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ルースエンド【SIDE: ヴァレンチン】

シーツもないベッドの上で

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 激しい痛みで目が覚めた。気がつくと、すぐ目の前にボリスラフの顔があった。
 状況はすぐにわかった。俺は裸にされ、後孔にボリスラフの雄を埋め込まれているのだ。内臓をごりごり突き上げられ、気持ちが悪い。ボリスラフは俺の両脚を抱え上げ、荒々しく腰を打ちつけてくる。

 揺さぶられながら、俺はうめいた。

「やめっ、くそ野郎、あっ、……抜けよ、うあっ、んぅっ」

 手首をベッドの脚に縛りつけられているので、奴を殴れない。家具のほとんどない、殺風景な狭い部屋に、ベッドのきしむ音が反響する。

 ボリスラフは勝手に絶頂に達した。身を震わせながら、俺の中に欲望を注ぎ込んだ。
 俺はありとあらゆる罵声をボリスラフに投げつけた。

 ボリスラフはふーっと深い息を吐き、落ち着いた目で俺を見下ろした。

「おまえ、眠ってるときは可愛かったのに……口を開いたら台無しだな。黙らせとくか」

 俺の口の中に、何かの布切れが押し込まれた。たぶん俺の下着だ。

「んうっ、んっ!」
「よくも、さんざんコケにしてくれたな。新入りのくせに、偉そうに。……最後に・・・おまえの泣き顔が見たくてな。生意気なおまえをヒイヒイ言わせてやりたかったんだよ」

 ボリスラフは延々と俺を犯し続けた。俺は休みなく啼かされ、最後には声が出なくなった。
 何時間たったのか。唐突に、ボリスラフは服を着て、無言で部屋を出て行った。
 精液にまみれた裸の俺を、ベッドに縛りつけたまま。


 どうやらここは時間貸しの部屋か何からしい。しばらくすると、家主が部屋のドアを乱暴に叩いた。

「おい、もうすぐ日付が変わるぞ。部屋を空けてもらわなくちゃ困る。延長料金を請求してもいいか?」

 俺が返事をしないでいると、太った男が合鍵でドアを開けて入ってきた。室内を見回して、すぐに状況を察したらしい。家主の男は苦虫を噛みつぶしたような顔になった。

 ボリスラフは借りた部屋の代金を払わずに逃げたという。

「部屋代の代わりに一発やらせろ」

という家主にも犯されてから、俺はようやく解放された。

     ◇   ◆   ◇

 翌朝になっても、腰が重くてつらかった。無理に開かされた股関節が痛い。後孔に、まだ男根を埋め込まれているような違和感がある。

 だが俺は普段通りに会社に出勤した。
 ボリスラフを徹底的にぶちのめしてやるためだ。酒に睡眠薬を混ぜてレイプだなんて。そんなふざけた真似をして無事で済むと思ってるとしたら、奴は頭がおかしい。

 ――会社に、ボリスラフの姿はなかった。

「昨夜、警察から連絡があったのですよ。ターニャ・サエンコという女性が被害届を出したそうです。君たちが昨日取り立てに行った債務者ですがね。借入額よりはるかに多い金額を奪われた、と……。早い話が『強盗』ってことになります」

 ユロージヴイ社長が、泣く子も黙る凶悪な面相に似合わない、妙に丁寧な口調で語り始めた。俺はあっけにとられた。

「え。そうだったんですか」

 債務者の借入額や返済処理などは、すべて先輩であるボリスラフに任せていたので、俺はまったく関与していなかったのだ。
 社長はさらに言葉を継いだ。

「ボリスラフは金を持って消えました。回収した貸金も、それを超えてサエンコ嬢から奪った金も、全部です。いくら連絡しようとしても、つかまりません」
「……!」
「ヴァレンチン。君にも知っておいてもらいたいのですが。回収担当者が、回収した貸金を会社に入れないなどということは、決してあってはならないことです。わがユロージヴイ金融は、そのような裏切者を絶対に許しません。ですから」

 社長は、社長のデスクに最も近い席に座っている初老の男に、パキッと音がするような鋭さで視線を向けた。

「ニジンスキー。あとは君に任せます。金を全額取り返し、ボリスラフを後腐れなく処分してください」
「わかりました、社長」

 ニジンスキーと呼ばれた男は立ち上がり、底光りのする渋い低音で答えた。社長も怪物じみた容貌の持ち主だが、このニジンスキーの顔もすさまじい。どんな下手くそな外科医の処置を受けたのか、その顔は派手な縫合跡だらけだ。「フランケンシュタインの怪物」というキーワードで検索したら引っかかりそうな顔だ。
 ずば抜けた長身と、異様なほど広い肩幅。見事な筋肉達磨だるまだ。筋肉の発達度ではマルクとも対抗できるかもしれない。

 社長は俺に視線を戻した。

「ヴァレンチン。君は今日からこのニジンスキーと組むのです。何があろうとも必ず、ボリスラフを見つけ出しなさい」
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