19 / 19
オメガだけど、番(つが)ってたまるか
キープ・ア・ウォッチドッグ(2)
しおりを挟む
突然、ヒナタが立ち上がり、歩み寄ってきた。ソファに座った桃真の前で、床に膝をついて姿勢を低くし、腕を巻きつけてきた。
桃真は反射的に押し返そうとした。
「そういうのはなしって言ったばかりだろうが? おまえは三歩歩いたら忘れる鳥頭かよ?」
だがヒナタの抱擁はふんわりしていて、荒々しい「欲」を感じさせない。
大きな手が桃真の背中をぽんぽんと叩いた。
「お疲れ様でした、桃真さん。色々大変でしたが……やってのけましたね、お仕事」
ねぎらうような優しい声。
桃真の心臓がどきんと大きく拍を打った。
目の前がぐるぐる回る。空気を肺に送り込むのが急に難しくなり、息が上がる。全身が燃えるように熱くなる。
「ヒートですか? ヒート来ました? うわあ、すごくいい匂いだ。たまんない」
ヒナタは桃真の首筋に鼻を埋め、音を立てて匂いを嗅いだ。
まとまらない思考の中で、桃真は何とか抵抗しようとした。
「ヒートじゃない。俺はフェロモンなんか出してない。……ちょっと熱があるみたいだから、俺はもう寝る。その腕を離せ……」
ヒナタは桃真の耳にふうっと息を吹き込んだ。
ぞくぞくっと戦慄が走り、桃真の手足から力が抜けた。
ヒナタはうっとりした笑みを浮かべて、桃真の体をしっかりと抱きしめ直した。
「本当に医者の言ってた通りだ……すごいんだな、お医者って」
「何の話だ?」
「何でもありませーん。ね……ヒートの時はOKなんですよね? こういう事しても……」
ヒナタの巨体が覆いかぶさってきた。ねっとりと舌を絡ませるキスをしながら、手際よく桃真の服を脱がせた。
「や、あっ」
乳首を吸い上げられ、桃真は高い声をあげた。
熱い口内に含まれ、舌でやわらかくこね回されると、たまらなく気持ちいい。
――薬で性感を高められ、ローターでいたぶられていたのが遠い昔のことのようだ。
二人は寝室へ移動し、恋人同士のように安らいだ雰囲気で抱き合った。
桃真の全身を丁寧に愛撫したヒナタの手が、最後にようやく後孔にたどり着いたとき、そこは待ちきれないという風に蜜をこぼし始めていた。
「ねえ、桃真さん……」
桃真の中を指でくちゃくちゃと可愛がりながら、ヒナタが囁いた。
シーツをつかんで快楽に耐えている桃真には、返事をすることさえ難しい。乱れた呼吸の下、「何だ」とかすれた声をしぼり出した。
「これ、挿れてもいいですか」
そう言いながらヒナタがどこからともなく取り出したのは、見覚えのあるディルドだ。
桃真はぎょっとした。
「持って来たのかよ、そんな物」
「ええ。全部一式」
「冗談じゃない。見たくもない、そんなの」
「それが許せないんですよ」
ヒナタは指を深いところまでぐいと押し込んだ。「あーーっ」という桃真の叫びが天井にこだました。
ヒナタはぐちゃ、ぐちゃと指で桃真を犯しながら、その動きに合わせて言葉を吐き出した。
「あなたが他の男にされた事を覚えてるなんて、許せない。これから毎回、このおもちゃを使って犯してあげます。あなたがこれを見ても、僕のことしか思い出せなくなるように」
「あっ、ああんっ、やあっ」
「最高に気持ちよくしてあげますよ。そのうち、このおもちゃを見ただけで濡れるようになりますから。見ててください」
「やんっ、やあっ、ヒナタっ」
切実な声で名前を呼ばれ、ヒナタは指を動かすのを止めた。
桃真は快楽でうるんだ瞳でヒナタを見上げた。
「おもちゃなんか嫌だ。おまえのが、欲しい」
ヒナタはディルドを遠くへ投げ捨てた。
指が抜けた、かと思うと、桃真の体内にそれよりはるかに凶暴な熱い塊がめり込んできた。ドカンと音がするような激しさで最奥を突かれ、桃真は一撃で絶頂に達し、白い露をほとばしらせた。だがヒナタは止まらなかった。ぐったりした桃真の体を折れんばかりに抱きしめ、猛然と腰を打ちつけた。
桃真は反射的に押し返そうとした。
「そういうのはなしって言ったばかりだろうが? おまえは三歩歩いたら忘れる鳥頭かよ?」
だがヒナタの抱擁はふんわりしていて、荒々しい「欲」を感じさせない。
大きな手が桃真の背中をぽんぽんと叩いた。
「お疲れ様でした、桃真さん。色々大変でしたが……やってのけましたね、お仕事」
ねぎらうような優しい声。
桃真の心臓がどきんと大きく拍を打った。
目の前がぐるぐる回る。空気を肺に送り込むのが急に難しくなり、息が上がる。全身が燃えるように熱くなる。
「ヒートですか? ヒート来ました? うわあ、すごくいい匂いだ。たまんない」
ヒナタは桃真の首筋に鼻を埋め、音を立てて匂いを嗅いだ。
まとまらない思考の中で、桃真は何とか抵抗しようとした。
「ヒートじゃない。俺はフェロモンなんか出してない。……ちょっと熱があるみたいだから、俺はもう寝る。その腕を離せ……」
ヒナタは桃真の耳にふうっと息を吹き込んだ。
ぞくぞくっと戦慄が走り、桃真の手足から力が抜けた。
ヒナタはうっとりした笑みを浮かべて、桃真の体をしっかりと抱きしめ直した。
「本当に医者の言ってた通りだ……すごいんだな、お医者って」
「何の話だ?」
「何でもありませーん。ね……ヒートの時はOKなんですよね? こういう事しても……」
ヒナタの巨体が覆いかぶさってきた。ねっとりと舌を絡ませるキスをしながら、手際よく桃真の服を脱がせた。
「や、あっ」
乳首を吸い上げられ、桃真は高い声をあげた。
熱い口内に含まれ、舌でやわらかくこね回されると、たまらなく気持ちいい。
――薬で性感を高められ、ローターでいたぶられていたのが遠い昔のことのようだ。
二人は寝室へ移動し、恋人同士のように安らいだ雰囲気で抱き合った。
桃真の全身を丁寧に愛撫したヒナタの手が、最後にようやく後孔にたどり着いたとき、そこは待ちきれないという風に蜜をこぼし始めていた。
「ねえ、桃真さん……」
桃真の中を指でくちゃくちゃと可愛がりながら、ヒナタが囁いた。
シーツをつかんで快楽に耐えている桃真には、返事をすることさえ難しい。乱れた呼吸の下、「何だ」とかすれた声をしぼり出した。
「これ、挿れてもいいですか」
そう言いながらヒナタがどこからともなく取り出したのは、見覚えのあるディルドだ。
桃真はぎょっとした。
「持って来たのかよ、そんな物」
「ええ。全部一式」
「冗談じゃない。見たくもない、そんなの」
「それが許せないんですよ」
ヒナタは指を深いところまでぐいと押し込んだ。「あーーっ」という桃真の叫びが天井にこだました。
ヒナタはぐちゃ、ぐちゃと指で桃真を犯しながら、その動きに合わせて言葉を吐き出した。
「あなたが他の男にされた事を覚えてるなんて、許せない。これから毎回、このおもちゃを使って犯してあげます。あなたがこれを見ても、僕のことしか思い出せなくなるように」
「あっ、ああんっ、やあっ」
「最高に気持ちよくしてあげますよ。そのうち、このおもちゃを見ただけで濡れるようになりますから。見ててください」
「やんっ、やあっ、ヒナタっ」
切実な声で名前を呼ばれ、ヒナタは指を動かすのを止めた。
桃真は快楽でうるんだ瞳でヒナタを見上げた。
「おもちゃなんか嫌だ。おまえのが、欲しい」
ヒナタはディルドを遠くへ投げ捨てた。
指が抜けた、かと思うと、桃真の体内にそれよりはるかに凶暴な熱い塊がめり込んできた。ドカンと音がするような激しさで最奥を突かれ、桃真は一撃で絶頂に達し、白い露をほとばしらせた。だがヒナタは止まらなかった。ぐったりした桃真の体を折れんばかりに抱きしめ、猛然と腰を打ちつけた。
0
お気に入りに追加
56
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる