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ニーラータラッタ編
112頁 にくかい2.
しおりを挟むや、
「ヤバいヤバいヤバいヤバい!!」
何あのキモイの!
何あのキモイのぉ?!!!
火乃と対峙する肉の塊は画面ごしに見ても気分が悪くなる。
感じるはずのない、肉や血の臭いすら漂ってきそうな…そんな気持ち悪さだった。
「うーん、どうやら、魔王達に魔力供給していた魔法陣が破壊されたことで、魔法陣の核に魔力が逆流。結果、あのよく分からない魔物が爆誕☆ってとこですかね?」
隣のシロが説明をしている間も、ちょっとした勉強机くらいの大きさの肉塊はグチャグチャと音を立てて魔法陣周辺をのたくっている。
腕が生えては肉塊に戻り、
足が生えては肉塊に戻り、
何かすらも分からないものが生えては肉塊に戻っていた。
き、気持ち悪い。
火乃は攻撃を試みていたようだが、なかなかヒットしない…というより、当たったそばから肉塊が元どおりに戻っている。
「今は肉体の生成中ですからね。言ってみれば、ニチアサヒロインの変身シーンみたいなもの。たとえ攻撃しても無かった事になるだけですよ」
例えがおかしい。
というか、なんでお前はそんなに平気そうなんだ、シロ…。
たいして時間をかけずに、赤い肉の塊の変化が落ち着いた。
と、同時に魔法陣の光が弱まり、小屋の中が薄暗くなる。
光源は火乃の背後、小屋の入り口に吊るされた小さなランタンひとつきり。
しかし、そのかすかな光の中でも、その肉塊の動きはなんとなくわかった。
ゆっくりではあるが、火乃の方へと移動している。
明かりに近づくにつれ、だんだんと肉塊の全容が見えだした。
移動手段は胴体から飛び出た人の手のなり損ないのようなもの…。何本も生えたソレでイモムシのように這いずっている。
骨…は存在しないのか、どこかゴムに似た質感だ。
丸い頭部には小さな口が剥き出しに付き、至るところから濁った目玉が生えては腐り落ちていた。
皮を剥いだブタのような…もしくは、人になり損なったバケモノの赤子のような……。
「うっ……」
唐突に吐き気に襲われる。
見た目も気持ち悪いが、それ以上におぞましい何かがこのバケモノにはあった。
「大丈夫ですかー?キツイなら見なくてもいいんですよ?」
若干にやけながら言ってくるあたり、こいつの人間性を疑う。
…人間じゃないけどさ。
「……かの…」
吐き気を堪え、また画面に目を戻す。
目線の先では、火乃と肉塊の戦闘が今にも始まろうとしていた。
腐った肉の臭い。
いや、肉、臓物、血、その他もろもろを混ぜ合わせたとしても、この悪臭には届かないだろうけれど、1番近い臭いは、やっぱり、見た目の通り腐肉の臭いだ。
……確認してみたけど、なんの効果か、相手のステータスは霧がかったようになっていて、ほとんど読み取れない。
ただ、さっきまではまるで空気を裂いているように通らなかった攻撃も、今なら通りそうだ。
変化させたままの竜の腕を頭上から振り下ろす。
肉塊の頭部は、熟しすぎた果実を落とした時のように床に飛び散った。
「……思ったより、よわい?」
いや、あの量の魔力を吸ったモノがこの程度のハズがない。
実際、そうこう考えている間に、目の前の肉塊の胴体からぐじゅぐじゅと音を立てて新しい頭が生えだしていた。
「うぇぇ、きもちわるい」
臭いはクサイし、見た目も最悪。
ほんっとにきもちわるい。
ジュゥウ……。
ん?なんの音だろう。
あと、なんだか変な匂いが…。
音の発生源は、さっき床にぶちまけたソレの頭の飛沫。
飛び散った血や肉片に触れた床が……とけてる?
よく見ると、ゆっくりと近づいて来るソレの足元も溶けたようにうっすらと跡が付いている。
全身が強酸性なのかな。
よく見れば、さっき頭に叩きつけた腕も表面が少し溶けていた。
……うーん、めんどうくさい敵だなぁ。
腕を、足を、皮膚を、全身を、
酸の雨が降る森に棲むという、アシッドベアーに変化させる。
さっきより何倍も大きくなった手でソレを殴りつけた。
グシャっ!
「まだ、まだ」
グシャ、グシャっ、ビチャッ、グジュ、ブジャァ!
ソレの全身をくまなく潰す…、肉塊がミンチになる頃には、酸耐性が高いはずのアシッドベアーの毛皮もボロボロになっていた。
『ァァアァアァァァァァァァァア』
しかし、ソレは甲高い声をあげながら、何事もなかったかのように再生する。
「ほんっとに………めんどうくさい」
ボクはアシッドベアーの毛皮を再度生成して、そのバケモノに向かい合った。
打撃。
再生。
刺突。
再生。
斬撃。
再生。
焦熱。
再生。
凍結。
再生。
…………。
いろんな攻撃を試してはみたものの、この肉の塊は潰れては再生し、切り刻まれては再生し…全く効いてる感じがしない。
核があればすでに見つけていそうなものだけど、ソレの体内にそれらしきものは見当たらない。
かといって、何もなしに超回復を繰り返すなんて、まず有り得ないだろうし……うーん。
せめてステータスが見られればなぁ。
「…………あ」
あれ、もしかして使えるかな…?
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