64 / 130
61.襲撃者
しおりを挟むサン太郎の警戒した視線の先には先ほど”メニードル”で片付けたゴブリンの倍にはなるだろう数のゴブリンの群れが走ってきていた。
「ゲッ!ゴブリンの群れじゃにゃい!サン太郎早くレッドに剣を!」
ニナが叫ぶとサン太郎は思い出したように咥えている剣をレッドに渡そうと動くが。
「ぐぅおおおお!」
地の底から響くような唸り声を耳にしてサン太郎は硬直してしまう。
「何?今の鳴き声っていうか咆哮?」
雪鱗が慌てて周囲を見回すとゴブリンの群れの後方にいる者たちがはじけ飛ぶ。
「ゴブ---!」×たくさん
ゴブリンたちは血相を変えて・・・顔色とかよくわかんないが血相を変えて走り続けてる、どうやら吠えた魔物から逃げているようだ。
「取り敢えず隠れて様子を見ましょう!そこの木の陰へ、急いで!」
サラが急いで指示を出すと、ライカと雪鱗がレッドを運び近くの木の後ろに隠れサラとニナが硬直したサン太郎を叩いて正気に戻すと別の木の後ろに隠れる。
・・・そして俺の本体、ファルシオンはサン太郎が正気に返ったはずみでその場に落とされている。
結果、走ってきた大量のゴブリンに足蹴にされるという悲劇に見舞われる。
サン太郎め~覚えてろ~!
ゴブリンたちの群れはやり過ごせたがそのゴブリン達を追いかけてた奴は弾き飛ばしたゴブリン達や俺が仕留めて耳を獲っただけのゴブリンの死体を食べ始めたようだ。
サラたちは木の後ろに隠れて身を動かさないようにしているから見てないようだが俺は丁度見える位置に転がされてしまっている。
そいつらは肌は緑色で髪は茶髪が黒くすすけた感じで額に2本の角を生やしその巨躯は2メートルをゆうに越しており盛り上がった筋肉はその身体能力の高さを窺わせる。
そいつらの真っ赤に染まった口には鋭く丈夫な歯が並んでいて手に掴んだゴブリンの死体を頭からゴリゴリ音を響かせかみ砕いている、顎も丈夫なようだ。
どうやらオーガの狩りの場面に居合わせてしまったようだ、流れ的に昨日の雷刃竜でも出るかとドキドキしたが違ったようだ。
それでもEランクの冒険者からしたら格上の相手には違いない、ランクで言えばオーガはBランクにあたる・・・この森での討伐依頼って危険すぎるんじゃないかな?って思ってしまっても仕方ないと思う、因みにオーガは5体ほどいて個体ごとに差があるようだが・・・どれも3メートル近いボディビルダーのようだ、そう考えると奴らの肌がてかって見える気がしてくるから不思議だ。
ゴブリンの死体を半分くらい喰い終わったあたりでオーガたちは満足したのか他の死体を集めて布のようなモノに載せて運び始める。
余った1匹のオーガが俺の近くに転がってる死体を拾おうとして俺に気づく、やばいかな?
オーガが俺に手を伸ばしてきたときに赤い影がオーガの前を横切った。
サン太郎が俺を咥えてオーガを睨みつける・・・あれ?さっきこいつらの咆哮にビビってたのに、主人のピンチに勇気が出ちゃったのかね?愛い奴よ。
「サンちゃ・・・」
「ニナ!シッ!」
とっさに叫んでしまいそうになったニナの口をサラが塞ぐがどうやら見つかったようだ。
「ぐぅおおおお!」
オーガが咆哮を上げる。
獲物がまだここにいるよと他のオーガに伝えようと叫ぶ!
その咆哮に他のオーガは気づかない。
聞こえないものは気づけないよね。
オーガがこっちに気づいた時に俺を中心に5メートル範囲で防音結界”サイレントサークル”を張っといた、対象物の内と外に防音機構を施す結界だけど範囲指定までできちゃった優れもの、他のオーガはさっさと自分たちの巣に帰ってったみたいだったのでこいつが咆哮をあげなかったら気づかないかなーと思ってはっといた、俺の移転の勝利である。
サン太郎が素早く俺を口から離し叫んでるオーガの足に食らいつく、俺的にはさっさと体に俺を届けてほしかったのだがね。
噛みついたオーガにサン太郎の特殊能力が反映される噛みつかれサン太郎に触れられた部分が火傷のように爛れる。
「グおおおおおお!」
痛みに吠えるオーガが噛みついたサン太郎にコブシを叩きつけようと構えた時に、
「”ファイアボール”!」
直径150センチほどの大きさの火球がオーガの胴体にあたる、サラの得意技の”ファイアボール”だ、普通ならバスケットボールくらいの大きさの魔法なのだがサラは派手好きらしく「小さいより大きいほうがいいでしょ?」と純真な俺にはよくわからない言い回しで自分の魔法について語ってた・・・気がする、覚えてない。
その隙にサン太郎が離れようとする。
「サンちゃん!大丈夫!」
叫びながら手持ちのショートソードで切りかかるニナだがその刃はオーガの硬い皮膚に弾かれる!
「堅っ!」
弾かれた弾みでの手のしびれと体制の崩れが致命的な隙を作ってしまう。
「グおおおおおお!」
標的を一度離れたサン太郎から突っ込んできたニナに変えそのコブシを叩きつけようとして、
「は~い、ざ~んねん」
ライカがオーガの膝裏に渾身の蹴りを叩きこむ、痛そうな膝カックンを受けて体勢を崩したオーガに、
「くらえ!」
追い打ちにと雪鱗わき腹めがけて槍を突き立てる!
「グおおおおおお!」
痛みに叫ぶオーガが反撃といわんばかりに腕を振るうが全員ヒット&アウェイで器用に躱しながら攻撃を続ける。
危なげない場面も多々あったが何とかオーガを追い詰めていく4人と1匹、いいかげん俺を体に持っていってくれないかなーと思っていると、突然巨大な影がオーガに激突した。
俺もオーガばっかり見ていたとはいえ”サーチレーダー”の範囲外からの強襲には面食らう。
「グゥルオオオオオオオ!」
ビリビリと空気が震える。
あまりの大音量に全員耳をふさぎうずくまる。
そしてその咆哮がやむと大きく鼻息を出し全員を睨みつける、いやただ軽く視線を送っただけあのかもしれないが・・・ただその視線を受けただけでニナは失神し倒れサラとライカは腰を抜かし失禁してしまいサン太郎は尻尾を巻いている。
まともに武器を構えているのは雪鱗くらいだ・・・白目をむいてはいるが。
俺は急いで本体を鞘から脱出させてブレド・ファルシオンの所まで本体を移動させる間に合うか?
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか
ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。
目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。
なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。
そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。
その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる