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118.追撃までの休養
しおりを挟むニコルがイージス砦に着いたのは朝日が昇ったくらいの時間であった。
「今戻りましたハルキさん」
ニコルを出迎えたハルキにニコルから声をかける。
「おお!王都からの早馬で単身魔王軍に突撃をすると聞いて焦っていた処だ。
君は既にこの国に必要な存在なのだから無茶をして私の寿命を縮めないでくれないか?
だが、無事に帰還してくれてよかった」
と冗談を交えつつも帰還を喜ぶハルキだが、後ろに控える4人に目を向ける。
「彼女たちは?」
現在ニコルたちは砦についたらさっさと鎧を外している、因みに4人の鎧はニコルの”納刀”とは違い”脱衣”が解除ワードで”脱衣”中の鎧は竜のレリーフが埋め込まれたネックレスになる、ついでに装着する時は”装着”にしておいた。
「僕の主から遣わされた僕直属の部下です、名前はカズハ、フタバ、ミツバ、ヨツバです。
僕ほどではありませんがドラゴン並みに戦えるので戦力に数えてもいいですが、まだ経験が浅い為できれば4人は一組で扱ってください」
とニコルは説明すると、
「ヨロシクオネガイシマス」×4
と丁寧に頭を下げる4人、ニコルの今までの態度を見ている為にハルキは一瞬対応の困るがそこは人の上に立つ者すぐに立ち直り、
「期待以上の戦果を挙げてくれると期待しているよ」
と矛盾をはらんだ檄をくれる、期待以上を期待ってハウリング効果が起きてるよな。
「それでは追撃戦はいつごろになるんでしょうか?
というよりこんなに日が開いては追撃ではないですね」
軽く笑いながらそういうニコルに申し訳なさそうな顔をするハルキ、
「本来なら撃退したらすぐに追撃をしてそのまま追いやっていくのだが今回の戦での被害が大きすぎてこちらも反撃に移るのに時間がかかるんだ。
1週間もあれば再編も終わり万端とはいえないまでも十分な状態で反攻作戦に移行できるんだが・・・相手が待ってくれるかどうか」
渋い顔のハルキに、
「それなら平気でしょう、昨日までの布陣していた場所に僕が出向いてさらに前線を下げておきましたから」
と何の気なしに言い放つニコルに驚愕ではなくなるほどという顔で、
「それは助かった、それなら時間も十分にできるな。
敵の不幸は君がこちらに味方してくれたことだけなのにこのありよう、かわいそうなことだな」
何に対しての皮肉かはちょっとわからないがハルキは呟いた後、時間を無駄にできないからまた!と急いでこの場を去っていった。
『ふむ、今日はもう休んでいいようだな部屋は・・・どうなるんだ?』
「そういえば訊き忘れてましたね」
ニコルが呟くと控えていた騎士が、こちらですと案内を始める。
着いた部屋はニコルは士官用の部屋であった。
「ニコル様はこちらでオヤスミください、ではお連れの方々はこちらです」
『ニコル止めろ』
「はい?あっ待ってください」
ニコルは俺の突然の命令に慌てたせいですこしかわいい物言いになった。
『そいつらも一緒の部屋でいいと言っとけ、今日はお前に”ソウルブリーダー”をかける』
「なるほど、彼女たちは僕の護衛ですから離れさせるわけにはいかないんです隣にも部屋がありますし交代で護衛してもらうためにこの部屋貰いますね?」
ニコルの微笑みは了承以外を許さない、という気迫も混じっていたために騎士は気圧されたが、なかなか了承をしない。
「しかし、こちらの部屋はハルキ様の部屋でして・・・」
「でしたら全員この部屋に寝ます、それなりに広いですし問題ないでしょう。
貴方体のおかげで外聞もよくなりそうでうれしい限りですね」
棘をもって言うニコルだが、まぁ同じ部屋の方が助かるっちゃ助かる。
4人のメンテは”カスタマイズ”が必須だから誰かに見せる訳にもいかんしな。
「申し訳ありません!すぐにハルキ様に訊いて来ます!」
という騎士をわしづかみに引き留め。
「冗談ですよ、外聞なんてどうでもいいんです。
それに僕も男ですが並の女性では静まりきりませんのでどうかお気になさらず」
と騎士に言い訳を与える・・・ニコルが大人になっていくな、悔しくなんてないぞ!
そんなこんなで少しの期間の休養が訪れる。
ノスモニアからハーモニア街道までの道のりまでのちょうど中間地点にある都市モニカにある魔王軍本陣にて。
「くそったれ!」
口汚い言葉と共に目の前の机を殴りつけるフォウル、机は真ん中から裂ける。
「おーい、代わりの机持ってこーい」
場にそぐなわぬ間の抜けた声で代わりを要請する男をフォウルは睨みながら、
「すまんなカノン、どうにも気が立ってしまってな」
「気にしなすんなって、俺だってあれは理不尽だって思うからな」
謝罪するフォウルに間の抜けた男、カノンは今の話題に上っている者の理不尽な戦闘力に溜息をつきながら仕方ないと告げる。
「あんなんまともに相手しても兵が減る一方だし、普通あんだけモノを斬ってりゃどんなに切れ味のいい剣でも刃こぼれするだろうに、どんだけ斬っても切れ味の落ちない剣、あれも悪夢だな」
そういってカノンが持ち出したのは2つの真ん中からすっぱりと刀身を無くしたショートソードだった物だ。
「これは?」
フォウルが訊ねると、
「こいつは俺の子飼いの密偵が拾って来たもんだ、こっちが奴が降ってきたところにあった剣、こっちが死体の海の端っこに転がってた剣だ、切り口を見たら今日は怖くて寝れないぜ」
そういって切り裂かれた刀身を見せる、切り口は全く変わりがない・・・まるできちんとやすりで滑らかにしたのではないかと思える断面図である。
「なぜ・・・今頃になって奴は現れた・・・」
フォウルは嘆く、あと少し・・・あと少しで悲願だった神国とうそぶくあのふざけた思想の国を亡ぼせたのに!
「申し訳ございません、フォウル様に伝者が参りましてございます」
「通せ」
フォウルが短く返事をすると伝者が入ってくる。
その姿にフォウルは希望を得る・・・来たのは一体の悪魔だった、それもかつて消滅したランページクラスと分かるほどの。
「フォウル、ソフィア様からの伝言だ」
「どんな内容だ?」
「今伝える、急くな」
そういうと悪魔は跪き首を垂れる、すると水晶球のような物が浮かび上がり中から人の姿が映し出される。
「ソフィア様!」
「フォウル、聞こえますね?
単刀直入に言葉を伝えます。
すぐに全軍戻すことを提案します」
このソフィアの言葉に皆が唖然とする、勿論フォウルもだ。
「此度の戦に人知を超える存在が介入した気配があります。
その者は先日、私が預けたデーモンソルジャー達とのリンクをたどって私に害をなそうとしてきました。
何とかこちらに危害が加わる前にリンクを切ることができましたが、恐らく次は無いモノだと思います。
この伝言が終わればこの子もこちらに帰らせる予定です。
ですのでどうか被害が少ない今のうちに帰ってきてください」
そこで映像が切れた。
「ソフィア様!」
「すまんが俺が切った」
悪魔がそういった。
「ソフィアは俺が負けると考えてるようだが、俺は敗けん負けそうになったら即ソフィアとのリンクを切ることにするからその人外と闘わせろ!」
ランページ達グレーターデーモンは自らよりも上位存在だと認めたもの以外に自分より強いと呼ばれる存在のことを嫌う、戦闘狂と呼ばれる奴だ。
だが、それが今回フォウルにとっては嬉しい結果に動いたようだった。
ただしそれは魔王軍にとってうれしい結果をもたらすものでは決してなかったのだが・・・。
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