一振りの刃となって

なんてこった

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61.襲撃者

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 サン太郎の警戒した視線の先には先ほど”メニードル”で片付けたゴブリンの倍にはなるだろう数のゴブリンの群れが走ってきていた。
「ゲッ!ゴブリンの群れじゃにゃい!サン太郎早くレッドに剣を!」
 ニナが叫ぶとサン太郎は思い出したように咥えている剣をレッドに渡そうと動くが。
「ぐぅおおおお!」
 地の底から響くような唸り声を耳にしてサン太郎は硬直してしまう。
「何?今の鳴き声っていうか咆哮?」
 雪鱗が慌てて周囲を見回すとゴブリンの群れの後方にいる者たちがはじけ飛ぶ。
「ゴブ---!」×たくさん
 ゴブリンたちは血相を変えて・・・顔色とかよくわかんないが血相を変えて走り続けてる、どうやら吠えた魔物から逃げているようだ。
「取り敢えず隠れて様子を見ましょう!そこの木の陰へ、急いで!」
 サラが急いで指示を出すと、ライカと雪鱗がレッドを運び近くの木の後ろに隠れサラとニナが硬直したサン太郎を叩いて正気に戻すと別の木の後ろに隠れる。
 ・・・そして俺の本体、ファルシオンはサン太郎が正気に返ったはずみでその場に落とされている。
 結果、走ってきた大量のゴブリンに足蹴にされるという悲劇に見舞われる。
 サン太郎め~覚えてろ~!

 ゴブリンたちの群れはやり過ごせたがそのゴブリン達を追いかけてた奴は弾き飛ばしたゴブリン達や俺が仕留めて耳を獲っただけのゴブリンの死体を食べ始めたようだ。
 サラたちは木の後ろに隠れて身を動かさないようにしているから見てないようだが俺は丁度見える位置に転がされてしまっている。
 そいつらは肌は緑色で髪は茶髪が黒くすすけた感じで額に2本の角を生やしその巨躯は2メートルをゆうに越しており盛り上がった筋肉はその身体能力の高さを窺わせる。
 そいつらの真っ赤に染まった口には鋭く丈夫な歯が並んでいて手に掴んだゴブリンの死体を頭からゴリゴリ音を響かせかみ砕いている、顎も丈夫なようだ。
 どうやらオーガの狩りの場面に居合わせてしまったようだ、流れ的に昨日の雷刃竜でも出るかとドキドキしたが違ったようだ。
 それでもEランクの冒険者からしたら格上の相手には違いない、ランクで言えばオーガはBランクにあたる・・・この森での討伐依頼って危険すぎるんじゃないかな?って思ってしまっても仕方ないと思う、因みにオーガは5体ほどいて個体ごとに差があるようだが・・・どれも3メートル近いボディビルダーのようだ、そう考えると奴らの肌がてかって見える気がしてくるから不思議だ。
 ゴブリンの死体を半分くらい喰い終わったあたりでオーガたちは満足したのか他の死体を集めて布のようなモノに載せて運び始める。
 余った1匹のオーガが俺の近くに転がってる死体を拾おうとして俺に気づく、やばいかな?

 オーガが俺に手を伸ばしてきたときに赤い影がオーガの前を横切った。
 サン太郎が俺を咥えてオーガを睨みつける・・・あれ?さっきこいつらの咆哮にビビってたのに、主人のピンチに勇気が出ちゃったのかね?愛い奴よ。
「サンちゃ・・・」
「ニナ!シッ!」
 とっさに叫んでしまいそうになったニナの口をサラが塞ぐがどうやら見つかったようだ。
「ぐぅおおおお!」
 オーガが咆哮を上げる。
 獲物がまだここにいるよと他のオーガに伝えようと叫ぶ!
 その咆哮に他のオーガは気づかない。
 聞こえないものは気づけないよね。
 オーガがこっちに気づいた時に俺を中心に5メートル範囲で防音結界”サイレントサークル”を張っといた、対象物の内と外に防音機構を施す結界だけど範囲指定までできちゃった優れもの、他のオーガはさっさと自分たちの巣に帰ってったみたいだったのでこいつが咆哮をあげなかったら気づかないかなーと思ってはっといた、俺の移転の勝利である。
 サン太郎が素早く俺を口から離し叫んでるオーガの足に食らいつく、俺的にはさっさと体に俺を届けてほしかったのだがね。
 噛みついたオーガにサン太郎の特殊能力が反映される噛みつかれサン太郎に触れられた部分が火傷のように爛れる。
「グおおおおおお!」
 痛みに吠えるオーガが噛みついたサン太郎にコブシを叩きつけようと構えた時に、
「”ファイアボール”!」
 直径150センチほどの大きさの火球がオーガの胴体にあたる、サラの得意技の”ファイアボール”だ、普通ならバスケットボールくらいの大きさの魔法なのだがサラは派手好きらしく「小さいより大きいほうがいいでしょ?」と純真な俺にはよくわからない言い回しで自分の魔法について語ってた・・・気がする、覚えてない。
 その隙にサン太郎が離れようとする。
「サンちゃん!大丈夫!」
 叫びながら手持ちのショートソードで切りかかるニナだがその刃はオーガの硬い皮膚に弾かれる!
「堅っ!」
 弾かれた弾みでの手のしびれと体制の崩れが致命的な隙を作ってしまう。
「グおおおおおお!」
 標的を一度離れたサン太郎から突っ込んできたニナに変えそのコブシを叩きつけようとして、
「は~い、ざ~んねん」
 ライカがオーガの膝裏に渾身の蹴りを叩きこむ、痛そうな膝カックンを受けて体勢を崩したオーガに、
「くらえ!」
 追い打ちにと雪鱗わき腹めがけて槍を突き立てる!
「グおおおおおお!」
 痛みに叫ぶオーガが反撃といわんばかりに腕を振るうが全員ヒット&アウェイで器用に躱しながら攻撃を続ける。
 
 危なげない場面も多々あったが何とかオーガを追い詰めていく4人と1匹、いいかげん俺を体に持っていってくれないかなーと思っていると、突然巨大な影がオーガに激突した。
 俺もオーガばっかり見ていたとはいえ”サーチレーダー”の範囲外からの強襲には面食らう。
「グゥルオオオオオオオ!」
 ビリビリと空気が震える。
 あまりの大音量に全員耳をふさぎうずくまる。
 そしてその咆哮がやむと大きく鼻息を出し全員を睨みつける、いやただ軽く視線を送っただけあのかもしれないが・・・ただその視線を受けただけでニナは失神し倒れサラとライカは腰を抜かし失禁してしまいサン太郎は尻尾を巻いている。
 まともに武器を構えているのは雪鱗くらいだ・・・白目をむいてはいるが。
 俺は急いで本体を鞘から脱出させてブレド・ファルシオンの所まで本体を移動させる間に合うか?
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