一振りの刃となって

なんてこった

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123.限界を超えて

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 ここで俺は自分に5メートルの限界範囲があるのがなぜなのかを考える。
 キリがいいから?阿保か。
 剣になる前にそういう制限を自分に掛けた?覚えがない。
 というか自分の中には5メートルという単語での関わり合いがでるモノが皆無なのだ。
 となると考えられるのは・・・。
 即座に”ライブラリ”でアーノルド、自分の本体の基礎を作ったあのジジイの記憶を探る。
 正直あのジジイの記憶だと思うだけでイライラするからなるべく見ないようにはしていたのだが今回は必要なことなので仕方なく見ることにした。
 で、はい・・・ありました。
 実は俺も見てました。
 この世界に来た時の最初の部屋その広さは大分広く縦横22メートルくらいあったらしい、そんでもって俺が乗ってた魔法陣の書かれていた布、あれが半径5メートル、俺が粒子になった時も魔法陣の光が俺を集めて剣に誘導した感じだったようだ、ここは俺自身粒子になってて認識ができなかったから爺さんの記憶だが。
 つまり俺の5メートルの制限はすりこみ見たいなもののようなんだが、解除の仕方が分かんない・・・。
 因みにあの魔法陣の正式な作用の1つだったらしい、というのも爺さんの知識にあったが爺さんはそのすりこみに関しては自分に関係ないってことで完全に無関心だった為、正式な解除の方法が全く分かんないのだ。
 なので正式にじゃなく力ずくですりこみを・・・リミッターをぶち壊すことにする。


『ニコル俺を地面につきたてて少し離れていろ』
 という唐突な指示に困惑するニコル。
『”納刀”はしないでもいい、これから俺にかかっている制限を俺の中に在る魔力をぶつけてぶち壊すことにした、剣内部で起きることだが使用するであろう魔力の量が量だから外にどんな影響があるか分からん。
 無理をするつまりだから、お前たちを巻き込んでしまうことに気を使えば失敗するかもしれん、だから離れていろ』
 と説得するとニコルは渋々とだが了承し俺を地面に突き立てる。
『では離れて上空で待機していろ』
 と指示を出し充分離れるのを待ちあのくらいなら大丈夫かな?って思った時に余計な客が沸いてきた。
「ようやくこの魔力の塊をいただけそうだな!」
 ・・・誰だろう?見た目はこの間鎧の素材に使った悪魔に似たタイプっぽいのだが。
「意志持つ剣よ初めまして、我が名はヨトゥン貴殿の内にある純度の高い魔力を貰いに来ました」
『寝言は寝て言え、それから見逃してほしかったら失せろ』
「所詮は剣の分際で持ち手もいない貴様に何ができる、言葉に気を付けろよ!」
 とヨトゥンは声を荒げてこちらに跳びかかろうとして急停止する。
 ヨトゥンの額に触れる寸前の距離に”ニードル”で作った棘があった。
「これが貴様の切り札か?所詮は無機物の浅知恵だな、こんなもので我らグレーターデーモンをどうにかできると思ったのか?」
 やっべー見切りやがったのかよ、あれ?もしかしてピンチ?
「では今度はこちらから仕掛けさせてもらおうか?”ソウルスティール”」
 ヨトゥンはこちらに手をかざして呪文を唱えると俺の内にあった魔力が徐々に減っていく。
『な!なんだ?』
「これは極上な魔力だ!我が”ソウルスティール”は相手の魔力を奪いその魔力をわがものとする技、このままだと上位存在に進化できそうだ!」
『馬鹿め!急激な魔力の増加は身の破滅を呼ぶことを知らんのか!』
「おやぁ?ご存知なんですねぇ?ですが心配はいりませんよぉぉ、俺は悪魔だからねぇぇ」
 言われて以前吸収した悪魔の情報を”ライブラリ”検索する、とその情報が嘘ではないことは分かる、しかし。
『ここまで急激に魔力を奪う悪魔なんて知らんぞ!』
 そう”ライブラリ”の検索結果に出た悪魔たちはここまで強力な吸魔の力を持つものなど知らなかった。
「そりゃ俺が特殊個体だからさ!」
 なるほど、珍しい個体だってことか。
「このまま進化できそうだな!クククありがとよ!」
 ヨトゥンは喜びながら進化がはじま・・・らない。
「なに?魔力の流れが止まった?」
『いやなに、あまりに魔力の吸収が遅いから飽きてきてな?』
 という俺の言葉を聞いたヨトゥンは。
「まさか抵抗できるとはな!だが俺の力をなめるなよ!」
 と更に”ソウルスティール”の力を強める・・・だが。
「くうぅ吸えない何故だ?剣ごときになぜここまで抵抗ができる!」
 やれやれ馬鹿な奴だ。
『種明かしの前にヒントをやる、俺の魔力はどうやって集めたモノか分かってるのか?』
 俺の質問にヨトゥンは何言ってるんだ?という表情になる、まぁこの程度だよな。
『お前はせっかく俺の攻撃を躱したのによりのよって俺と魔力的な繋がりを作っちまった・・・その時点で俺の勝ちなんだよ』
 といった俺の言葉にもいまいち理解が及んでないヨトゥンに俺は容赦なく。
『馬鹿な奴だな・・・”ソウルイーター”』
 一気に奪われた分の魔力を吸収しヨトゥンの魂すら喰らいその先にいる何者かの魂をかじってやる・・・ギリギリでリンクを切られたか。
 どしゃっと倒れ伏すヨトゥンだが俺はそれよりやらねばならないことがあるので剣内部にある魔力を荒ぶらせる。
『ぐうううUUUUUUAAAAAAAAA』
 いつもと違う声質の声が漏れる、荒ぶる魔力に自分の中に在る魔術式が垣間見える、その魔術式にありったけの魔力を叩きこんでみる。
 もしこの魔術式が全く関係ないモノだったらやばかったんじゃないかと後になって思ったがやったもんは今更どうにもなるまい、まぁ今回はうまくいったようだし。
 と、俺は周りの景色がさっぱりしていることに気づく。
『ありゃ?隕石でも落ちたのか?』
 俺の刺さっていた場所は少なくとも雑草くらいは生えていた気がしたがいつの間にか俺を中心に半径50メートル程のクレーターができていた、俺はそれを即座に理解、隕石が落ちたのに俺ってば丈夫なんだからまいったな。
 俺が一旦落ち着いたのを確認したニコルたちが上空から降りてきた。
「兄さん!大丈夫ですか?」
『ああ、まさか俺に向かって隕石が落ちるとはな』
「隕石が落ちてきたんですか?」
「マスターニコル、この周辺では今のところ隕石が落ちたという情報はありません」
「落ちてないそうですよ?と、そんな事よりあの悪魔っぽい奴と何やらやり取りがあったようですが大丈夫ですか?」
『ああ、あのバカなら自分から俺に喰われに来たから焦ったわ』
「敵じゃなかったんですね、それからその後ものすごい光を放ったかと思ったら次の瞬間景色が変わっていたんですが」
 心外だな、その言い方だと俺がこのクレーターの原因みたいじゃないか!って言いたいが。
『まぁ俺の限界を超えるための尊い犠牲さ』
「まぁ景色のことはこの際いいですが、ついに限界を超えたんですか?」
 嬉々として質問をしてくるニコルに。
『超えたみたいだ、認識範囲が大分広がっている』
 と答える、今の俺の認識範囲は現在半径50メートルくらいだがどうやら任意で範囲を広げたり狭めたりできるようになった、因みに使用した魔力は内にあった魔力総量の4割近くだ、戦場に参加してなかったら消滅してたかも。
 後は。
『ニコル俺を持ってあの岩に向けてくれ』
 とニコルに頼む、件の岩は70メートルほど離れているが。
『”メニードル”』
 俺が得意の”メニードル”を使うと穴だらけの岩が出来上がる・・・70メートル先に。
「射程がものすごく伸びましたね?」
『このくらいの長さを目安にしといてくれ、これ以上は一瞬で伸縮出来る自信がない』
 まぁできるだろうがここから先は全開で当たる相手なんて出ないだろう。
 とりあえず弱点だった”サーチレーダー”の狭さに一つの解決ができたので一安心だ。



 サームスギ某所。
「きゃああああああああ」
 絹を引き裂くような女性の痛々しい悲鳴を聞きその女性を世話している女官たちが慌てて駆けつける。
「いかがなさいましたかソフィア様!」
 しかし、女官たちの声は彼女に届かないかのように彼女は意識を無くしていった。
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