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龍神の刀編

43頁 剥ぎ取り開始

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………………。


 えー、とりあえず頭を整理して。


 蒼龍はアレだな。
 神が言ってた「レベルが制限なく上がる職業ジョブ」ってのを持ってるんだろうな。文字化けしててみえないけど。あ、もしくは、この龍人族ってのがレベル制限のない種族なのかもしれない。龍って漢字からして強そうだし。

ウンウン。




 



って、納得出来るかぁー?!!

 ナニ?!レベル一万越えって!!
 え?!俺が今後倒す魔王モンスターにもこのレベルがいるってこと?!!ヤメテマジムリ!

 しかも、俺の冒険過程、ゲームだったらまだ一章クリアしたくらいだぞ?!その時点で一万越えってことは、この先がゴロゴロ出てくる可能性大!なわけだろ……?

 シボウフラグビンビンデスワ…………


 

 「……本当に勇者なんて職業ジョブあんだな…、初めて見た」

 「さいですか……」

 こちとらそれどころじゃねぇっての……。


 …………いや、まぁ…、仲間だと思えば心強い限りってやつだよな。敵だったら勝てる気しないけど。
 

 てか、一万越え蒼龍でも抑えられるかわからない榊さんのレベルっていくつなのだろうか……。










 ………よし、…切り替え切り替え!!

 どうせバカがいくら考えてもどうにもならんし、考えるならもっと建設的なことにしよう。うん。

 「どんなものからでも剥ぎ取れる…か……なるほど、これがカイトの剥ぎ取りスキルの力ってわけだな」

 「うーん、詳しいことはわかってないんだよな……まぁとりあえず、この素材は蒼龍が使ってくれ」

 「本当にいいのか?」

 う、まぁ、惜しくないといえば嘘になるけども……随分高価な素材みたいだし。

けど、

「これで榊さんが助かる可能性が少しでも上がるならな」

「そうか……なら、ありがたく使わせて貰う」

 そういうと、蒼龍は素早く立ち上がると、クリスタルゴーレムの破片と核を抱えて、「ちょっと待っててくれ」と言い残してどこかへ行ってしまった。


 いつ見てもすごい身体能力だな。アレだけの重い水晶を軽々と……。
 さすがレベル一万越え。





 しばらくして、蒼龍は手ぶらで帰ってきた。

 聞けば、アジトの下層にある鍛冶場で素材を武器に作り変えているそうだ。

 下層はマグマ溜りがあって、団のメンバーの鍛治職人スミス達の絶好の仕事場となっているそうです。







「明日の朝までには武器が出来上がるそうだ」

「そっか」

あとは明日が勝負の時だな。









 そして翌日、
 フワッフワかつフッカフカな蒼龍のベッドにて寝落ちし、ぐっすりと睡眠を貪った俺……昨日ここじゃ寝られない、なんて言ったことは無かったことにする。


 体力、気力ともに満タン!朝メシの白米と味噌汁(具材は乾燥わかめ?と謎のキノコ、あと正体不明の魔物モンスターの肉片)をしっかり平らげ、現在地下の鍛治職人スミスの仕事場にやってきております。

 目に痛いほどに眩しいマグマと、地下から湧く冷たい水。オッサン達が創り出す美麗な武具の数々。

 ……まぁ、俺は仕事の邪魔にならないように、遠くから眺めてるだけなんだがな!


 蒼龍はヒゲもじゃのちっさいオッサンと何やら話をしている。

 一目見てドワーフだろうと予想がつくオッサンである。

 ドワーフといえばそりゃもう鍛治で有名だが、この仕事場にはドワーフ以外にも、ヒューマン(おそらく)やら獣人やらがたくさん働いているようだ。

 見たところ、ドワーフが作った武具に魔法属性を付与したりと、魔法使いや加護持ちが、なんかいろいろやってるみたい。

こりゃ、この傭兵団がラクラケラトスの稼ぎ頭ってのも納得だわ。






 「待たせた」

 しばらくして戻ってきた蒼龍の手には、青い布に包まれた細長のものが握られていた。

 まぁ、今までの流れから行って日本刀なのは予想がつくけど。


「仕上がりはどうだった?」

「いいな。柄も刀身の鋭さも重量も……いい感じだ。お前には本当に感謝している。ありがとう、カイト」

「どういたしまして、でも礼は榊さんが助かった時にでいいぜ、蒼龍」

「……そうだな」

 
 かくして、俺と蒼龍は再び榊の聖域へとやって来たのである。
 なぜこのように短時間で着いたのかは想像にお任せいたす。


「おい……視えているんだろう、さっさと開けろ」

『今日も来たんだね、暇なのかい?』

「い い か ら 開 け ろ」

『ハイハイわかったよ』


含み笑いのような榊の声とともに、昨日同様、魔法陣が浮かぶ。

足を踏み入れれば、これまた昨日同様に榊が鎌首をもたげて俺たちを見下ろしていた。


……違うところといえば、頭に生えた植物からふわふわと飛ぶ赤い実のようなものの数が異様に増えていることか。

 右も左も上も下も、紅く紅く色づいた視界の中で、榊だけがまだ蒼かった。

いや、その榊も、頭部から段々と紅に侵食されている。

 昨日まで緑だった植物の葉は赤茶けた色に変色し、その周りの榊のウロコも赤く色が変わり出していた。


『思ったより早かったんだね。僕を殺す準備が整うのはまだもう少し先かと思っていたよ……とはいえ、そろそろ僕も限界が近かったから、丁度いいと言えばそうなのかも知れないね』

「死にたがっているところ悪いが、今日はあんたを助けるために来た……傭兵団連中には秘密でな」

『……どういうことかな、もう手は尽くしたはずだろう?』

「俺たちに出来ることの範囲内ではな」

『………………ああ、なるほど。そのお客人の剥ぎ取りに一縷の望みを、ということかな?』

「安心しろ、無理だと分かればさっさと殺してやるよ」

榊は愛おしげに目を細めた。

『ふふ、なら御言葉に甘えるとしようか……ただね、本当に限界が近いんだ。思った以上に僕も耄碌もうろくし始めていたのかな…年寄りには、この元気な寄生植物お子さまを抑えておける時間がそう残されていないようだよ』

「なら無駄口叩いてないで、さっさと始めさせろ」

『ホント、口の悪い仔だよね、オマエは』

「昔からだろ」

『それもそうだ』

2人の間に、沈黙が降りる。


榊さんは、俺を見て頭を下げた。

『お客人、こんな面倒事に巻き込んでしまって申し訳ないね。でも、僕からも宜しく頼みたい。まだ僕に、生きる可能性があるのであれば、それに縋らせて欲しい』

「…もちろん、全力を尽くさせて頂きます!」

『ああ、どうか、宜しくお願いする』


そして、ゆっくりと顎を俺の目の前の岩に乗せ、目を閉じた。

しばらく、寄生植物の制御に集中するよ。流石に、引き抜かれそうになって、大人しくするようなモノじゃないからね』

「は、ハイ!……でも、痛かったらごめんなさい」

『気にはしないさ。それに、今だって、体の中を植物の根が伸びているのがわかる。それなりに、これは痛いからね。これから逃れられるならば、ちょっとくらいの痛み、我慢するさ』

よく見れば、榊さんは随分と苦しそうだった。






「じゃあ、カイト。始めてくれ」



「……ああ!」


それじゃ、剥ぎ取り開始だ!!



ーステータスー 「カイト」 LV49

職業ジョブ 勇者
種族 人間

HP400   MP120
攻300+10    防200+???
器用さ100   運20

スキル
『神の加護ON』『剥ぎ取りLV49』『洗濯の魔法』『調理の魔法』『眠りと警戒の魔法』


ー装備ー
武器
•古木の手槍
•剥ぎ取りナイフ

防具
頭•なし
体•異世界の服
腕•なし
腰•異世界のズボン
足•異世界のシューズ
その他•なし 
アクセサリー•収納の腕輪•守護の脚護符プロテクト•アンクレット森人エルフ首飾りネックレス

ー収納の腕輪ー収納スペース小
 1地図×1
 2コンパス×1
 3水筒(水)×1
 4永久砥石(無限インフィニティ級)×1
 5油敷布×1
 6剥ぎ取りナイフ×3
 7
 8
 9
10

守護の脚護符プロテクト•アンクレット
抵抗レジスト内容

•怪音波 •噛みつき •吸血 •毒粘液 •酸粘液

所持金 10000ファラン

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