一振りの刃となって

なんてこった

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88.シーフォート再び

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「なんか久しぶりね、この町に来るのは」
 サラがそんなことを言うと、
「それは以前ここから出発したのが約一月前になりますからね」
 とニコルが応える、そう今俺たちはこの港町、シーフォートに就いたばかりなのである。

 ケイベルから出て特に問題らしい問題も起きなかったため滞りなくシーフォートに着いたのだ。

「では僕は依頼の品をシーフォートの冒険者ギルドに届けて来ますので皆さんは宿の方をお願いします」
「分かったわ」
 サラが返事をするのを確認してニコルは歩きだす。
 因みに依頼は小包なんかをケイベルからシーフォートに届けてくれって依頼が3、4個あったので請け負った依頼だ。


「はい、確かに確認いたしました・・・こちらが報酬となります」
 報酬を受け取るとニコルは今終わらせた依頼に似たようなものがないかを訊いてみる。
「そうですね・・・今際その手の仕事は無いみたいです」
「そうですか、明後日この町を立つ予定なのでその時にまた確認に来ますね」
「はい、お待ちしておりますね」
 そういってギルドを後にしようとしてニコルの前に立ちふさがる輩が現れる。
「おーおーかわいいお嬢ちゃんがこんなところでお使いかい?ちょっとおじさんたちについて来いよ」
 チンピラが湧きだした・・・
 というかこいつら正気か?こう見えてニコルってば男だぞ!
 確かに見た目はショートカットでかわいい顔、13間近で身長は150ほど体格は男にしては華奢に見える、手足も割かし細い・・・
 ボーイッシュな女の子って思われても仕方ないな、すまんなチンピラ俺の眼が腐ってたようだ・・・目ん玉ないけど。
「僕は男ですが?あなたは頭と目が腐ってるようですから医者に見てもらってはどうですか?その金額くらい恵んでやりますよ」
 おぅ、この子ったら俺が止めないと喧嘩っ早いのね・・・うん、知ってた。
「上等だこら!その喧嘩買ったぞ、裏来いこら!」
 騒ぎ出したチンピラにまわりにいた暇そうなチンピラ・・・じゃなかった冒険者たちが好奇心からか煽りだす。
「お嬢ちゃん負けんなよー」
「そんなガキやっちまえー」
 など言って囃し立てる、一々人の野次なんか聞いてても面白くないのだが。

 冒険者ギルドの裏には練兵場が設置されている、これは傭兵斡旋していたころの名残らしいが、そこにニコルとチンピラとチンピラの仲間たちが対峙していた。
「僕一人に恥ずかしくないんですか?」
「あ?そんな事言っても負け惜しみにしか聞こえねーな?ぎゃっはっはっは」
「いえ、僕一人にこの程度の数で勝てると勘違いするなんて生きてて恥ずかしくないんですか?って聞いてるんですよ?」
 チンピラたちは唖然とする、こいつは何を言ってるんだと?
 思考が一瞬止まってしまっているチンピラたちを見逃してあげるほどニコルは優しくない・・・俺は待ってあげるぞ?優しいからな。
 一足飛びで一番前にいたニコルに絡んできたチンピラに手を開いたままの手の裏側で顎を弾く、裏拳にしないんだな~っのが俺の感想。
 その一撃で意識を刈られたチンピラを双掌打の要領で吹き飛ばし後ろにいた2人も纏めて吹き飛ぶ。
 あまりの出来事に頭が追い付かないのか、まだ唖然としているチンピラたちに対するニコルの攻撃は止まらない。
 纏めて飛ばした為、左右に分断されたチンピラたち、左に2人右に3人。
 まず左の二人にニコルが鋭い足払いをかける、勢いが凄まじく頭から着地したチンピラの踵が地面に落ちた瞬間に、いつ跳躍したかわからないが降りてきたニコルの両足がチンピラたちの腹に突き刺さる。
 ようやく我に返った右のチンピラたちがニコルに意識を向けるが既にチンピラの腹の上にはおらず右の3人中2人がきょろきょろしているが3人のうちの1人が膝が崩れて倒れた時にニコルがどこで何をしていたか知る。
 崩れ落ちたチンピラの腹があった場所に突き出された肘の残像を視認した2人だったがその直後にニコルより放たれた廻し蹴りが2人の顎を的確にとらえ2人とも沈む。
 ようやく最初に飛ばされたチンピラをどけて立ち上がろうとして両手をついた2人のチンピラだったが立ち上がったのは1人だった。
 なぜ立たなかったのか、答えはそのチンピラの前に立つニコルが立たなかったチンピラの上に飛び乗ったからである。
「ひっ」
 チンピラは戦慄していた時間にしては10秒かかったかかからないかのやり取りであったのだがチンピラからしたら一瞬のやり取りである。
「それで?あなたはどうします?」
 ニコルがにこやかな笑みを向けて質問をすると、
「こっ降参だ!俺一人で勝てるわけがねぇ」
「こんな子供に敗けを認めると?」
 ニコルの質問に膝を崩し地面に座り込み頭を下げて、土下座スタイルで。
「お前を馬鹿にしたのは謝るから!どうか許してくげっ」
 最後まで喋る前にニコルがチンピラの頭を横から蹴り上げる。
「ゴミが」
 吐き捨てるように言うニコルにまわりの冒険者たちは戦慄していた、確かに素行の悪いチンピラたちとはいえあんなに必死で謝る者を蹴り上げあまつさえ「ゴミが」と吐き捨てたこの子供に得体のしれない恐怖に似た感情が冒険者たちには生まれていた。
 そして俺も若干引いている、ニコル恐ろしい子・・・
 まぁ土下座しながら刃物用意してたのバレバレだったからいいけどね。
「さて、宿に行きますか」
 とニコルが歩き出す・・・途中に転がっていたチンピラの腹を蹴り上げて落ちてきたところに廻し蹴りをかます曲芸を披露してから。
 ニコルは怒らせると怖いなぁ・・・気を付けよ。
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