上 下
22 / 35
ソウルレス【SIDE: マルク】

ネイムレス・アフェクション

しおりを挟む



「食事をさせてくれ」

 そう頼むと、あいつはいつも、おれに身を任せてくれる。
 バンパイア・ウイルスに感染して吸血鬼となったおれにとって、「食事」とは血を吸うことだ。首筋に噛みつかれて血液を奪われるのは不快だろうが、ヴァレンチンはおれを拒んだことはない。

 一日に一度、おれはヴァレンチンをマットレスに押し倒す。やわらかい首筋に牙を食い込ませると、甘い血液がおれの口内に流れ込んでくる。

 何もかもが最高だ。血の味も、肌のにおいも。宝石のようにきれいな瞳も、可愛らしい顔立ちも。
 ぐったり横たわるその体は、鍛錬のおかげで程よく筋肉がついていて、しなやかだ。

 吸血後、ヴァレンチンは十分間ほど動けなくなる。それだけ負担をかけているのかと思うと気の毒になるが、無防備に横たわっている姿は、とてもそそる。



 [研究所]のリュボフ博士が言っていた。ヴァレンチンは、おれ専用の血液提供者ドナーだと。おれにぴったり合うように作られている・・・・・・、と。
 おれが最強であり続けるためには、ヴァレンチン以外から吸血してはいけない。

 おれたちは切っても切り離せないペアだ。ヴァレンチンはおれにとっての〈特別〉なのだ。

 でも、たぶんそれは、恋愛感情とはまったく別物だ。

 バンパイア・ウイルスに感染したおれたちは、不老不死の頑健な肉体を手に入れたが、その代わりに、一切の生殖能力を失った。バンパイアは子をなすことができない。


 ヴァレンチンを独り占めにしたい、身も心もおれのものにしたい、とおれが願うのは――恋愛感情じゃない。ドナーを確保しておきたいというバンパイアの本能だ。
 ときどき「愛」と勘違いしてしまいそうになるが、たぶん違う。たぶん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

調教

雫@来週更新
BL
ただただ調教する話。作者がやりたい放題する話です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

処理中です...