オメガだけど、やられてたまるか

七条楓華@Unsweet(アンスイート)

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オメガだけど、番(つが)ってたまるか

キープ・ア・ウォッチドッグ(2)

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 突然、ヒナタが立ち上がり、歩み寄ってきた。ソファに座った桃真の前で、床に膝をついて姿勢を低くし、腕を巻きつけてきた。
 桃真は反射的に押し返そうとした。

「そういうのはなしって言ったばかりだろうが? おまえは三歩歩いたら忘れる鳥頭かよ?」

 だがヒナタの抱擁はふんわりしていて、荒々しい「欲」を感じさせない。
 大きな手が桃真の背中をぽんぽんと叩いた。

「お疲れ様でした、桃真さん。色々大変でしたが……やってのけましたね、お仕事」

 ねぎらうような優しい声。

 桃真の心臓がどきんと大きく拍を打った。
 目の前がぐるぐる回る。空気を肺に送り込むのが急に難しくなり、息が上がる。全身が燃えるように熱くなる。

「ヒートですか? ヒート来ました? うわあ、すごくいい匂いだ。たまんない」

 ヒナタは桃真の首筋に鼻を埋め、音を立てて匂いを嗅いだ。
 まとまらない思考の中で、桃真は何とか抵抗しようとした。

「ヒートじゃない。俺はフェロモンなんか出してない。……ちょっと熱があるみたいだから、俺はもう寝る。その腕を離せ……」

 ヒナタは桃真の耳にふうっと息を吹き込んだ。
 ぞくぞくっと戦慄が走り、桃真の手足から力が抜けた。
 ヒナタはうっとりした笑みを浮かべて、桃真の体をしっかりと抱きしめ直した。

「本当に医者の言ってた通りだ……すごいんだな、お医者って」
「何の話だ?」
「何でもありませーん。ね……ヒートの時はOKなんですよね? こういう事しても……」

 ヒナタの巨体が覆いかぶさってきた。ねっとりと舌を絡ませるキスをしながら、手際よく桃真の服を脱がせた。

「や、あっ」

 乳首を吸い上げられ、桃真は高い声をあげた。
 熱い口内に含まれ、舌でやわらかくこね回されると、たまらなく気持ちいい。
 ――薬で性感を高められ、ローターでいたぶられていたのが遠い昔のことのようだ。

 二人は寝室へ移動し、恋人同士のように安らいだ雰囲気で抱き合った。

 桃真の全身を丁寧に愛撫したヒナタの手が、最後にようやく後孔にたどり着いたとき、そこは待ちきれないという風に蜜をこぼし始めていた。

「ねえ、桃真さん……」

 桃真の中を指でくちゃくちゃと可愛がりながら、ヒナタが囁いた。
 シーツをつかんで快楽に耐えている桃真には、返事をすることさえ難しい。乱れた呼吸の下、「何だ」とかすれた声をしぼり出した。

「これ、れてもいいですか」

 そう言いながらヒナタがどこからともなく取り出したのは、見覚えのあるディルドだ。
 桃真はぎょっとした。

「持って来たのかよ、そんな物」
「ええ。全部一式」
「冗談じゃない。見たくもない、そんなの」
「それが許せないんですよ」

 ヒナタは指を深いところまでぐいと押し込んだ。「あーーっ」という桃真の叫びが天井にこだました。

 ヒナタはぐちゃ、ぐちゃと指で桃真を犯しながら、その動きに合わせて言葉を吐き出した。

「あなたが他の男にされた事を覚えてるなんて、許せない。これから毎回、このおもちゃを使って犯してあげます。あなたがこれを見ても、僕のことしか思い出せなくなるように」
「あっ、ああんっ、やあっ」
「最高に気持ちよくしてあげますよ。そのうち、このおもちゃを見ただけで濡れるようになりますから。見ててください」
「やんっ、やあっ、ヒナタっ」

 切実な声で名前を呼ばれ、ヒナタは指を動かすのを止めた。
 桃真は快楽でうるんだ瞳でヒナタを見上げた。

「おもちゃなんか嫌だ。おまえのが、欲しい」

 ヒナタはディルドを遠くへ投げ捨てた。

 指が抜けた、かと思うと、桃真の体内にそれよりはるかに凶暴な熱い塊がめり込んできた。ドカンと音がするような激しさで最奥を突かれ、桃真は一撃で絶頂に達し、白い露をほとばしらせた。だがヒナタは止まらなかった。ぐったりした桃真の体を折れんばかりに抱きしめ、猛然と腰を打ちつけた。
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