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心核の入手
006話
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野営を終え、翌日の早朝に遺跡を目指して進んでいた雲海だったが……当然のように、アランたちが野営をしていた場所からそう離れていない場所で野営をしていた黄金の薔薇の面々と合流することになる。
目指すのが共にタルタラ遺跡である以上、それは必然でもあった。
そして、同じ場所に向かう以上、どちらが早く遺跡に到着するか競争をする……訳でもなく、お互いに特に張り合ったりせず、道を進む。
遺跡に到着すれば、そこに潜るのだ。
当然ながら、遺跡を探索する際には万全の状態であることが望ましく、ここで無意味に体力を消耗する訳にはいかない。
また、アランとレオノーラは対立しているが、だからといって雲海と黄金の薔薇が敵対している訳でもない。
もし本当に二つのクランが対立することになれば、どちらも実力は同程度である以上、当然のように双方に大きな被害が出るだろう。
何か深い恨みがあるのならともかく、個人的に対立している者がいるからといって、それで本格的に武力を使って争うなどいった真似は、百害あって一利なしだと、双方が理解しているのだろう。
……もっとも、世の中には色々な者がいる。
それこそ、相手が気にくわないというだけで襲撃する……といったように、短絡的な性格をしている者も多かった。
そういう意味では、雲海にしろ黄金の薔薇にしろ、双方共に分別を持っているというのは、お互いに幸運なことだったのだろう。
「うわ、見ろよあの馬車。外から見ると、とてもじゃないけど貴族が乗るような馬車には見えないぞ」
馬車に乗っていた者の一人が呟く声に、イルゼンと話していたアランが窓から男の視線を追うと、その言葉の意味を理解する。
貴族が……それも一国の王女ともあろう者が率いているクランが使っている割には、その馬車はとてもではないが華美と呼べるものではない。
だが、見る者が見れば、その馬車は非常に頑丈に作られており、それこそちょっとやそっとの攻撃を外からされても、傷を付けるのがやっとだろうというのは、理解出来た。
まさしく、実用本位な馬車と呼ぶべき代物だったのだ。
「イルゼンさんが言ってた、本気で探索者をやってるってのは、あれを見れば納得出来るよな」
「いや、そもそもお遊びでやってるような連中なら、俺達と同じくらいの規模にはならないだろ。……よっぽど金を使って人を雇ったりしているのなら、話は別だけど」
「でも、向こうを率いてる相手は王女なんだろ? それも、クラッシェンド王国の。あの国の王女なら金を持ってるし、それこそ人を雇うことは簡単なはずだろ」
「……俺はむしろ、王女なんて立場にある人が城の外で護衛もなしに行動しているのが分からないんだけど。クラッシェンド王国ってそれなりに大国だろ? その国の王女なら、それこそ誘拐なりなんなりすれば、交渉のカードとしは十分すぎるだろ」
「それな。俺も疑問に思ったけど、アランの愛しの王女様は、箱入りとかそういうのじゃなくて、かなりの腕利きらしいぞ。それこそ、護衛は必要としないくらいには」
「ちょっ、おい! 何だよその愛しのって!」
興味深い様子で話を聞いてたアランだったが、そこに明らかなデマが入ってくると、それを大人しく聞いていられるはずもない。
抗議の声を上げ……
「でも、レオノーラだっけ? 向こうの王女様を見たとき、アランは完全に見惚れていたって聞いたけど?」
そんな言葉に、アランは何も言えなくなる。
代わりに、その情報を漏らした人物……その場にいて、そのような真似をするような人物たるイルゼンに恨めしげな視線を向ける。
だが、そんな視線を向けられた本人は特に気にした様子もなく、窓の外に視線を向け……
「イルゼンさん!」
「おや、どうやらタルタラ遺跡が見えてきたようですね」
まるでアランが叫ぶのを待っていたかのように、イルゼンの声が馬車の中に響く。
当然それを聞けば今までしていた話よりも先に、その遺跡を見たいと思う者が多くなり、馬車の中で数秒前まで話されていた内容はすっかり忘れ去られる。
……唯一アランのみが未だに不満そうにイルゼンに視線を向けていたが、そんなアランもこれから自分たちが潜る遺跡に興味がない訳ではない。
あとで絶対にこの件を追求してやる。
そう考えつつ、アランの視線もまた馬車の外に向けられた。
イルゼンの口元が弧を描いていたのは、取りあえず意図的に無視することにして。
「あれが、タルタラ遺跡。……聞いてた通り、洞窟型なんだな」
窓の向こうに見えたのは、一見すると洞窟にしか見えない光景。
だが、その洞窟は遺跡によって生み出されたものと考えられており、それこそ古代魔法文明が存在していた当時からそのままだと考えると、当時の文明がどれだけ発展していたかの証の一つとなるだろう。
洞窟の前には広場のようになっており、いくつかのクランの姿もあった。
とはいえ、その規模は明らかに雲海や黄金の薔薇と比べると小さく、実力もそこまで高くないのは明らかだった。
「洞窟型……正確には似たようなのも多いですが、周囲の景色に紛れるような遺跡の数は多いです。アラン君も、それは知ってるでしょう?」
イルゼンの言葉に、アランは遺跡から視線を離さずに頷きを返す。
実際、これまでいくつもの遺跡を攻略してきた雲海だったが、今回のようにな洞窟型の数は比較的多い。
「それにしても、以前俺が生まれたときにもこの辺には来たんですよね。なら、なんでそのときはこの遺跡を攻略しなかったんですか?」
母親のリルの口から、アランが生まれた頃にこの辺にやって来たことがあるという話は聞いていた。
なのに、何故この遺跡を攻略しなかったのかというのは、アランにとっても疑問でしかない。
だが、そんなアランの疑問は次の瞬間イルゼンの言葉であっさりと解消する。
「それは簡単ですよ。以前ここに来たときは、まだあの遺跡は見つかっていなかったんです。確か……僕たちがあの街に寄ってから、数年くらいあとにこの遺跡が見つかったんだと思います」
「数年後って……それだと、この遺跡が見つかってから十年以上は経ってるんじゃないですか? なのに、まだ攻略されていないってのは……それだけ、難易度が高いとかですか?」
「そうだろうね。もっとも、見ての通り挑戦している探索者たちはいるから、諦めたという訳でもないのだろうけど」
そのような会話をしている間にも馬車は進み、やがて広場となっている場所に停まる。
雲海も黄金の薔薇もそれぞれ十台以上の馬車を使っているので、その広場は先程までと比べて一気に狭くなったようにも感じられる。
当然そうなれば、遺跡の前にいた他の探索者たちも気が付き……二つのクランに対して、様々な視線を向ける。
嫌悪、羨望、憧れ、欲望、好意……それこそ、探索者たちの数だけの感情が向けられ、馬車を降りたアランは何となくそんな視線を気にする。
今までも、このようなことはあった。
探索者のクランとして活動していると、その地域ではまだ攻略されていない遺跡に行くということは多く、そこでは地元の探索者――当然それ以外もいるが――が遺跡に挑戦しており、だからこそいきなりやってきたアランたちに対して、色々と思う者もいるのだ。
とはいえ、アランたちも仕事として遺跡の探索をしている以上、何かよほどの理由がない限りは遺跡の攻略を止めるといったことはないのだが。
「さて、ではそれぞれ拠点の設営を始めて下さい。向こうも早速始めているので、遅れることがないようにお願いしますよ」
イルゼンのそんな言葉に、アランは黄金の薔薇の方を見て……感心する。
何故なら、てっきり貴族が多い黄金の薔薇では、拠点の設営をするにも貴族以外の者、それこそ下働きの者たちがやるのかと思ったのだが、全員で拠点の設営を行っていたからだ。
中には、見るからに育ちの良さそうな者もいるが、そのような者であっても自分が直接働くということを嫌がっている様子はない。
その手慣れた動きを見れば、黄金の薔薇に所属している貴族たちは、道楽の類ではなく本気で探索者としてやっているのだということが、アランにも分かる。
(ちょっと見直した方がいいのかもしれないな)
そんな風に思いつつ、アランもまた手慣れた動きで拠点の設営をしていく。
もっとも、拠点の設営そのものはそこまで難しいものではない。
天幕を張って下にテーブルや椅子といったものを用意し、周囲には風よけとして拠点用の馬車を配置していく。
当然のようにすぐに馬車を使わなければならないときもあるので、数台の馬車は拠点用には使わない。
また、馬車を牽く馬を一纏めにし、こちらもまた雨に濡れないように天幕を張って臨時の厩舎とする。
馬車から今回の探索に必要な様々な道具を下ろし、自分で必要な物を手にしていく。
中には直接遺跡の中に入るようなことはせず、拠点での活動を専門としている者もおり、そのような者たちは拠点として使う場所を少しでも快適にすごせるように整えていく。
他にもアランたちが来る前からここにいた探索者たちに挨拶をし、簡単な情報交換をしたりしている者もいる。
皆が自分のやるべきことを承知しているからこそ、特に大きな混乱もなくスムーズに物事が運んでいく。
そんな中でアランがやるのは、当然のように様々な下働きだ。
指示された場所に荷物を持っていき、馬の世話をし、馬車に異常がないかを確認する。
焚き火の準備をし、水の入った樽を拠点となる天幕の場所に持っていき……といった細々とした仕事をしながら、自分の探索の用意も準備していく。
本来なら、アランの実力では遺跡に潜るというのは半ば自殺行為に等しい。
だが、雲海の中で一番若いのがアランである以上、そのアランを育てるという行為をするのは当然だった。
(運が良かったよな)
しみじみと、アランは思う。
普通の……それこそ、今まで見てきた他のクランでは、足手纏いともなれば囮役として使い捨てにされるということも多かった。
だが、この雲海は基本的に家族のような関係で成り立っていることもあり、多くの者がアランを成長させることを苦にしていないのだ。
そんな訳で、本格的に遺跡を攻略する前に一度軽く下見をと思い、遺跡に向かおうとした、そのとき……
「あら、そっちもこれから遺跡に潜るの?」
丁度アランたちと同じく遺跡に潜ろうとしていたレオノーラが、太陽の光に煌めく金髪を掻き上げながら、そう告げるのだった。
目指すのが共にタルタラ遺跡である以上、それは必然でもあった。
そして、同じ場所に向かう以上、どちらが早く遺跡に到着するか競争をする……訳でもなく、お互いに特に張り合ったりせず、道を進む。
遺跡に到着すれば、そこに潜るのだ。
当然ながら、遺跡を探索する際には万全の状態であることが望ましく、ここで無意味に体力を消耗する訳にはいかない。
また、アランとレオノーラは対立しているが、だからといって雲海と黄金の薔薇が敵対している訳でもない。
もし本当に二つのクランが対立することになれば、どちらも実力は同程度である以上、当然のように双方に大きな被害が出るだろう。
何か深い恨みがあるのならともかく、個人的に対立している者がいるからといって、それで本格的に武力を使って争うなどいった真似は、百害あって一利なしだと、双方が理解しているのだろう。
……もっとも、世の中には色々な者がいる。
それこそ、相手が気にくわないというだけで襲撃する……といったように、短絡的な性格をしている者も多かった。
そういう意味では、雲海にしろ黄金の薔薇にしろ、双方共に分別を持っているというのは、お互いに幸運なことだったのだろう。
「うわ、見ろよあの馬車。外から見ると、とてもじゃないけど貴族が乗るような馬車には見えないぞ」
馬車に乗っていた者の一人が呟く声に、イルゼンと話していたアランが窓から男の視線を追うと、その言葉の意味を理解する。
貴族が……それも一国の王女ともあろう者が率いているクランが使っている割には、その馬車はとてもではないが華美と呼べるものではない。
だが、見る者が見れば、その馬車は非常に頑丈に作られており、それこそちょっとやそっとの攻撃を外からされても、傷を付けるのがやっとだろうというのは、理解出来た。
まさしく、実用本位な馬車と呼ぶべき代物だったのだ。
「イルゼンさんが言ってた、本気で探索者をやってるってのは、あれを見れば納得出来るよな」
「いや、そもそもお遊びでやってるような連中なら、俺達と同じくらいの規模にはならないだろ。……よっぽど金を使って人を雇ったりしているのなら、話は別だけど」
「でも、向こうを率いてる相手は王女なんだろ? それも、クラッシェンド王国の。あの国の王女なら金を持ってるし、それこそ人を雇うことは簡単なはずだろ」
「……俺はむしろ、王女なんて立場にある人が城の外で護衛もなしに行動しているのが分からないんだけど。クラッシェンド王国ってそれなりに大国だろ? その国の王女なら、それこそ誘拐なりなんなりすれば、交渉のカードとしは十分すぎるだろ」
「それな。俺も疑問に思ったけど、アランの愛しの王女様は、箱入りとかそういうのじゃなくて、かなりの腕利きらしいぞ。それこそ、護衛は必要としないくらいには」
「ちょっ、おい! 何だよその愛しのって!」
興味深い様子で話を聞いてたアランだったが、そこに明らかなデマが入ってくると、それを大人しく聞いていられるはずもない。
抗議の声を上げ……
「でも、レオノーラだっけ? 向こうの王女様を見たとき、アランは完全に見惚れていたって聞いたけど?」
そんな言葉に、アランは何も言えなくなる。
代わりに、その情報を漏らした人物……その場にいて、そのような真似をするような人物たるイルゼンに恨めしげな視線を向ける。
だが、そんな視線を向けられた本人は特に気にした様子もなく、窓の外に視線を向け……
「イルゼンさん!」
「おや、どうやらタルタラ遺跡が見えてきたようですね」
まるでアランが叫ぶのを待っていたかのように、イルゼンの声が馬車の中に響く。
当然それを聞けば今までしていた話よりも先に、その遺跡を見たいと思う者が多くなり、馬車の中で数秒前まで話されていた内容はすっかり忘れ去られる。
……唯一アランのみが未だに不満そうにイルゼンに視線を向けていたが、そんなアランもこれから自分たちが潜る遺跡に興味がない訳ではない。
あとで絶対にこの件を追求してやる。
そう考えつつ、アランの視線もまた馬車の外に向けられた。
イルゼンの口元が弧を描いていたのは、取りあえず意図的に無視することにして。
「あれが、タルタラ遺跡。……聞いてた通り、洞窟型なんだな」
窓の向こうに見えたのは、一見すると洞窟にしか見えない光景。
だが、その洞窟は遺跡によって生み出されたものと考えられており、それこそ古代魔法文明が存在していた当時からそのままだと考えると、当時の文明がどれだけ発展していたかの証の一つとなるだろう。
洞窟の前には広場のようになっており、いくつかのクランの姿もあった。
とはいえ、その規模は明らかに雲海や黄金の薔薇と比べると小さく、実力もそこまで高くないのは明らかだった。
「洞窟型……正確には似たようなのも多いですが、周囲の景色に紛れるような遺跡の数は多いです。アラン君も、それは知ってるでしょう?」
イルゼンの言葉に、アランは遺跡から視線を離さずに頷きを返す。
実際、これまでいくつもの遺跡を攻略してきた雲海だったが、今回のようにな洞窟型の数は比較的多い。
「それにしても、以前俺が生まれたときにもこの辺には来たんですよね。なら、なんでそのときはこの遺跡を攻略しなかったんですか?」
母親のリルの口から、アランが生まれた頃にこの辺にやって来たことがあるという話は聞いていた。
なのに、何故この遺跡を攻略しなかったのかというのは、アランにとっても疑問でしかない。
だが、そんなアランの疑問は次の瞬間イルゼンの言葉であっさりと解消する。
「それは簡単ですよ。以前ここに来たときは、まだあの遺跡は見つかっていなかったんです。確か……僕たちがあの街に寄ってから、数年くらいあとにこの遺跡が見つかったんだと思います」
「数年後って……それだと、この遺跡が見つかってから十年以上は経ってるんじゃないですか? なのに、まだ攻略されていないってのは……それだけ、難易度が高いとかですか?」
「そうだろうね。もっとも、見ての通り挑戦している探索者たちはいるから、諦めたという訳でもないのだろうけど」
そのような会話をしている間にも馬車は進み、やがて広場となっている場所に停まる。
雲海も黄金の薔薇もそれぞれ十台以上の馬車を使っているので、その広場は先程までと比べて一気に狭くなったようにも感じられる。
当然そうなれば、遺跡の前にいた他の探索者たちも気が付き……二つのクランに対して、様々な視線を向ける。
嫌悪、羨望、憧れ、欲望、好意……それこそ、探索者たちの数だけの感情が向けられ、馬車を降りたアランは何となくそんな視線を気にする。
今までも、このようなことはあった。
探索者のクランとして活動していると、その地域ではまだ攻略されていない遺跡に行くということは多く、そこでは地元の探索者――当然それ以外もいるが――が遺跡に挑戦しており、だからこそいきなりやってきたアランたちに対して、色々と思う者もいるのだ。
とはいえ、アランたちも仕事として遺跡の探索をしている以上、何かよほどの理由がない限りは遺跡の攻略を止めるといったことはないのだが。
「さて、ではそれぞれ拠点の設営を始めて下さい。向こうも早速始めているので、遅れることがないようにお願いしますよ」
イルゼンのそんな言葉に、アランは黄金の薔薇の方を見て……感心する。
何故なら、てっきり貴族が多い黄金の薔薇では、拠点の設営をするにも貴族以外の者、それこそ下働きの者たちがやるのかと思ったのだが、全員で拠点の設営を行っていたからだ。
中には、見るからに育ちの良さそうな者もいるが、そのような者であっても自分が直接働くということを嫌がっている様子はない。
その手慣れた動きを見れば、黄金の薔薇に所属している貴族たちは、道楽の類ではなく本気で探索者としてやっているのだということが、アランにも分かる。
(ちょっと見直した方がいいのかもしれないな)
そんな風に思いつつ、アランもまた手慣れた動きで拠点の設営をしていく。
もっとも、拠点の設営そのものはそこまで難しいものではない。
天幕を張って下にテーブルや椅子といったものを用意し、周囲には風よけとして拠点用の馬車を配置していく。
当然のようにすぐに馬車を使わなければならないときもあるので、数台の馬車は拠点用には使わない。
また、馬車を牽く馬を一纏めにし、こちらもまた雨に濡れないように天幕を張って臨時の厩舎とする。
馬車から今回の探索に必要な様々な道具を下ろし、自分で必要な物を手にしていく。
中には直接遺跡の中に入るようなことはせず、拠点での活動を専門としている者もおり、そのような者たちは拠点として使う場所を少しでも快適にすごせるように整えていく。
他にもアランたちが来る前からここにいた探索者たちに挨拶をし、簡単な情報交換をしたりしている者もいる。
皆が自分のやるべきことを承知しているからこそ、特に大きな混乱もなくスムーズに物事が運んでいく。
そんな中でアランがやるのは、当然のように様々な下働きだ。
指示された場所に荷物を持っていき、馬の世話をし、馬車に異常がないかを確認する。
焚き火の準備をし、水の入った樽を拠点となる天幕の場所に持っていき……といった細々とした仕事をしながら、自分の探索の用意も準備していく。
本来なら、アランの実力では遺跡に潜るというのは半ば自殺行為に等しい。
だが、雲海の中で一番若いのがアランである以上、そのアランを育てるという行為をするのは当然だった。
(運が良かったよな)
しみじみと、アランは思う。
普通の……それこそ、今まで見てきた他のクランでは、足手纏いともなれば囮役として使い捨てにされるということも多かった。
だが、この雲海は基本的に家族のような関係で成り立っていることもあり、多くの者がアランを成長させることを苦にしていないのだ。
そんな訳で、本格的に遺跡を攻略する前に一度軽く下見をと思い、遺跡に向かおうとした、そのとき……
「あら、そっちもこれから遺跡に潜るの?」
丁度アランたちと同じく遺跡に潜ろうとしていたレオノーラが、太陽の光に煌めく金髪を掻き上げながら、そう告げるのだった。
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