一振りの刃となって

なんてこった

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122.ファルシオンの穴

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 未だに怒りが完全に収まらないニコルと共に近くの魔物の巣窟になっている未開の山脈、ウェスモニア山脈へと赴く。
 ここはハーモの町から西に向かうと見えてくる山脈でこの間、冒険者ギルドでドラゴンを見かけたという情報があった為ニコルの八つ当たりに使えるかと思いやってきたのだ。

『と言ってもすぐ見つかるモノでもないか・・・。
 4人とも”装着”後に空からドラゴンかそれに近い個体でもいいや、とにかく強そうなやつを見つけたら報告にこい』
 と俺は指示を出して散開させる、これでなんか町を出てからつけてた連中も手を出しやすくなっただろう。
『行ったみたいだな、ニコル』
「はい、気づいています」
 ニコルが返事すると即座にこの間の襲撃と同様に魔法と矢の襲撃が起こる。
 しかし。
「”抜刀”タイプドラン」
 深紅の竜を模した甲冑を身にまとい飛んできた攻撃をことごとく対応する。
 今回はさっさと片付けるためにニコルは魔法と矢の降り注ぐ雨の中を駆け抜ける。
「ヒィ!」
 短い断末魔をあげてドンドン蹴散らされていく襲撃者たち、飛び道具の数が減れば一発一発狙わなければならないのだがニコルは狙えるほど遅くなく、また。
「ヒギャ!」
 襲撃者が隠れていてもニコルを敵と認識している為に高速で動くニコルに合わせて動く俺の”サーチレーダー”に引っ掛かりその数はすぐにゼロとなった。

 その有様を上空で見ていた”ドラゴントゥース”は。
「これは手を引いてもいい気がするがな」
 気分屋の風竜族のフランがそう零すと。
「右に同じく」
 赤竜族の赤牙も同意する。
「その意見は俺も賛成したくなってきたが・・・どうも俺達も見つかってるようだが」
 というグランの見る先に全員が目を向ける。
「マスターニコルを見ていたようですが何か用事ですか?」
 グランの視線の先には散開した4人の護衛の1人カズハがいた。
「チッ!でも一人なら」
 と雷竜族のライトンがカズハに武器を構えると。
「質問に答えないのでしたらフタバも戦闘に参加しますよ?」
 という言葉が後ろから聞こえる。
「馬鹿な・・・」
 闇竜族のアングロの視線の先にはミツバまでいた、というよりも”ドラゴントゥース”のメンバーがニコルの戦闘に注視するあまりに4人の護衛に囲まれていることに気づけなかったのである。
「これは覚悟を決めて仕掛けるしかないな・・・」
 グランの言葉に全員が頷き。
「いくぞ!」
 掛け声とともにグラン、赤牙が急降下をし残る4人はカズハたちに牽制をして後を追わせないようにする。

『ニコルなんか降ってきた』
 という俺の言葉ははっきり言って遅く、急降下してきたドラゴニュートが放つ”ブレス”にニコルはかろうじて反応する。
 限界探知範囲が半径5メートルの俺の弱点が浮き彫りになってしまう一撃だったなと俺が思う間もなくもう1人のドラゴニュートが途切れた”ブレス”の陰に隠れて突撃して来ていた。
 ニコルはそいつにも反応したがそいつも直前に”ブレス”を吐いてきた、さっきの炎属性の”ブレス”と違い可視出来ない何かを放ってきたのだがとりあえず魔力波を感知した俺は先ほどの”ブレス”と同様に”マナイーター”でとりあえず吸収を試みる。
 すると突撃してきたやつは驚きながら。
「土属性は吸収できないというのはやはり間違いか!」
 という言葉を残しニコルに両断される、その姿を見たもう1人が。
「おのれ!」
 という言葉と共にもう一発”ブレス”を放とうとして首を飛ばされる。
 一段落してカズハたちも上空で戦ったドラゴニュートの手足を引きちぎって降りてくる。
 必死に命乞いをしていたようだが俺は今それどころじゃなかったので止める間もなくニコルが首をはねてしまった。
 意外と俺達って上空からの高速奇襲されたら脆いということが分かったからだ。
 ひとえに俺の能力が原因になっている、”サーチレーダー”を過剰に信頼しすぎている為に普段認識外にある上空への警戒が疎かになりすぎているのだ。
 ニコルなら5メートルも距離があればある程度上から降ってくるものを躱せるが今回反応できたのは大分運がよかったとしか言えなかった。
「どうしました兄さん?」
 俺が深刻に考え事をしていることに気づいたニコルが俺に訊いてくる。
『俺の能力に重大な穴があった、元々どうにかしようとしていた穴だったんだが、事ここにいたって重大な弱点になりつつある』
 深刻な声でニコル達に説明する。
「それは、確かに今回は少し危なかったですが、多分防がなくてもこの鎧なら弾き返してましたよ?」
 という楽観的な意見に。
「マスターニコル、今回は運がよかっただけかと」
 カズハが指摘し続ける。
「もし今回の相手がグランドマスター並に切れ味のある武器を持っていたならマスターニコルは死んでおりました」
 と、実際その通りである、前提に少し無理があるがもし敵に俺がいたらさっきの強襲は成功していただろう。
 これは本格的に”サーチレーダー”範囲を広げなくてはならないな。


 そんなニコル達の映る水晶玉を見てカノンは呟く。
「強襲は有効か、だがあの護衛達はなんだ?一対一でドラゴニュートを弄べるなんて、化け物が増えてんじゃないか。
 赤牙おかげでもう一つ面白い情報が得られたのにこれじゃあプラマイゼロじゃねかよ!やってらんねえや・・・」
 後半やけくそ気味に喋るカノンだが。
「まぁ手土産は二つ、上空からの高速強襲は有効だということと、魔法によって起きた副次効果は消せないって事だな」
 と言ってカノンはニコルの周囲にピントを合わせると”ブレス”で起きた熱風で焦げた植物がニコルを挟んで赤牙の死体の反対側に在った・・・。
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