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外伝:神界からの脱走~自由と安眠を求めて~
や、やめろー
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神界という空間はとても広い。その大きさは世界の大きさと神の力によって変わる。太陽神でもあり、八百万の神の存在する日本の神界は他の神界と比べても格が違う。しかし、ただ広いだけであり、少しの建物を除いたらほとんど何もない空間であるため正直な所は少し使いにくい。それは特に出入口などが該当する。天照大御神様の様に力のある神なら自分で作ったりできるのだが、力のない神にはそういうことはできない。ではどの様にしてそういう神が神界を訪れるのか。それはこの神界に東西南北に一門ずつの、計四つの出入口となる門があるからだ。神界への門を開けない神達はこれを利用するのだ。
そして現在、天照大御神様は出入りの少ない西門の近くにまで来ていた。なぜ自在に出入口の作れる天照大御神様がこの門を使うのか。それは、出入口を作ると出た場所が容易にばれてしまうからだ。門以外でできた出入口というのは痕跡がよく残る。服を着るときにすでに腕を通すところがあるのに、新しく穴を開けてそこに腕を通している様なものだ。明らかに不自然であり、そんなことは力のない神でも気づくことができる。なので、天照大御神様はすでにある穴を使ってここから脱出するつもりなのだ。
「ふっ、やっぱりここはあまり神がいないなよし、今だ。」
私の予想通りここには神がいなかった。今ならここから脱出できる。しかし、ここから出ると隠れ家からは少し遠くなってしまう。まあ、地上で私を捕まえられる神がいるのならまだ少しは考える余地があったかもな。
「さて、隠れ家に行ったらまず何をしよっかな。やはりまずは睡眠を三年くらっ!?」
突如感じた殺気ににも似た感覚。私の第六感が隠れろと全身を刺激する。とっさに後ろに飛び、先ほどまで隠れていた物陰に隠れる。すると、そこにすごいスピードで何かが飛来してきた。
「だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!姉上はどこだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
まさに現れたのは私の天敵とも呼べるやつだった。
(なななななな、なぜやつがここに!?)
目の前に蛇がいるカエルの様に体が硬直する。まずいまずい、今やつに見つかったら全てがご破算だ。というより、私の精神が持たない。
「おかしい、姉上なら間違いなくここに来ると思っていたのだが。」
最悪だ!最悪のやつに最悪の状況で見つかりそうだ。こうなったら、別の方の門から行くしかない。こいつがいるのなら、まだ出入りの多い東門の方がマシだ。
「む!?これは今姉上の匂いがするぞ!」
(ひぃ!)
「間違いない、これは姉上の匂いだ。恐らく先ほどまでここにいたのだろう。つまり、まだこの近辺にいるはずだ!」
(ま、まずい!早くここから退散せねば!)
しかし思う様に体が動かず、足元もおぼつかない。このままでは見つかってしまう。
「す、須佐之男様~!」
「ま、待ってください~!」
「む、お前達遅いぞ!」
突如として、二柱の神が現れた。逃げ場が減ったはずなのに何故かホッとしていた。
(よし、お前達。そのまま須佐之男の気を惹きつけておいてくれ。)
「遅いぞ貴様ら!」
「はぁはぁ、も、申し訳ありません。」
「はぁはぁ、須佐之男様が早すぎるんですよ。」
「全く軟弱者共め。それで、例の物を持ってきたか?」
「はい、ですがよろしいのでしょうか?勝手に持ってきてしまっても。後で怒られないでしょうか?」
「馬鹿者が!ならば貴様らは姉上がいなくなってもよいというのか!」
「い、いえ!?そんなことは!」
「何かあったからでは遅いのだぞ!罰を恐れる暇があるのなら、まずは我らが主神の事を考えるのが先決ではないのか!それでも貴様らは日本の八百万の神か!」
「も、申し訳ありません!」
「おっしゃる通りですこざいます!」
「まったく。ならばさっさと持ってきたものを出せ!」
「は、はい!こちらが天照様が着用されていた服です!」
「うむ、よくやった。」
「須佐之男様、これをどういう風にお使いになるつもりなんですか?」
「ふんっ、わからんのか。これには姉上の匂いが染み込んでいる。まずは私がこれを嗅いで姉上の匂いを覚え」
「キャァァァァァァァァァァァ!」
私の絶叫と共に繰り出したひざ蹴りが須佐之男の頬を捉え、そしてそのまますごい勢い西門に激突し西門が崩壊する。
「ふざけるなよ貴様ァァァ!ぶっ殺すゾォォォォ」
本当ならこっそりやり過ごそうかと思ったが聞こえてきた声に我慢できなくなってつい飛び出してしまった。しかし、怒りで我を忘れてしまった私には今そんな事はどうでもよかった。
「ああ!須佐之男様!」
「ていうより、天照様!」
「黙れ貴様らぁ!私の服を誰に渡すつもりだったか分かってんのか!あぁ?」
「え、え?天照様?」
何時もの品行方正な天照大御神様とは違う事に二柱の神の思考は停止してしまっていた。
「次やったらマジでぶっ殺すぞ!」
そう言い残すと天照大御神様はどこかに走って行ってしまった。
残された二柱の神はしばらくその場で惚けると一言呟いた。
「「やっぱり怒られた。」」
そして現在、天照大御神様は出入りの少ない西門の近くにまで来ていた。なぜ自在に出入口の作れる天照大御神様がこの門を使うのか。それは、出入口を作ると出た場所が容易にばれてしまうからだ。門以外でできた出入口というのは痕跡がよく残る。服を着るときにすでに腕を通すところがあるのに、新しく穴を開けてそこに腕を通している様なものだ。明らかに不自然であり、そんなことは力のない神でも気づくことができる。なので、天照大御神様はすでにある穴を使ってここから脱出するつもりなのだ。
「ふっ、やっぱりここはあまり神がいないなよし、今だ。」
私の予想通りここには神がいなかった。今ならここから脱出できる。しかし、ここから出ると隠れ家からは少し遠くなってしまう。まあ、地上で私を捕まえられる神がいるのならまだ少しは考える余地があったかもな。
「さて、隠れ家に行ったらまず何をしよっかな。やはりまずは睡眠を三年くらっ!?」
突如感じた殺気ににも似た感覚。私の第六感が隠れろと全身を刺激する。とっさに後ろに飛び、先ほどまで隠れていた物陰に隠れる。すると、そこにすごいスピードで何かが飛来してきた。
「だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!姉上はどこだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
まさに現れたのは私の天敵とも呼べるやつだった。
(なななななな、なぜやつがここに!?)
目の前に蛇がいるカエルの様に体が硬直する。まずいまずい、今やつに見つかったら全てがご破算だ。というより、私の精神が持たない。
「おかしい、姉上なら間違いなくここに来ると思っていたのだが。」
最悪だ!最悪のやつに最悪の状況で見つかりそうだ。こうなったら、別の方の門から行くしかない。こいつがいるのなら、まだ出入りの多い東門の方がマシだ。
「む!?これは今姉上の匂いがするぞ!」
(ひぃ!)
「間違いない、これは姉上の匂いだ。恐らく先ほどまでここにいたのだろう。つまり、まだこの近辺にいるはずだ!」
(ま、まずい!早くここから退散せねば!)
しかし思う様に体が動かず、足元もおぼつかない。このままでは見つかってしまう。
「す、須佐之男様~!」
「ま、待ってください~!」
「む、お前達遅いぞ!」
突如として、二柱の神が現れた。逃げ場が減ったはずなのに何故かホッとしていた。
(よし、お前達。そのまま須佐之男の気を惹きつけておいてくれ。)
「遅いぞ貴様ら!」
「はぁはぁ、も、申し訳ありません。」
「はぁはぁ、須佐之男様が早すぎるんですよ。」
「全く軟弱者共め。それで、例の物を持ってきたか?」
「はい、ですがよろしいのでしょうか?勝手に持ってきてしまっても。後で怒られないでしょうか?」
「馬鹿者が!ならば貴様らは姉上がいなくなってもよいというのか!」
「い、いえ!?そんなことは!」
「何かあったからでは遅いのだぞ!罰を恐れる暇があるのなら、まずは我らが主神の事を考えるのが先決ではないのか!それでも貴様らは日本の八百万の神か!」
「も、申し訳ありません!」
「おっしゃる通りですこざいます!」
「まったく。ならばさっさと持ってきたものを出せ!」
「は、はい!こちらが天照様が着用されていた服です!」
「うむ、よくやった。」
「須佐之男様、これをどういう風にお使いになるつもりなんですか?」
「ふんっ、わからんのか。これには姉上の匂いが染み込んでいる。まずは私がこれを嗅いで姉上の匂いを覚え」
「キャァァァァァァァァァァァ!」
私の絶叫と共に繰り出したひざ蹴りが須佐之男の頬を捉え、そしてそのまますごい勢い西門に激突し西門が崩壊する。
「ふざけるなよ貴様ァァァ!ぶっ殺すゾォォォォ」
本当ならこっそりやり過ごそうかと思ったが聞こえてきた声に我慢できなくなってつい飛び出してしまった。しかし、怒りで我を忘れてしまった私には今そんな事はどうでもよかった。
「ああ!須佐之男様!」
「ていうより、天照様!」
「黙れ貴様らぁ!私の服を誰に渡すつもりだったか分かってんのか!あぁ?」
「え、え?天照様?」
何時もの品行方正な天照大御神様とは違う事に二柱の神の思考は停止してしまっていた。
「次やったらマジでぶっ殺すぞ!」
そう言い残すと天照大御神様はどこかに走って行ってしまった。
残された二柱の神はしばらくその場で惚けると一言呟いた。
「「やっぱり怒られた。」」
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