一振りの刃となって

なんてこった

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103.使い方

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「ぐうううぅぅぅあああぁぁぁぁぁぁ!」
 ニートが落ちた左手を目にし唸りだす、聞くに堪えない痛覚くらい切っとけよ。
「くぅぅぅぅそぉぉぉぉ”ヒール”」
 ありゃ?回復呪文?・・・ああ”カスタマイズ”は持って無いのか。
「どうしてくれるんだ!片腕になったらこの体の価値が下がるじゃないか!」
 知らんがな、こいつはアレだな。
 俺みたいに切った相手を吸収することで相手の能力も奪えるんだろうし普通じゃ考えらんないくらい魔力も持ってるんだろうけど。
 いまいち魔力の使い方って言うかなんて言うかその・・・下手なんだなきっと。
「この体が一番人気があったんだぞ!キープしてる女どもにこんな、片腕になった姿を見られたら・・・」
『だったら拾って切断面つけてから”ヒール”使えば繋がったんじゃないのか?』
 素朴な疑問、まぁ痛みで我を忘れてたんだろうけど・・・痛み感じる暇あったのかな?
『切断面治っちゃったしもう一回傷口作ってやるよ、優しいだろ?』
 そういって俺はニートの斜め後ろに刺さってる剣翼の一振りを操ってニートの左肩口でスライスハムを一枚作ってあげる、我ながらいい腕(?)だ。
「え?へっ?・・・ぎゃぁぁぁぁ!」
 今度はちゃんと痛みを感じる間があったようだな、やっぱり腕が丸ごと無くなるよりこっちの方が気持ちに対する衝撃的なもので緩和されない分痛みを感じるようだな・・・自分で検証したことないから知らんけど。
 ニートは俺のアドバイス通りに腕を拾おうとしたので剣翼で左手を奪ってニコルの手元まで運ぶ。
「かぁぁぁぁえぇぇぇぇぇせぇぇぇぇぇ!」
 声が間延びして聞こえる・・・ニートが言い終わる前にニコルが手元に来たニートの手を細切れにして、
「”ファイアボール”」
 焼却処分する、燃えるゴミだったか。
「あ・・あ・ああああああぁぁぁぁぉおおおぉぉぉまぁぁぁえぇぇぇぇぇ!」
 うるさいな。
「うるさいですよ見苦しい」
 ニコルも俺と同意見のようだ。
「代えの効く体ならギャ-ギャー叫ばないでください」
 そうなんだよな、こいつの口ぶりだと他にも体を忍ばせててもおかしくないいんだけど・・・意志がない木偶だとどうにも”サーチレーダー”に引っ掛かんないんだよね・・・意志がないのにゴーレムは引っかかるのは・・・なんでなんだろ?
 まぁいいや、奴が剣を伸ばす・・・って攻撃前に伸ばしちゃうの?
 伸ばした剣がまるで鎖みたいにジャラジャラと床に転がる・・・どうも剣と剣を連結させてるのかな?接合部には鋭利な円状のパーツを用いているみたいだ。
 ほう、成る程ね~普通ならそんな形状の武器じゃ戦えないだろうけど俺らなら別だね。
『ニコル、回避に専念してあいつの今の形状の動きを覚えろ』
 超使ってみたいから!って言う言葉は何とか飲み込んで指示を出す。
 ニコルは苦笑を少しこぼしてうなずいた。
「しぃぃぃぃねぇぇぇぇぇ!」
 相変わらずうるさい、てか左手止血しないの?別にいいけど。
 ニコルに向かって突進してくるニート、連結剣になった剣で斬りかかってくる。
 パッと見この形状の弱点は簡単に見抜ける・・・接合部の関係で縦には器用に稼働できるけど横には動かない、ついでに長さがあるため振りかぶる必要がある。
 つまり大振りになる、ゴーレムたちなら躱せないだろうけど、今ニートの前に相対しているのはニコルだ、縦に斬り込んだ姿を見せられたら失笑せざるを得ない。
 あの形状で、一節一節が俺と同じ切れ味なら横振りしなきゃ・・・逆上して損なことも分かんなかったのかな?
 もしかしたら一度横振りに振った時にブレーキをかけ損ねて自分をきっちゃったことでもあるんじゃないかな?
 最もこいつが俺と同じ存在だというなら縦切りで剣の距離を一気に詰めて”ニードル”をニコルに放つかもしれないから注意だけはしておく。


「くそ!なんで当たらない!」
 しばらく、といっても数分も足ってないのだがニートがなぜか縦切りに拘って連結剣を何度となく振り下ろしてくる、”ニードル”を警戒していたがこいつにはその手の発想はないようだ。
 それにしてもあいつの体そろそろ出血多量で動かなくなると思ったんだけどいまだに動いてる、なかなかしつこいな。
『ニコル・・・飽きた、片付けよう』
「はい!」
『肉体じゃなくあいつの剣の横っ腹を斬れ、多分それで終わる』
 俺が指示を出すとニコルが狙いを定めて振り下ろされたニートの本体である剣のジョイント部分に垂直に切り込む、そのまま水面に刃を沈めるようにニートの剣を真っ二つに切り裂く。
「なっばかな!」
 ニートが驚き、慌てふためく・・・きっと初体験だろうからね。
 切り口から何やら靄のような物が湧きでておりニートが必死に止めようとしているが・・・片手じゃね・・・
 俺としては”オールイーター”で吸収してもよかったんだけど・・・せっかくの機会だし俺らが破壊されたらどうなるのかをこの目で見たいと思ったので使わないことにする・・・目ん玉ないんだけどね。
「そんな!おれ・・・こんな、嫌だまだ死にたくない・・・せっかく新しい人生が始まったのに!」
『人生は始まってないぞ?剣になった瞬間人生は無くなったんだから』
 俺のつい口(?)から出てしまった呟きにニートが目を見開き驚き・・・一人で納得し、目に憎悪を宿す。
「お前もあのジジイの作品か!なんで俺を殺す!?」
『殺すんじゃない、壊すんだ・・・ついでに答えるとお前は俺に危害を加えられる存在だからな、早めに壊しておきたかったってのもある』
 そう、俺は不安要素にいつまでも存在されてて心穏やかでいられるほど器が広い存在じゃない。
「くそ・・・お前が・・・正体がわかってたら・・・ちくしょう・・・」
 その言葉を最後に肉体の動きは止まる、するとニートの本体がさっき入れられた切り口からひびが入っていき・・・黒い霧になって消えていった・・・
 砕け散るとかじゃないのね・・・アディオス・ニート!
 結局名前はなんだったんだろう、まぁどうでもいいけどね。
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