38 / 422
心核の入手
038話
しおりを挟む
ギガクラッシュによって、蔦が巻き付いていた鉱石は爆散した。
それを確認したアランは、慌てて周囲に視線を向ける。
謎の声により、スタンピードは鉱石と蔦を破壊すれば終わると、そう言われはしたものの、実際にそれが本当なのかどうかは分からなかったためだ。
だが……ゼオリューンの映像モニタに表示されていたのは、全てのモンスターがまるで電池が切れたかのように、その場で動きを止めており、一切動いていない様子だった。
これが、この場所……もしくはグラルスト遺跡だけでそうなっているのか、それとも今頃はモンスターの集団に襲われているだろうドーレストでも同じようになっているのか。
その辺はアランにも分からなかったが、取りあえずあの声が言っていたようにスタンピードが終わったのだろうというのは、予想出来た。
少なくても、これ以上はモンスターが生み出されるなり、召喚されるなりといったことはされないはずだった。
「ふぅ」
映像モニタでそれを確認したアラン、深く安堵の息を吐く。
取りあえず、今回のスタンピードは一段落したのは間違いないない、と。
だが、アランにはそのことに安堵する以外にもやっておくべきこと、やらなければならないことがあった。
それは、現在自分と同じゼオリューンのコックピットにいるレオノーラから、話を聞くこと。
ギガクラッシュという、日本でやっていたアニメを見ていなければ分からない必殺技を、転生者でもなんでもないレオノーラが知っているのは疑問でしかなかった。
あるいは同じ名前の別の必殺技ということも考えないではなかったのだが、レオノーラがフェルスを使って行ったギガクラッシュは、明らかにアランが知っているのとほぼ同じだったのだ。
そうである以上、偶然の一致で片付けるには無理がある。
(俺よりも前にこの世界にやってきた転生者とかがいるらしい痕跡はあちこちに残ってるから、もしかして、万が一、本当に万が一にも……って可能性は、ない訳じゃないんだけど)
どう言葉を出せばいいのか。
そう迷っていたアランだったが、アランが何かを言うよりも前にゼオリューンが再び光に包まれた。
「ちょっ、おい、待てよ! せっかくこれだけモンスターを倒したんだから、素材とかそういうのを……それに、あの鉱石だって……」
それらを確保したい。
そう言おうとしたアランだったが、転移魔法は半ば強制的にゼオリューンの身体を包み込み……そして、気が付けばゼオリューンはグラルスト遺跡のすぐ外に姿を現していたのだった。
「……嘘だろ……」
「全くね」
アランの言葉にレオノーラが同意するように呟くが、その言葉には不思議と残念そうな色がない。
レオノーラにしても、あれだけのモンスターの素材や魔石、討伐証明部位といった物を欲しない訳ではない。
また、アランが非常に残念がっている、鉱石の破片も出来れば持ってきたいとは思っていた。
だというのに、それでも残念そうな様子を見せなかったのは、今回の戦いでそんなものよりも大きな宝とでも言うべきものを見つけたからだ。
「取りあえず、スタンピードは終わったみたいね。ゼオリューンのレーダーにも、モンスターの反応はないわ」
「そうか。……やっぱり、あの鉱石を破壊したことで、スタンピードが終わったのか」
「恐らくは、だけどね。……ドーレストの方がどうなったのかは、まだ分からないわ。即座にスタンピードが終了したのか、それともスタンピードが終了するには、まだ時間がかかるのか」
「出来れば、前者であって欲しいんだけど……ん?」
言葉の途中でアランがそう呟いたのは、ゼオリューンが光に満ちてきたためだ。
それも、先程のような転移の光ではなく、また別の光。
レオノーラもそんないきなりの光に疑問を抱き……そんな二人は、気が付けば次の瞬間には地面に立っていた。
……そう、一瞬前までは間違いなくゼオリューンのコックピットに座っていたというのに、気が付けば直接自分の足で地面に立っていたのだ。
「えーと……これは、ゼオリューンになっていられた限界時間がすぎたってことか?」
『そうだ』
と、誰にともなく呟いたアランの言葉に答えたのは、今まで何度となくアランの頭の中に話しかけてきた声。
そして、今この状態だからこそか、アランにはその声がどこから聞こえてきたのかが理解出来た。
そう、それはアランの掌の中にある……
「カロ?」
いつもは『ピ』としか言わないはずのカロが、明らかに自分の頭の中に話しかけてきたと分かったのだ。
不思議そうに……いや、いっそ信じられないといった表情すら浮かべて、アランは手の中のカロに視線を向ける。
そんなアランの手の中で、カロは再び口を開く。……正確には、聞こえてきたのは頭の中だが。
『そうだ。私だ。……もっとも、今の状況では私が話すことの出来る時間は非常に限られている。今も、すぐ眠りにつくことになるだろう』
「おい、それどういうことだよ。お前はただの心核じゃないのか?」
「私が見た、あの記憶。あれもカロがやったの?」
アランとレオノーラがそれぞれにカロに尋ねるが、それを聞いたカロは再び二人の頭の中に声を発する。
『今はこれ以上は無理だ。だが……お前たちがもっと成長し、心核の力を本当の意味で覚醒することが出来れば……あるいは……今は、自らを鍛えることだけを考えろ』
それだけを告げ、カロの声は頭の中に響かなくなり……
「ぴ?」
次の瞬間、カロから聞こえてきたのは、アランにとっても馴染み深い鳴き声だった。
どうしたの? といった疑問を感じさせるその声に、アランは息を吐く。
アランの持つ心核だからこそだろう。先程まで聞こえてきた声の主が、今はどこにもいないということがはっきりと分かったからだ。
「駄目なの?」
「ああ、残念ながら時間切れらしい。……あー、畜生。結局ほとんど何も分からないままだったな」
半ば苛立ち混じりに呟いたアランだったが、それでも空は青く、どこかアランの中にあった苛立ちを消し去る……とまではいかなかったが、それでもある程度は解消してくれた。
そうして疲れを吐き出すように深呼吸をしてから、アランはレオノーラに視線を向ける。
アランの視線を向けられたレオノーラは、何を聞きたいのかということを理解し、意味ありげな笑みを浮かべて口を開く。
「そうね。私に起こったことを説明するのなら……アランも私が小さい頃の記憶をみたんじゃない?」
「……なるほど。言われてみればそうだよな。俺がレオノーラの記憶を見たんだから、その逆もあって当然な訳だ」
「そういうことね。もっとも……」
そこで一度言葉を切ったレオノーラは、じっとアランの顔を見てからそう告げる。
「まさか、異世界なんて存在があったとは思わなかったけどね。宮本荒人君」
「……ギガクラッシュを知ってる訳だ」
アランとしての記憶だけではなく、荒人としての記憶も見たのかと、納得する。
また、だからこそギガクラッシュを知っていたのかとも。
ただ……と、アランはそこでレオノーラを見る目に力を込めながら口を開く。
「今の俺は宮本荒人じゃなくて、アラン・グレイドだ。それは忘れないでくれ」
「そう、分かったわ」
アランの様子に、レオノーラはそう頷く。
アランなりに、色々と拘りがあるのだろうということを、理解したのだろう。
そんなアランの様子を見ていたレオノーラだったが、雰囲気を変えようとしたのか、それともただの興味本位なのか、笑みを浮かべてアランに話し掛ける。
「それにしても、アランが生きてきた日本という国、凄いわね。この世界とは比べものにならないくらい、文明が発達していたわ。TVで見たビルとか、凄かったもの」
「あー……うん。そういうのも見たんだ。何だか、俺がレオノーラの記憶を見るよりもレオノーラの方がかなり俺の記憶を楽しんで貰えたみたいだな」
重苦しくなった雰囲気を吹き飛ばそうとしたかのようなレオノーラの言葉に、アランは苦笑を浮かべる。
だが、不意にレオノーラの表情が真剣になったのを見て、疑問を抱く。
「どうした?」
「ううん。その……アランの友達の佐伯玲二って人がいたでしょう?」
「……ああ」
不意にレオノーラの口から出てきた前世での親しい友人の名前に、アランは数秒沈黙したあとで、頷く。
佐伯玲二という友人は、アランの前世あたる荒人にとって親しい相手だっただけに、事故で死んでしまったことは非常に残念に思っていた。
この世界に転生して十数年が経ち、今でこそ時間の流れがその悲しさを癒やしてくれたとはいえ、それでもアランにとって玲二のことを思い出すと残念だと思うのは間違いない。
「その佐伯玲二だけど……もの凄い魔力を持ってたわ。それこそ、この世界でも誰も叶わないんじゃないかというくらいに……いえ、馬鹿げたとか、規格外とか、人外とか、そんな言葉が相応しいくらいに」
「……え?」
レオノーラの口から出た言葉は、アランにとっても完全に予想外だった。そもそも……
「地球には、魔法とかそういうのはないぞ?」
「アランの記憶を見て、それは知ってるわ。だからこそ、佐伯玲二もその魔力が知られることはなかったんでしょうね。……ただ、あれだけの魔力を持っている人が事故で死ぬとは、ちょっと信じられないわね」
「そう言われても、俺は玲二の死体を直接見たぞ?」
「ええ。そうなると……いえ、これはちょっと考えすぎかもしれないわね。けど、アランという実例がある以上……」
最後の方は小声で呟いたためか、アランにもレオノーラが何を言ってるのかは分からない。
とにかく、まだレオノーラと色々と話したいとは思ったが、今はドーレストに向かうのが先だと判断し、カロに頼んで再びゼオンを呼び出すのだった。
ゼオリューンが消えた、グラルスト遺跡の最深部。
蔦と鉱石が破壊されてしまったその場所で、不意に空間が揺らめくと顔をマスクで隠した人物が現れる。
ゆったりとした服装のためか、体型からも男か女か判断出来ないその人物は、破壊されて地面に転がっている鉱石の欠片を拾う。
「まだ序盤も序盤だったというのに、無粋な真似を。……それにしても、あのゴーレムとドラゴン……注意すべきだな」
呟き、そのまま再び空間が揺らめくと、その姿は消えていたのだった。
それを確認したアランは、慌てて周囲に視線を向ける。
謎の声により、スタンピードは鉱石と蔦を破壊すれば終わると、そう言われはしたものの、実際にそれが本当なのかどうかは分からなかったためだ。
だが……ゼオリューンの映像モニタに表示されていたのは、全てのモンスターがまるで電池が切れたかのように、その場で動きを止めており、一切動いていない様子だった。
これが、この場所……もしくはグラルスト遺跡だけでそうなっているのか、それとも今頃はモンスターの集団に襲われているだろうドーレストでも同じようになっているのか。
その辺はアランにも分からなかったが、取りあえずあの声が言っていたようにスタンピードが終わったのだろうというのは、予想出来た。
少なくても、これ以上はモンスターが生み出されるなり、召喚されるなりといったことはされないはずだった。
「ふぅ」
映像モニタでそれを確認したアラン、深く安堵の息を吐く。
取りあえず、今回のスタンピードは一段落したのは間違いないない、と。
だが、アランにはそのことに安堵する以外にもやっておくべきこと、やらなければならないことがあった。
それは、現在自分と同じゼオリューンのコックピットにいるレオノーラから、話を聞くこと。
ギガクラッシュという、日本でやっていたアニメを見ていなければ分からない必殺技を、転生者でもなんでもないレオノーラが知っているのは疑問でしかなかった。
あるいは同じ名前の別の必殺技ということも考えないではなかったのだが、レオノーラがフェルスを使って行ったギガクラッシュは、明らかにアランが知っているのとほぼ同じだったのだ。
そうである以上、偶然の一致で片付けるには無理がある。
(俺よりも前にこの世界にやってきた転生者とかがいるらしい痕跡はあちこちに残ってるから、もしかして、万が一、本当に万が一にも……って可能性は、ない訳じゃないんだけど)
どう言葉を出せばいいのか。
そう迷っていたアランだったが、アランが何かを言うよりも前にゼオリューンが再び光に包まれた。
「ちょっ、おい、待てよ! せっかくこれだけモンスターを倒したんだから、素材とかそういうのを……それに、あの鉱石だって……」
それらを確保したい。
そう言おうとしたアランだったが、転移魔法は半ば強制的にゼオリューンの身体を包み込み……そして、気が付けばゼオリューンはグラルスト遺跡のすぐ外に姿を現していたのだった。
「……嘘だろ……」
「全くね」
アランの言葉にレオノーラが同意するように呟くが、その言葉には不思議と残念そうな色がない。
レオノーラにしても、あれだけのモンスターの素材や魔石、討伐証明部位といった物を欲しない訳ではない。
また、アランが非常に残念がっている、鉱石の破片も出来れば持ってきたいとは思っていた。
だというのに、それでも残念そうな様子を見せなかったのは、今回の戦いでそんなものよりも大きな宝とでも言うべきものを見つけたからだ。
「取りあえず、スタンピードは終わったみたいね。ゼオリューンのレーダーにも、モンスターの反応はないわ」
「そうか。……やっぱり、あの鉱石を破壊したことで、スタンピードが終わったのか」
「恐らくは、だけどね。……ドーレストの方がどうなったのかは、まだ分からないわ。即座にスタンピードが終了したのか、それともスタンピードが終了するには、まだ時間がかかるのか」
「出来れば、前者であって欲しいんだけど……ん?」
言葉の途中でアランがそう呟いたのは、ゼオリューンが光に満ちてきたためだ。
それも、先程のような転移の光ではなく、また別の光。
レオノーラもそんないきなりの光に疑問を抱き……そんな二人は、気が付けば次の瞬間には地面に立っていた。
……そう、一瞬前までは間違いなくゼオリューンのコックピットに座っていたというのに、気が付けば直接自分の足で地面に立っていたのだ。
「えーと……これは、ゼオリューンになっていられた限界時間がすぎたってことか?」
『そうだ』
と、誰にともなく呟いたアランの言葉に答えたのは、今まで何度となくアランの頭の中に話しかけてきた声。
そして、今この状態だからこそか、アランにはその声がどこから聞こえてきたのかが理解出来た。
そう、それはアランの掌の中にある……
「カロ?」
いつもは『ピ』としか言わないはずのカロが、明らかに自分の頭の中に話しかけてきたと分かったのだ。
不思議そうに……いや、いっそ信じられないといった表情すら浮かべて、アランは手の中のカロに視線を向ける。
そんなアランの手の中で、カロは再び口を開く。……正確には、聞こえてきたのは頭の中だが。
『そうだ。私だ。……もっとも、今の状況では私が話すことの出来る時間は非常に限られている。今も、すぐ眠りにつくことになるだろう』
「おい、それどういうことだよ。お前はただの心核じゃないのか?」
「私が見た、あの記憶。あれもカロがやったの?」
アランとレオノーラがそれぞれにカロに尋ねるが、それを聞いたカロは再び二人の頭の中に声を発する。
『今はこれ以上は無理だ。だが……お前たちがもっと成長し、心核の力を本当の意味で覚醒することが出来れば……あるいは……今は、自らを鍛えることだけを考えろ』
それだけを告げ、カロの声は頭の中に響かなくなり……
「ぴ?」
次の瞬間、カロから聞こえてきたのは、アランにとっても馴染み深い鳴き声だった。
どうしたの? といった疑問を感じさせるその声に、アランは息を吐く。
アランの持つ心核だからこそだろう。先程まで聞こえてきた声の主が、今はどこにもいないということがはっきりと分かったからだ。
「駄目なの?」
「ああ、残念ながら時間切れらしい。……あー、畜生。結局ほとんど何も分からないままだったな」
半ば苛立ち混じりに呟いたアランだったが、それでも空は青く、どこかアランの中にあった苛立ちを消し去る……とまではいかなかったが、それでもある程度は解消してくれた。
そうして疲れを吐き出すように深呼吸をしてから、アランはレオノーラに視線を向ける。
アランの視線を向けられたレオノーラは、何を聞きたいのかということを理解し、意味ありげな笑みを浮かべて口を開く。
「そうね。私に起こったことを説明するのなら……アランも私が小さい頃の記憶をみたんじゃない?」
「……なるほど。言われてみればそうだよな。俺がレオノーラの記憶を見たんだから、その逆もあって当然な訳だ」
「そういうことね。もっとも……」
そこで一度言葉を切ったレオノーラは、じっとアランの顔を見てからそう告げる。
「まさか、異世界なんて存在があったとは思わなかったけどね。宮本荒人君」
「……ギガクラッシュを知ってる訳だ」
アランとしての記憶だけではなく、荒人としての記憶も見たのかと、納得する。
また、だからこそギガクラッシュを知っていたのかとも。
ただ……と、アランはそこでレオノーラを見る目に力を込めながら口を開く。
「今の俺は宮本荒人じゃなくて、アラン・グレイドだ。それは忘れないでくれ」
「そう、分かったわ」
アランの様子に、レオノーラはそう頷く。
アランなりに、色々と拘りがあるのだろうということを、理解したのだろう。
そんなアランの様子を見ていたレオノーラだったが、雰囲気を変えようとしたのか、それともただの興味本位なのか、笑みを浮かべてアランに話し掛ける。
「それにしても、アランが生きてきた日本という国、凄いわね。この世界とは比べものにならないくらい、文明が発達していたわ。TVで見たビルとか、凄かったもの」
「あー……うん。そういうのも見たんだ。何だか、俺がレオノーラの記憶を見るよりもレオノーラの方がかなり俺の記憶を楽しんで貰えたみたいだな」
重苦しくなった雰囲気を吹き飛ばそうとしたかのようなレオノーラの言葉に、アランは苦笑を浮かべる。
だが、不意にレオノーラの表情が真剣になったのを見て、疑問を抱く。
「どうした?」
「ううん。その……アランの友達の佐伯玲二って人がいたでしょう?」
「……ああ」
不意にレオノーラの口から出てきた前世での親しい友人の名前に、アランは数秒沈黙したあとで、頷く。
佐伯玲二という友人は、アランの前世あたる荒人にとって親しい相手だっただけに、事故で死んでしまったことは非常に残念に思っていた。
この世界に転生して十数年が経ち、今でこそ時間の流れがその悲しさを癒やしてくれたとはいえ、それでもアランにとって玲二のことを思い出すと残念だと思うのは間違いない。
「その佐伯玲二だけど……もの凄い魔力を持ってたわ。それこそ、この世界でも誰も叶わないんじゃないかというくらいに……いえ、馬鹿げたとか、規格外とか、人外とか、そんな言葉が相応しいくらいに」
「……え?」
レオノーラの口から出た言葉は、アランにとっても完全に予想外だった。そもそも……
「地球には、魔法とかそういうのはないぞ?」
「アランの記憶を見て、それは知ってるわ。だからこそ、佐伯玲二もその魔力が知られることはなかったんでしょうね。……ただ、あれだけの魔力を持っている人が事故で死ぬとは、ちょっと信じられないわね」
「そう言われても、俺は玲二の死体を直接見たぞ?」
「ええ。そうなると……いえ、これはちょっと考えすぎかもしれないわね。けど、アランという実例がある以上……」
最後の方は小声で呟いたためか、アランにもレオノーラが何を言ってるのかは分からない。
とにかく、まだレオノーラと色々と話したいとは思ったが、今はドーレストに向かうのが先だと判断し、カロに頼んで再びゼオンを呼び出すのだった。
ゼオリューンが消えた、グラルスト遺跡の最深部。
蔦と鉱石が破壊されてしまったその場所で、不意に空間が揺らめくと顔をマスクで隠した人物が現れる。
ゆったりとした服装のためか、体型からも男か女か判断出来ないその人物は、破壊されて地面に転がっている鉱石の欠片を拾う。
「まだ序盤も序盤だったというのに、無粋な真似を。……それにしても、あのゴーレムとドラゴン……注意すべきだな」
呟き、そのまま再び空間が揺らめくと、その姿は消えていたのだった。
0
お気に入りに追加
163
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる