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ニーラータラッタ編
121頁 パーティー!
しおりを挟む松明が煌々とともされた洞窟。
石の机を囲むのは、
龍神の刀遊撃部隊隊長、カレン。
後方部隊副隊長、バハモッティ。
剛雷の鎚リーダー、ゴレイン。
メンバー、イザベル。
魔法塔監督生、アルフレット。
上位生徒、フランシスカ。
そして、俺とシロと藍斗。
(火乃は近辺の警戒任務に当たっている)
錚々たるメンバーとはいえ、一応さ?俺、勇者なわけよ。
だというのに……。
「…と、言うことで、会議はこれにて終了!明日は各自自由にしてもらって構わない。みな、決戦に向け英気を養うように!!」
…一言も話さずに終わっちゃったよ。
……まぁ、みんなプロだからね。
俺なんかまだまだヒヨコもヒヨコ、ピヨっ子だから、軍議なんて言われてもたいした意見出せませんから。はぁ。
「アスタロトの到着は明後日の昼ですから、今夜は安全!ほらカイトさん、ジメジメしてないでみなさんに挨拶でもして来たらどうですか?」
外では、アスタロト戦に向けての勝利祈願パーティーをやってるらしい。
豪華なものではないが、顔合わせも兼ねてみんながそこに勢ぞろいしている。
中には結構知り合いもいたし…そうだな、挨拶は大切だ。
…正直、パーティとかなんとかは若干苦手なのだが、行かないわけにも、な。
「他の人たちも外に出てるみたいだな…よし、仕方ない、行くか」
気持ちを新たに外へ出ると、真っ先にフランシスカとアイナ、剛雷の鎚メンバー4人が料理を片手に談笑しているのが見えた。
「お、やっと出てきたか、遅かったな」
「カイトだー!!」
俺を見るなりドスンと腰に巻きつくベイル。
ぐぉ、なかなかの突進力。守護の脚護符には攻撃認定されてないから結構きいたぞ。
「久しぶりだな、ベイル。あとゴレインとイザベルさんも。前はほんとお世話になりっぱなしで……」
「あーあー、そういうのはいいから。にしても、ヤバい案件に首突っ込んじゃったわねー。魔王の討伐なんて物語の中の話だわ」
呆れ気味のイザベル。うん、だよね。俺もビックリ。
「まぁ、こんなんでも勇者なわけだからな。魔王の10や20倒してくれねぇと困るわなぁ!!」
大声で笑うゴレインと、その横で小さく笑うベイル。
こちらも変わりはなさそうだ。
「あー、改めてはじめまして、ハリムです。自信はないけんど、アスタロト討伐頑張るんで、よろしくたのんます」
「はい、よろしくお願いします」
自信はない、とか言いつつ、ハリムさんの武器はいかにも伝説の◯◯と付きそうな立派な槍だ。
絶対強いだろ、この人。
「もぅ、アタシたちを除け者にしないでちょうだい!」
「久しぶり、でいいのかな?」
花の香りのクッキーを片手に持ってむくれるフランシスカと、微笑むアイナ。
魔法塔にいたのはわりとついこの間のことなのに、ずいぶん懐かしく感じる。
「2人も久しぶり……って、あれ?ゴレインたちとフランシスカたちって知り合いだったのか?」
来る時、ドラゴンタクシーで一緒に来てたし。
…あのドラゴン、戦闘力はなかったんだろうか。みんなが降りたのを確認して、すぐに飛び去ってしまったけど……。
「いや、知り合いってわけじゃないんだが…」
「アタシたちがレンタルドラゴンで移動してたら、どうも行き先が同じよーな人たちが見えたから、一緒に行くか聞いてみたのよ~。馬車よりドラゴンのが速いもの」
そんな偶然あるんだなぁ。
「道中いろいろ話を聞いたが……いやぁ、まさかあの難攻不落、侵入困難な魔法塔に入ったことがあるなんてなぁ、オレは驚いたぞ」
「そ、そんな大袈裟な…藍斗の親父さんの紹介で行けただけですし」
「いやいや、謙遜せんでもいいじゃないすか。おれ、カイトさんの話、きいてみたいです」
ワイワイと話していると、不意に大きな声が響いた。
『えー、ごほん。みな、楽しんでいるところすまないな。私は龍神の刀、遊撃部隊隊長、カレンだ』
スピーカーみたいな魔道具を使っているのか、広い会場全てに声が響いている。
『暫定的に、今回のアスタロト討伐戦の指揮を取らせてもらうことになった。よろしく頼む。さて、今回の作戦は単純だ。基本は遠距離攻撃で体力を削り、魔法防御が高い者で近接武器が得意な者は近接攻撃部隊として動いてもらう。とはいえ、味方からの攻撃が当たる可能性もあるから、やはりメインは遠距離射撃と心得てくれたまえ』
凛とした声に、会場が静まり返る。
『明後日来たりしは古き魔の女王。恐ろしいほどの強さであろう。…しかしっ!我らは負けぬ!!我らが手で勲しをたてるのだ!彼の魔王を討ち果たすのだ!全ては、友を、家族を、世界を護る為に!!!!』
カレンさんの叫びが空気を揺らす。
「「「「「「「「「おおぉおおおおおおおー!!!!!」」」」」」」」」
それに呼応して周囲からも叫び声が上がる。
空気がビリビリと震えた。
『詳しい作戦、隊列は明日発表する。それでは、みな、今日は存分に呑み、食らい、来たるアスタロト戦に向けて力を蓄えてくれ!私からは以上だ!』
「凄かったな、カレンさんの演説」
「だな」
剛雷の鎚と魔法塔のメンバーは他の参加者との顔合わせも必要とのことで、すでに解散している。
とりあえず、ここにいるのは俺と藍斗、シロと、見回りから帰ってきた火乃だ。
この場に集まった人たちは、ステータスを見ずとも藍斗と火乃の強さが分かるようで、遠巻きに「あいつらヤバイぜ」的な会話をヒソヒソとしている。
え、俺?俺は…。
「けど、アイツはそんな強くなさそうだよな」
「な、俺でも勝てそう」
「…荷物持ちじゃねぇ?」
「「あー、なるほど!」」
…………扱い違いすぎないかい?
なにがなるほどだ、こんにゃろう。
ちなみに、シロは気配がフワフワしすぎて逆に強さがわからないらしい。やっぱり「あいつらヤバイぜ」メンバーとしてカウントされている。
…ちくせう、なんだか負けた気分。
まぁ、それでもちょこちょこと挨拶をかわしつつ野性味あるディナーを食し、勝利祈願パーティーは夜中まで続いたのだった。
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