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辺境にて
062話
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ゼオンが原因で今回の一件が起きたのか。
そう口にしたアランだったが、店主は即座に首を横に振る。
「いや、それはない。今回の件はそのような行き当たりばったりのようなものではなく、前々から念入りに計画されていたものだ。少なくても、俺のところに入っている情報から考えるとそうなっている」
腕利きの情報屋としての意地でそう告げてくる店主だったが、パーティでゼオンを見せたときのザラクニアの視線を覚えているアランにしてみれば、素直に納得出来ることではない。
そう思わせるほどの表情を、ザラクニアは浮かべていたのだ。
納得出来ていない様子のアランに、情報屋は言葉を続ける。
「もちろん、それが全く何も関係していないかと言えば、答えは否だ。だが、大筋では元々決まっていたのは間違いない。でなければ、ガリンダミア帝国の兵士や心核使いを盗賊としてこちらに呼び寄せるような真似が出来ると思うか?」
そう言われれば、アランも納得するしかない。
探索者と兵士では色々と違うことも多いが、遠征するのにどれだけの用意が必要になるのかというのは、物資を用意するときにアランも雲海の担当者と一緒に店を回って色々と買ったりするといった経験をしたことがあるため、感覚的に理解出来るものだった。
「つまり、今回の一件は元々仕組まれていたところに、私たちが自分から飛び込んでしまったと?」
「そうだな。もっとも、俺が知ってる限りでは実際に行動を起こすまでは半月から一ヶ月程先だったはずだ。それが早まったのは、もしかしたらそっちの奴が言うように、心核が原因かもしれないがな」
心核は非常に貴重な代物ではあるが、それを一つ入手するために、恐らくは長い時間をかけて計画された作戦を前倒ししてまでやるか? と普通なら思うだろう。
あるいは、ラリアントに心核使いが一人もいないのであれば、そう考えたかもしれないが、ラリアントにも心核使いはいる。
だが……そう、だが。
ゼオンを見たときのザラクニアの表情を思い浮かべると、どうしてもアランはゼオンを欲して計画を前倒しにしたのではないかと、そう思ってしまう。
兵士たちの訓練のために、アランたち教官として雇うというのも、そこに繋がっていたのではないかと。
「……一つ聞きたいんだけど」
ふと、レオノーラが店主に視線を向けてそう告げる。
レオノーラの目にあるのは、強い……いや、厳しい光だ。
それこそ、目の前の店主を責めるかのような、そんな光。
「何だ? まぁ、大体は理解出来るけど。……何でそこまで分かってるのに、俺が何も動かなかったってことだろ?」
「ええ。そこまで分かってるのになら、それこそ誰かに知らせるなりなんなりして、今回の行動を前もって防げたんだじゃない?」
「無理だっただろうな。誰とザラクニアが繋がっていたのかまでは、俺にも分からない。それこそ、知らせた相手が実はザラクニアと繋がっていたという可能性だって否定は出来ないんだ。ザラクニアの人気は高いから、なおさらだな」
「なら、そんな怪しい動きを知ってもラリアントから逃げなかったのは? ここが戦場になる……かどうかは分からないけど、危険な場所なのは確実じゃない」
「ここは俺が生まれ育った場所だ。どうしようもないところはあるが、それでもここを捨てる真似は出来ねえ」
そう、店主は断言する。
このラリアントという都市を愛しているのだと。
そう告げる店主の言葉には、嘘がないようにアランには思えた。
レオノーラもまた、その言葉を信じたのか、頷いたあとで口を開く。
「分かったわ。それで、本題に入りたいのだけど……」
「ああ、雲海と黄金の薔薇が今どうしているのかということだったな」
「ええ。報酬として、さっき貴方が言ったザラクニアの野望を止めるのには全面的に協力させて貰うわ」
レオノーラは、全面的に協力をするとは言ったが、ザラクニアの野望を止めるとは断言しなかった。
それは手を抜くといったつもりからの言葉……という訳ではなく、単純に自分たちだけでどうにか出来ると断言は出来なかったからだ。
雲海と黄金の薔薇という、中規模のクランが二つある時点で……そしてアランとレオノーラが手に入れた心核が規格外の力を持っているのは事実だが、だからといってそれでどうにか出来るとは限らなかった。
いや、ゼオンや黄金のドラゴン、そして両者が合体したゼオリューンという戦力があれば、軍勢を薙ぎ払うようなことが出来るのは間違いない。
何しろ、以前遭遇したスタンピードでは、圧倒的な撃破数を誇っているのだから。
それに比べれば、兵士や騎士はいくら集まっても敵ではない。
だが……それが心核使いともなれば、話は変わってくる。
アランやレオノーラほどの強力な心核使いはそう多くはないだろうが、心核使いが数で襲ってくるようなことになれば、苦戦するのは間違いないのだ。
そして、今回の戦いでどれだけの心核使いが敵にいるのか分からない以上、決して勝てるとは断言出来ない。
店主もそれは分かっているのか、レオノーラの言葉に不満そうな様子は見せない。
「分かった。なら、早速だが本題だ。まず、雲海と黄金の薔薇の探索者たちは、半分くらいが現在ザラクニアに捕まっている」
「半分? じゃあ、残りのもう半分は……」
「ああ。無事に逃げ出している。泊まっていた場所を騎士たちに襲撃されたときに無事逃げ延びた者もいるし、そのとき偶然外出していたりな」
戦いを専門にしている騎士たちに奇襲され、それでも全員が捕まらなかったというのは、それだけ雲海や黄金の薔薇に所属している探索者たちの能力が高かったということだろう。
「捕まった人たちがどうなってるか分かる?」
「安心しろ。何を心配しているのかは予想出来るが、捕まった連中は牢屋にこそ入れられているものの、暴行を受けたりといった様子はない。恐らくまだ捕まってない連中を怒らせたりしたくないんだろうな」
その言葉に安堵するレオノーラ。
だが、それを聞いていたアランは、捕まった者たちの状況まで把握している店主の言葉に驚く。
(多分、兵士とか騎士とか、もしくはメイドとかの中に繋がってる奴がいるんだろうけど……それでも、情報があるのは助かるな)
驚きつつ、それでも納得したアランは、捕まっていない……現在もラリアントの中を逃げ回ってる者達について尋ねる。
「それで、現在逃げてる連中は?」
「色々だな。何人か固まって逃げてる奴もいれば、一人で逃げてる奴もいる」
「……そこまで把握してるということは、現在どこに誰がいるのかというのも、全てではないにしろ把握してると考えてもいいのかしら?」
「そうだな。ある程度は、だ。それに……少し前にラリアントに降ってきたゴーレムのことを思えば、お前たちを探して動き始めるんじゃないか?」
そう言い、店主はアランを見る。
実際、アランのゼオンは一般的なゴーレムとは違う。
それだけに、上空からラリアントに突入してきたゼオンの存在を知れば、間違いなくそれがゼオンだと……アランが乗っている存在だと、雲海のメンバーなら気が付く。
そして黄金の薔薇の者であれば、ゼオンがいるということは、そこにレオノーラがいるということにも気が付く。
結果として、ラリアントの中を逃げていた雲海の黄金の薔薇の面々の動きが活発になるのは当然だろう。
「そうでしょうね。ただ、問題なのは私たちがどこにいるのかを教えられないことかしら。街中で心核を起動すれば、ラリアントにいる他の心核使いたちがすぐに急行してくるでしょうし。それに……」
「そのような真似をすれば、向こうに大義名分を与えかねない、か」
レオノーラの言葉を続ける店主。
今でさえ、アランとレオノーラは……いや、雲海と黄金の薔薇のメンバーは、ラリアントで指名手配されているのだ。
そんな中、街中で心核を使ってゼオンや黄金のドラゴンになったりすれば、間違いなく罪状が追加される。
それも、現在のような出鱈目なものではなく、本当の意味での罪状が。
「だとすると、やっぱり個人で動いてそっちに合流して仲間を集めていくしかないんだが……いざというときに集まる場所は決めてないのか?」
「危ない場所でならともかく、まさかこのラリアントでこんな目に遭うとは思っていなかったもの。それでも集まる場所となると、一応私たちが泊まっていた場所がそうだけど……」
「まず、見張られているだろうな」
店主がそう断言する。
アランも、そのくらいのこと容易に予想出来た。
自分たちがラリアントで拠点として使っていた場所である以上、間違いなくザラクニアやその部下たちにしてみれば、そこは警戒しておくべき場所だろう。
また、従業員や近くに住んでいる者たちに、雲海や黄金の薔薇のメンバーがやって来たら知らせるようにと言ってあるのも間違いはない。
そのような場所に自分から行くような真似は、それこそ自殺行為以外のなにものでもない。
「そうなると、どこか他の場所は分からないの?」
「……そうだな。いくつか候補はある。何度か雲海や黄金の薔薇の連中を見たって情報が入ってきてる場所もあるしな」
「どこ?」
それこそが、レオノーラやアランたちが最も知りたい情報なのは間違いない。
店主は少し考え……やがて、口を開く。
「ジャクソンの店は知ってるか?」
「知らないわ」
「あ、俺知ってる」
レオノーラが知らないと言ったのに対し、アランはその店の存在を知っていた。
何故なら、その店は一緒に訓練をしていた兵士たちと何度か一緒にいった酒場だったからだ。
「そうか。なら、その店の場所については教える必要がないな。そのジャクソンの店の近くに、トラスートという宿がある。これは、訳ありの人物を匿う店だ。その分、値段は高いが」
店主の言葉に、レオノーラとアランはそれぞれ頷く。
そのような、裏の店とでも呼ぶべき店があるのは、この都市になれば当然の話だったからだ。
……もっとも、そのような店だけに普通はなかなか見つけられないのだが。
「そのトラスートに、雲海と黄金の薔薇の探索者が何人かいるはずだ。……これを持っていけば、話を聞いてくれる」
そう言い、店主はテーブルの上に一枚のコインを置くのだった。
そう口にしたアランだったが、店主は即座に首を横に振る。
「いや、それはない。今回の件はそのような行き当たりばったりのようなものではなく、前々から念入りに計画されていたものだ。少なくても、俺のところに入っている情報から考えるとそうなっている」
腕利きの情報屋としての意地でそう告げてくる店主だったが、パーティでゼオンを見せたときのザラクニアの視線を覚えているアランにしてみれば、素直に納得出来ることではない。
そう思わせるほどの表情を、ザラクニアは浮かべていたのだ。
納得出来ていない様子のアランに、情報屋は言葉を続ける。
「もちろん、それが全く何も関係していないかと言えば、答えは否だ。だが、大筋では元々決まっていたのは間違いない。でなければ、ガリンダミア帝国の兵士や心核使いを盗賊としてこちらに呼び寄せるような真似が出来ると思うか?」
そう言われれば、アランも納得するしかない。
探索者と兵士では色々と違うことも多いが、遠征するのにどれだけの用意が必要になるのかというのは、物資を用意するときにアランも雲海の担当者と一緒に店を回って色々と買ったりするといった経験をしたことがあるため、感覚的に理解出来るものだった。
「つまり、今回の一件は元々仕組まれていたところに、私たちが自分から飛び込んでしまったと?」
「そうだな。もっとも、俺が知ってる限りでは実際に行動を起こすまでは半月から一ヶ月程先だったはずだ。それが早まったのは、もしかしたらそっちの奴が言うように、心核が原因かもしれないがな」
心核は非常に貴重な代物ではあるが、それを一つ入手するために、恐らくは長い時間をかけて計画された作戦を前倒ししてまでやるか? と普通なら思うだろう。
あるいは、ラリアントに心核使いが一人もいないのであれば、そう考えたかもしれないが、ラリアントにも心核使いはいる。
だが……そう、だが。
ゼオンを見たときのザラクニアの表情を思い浮かべると、どうしてもアランはゼオンを欲して計画を前倒しにしたのではないかと、そう思ってしまう。
兵士たちの訓練のために、アランたち教官として雇うというのも、そこに繋がっていたのではないかと。
「……一つ聞きたいんだけど」
ふと、レオノーラが店主に視線を向けてそう告げる。
レオノーラの目にあるのは、強い……いや、厳しい光だ。
それこそ、目の前の店主を責めるかのような、そんな光。
「何だ? まぁ、大体は理解出来るけど。……何でそこまで分かってるのに、俺が何も動かなかったってことだろ?」
「ええ。そこまで分かってるのになら、それこそ誰かに知らせるなりなんなりして、今回の行動を前もって防げたんだじゃない?」
「無理だっただろうな。誰とザラクニアが繋がっていたのかまでは、俺にも分からない。それこそ、知らせた相手が実はザラクニアと繋がっていたという可能性だって否定は出来ないんだ。ザラクニアの人気は高いから、なおさらだな」
「なら、そんな怪しい動きを知ってもラリアントから逃げなかったのは? ここが戦場になる……かどうかは分からないけど、危険な場所なのは確実じゃない」
「ここは俺が生まれ育った場所だ。どうしようもないところはあるが、それでもここを捨てる真似は出来ねえ」
そう、店主は断言する。
このラリアントという都市を愛しているのだと。
そう告げる店主の言葉には、嘘がないようにアランには思えた。
レオノーラもまた、その言葉を信じたのか、頷いたあとで口を開く。
「分かったわ。それで、本題に入りたいのだけど……」
「ああ、雲海と黄金の薔薇が今どうしているのかということだったな」
「ええ。報酬として、さっき貴方が言ったザラクニアの野望を止めるのには全面的に協力させて貰うわ」
レオノーラは、全面的に協力をするとは言ったが、ザラクニアの野望を止めるとは断言しなかった。
それは手を抜くといったつもりからの言葉……という訳ではなく、単純に自分たちだけでどうにか出来ると断言は出来なかったからだ。
雲海と黄金の薔薇という、中規模のクランが二つある時点で……そしてアランとレオノーラが手に入れた心核が規格外の力を持っているのは事実だが、だからといってそれでどうにか出来るとは限らなかった。
いや、ゼオンや黄金のドラゴン、そして両者が合体したゼオリューンという戦力があれば、軍勢を薙ぎ払うようなことが出来るのは間違いない。
何しろ、以前遭遇したスタンピードでは、圧倒的な撃破数を誇っているのだから。
それに比べれば、兵士や騎士はいくら集まっても敵ではない。
だが……それが心核使いともなれば、話は変わってくる。
アランやレオノーラほどの強力な心核使いはそう多くはないだろうが、心核使いが数で襲ってくるようなことになれば、苦戦するのは間違いないのだ。
そして、今回の戦いでどれだけの心核使いが敵にいるのか分からない以上、決して勝てるとは断言出来ない。
店主もそれは分かっているのか、レオノーラの言葉に不満そうな様子は見せない。
「分かった。なら、早速だが本題だ。まず、雲海と黄金の薔薇の探索者たちは、半分くらいが現在ザラクニアに捕まっている」
「半分? じゃあ、残りのもう半分は……」
「ああ。無事に逃げ出している。泊まっていた場所を騎士たちに襲撃されたときに無事逃げ延びた者もいるし、そのとき偶然外出していたりな」
戦いを専門にしている騎士たちに奇襲され、それでも全員が捕まらなかったというのは、それだけ雲海や黄金の薔薇に所属している探索者たちの能力が高かったということだろう。
「捕まった人たちがどうなってるか分かる?」
「安心しろ。何を心配しているのかは予想出来るが、捕まった連中は牢屋にこそ入れられているものの、暴行を受けたりといった様子はない。恐らくまだ捕まってない連中を怒らせたりしたくないんだろうな」
その言葉に安堵するレオノーラ。
だが、それを聞いていたアランは、捕まった者たちの状況まで把握している店主の言葉に驚く。
(多分、兵士とか騎士とか、もしくはメイドとかの中に繋がってる奴がいるんだろうけど……それでも、情報があるのは助かるな)
驚きつつ、それでも納得したアランは、捕まっていない……現在もラリアントの中を逃げ回ってる者達について尋ねる。
「それで、現在逃げてる連中は?」
「色々だな。何人か固まって逃げてる奴もいれば、一人で逃げてる奴もいる」
「……そこまで把握してるということは、現在どこに誰がいるのかというのも、全てではないにしろ把握してると考えてもいいのかしら?」
「そうだな。ある程度は、だ。それに……少し前にラリアントに降ってきたゴーレムのことを思えば、お前たちを探して動き始めるんじゃないか?」
そう言い、店主はアランを見る。
実際、アランのゼオンは一般的なゴーレムとは違う。
それだけに、上空からラリアントに突入してきたゼオンの存在を知れば、間違いなくそれがゼオンだと……アランが乗っている存在だと、雲海のメンバーなら気が付く。
そして黄金の薔薇の者であれば、ゼオンがいるということは、そこにレオノーラがいるということにも気が付く。
結果として、ラリアントの中を逃げていた雲海の黄金の薔薇の面々の動きが活発になるのは当然だろう。
「そうでしょうね。ただ、問題なのは私たちがどこにいるのかを教えられないことかしら。街中で心核を起動すれば、ラリアントにいる他の心核使いたちがすぐに急行してくるでしょうし。それに……」
「そのような真似をすれば、向こうに大義名分を与えかねない、か」
レオノーラの言葉を続ける店主。
今でさえ、アランとレオノーラは……いや、雲海と黄金の薔薇のメンバーは、ラリアントで指名手配されているのだ。
そんな中、街中で心核を使ってゼオンや黄金のドラゴンになったりすれば、間違いなく罪状が追加される。
それも、現在のような出鱈目なものではなく、本当の意味での罪状が。
「だとすると、やっぱり個人で動いてそっちに合流して仲間を集めていくしかないんだが……いざというときに集まる場所は決めてないのか?」
「危ない場所でならともかく、まさかこのラリアントでこんな目に遭うとは思っていなかったもの。それでも集まる場所となると、一応私たちが泊まっていた場所がそうだけど……」
「まず、見張られているだろうな」
店主がそう断言する。
アランも、そのくらいのこと容易に予想出来た。
自分たちがラリアントで拠点として使っていた場所である以上、間違いなくザラクニアやその部下たちにしてみれば、そこは警戒しておくべき場所だろう。
また、従業員や近くに住んでいる者たちに、雲海や黄金の薔薇のメンバーがやって来たら知らせるようにと言ってあるのも間違いはない。
そのような場所に自分から行くような真似は、それこそ自殺行為以外のなにものでもない。
「そうなると、どこか他の場所は分からないの?」
「……そうだな。いくつか候補はある。何度か雲海や黄金の薔薇の連中を見たって情報が入ってきてる場所もあるしな」
「どこ?」
それこそが、レオノーラやアランたちが最も知りたい情報なのは間違いない。
店主は少し考え……やがて、口を開く。
「ジャクソンの店は知ってるか?」
「知らないわ」
「あ、俺知ってる」
レオノーラが知らないと言ったのに対し、アランはその店の存在を知っていた。
何故なら、その店は一緒に訓練をしていた兵士たちと何度か一緒にいった酒場だったからだ。
「そうか。なら、その店の場所については教える必要がないな。そのジャクソンの店の近くに、トラスートという宿がある。これは、訳ありの人物を匿う店だ。その分、値段は高いが」
店主の言葉に、レオノーラとアランはそれぞれ頷く。
そのような、裏の店とでも呼ぶべき店があるのは、この都市になれば当然の話だったからだ。
……もっとも、そのような店だけに普通はなかなか見つけられないのだが。
「そのトラスートに、雲海と黄金の薔薇の探索者が何人かいるはずだ。……これを持っていけば、話を聞いてくれる」
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