうだ。ラリアントとしては、心核使いを失いたくはない」
「……けど、逃げようと思えば、逃げられるんじゃ?」
戦うのは無理だが、逃げようと思えば逃げられる。
それが、戦場を見たアランの正直な気持ちだった。
だが、そんなアランに兵士は首を横に振る。
「いや、それは難しい。逃げる気配を見せれば、それこそ逃がしてたまるかとより一層強力な攻撃をするだろう」
「アラン、いいか? お前に何度も絡んでくる奴だったが、ここでお前に助けられたらどうなる? アランに助けられた以上、これからは絡みにくくなるんじゃないか?」
「それは……まぁ、そうかもしれないけど」
「だろう? なら、お前が助けに行ってもいいんじゃないか?」
「……分かったよ」
アランとしても、自分の我が儘でラリアントを守る戦力が減るというのは好ましいものではない。
ラリアントが負けるということは、ゼオンの呼ぶことが出来る自分の身が危険に晒されるということを意味しているのだから。
そうである以上、アランとしてはこの一件について妥協をするしかない。
「じゃあ、そんな訳でっちょっと行ってきますね。あの暴れてるオークを連れ戻してくればいいんですよね?」
そう言うと、すぐに城壁に向かう。
現在アランがいた場所は、城壁からそう離れていない。
当然だろう。雲海はラリアントに残った戦力の中でも精鋭部隊の一つだ。
そうである以上、当然のようにいざとなったらすぐにでも出撃出来るように待機しておくのは当然だった。
「カロ、頼む」
「ぴ!」
城壁の上に上がると、すぐに心核を取り出してゼオンを呼び出すアラン。
……城壁の上に呼びだせば城壁が壊れてしまうというのは分かっていたので、呼びだしたのは城壁の外だ。
呼びだした次の瞬間、アランの姿はゼオンのコックピットの中にあった。
「さて、俺がやるべきなのは……まずはあっちだな」
呟き、ゼオンの映像モニタに視線を向ける。
そこに映し出されたのは、防御に徹しているオークと、そのオークを一方的に攻撃している三匹のモンスター。
まずやるべきなのは、今回俺が任された理由たるオークの救出。
ゼオンの姿が現れたというのに、三匹のモンスターは行動を止める様子はない。
いや、むしろゼオンが姿を現したからこそ、出来るだけ早く目の前のオークを倒してしまいたいという思いを抱いているのか、必死になって攻撃を行っていた。
向こうも、ゼオンの存在には当然気が付いてはいるのだろうが、そんなゼオンがオークを助けに来たというのは理解している以上、そのオークが助け出される前に倒してしまおうという考えなのだろう。
それはアランにも理解出来る。出来るが……だからといって、向こうの思い通りにさせる訳にはいかないのも事実。
周辺のガリンダミア帝国軍の兵士がゼオン姿に驚き、襲撃されたときのことを思い出しているのか半ば恐慌状態になっているを眺めつつ、アランはゼオンにビームライフルを構えさせる。
この状況で使える武器としては、やはりビームライフルが最適だったのが大きい。
本来なら腹部拡散ビーム砲を使うのがいいのかもしれないが、広範囲に攻撃出来る以上、下手をすればオークを巻き込む可能性もあった。
……アランの正直な気持ちとしては、散々絡まれた以上は、多少オークに被害を与えても構わないのではないかと思えたのだが。
それでもラリアントの数少ない心核使いという戦力である以上、それを放っておくといった真似は出来るはずもなかった。
ビームライフルのトリガーを引こうとし……瞬間、映像モニタの隅に表示された映像を見て、半ば反射的にアランはゼオンのスラスターを噴射させ、その場から退避する。
突然ゼオンを動かした影響で、少し離れた場所にいたガリンダミア帝国軍の兵士達にぶつかり、吹き飛ばしたのだが、今はそんなことに構ってはいられない。
そもそもガリンダミア帝国軍は敵である以上、それを気にする必要がなかったというのも大きい。
「ちっ、向こうも好きはさせてくれないか。……当然のことだけど」
ガリンダミア帝国軍も、ゼオンがどれだけ驚異的な存在なのかというのはこれ以上ないほどに理解している。
であれば、そのゼオンが現れた以上は出来る限り無効化させようと考えるのは、ある意味で当然だった。
ラリアント攻略において、現時点で一番の難関は何なのかと言われれば、ガリンダミア帝国軍は間違いなくアラン……いや、ゼオンだと告げるだろう。
ラリアントを守っている者たち、その中でも特に心核使いたちにしてみれば、とてもではないが許容出来ることではなかっただろうが。
ともあれ、そのような理由によって倒せるのなら今のうちにゼオンを倒してしまいたいという思いがあったのだろう。
咄嗟に回避したアランだったが、アランの背後……城壁には鋭い針が……それも人間の腕ほどの長さもある針が突き立っていた。
攻撃をしてきた方向に視線を向けると、そこにあったのは背中から無数の巨大な針を生やした、全長三メートルほどのハリネズミのモンスター。
心核使いが変身したモンスターの一匹だというのは、見るからに明らかだ。
「取りあえず、最低限の仕事はさせて貰う!」
スラスターを全開にし、ビームライフルを撃ちながら急速にオークに突っ込んでいくゼオン。
ビームライフルの一撃がオークを攻撃していたモンスターに命中し、そのうちの一匹の身体の中心を貫き、もう二匹も手足を失うといったダメージを与えることが出来た。
そうしてダメージを与えて相手が怯み、混乱した一瞬の隙を突き、アランはオークをゼオンで捕まえて強引にその場から退避する。
途中で先程と同じ針が飛んできたが、何とかそれを回避することには成功するのだった。
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