91 / 130
88.シーフォート再び
しおりを挟む「なんか久しぶりね、この町に来るのは」
サラがそんなことを言うと、
「それは以前ここから出発したのが約一月前になりますからね」
とニコルが応える、そう今俺たちはこの港町、シーフォートに就いたばかりなのである。
ケイベルから出て特に問題らしい問題も起きなかったため滞りなくシーフォートに着いたのだ。
「では僕は依頼の品をシーフォートの冒険者ギルドに届けて来ますので皆さんは宿の方をお願いします」
「分かったわ」
サラが返事をするのを確認してニコルは歩きだす。
因みに依頼は小包なんかをケイベルからシーフォートに届けてくれって依頼が3、4個あったので請け負った依頼だ。
「はい、確かに確認いたしました・・・こちらが報酬となります」
報酬を受け取るとニコルは今終わらせた依頼に似たようなものがないかを訊いてみる。
「そうですね・・・今際その手の仕事は無いみたいです」
「そうですか、明後日この町を立つ予定なのでその時にまた確認に来ますね」
「はい、お待ちしておりますね」
そういってギルドを後にしようとしてニコルの前に立ちふさがる輩が現れる。
「おーおーかわいいお嬢ちゃんがこんなところでお使いかい?ちょっとおじさんたちについて来いよ」
チンピラが湧きだした・・・
というかこいつら正気か?こう見えてニコルってば男だぞ!
確かに見た目はショートカットでかわいい顔、13間近で身長は150ほど体格は男にしては華奢に見える、手足も割かし細い・・・
ボーイッシュな女の子って思われても仕方ないな、すまんなチンピラ俺の眼が腐ってたようだ・・・目ん玉ないけど。
「僕は男ですが?あなたは頭と目が腐ってるようですから医者に見てもらってはどうですか?その金額くらい恵んでやりますよ」
おぅ、この子ったら俺が止めないと喧嘩っ早いのね・・・うん、知ってた。
「上等だこら!その喧嘩買ったぞ、裏来いこら!」
騒ぎ出したチンピラにまわりにいた暇そうなチンピラ・・・じゃなかった冒険者たちが好奇心からか煽りだす。
「お嬢ちゃん負けんなよー」
「そんなガキやっちまえー」
など言って囃し立てる、一々人の野次なんか聞いてても面白くないのだが。
冒険者ギルドの裏には練兵場が設置されている、これは傭兵斡旋していたころの名残らしいが、そこにニコルとチンピラとチンピラの仲間たちが対峙していた。
「僕一人に恥ずかしくないんですか?」
「あ?そんな事言っても負け惜しみにしか聞こえねーな?ぎゃっはっはっは」
「いえ、僕一人にこの程度の数で勝てると勘違いするなんて生きてて恥ずかしくないんですか?って聞いてるんですよ?」
チンピラたちは唖然とする、こいつは何を言ってるんだと?
思考が一瞬止まってしまっているチンピラたちを見逃してあげるほどニコルは優しくない・・・俺は待ってあげるぞ?優しいからな。
一足飛びで一番前にいたニコルに絡んできたチンピラに手を開いたままの手の裏側で顎を弾く、裏拳にしないんだな~っのが俺の感想。
その一撃で意識を刈られたチンピラを双掌打の要領で吹き飛ばし後ろにいた2人も纏めて吹き飛ぶ。
あまりの出来事に頭が追い付かないのか、まだ唖然としているチンピラたちに対するニコルの攻撃は止まらない。
纏めて飛ばした為、左右に分断されたチンピラたち、左に2人右に3人。
まず左の二人にニコルが鋭い足払いをかける、勢いが凄まじく頭から着地したチンピラの踵が地面に落ちた瞬間に、いつ跳躍したかわからないが降りてきたニコルの両足がチンピラたちの腹に突き刺さる。
ようやく我に返った右のチンピラたちがニコルに意識を向けるが既にチンピラの腹の上にはおらず右の3人中2人がきょろきょろしているが3人のうちの1人が膝が崩れて倒れた時にニコルがどこで何をしていたか知る。
崩れ落ちたチンピラの腹があった場所に突き出された肘の残像を視認した2人だったがその直後にニコルより放たれた廻し蹴りが2人の顎を的確にとらえ2人とも沈む。
ようやく最初に飛ばされたチンピラをどけて立ち上がろうとして両手をついた2人のチンピラだったが立ち上がったのは1人だった。
なぜ立たなかったのか、答えはそのチンピラの前に立つニコルが立たなかったチンピラの上に飛び乗ったからである。
「ひっ」
チンピラは戦慄していた時間にしては10秒かかったかかからないかのやり取りであったのだがチンピラからしたら一瞬のやり取りである。
「それで?あなたはどうします?」
ニコルがにこやかな笑みを向けて質問をすると、
「こっ降参だ!俺一人で勝てるわけがねぇ」
「こんな子供に敗けを認めると?」
ニコルの質問に膝を崩し地面に座り込み頭を下げて、土下座スタイルで。
「お前を馬鹿にしたのは謝るから!どうか許してくげっ」
最後まで喋る前にニコルがチンピラの頭を横から蹴り上げる。
「ゴミが」
吐き捨てるように言うニコルにまわりの冒険者たちは戦慄していた、確かに素行の悪いチンピラたちとはいえあんなに必死で謝る者を蹴り上げあまつさえ「ゴミが」と吐き捨てたこの子供に得体のしれない恐怖に似た感情が冒険者たちには生まれていた。
そして俺も若干引いている、ニコル恐ろしい子・・・
まぁ土下座しながら刃物用意してたのバレバレだったからいいけどね。
「さて、宿に行きますか」
とニコルが歩き出す・・・途中に転がっていたチンピラの腹を蹴り上げて落ちてきたところに廻し蹴りをかます曲芸を披露してから。
ニコルは怒らせると怖いなぁ・・・気を付けよ。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。
光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。
ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…!
8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。
同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。
実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。
恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。
自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる