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心核の入手
021話
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視界が光で埋めつくされ、それがなくなって気が付けば、目の前に広がっていたのは広い空間。
本来なら、自分に何が起こったのかといったことが分からず混乱してもおかしくはないのだろうが、数日前に同じような体験をしたばかりの身としては、またかといった気持ちの方が強い。
とはいえ、自分がどこにいるか分からない以上、周囲の様子を確認するのは必要であり……そうなれば、当然のようにレオノーラの姿も発見する。
どういう理屈なのかは分からないが、壁や床そのものが光っており、しっかりと周囲を確認することが出来たおかげだろう。
「レオノーラ」
「……また、ね」
アランの呼び掛けに、短く答える。
レオノーラも、アラン同様に混乱している様子はない。
「ああ。けど、俺が昨日聞いた話だと、あの遺跡にこんな広い空間はなかったはずだけど?」
建物型……いや、研究所型と呼ぶに相応しい遺跡には、とてもではないがこのような広大な空間が存在する余裕はなかったはずだった。
アランの言葉に、レオノーラも周囲の様子を確認し、その美しい眉を顰める。
この広さが、それこそ自分が心核を使ったときの姿……黄金のドラゴンであっても、十分に動き回れるだけのものだと理解し、同時に心核を手に入れたときと似て非なる場所だと理解したためだ。
「どう思う? 俺は嫌な予感しかしないんだけど」
「ぴ!」
アランの言葉に、心核のカロが同意するように鳴き声を上げる。
周囲に自分のことを知っているアランとレオノーラの二人しかいないと理解しているためか、自分の声が周囲に聞こえるかもしれないといったことは、全く気にしている様子がない。
「そうね。アランが聞いた声が何らかの手掛かりになると思うんだけど」
「あ……」
突然の転移で、すっかり転移する前に聞いた声のことを忘れていたのだろう。
アランの口から、若干間の抜けた声が出る。
そんなアランの様子を呆れたように眺めつつ、レノオーラは口を開く。
「あのねぇ。その声が聞こえた瞬間に転移したというのなら、それこそ転移に声が関わっていないはずがないでしょう。で、どんな声が聞こえたの?」
「あー……ええっと、そうだな」
いきなりのことの連続で思い出すのに少し戸惑ったが、それでも先程の声は思い出そうと思えばすぐに思い出すことが出来た。
「備えよ、常に。……うん、そんな風に言っていたのは間違いない」
「備えよ、常に……ね。そうなると、ここに跳ばされた意味も何となく分かるわね」
「……もしかして、敵と戦う、とか?」
「正解……よっ!」
アランの言葉に答えると同時に、レオノーラは素早く腰の鞭を手に取り、振るう。
この広大な空間の中でも床や壁、天井といった場所が光っていることで、レオノーラの持つ黄金の髪がそれらの光を浴びて煌めく。
そのような動きをして振るわれた鞭は、レオノーラとアランの二人に向かって放たれた数本の矢をほぼ同時に叩き落とす。
当然一度鞭を振るっただけでそのようなことが出来る訳ではなく、純粋に素早く、それこそアランでは気が付くことが出来ないほどの速度で手首を返し、二撃目を加えたのだ。
「え?」
「しっかりしなさい、アラン。敵よ!」
その言葉通り、この広い空間の中から大量の敵が姿を現す。
それこそ、雲霞の如くと表現するのが相応しいほどに大量の敵が。
「魔法の人形?」
「そうらしいわね。……何だってこれだけの数がここにいるのかは分からないけど、とにかく心核を使うわよ」
再び射られた矢を鞭で叩き落としながら、それでも冷静告げるレオノーラに、アランは即座に頷く。
自分たちに向かってくる敵は、石の騎士ほどに巨大ではないが、それでも二メートルは超えているような魔法の人形が、数百、数千……あるいは、万に届くのではないかと、そう思えるほどの数なのだ。
とてもではないが、アランとレオノーラの二人が生身でどうにか出来るはずもない。
この空間から逃げ出す方法が分かれば、それこそ最善なのかもしれないが、転移によってここに連れてこられた以上、すぐに逃げ出す方法を探せる訳がない。
少なくても、アランが周囲を見渡した限りではどこにも扉の類は存在しない。
もしかしたら、心核を手に入れた空間のように扉があるのかもと思ったが、こうして見る限りではそのような扉はどこにも存在せず、この空間は完全に密封状態のように思えた。
(いや、あの魔法の人形たちがどこから出て来てるのか分からないけど、それがここにいるってことは、多分どこかに外へ繋がる場所はあるはずだ。……それを探す余裕はないけど)
つまり、この状況を何とかするのであれば、自分たちに迫ってくる無数の敵を倒す必要があるのだ。
それも、レオノーラが対処しているのを見れば分かる通り、弓を持っている……いや、他にも槍や長剣、ハルバード、棍棒、それ以外にも様々な武器を持っているような者たちを相手に。
そんな状況の中で、アランが出来ることは少ない。……いや、一つしかないと言ってもいい。
生身で戦った場合は、間違いなくレオノーラの足を引っ張る。
……つまり、カロを使ってゼオンを呼び出すという方法しかない。
あるいは、この場をレオノーラに任せて自分は邪魔をしないように引っ込んでいるという手段もあるが、アランも男だけに見栄がある。
また、レオノーラに任せきりで戦わないというのは、レオノーラにおんぶに抱っこといった状況で、とてもではないが許容出来ない。
「レオノーラ、ゼオンを呼ぶ!」
「ええ、そうしなさい」
アランの言葉に、レオノーラは鞭を使って延々と飛んでくる矢を叩き落としながら、そう告げる。
微かに……本当に微かにではあったが、レオノーラの口が美しい弧を描いていたのだが、レオノーラの後ろにいるアランに、その笑みは見えない。
それは良かったのか、悪かったのか。
ともあれ、自分のやること、そしてやれることが一つしかないのだから、ここで迷う必要はなかった。
「カロ、ゼオンを呼ぶぞ!」
「ぴぃぃぃぃっ!」
アランがカロに呼びかけ、心核を起動する。
すると次の瞬間、甲高い、それでいて機械音ではなく本物の生物が出しているような鳴き声が周囲に響き……ゼオンが姿を現し、アランはいつの間にか見覚えのあるコックピットの中に座っていた。
「よし、これなら……レオノーラ、ここは俺に任せて、お前も心核を!」
叫びつつ、アランはゼオンを一歩前に出す。
一歩ではあっても、それは全高十八メートルもの巨体での一歩だ。
当然のように、その一歩でゼオンはあっさりとレオノーラを跨ぎ、前に出る。
……自分の頭の上を跨いでいったゼオンに対し、数秒前に浮かべていた笑みを消し、若干不愉快そうな表情を浮かべるレオノーラ。
だが、今はとにかく生き延びるのが最優先ということで、レオノーラはゼオンと入れ替わるように後ろに下がる。……この件は後できちんとアランと話す、そう決意を固めながら。
「おわっ! ……何だ?」
ゼオンのコックピットの中で、一瞬背筋が冷たくなったことに疑問を抱きつつも、とにかく今は近づいてくる大量の魔法の人形をどうにかするべきだと判断し、アランはビームライフルの銃口を敵の群れに向ける。
このビームライフルの威力は、それこそ石の騎士を相手に証明済みだ。
数だけは多いが、とてもではないが個としての力は弱いだろう魔法の人形に、石の騎士ですら一撃で倒すだけの威力があるビームライフルを防げるとは思えなかった。
また、ビームライフルは石の騎士の身体を貫き、床にすら深い貫通痕を作ったような威力の武器だ。
上からではなく前方から攻撃をするということになれば、当然その威力は増す。
「取りあえず、食らえっ!」
トリガーを引くことにより、ゼオンの持っているビームライフルの銃口からビームが放たれる。
放たれたビームは、アランが予想した通り数匹……いや、十数匹、数十匹といった規模で人形たちを消滅させる。
「魔石とか素材とか、そういうのが手に入らないのは、ちょっと痛いけどな。……けど、相変わらず威力は強いな」
自分で撃っておきながら、ビームライフルの威力に改めて驚くアラン。
だが、ビームというのは一条の光による攻撃だ。
ビームが命中した人形、そしてビームの周囲にいた人形には消滅させることが出来るが、言ってみればその程度でしかない。
そして全高十八メートルのゼオンが撃っているので、当然のようにビームは床に命中し、周囲に爆発を起こす。
それによってある程度纏まった数の人形は消滅し、もしくは被害を受けるが、人形全体の数に比べると、その被害はほんの僅かだ。
「これって……ちょっと不味いんじゃないか?」
あるいは、襲ってきているのが何らかの自我のあるモンスターであれば、仲間が殺されたことに脅威を覚え、逃げ出したり、そこまでいかなくても動きが鈍くなる可能性は十分にあった。
だが、襲ってきているのが人形であるためか、仲間の様子を見て怯えたりといったことは一切ない。
「せめてショットガンとか、もしくはミサイルとか、そういう風に攻撃範囲が広い武器があれば……」
愚痴を言いつつ、アランは次々とビームライフルのトリガーを引く。
ビームライフルが撃たれれば、当然のようにかなりの数の人形が消滅していくが、それ以上に出てくる人形の数が多く、少しずつ、少しずつではあるが、人形とゼオンの距離が縮まっていく。
撃って、撃って、撃って、撃って、撃って。
もう何度ビームライフルのトリガーを引いたのか、分からない。
撃破されて人形の数も、すでに百は優に超えており、下手をすれば千をも超えているだろう。
だが、それでも全く人形の勢いは衰えず、人形との間合いは一切広がることはない。
このままでは人形の接近を止めることが出来ず、近接戦闘をすることになる。
ゼオンと人形の差は圧倒的だったが、それが余計に……そう、無数の蟻の群れが象に集っているような光景を想像させ、それがアランに焦燥感を与えていく。
『任せなさい』
焦っているアランの頭の中に聞き覚えのある声が響き……次の瞬間、ゼオンのビームライフルとは違う光が、近づいてきていた人形の群れを纏めて薙ぎ払うのだった。
本来なら、自分に何が起こったのかといったことが分からず混乱してもおかしくはないのだろうが、数日前に同じような体験をしたばかりの身としては、またかといった気持ちの方が強い。
とはいえ、自分がどこにいるか分からない以上、周囲の様子を確認するのは必要であり……そうなれば、当然のようにレオノーラの姿も発見する。
どういう理屈なのかは分からないが、壁や床そのものが光っており、しっかりと周囲を確認することが出来たおかげだろう。
「レオノーラ」
「……また、ね」
アランの呼び掛けに、短く答える。
レオノーラも、アラン同様に混乱している様子はない。
「ああ。けど、俺が昨日聞いた話だと、あの遺跡にこんな広い空間はなかったはずだけど?」
建物型……いや、研究所型と呼ぶに相応しい遺跡には、とてもではないがこのような広大な空間が存在する余裕はなかったはずだった。
アランの言葉に、レオノーラも周囲の様子を確認し、その美しい眉を顰める。
この広さが、それこそ自分が心核を使ったときの姿……黄金のドラゴンであっても、十分に動き回れるだけのものだと理解し、同時に心核を手に入れたときと似て非なる場所だと理解したためだ。
「どう思う? 俺は嫌な予感しかしないんだけど」
「ぴ!」
アランの言葉に、心核のカロが同意するように鳴き声を上げる。
周囲に自分のことを知っているアランとレオノーラの二人しかいないと理解しているためか、自分の声が周囲に聞こえるかもしれないといったことは、全く気にしている様子がない。
「そうね。アランが聞いた声が何らかの手掛かりになると思うんだけど」
「あ……」
突然の転移で、すっかり転移する前に聞いた声のことを忘れていたのだろう。
アランの口から、若干間の抜けた声が出る。
そんなアランの様子を呆れたように眺めつつ、レノオーラは口を開く。
「あのねぇ。その声が聞こえた瞬間に転移したというのなら、それこそ転移に声が関わっていないはずがないでしょう。で、どんな声が聞こえたの?」
「あー……ええっと、そうだな」
いきなりのことの連続で思い出すのに少し戸惑ったが、それでも先程の声は思い出そうと思えばすぐに思い出すことが出来た。
「備えよ、常に。……うん、そんな風に言っていたのは間違いない」
「備えよ、常に……ね。そうなると、ここに跳ばされた意味も何となく分かるわね」
「……もしかして、敵と戦う、とか?」
「正解……よっ!」
アランの言葉に答えると同時に、レオノーラは素早く腰の鞭を手に取り、振るう。
この広大な空間の中でも床や壁、天井といった場所が光っていることで、レオノーラの持つ黄金の髪がそれらの光を浴びて煌めく。
そのような動きをして振るわれた鞭は、レオノーラとアランの二人に向かって放たれた数本の矢をほぼ同時に叩き落とす。
当然一度鞭を振るっただけでそのようなことが出来る訳ではなく、純粋に素早く、それこそアランでは気が付くことが出来ないほどの速度で手首を返し、二撃目を加えたのだ。
「え?」
「しっかりしなさい、アラン。敵よ!」
その言葉通り、この広い空間の中から大量の敵が姿を現す。
それこそ、雲霞の如くと表現するのが相応しいほどに大量の敵が。
「魔法の人形?」
「そうらしいわね。……何だってこれだけの数がここにいるのかは分からないけど、とにかく心核を使うわよ」
再び射られた矢を鞭で叩き落としながら、それでも冷静告げるレオノーラに、アランは即座に頷く。
自分たちに向かってくる敵は、石の騎士ほどに巨大ではないが、それでも二メートルは超えているような魔法の人形が、数百、数千……あるいは、万に届くのではないかと、そう思えるほどの数なのだ。
とてもではないが、アランとレオノーラの二人が生身でどうにか出来るはずもない。
この空間から逃げ出す方法が分かれば、それこそ最善なのかもしれないが、転移によってここに連れてこられた以上、すぐに逃げ出す方法を探せる訳がない。
少なくても、アランが周囲を見渡した限りではどこにも扉の類は存在しない。
もしかしたら、心核を手に入れた空間のように扉があるのかもと思ったが、こうして見る限りではそのような扉はどこにも存在せず、この空間は完全に密封状態のように思えた。
(いや、あの魔法の人形たちがどこから出て来てるのか分からないけど、それがここにいるってことは、多分どこかに外へ繋がる場所はあるはずだ。……それを探す余裕はないけど)
つまり、この状況を何とかするのであれば、自分たちに迫ってくる無数の敵を倒す必要があるのだ。
それも、レオノーラが対処しているのを見れば分かる通り、弓を持っている……いや、他にも槍や長剣、ハルバード、棍棒、それ以外にも様々な武器を持っているような者たちを相手に。
そんな状況の中で、アランが出来ることは少ない。……いや、一つしかないと言ってもいい。
生身で戦った場合は、間違いなくレオノーラの足を引っ張る。
……つまり、カロを使ってゼオンを呼び出すという方法しかない。
あるいは、この場をレオノーラに任せて自分は邪魔をしないように引っ込んでいるという手段もあるが、アランも男だけに見栄がある。
また、レオノーラに任せきりで戦わないというのは、レオノーラにおんぶに抱っこといった状況で、とてもではないが許容出来ない。
「レオノーラ、ゼオンを呼ぶ!」
「ええ、そうしなさい」
アランの言葉に、レオノーラは鞭を使って延々と飛んでくる矢を叩き落としながら、そう告げる。
微かに……本当に微かにではあったが、レオノーラの口が美しい弧を描いていたのだが、レオノーラの後ろにいるアランに、その笑みは見えない。
それは良かったのか、悪かったのか。
ともあれ、自分のやること、そしてやれることが一つしかないのだから、ここで迷う必要はなかった。
「カロ、ゼオンを呼ぶぞ!」
「ぴぃぃぃぃっ!」
アランがカロに呼びかけ、心核を起動する。
すると次の瞬間、甲高い、それでいて機械音ではなく本物の生物が出しているような鳴き声が周囲に響き……ゼオンが姿を現し、アランはいつの間にか見覚えのあるコックピットの中に座っていた。
「よし、これなら……レオノーラ、ここは俺に任せて、お前も心核を!」
叫びつつ、アランはゼオンを一歩前に出す。
一歩ではあっても、それは全高十八メートルもの巨体での一歩だ。
当然のように、その一歩でゼオンはあっさりとレオノーラを跨ぎ、前に出る。
……自分の頭の上を跨いでいったゼオンに対し、数秒前に浮かべていた笑みを消し、若干不愉快そうな表情を浮かべるレオノーラ。
だが、今はとにかく生き延びるのが最優先ということで、レオノーラはゼオンと入れ替わるように後ろに下がる。……この件は後できちんとアランと話す、そう決意を固めながら。
「おわっ! ……何だ?」
ゼオンのコックピットの中で、一瞬背筋が冷たくなったことに疑問を抱きつつも、とにかく今は近づいてくる大量の魔法の人形をどうにかするべきだと判断し、アランはビームライフルの銃口を敵の群れに向ける。
このビームライフルの威力は、それこそ石の騎士を相手に証明済みだ。
数だけは多いが、とてもではないが個としての力は弱いだろう魔法の人形に、石の騎士ですら一撃で倒すだけの威力があるビームライフルを防げるとは思えなかった。
また、ビームライフルは石の騎士の身体を貫き、床にすら深い貫通痕を作ったような威力の武器だ。
上からではなく前方から攻撃をするということになれば、当然その威力は増す。
「取りあえず、食らえっ!」
トリガーを引くことにより、ゼオンの持っているビームライフルの銃口からビームが放たれる。
放たれたビームは、アランが予想した通り数匹……いや、十数匹、数十匹といった規模で人形たちを消滅させる。
「魔石とか素材とか、そういうのが手に入らないのは、ちょっと痛いけどな。……けど、相変わらず威力は強いな」
自分で撃っておきながら、ビームライフルの威力に改めて驚くアラン。
だが、ビームというのは一条の光による攻撃だ。
ビームが命中した人形、そしてビームの周囲にいた人形には消滅させることが出来るが、言ってみればその程度でしかない。
そして全高十八メートルのゼオンが撃っているので、当然のようにビームは床に命中し、周囲に爆発を起こす。
それによってある程度纏まった数の人形は消滅し、もしくは被害を受けるが、人形全体の数に比べると、その被害はほんの僅かだ。
「これって……ちょっと不味いんじゃないか?」
あるいは、襲ってきているのが何らかの自我のあるモンスターであれば、仲間が殺されたことに脅威を覚え、逃げ出したり、そこまでいかなくても動きが鈍くなる可能性は十分にあった。
だが、襲ってきているのが人形であるためか、仲間の様子を見て怯えたりといったことは一切ない。
「せめてショットガンとか、もしくはミサイルとか、そういう風に攻撃範囲が広い武器があれば……」
愚痴を言いつつ、アランは次々とビームライフルのトリガーを引く。
ビームライフルが撃たれれば、当然のようにかなりの数の人形が消滅していくが、それ以上に出てくる人形の数が多く、少しずつ、少しずつではあるが、人形とゼオンの距離が縮まっていく。
撃って、撃って、撃って、撃って、撃って。
もう何度ビームライフルのトリガーを引いたのか、分からない。
撃破されて人形の数も、すでに百は優に超えており、下手をすれば千をも超えているだろう。
だが、それでも全く人形の勢いは衰えず、人形との間合いは一切広がることはない。
このままでは人形の接近を止めることが出来ず、近接戦闘をすることになる。
ゼオンと人形の差は圧倒的だったが、それが余計に……そう、無数の蟻の群れが象に集っているような光景を想像させ、それがアランに焦燥感を与えていく。
『任せなさい』
焦っているアランの頭の中に聞き覚えのある声が響き……次の瞬間、ゼオンのビームライフルとは違う光が、近づいてきていた人形の群れを纏めて薙ぎ払うのだった。
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