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エピローグ
第七十話 永遠の約束(最終回)
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セナはロバートを顔を見合わせて「そうね」と嬉しそうに微笑んだ。二人と一人だった家族が、いまようやく三人で一つになれたのだと、セナは感じた。
彼に向かい手を伸ばす。
自分の涙を拭ってくれたその指先をそっと握りしめて、「行ってもらえる?」と訊いた。
「もちろんだ。俺の知らない君の過去を、一族の話をどうか教えて欲しい。俺もその一員となれるなら、これほど喜ばしいことはない」
ロバートはうなづいて、セナの手を握り返した。
セナたちはその夜、魔王の国を離れ、帝国へと戻った。
突然できた父親という存在に、喜びを感じながらもどう接していいのか考え疲れたらしく、ディーノは食堂車での夕食後まもなく、寝入ってしまう。
ベッドに早変わりした座席の上で、セナはすやすやといびきを立てる息子の寝顔を見つめては、はあ、と溜息を洩らした。
そのため息が漏れる度、セナとの間に眠る息子をどう扱っていいか分からず、ロバートも困惑したような、それでいて抱えていた大きな問題が一段落したことに、少なからずの安堵を覚えていた。
「……この子、こんな夜にさっさと寝てしまって。お母様は独りぼっちだわ」
「おいおい、俺がいるじゃないか。そんな言い方はひどいな」
「だって、あなたと最後に過ごしたのはもう数年前よ、ロバート」
「すまなかった。探し出せなかったのは、俺の手落ちだ」
「そんな話してないわ。これから、どうやってあなたとの時間を過ごせばいいのか、とっても困っているってこと」
じっとロバートを見つめるセナの瞳にはしかし、戸惑いはあっても恐れや悲しみというものは見えなかった。
ずっと離れていた二人の距離をどう埋めればいいのか、迷っている。
そういうことだろうと、ロバートは察しをつける。
「他の女性と婚約した俺だ。いまはもう婚約は破棄してきたが……責められても仕方ないと思っている」
「責めたいわけじゃない。私は男性なんて欲しくないと考えたこともあった」
「もう、埋められないのか? 二人が一人で歩いたその過去は」
「過去は無理でも、これからは……そうじゃないかもしれない。でも、距離感は大事かも」
「距離感?」
「息子と父親と母親の三人が一気に一つの家に住むようになるのよ?」
この発言には、ロバートが驚いた。
自分は彼女たちの家には招かれてもそれは一時的なもので、朝行けば昼には帰るだろうし、夜行けば食事をして去る、くらいの扱いが数年は続くと思っていたからだ。
「いい……の、か? 俺は君を――」
「捨てた、逃げた、探さなかった。もうこれは禁句ね。子供もそうだし、私たちのこれからに相応しい言葉じゃない」
「驚いたな。俺は数年は、いやもっと長くこれから孤独に住み、ときどき君たちの家に招かれる人生になると思っていたよ」
「結婚式は、ちゃんとしてもらいますからね? 愛のない生活なんてもう嫌なの。それだけは耐えられない。だから、周りのみんなに互いの口からきちんと言いましょう?」
「俺たちはやり直すことにした?」
「違うわよ、始めるの。今から始めるの。そうじゃなきゃ……この数年間を埋める方法なんて思いつかない」
「それは同感だ」
セナは奪われていたものが、自分のなかに戻ってきたことについて、まだ語られていない詳細を知った時、ロバートや女神に感謝することになるだろうと、なんとなく感じていた。
だけどそれを受け止められるだけの強さは自分のなかにあるの?
そう問いかけたとき、孤独でもやってきたでしょう。友人たちの手助けがあってこそだっあたけれど、ともう一人の母親としての自分が、心のなかで弱いセナを励ますように言った。
「まだあるかしら、あの屋根裏部屋の品々……エリンに捨てられてなければいいけれど」
「行ってみてのお楽しみ、だな」
「もう寝るわ」
そう言い、気のない素振りを見せてセナはロバートに背を向ける。
息子が寝たら二人はあの夜の二人に戻ってしまい、セナは幼い感覚を思い出してまだ彼に素直になれないでいた。
翌朝。
帝都の一角に、セナが取り戻した公爵家があった。
秋の風に吹かれながら、木の葉を散らして舞うその様は、本当の主人を待つ老いた忠犬のようにも見える。
長い長い不毛な時間を経て、カーバンクル公爵邸はようやく真実の主の手に、その身を委ねることができたことが嬉しいのか、仄暗い雰囲気に覆われていた屋敷は、セナが敷居をまたいだ瞬間から、太陽に祝福されるかのように、陽光を浴びて輝いていた。
数日前から不在になっていたエリンやレイナの代わりに、死亡したと思われていたセナが現れたことで、家人たちは一様に驚きを隠せないでいた。
エリンとレイナの断罪がセナたちの帰宅とともに伝えられ、それを聞いた執事長はメイド長と手を取り合って真っ先に、エリン派だった家人を解雇し、公爵家から追い出した。
折を見たかのように、皇弟のからの使者が公爵家を訪れ、正当なる家の後継者としてセナの復帰を認めることや、貴族籍にはセナの戸籍の再発行と、息子ディーノが新たに登記されたこと、ロバートをの結婚を祝う祝辞などが届けられた。
その中には義母たちに関する断罪の詳細も記録されていたから、使者がかしこまってそれを読み上げようとした瞬間、セナはディーノの耳を慌てて塞いで、執事長に息子を預け部屋から退出させた。
「僕だって聞きたかったのに!」
と息子はあとで怒っていたが、あれは子供に不必要なものだよ、とロバートが優しく言い聞かせると、「ふうん。分かりました」と賢そうに頷いて見せる。
普段は自分の言うことなんてたまにした訊かない息子がこんなにも大人しく振舞ったことに、セナは眉根を寄せてディーノを睨んでいた。
「裏切り者。いつからそんなに聞き分けが良くなったの?」
「知らないよ、僕、いつもこうだもの」
と、しらばっくれるディーノの頭を軽く撫でると、セナはロバートとディーノを連れて、思い出のなかにある、屋根裏への階段に足をかけた。
十二段だ。
それだけ上がれば、そこには天井がある。
記憶の通り、天井には鍵穴があって、その鍵はいつものように、父親が大事にしていた書棚の片隅に隠されていた。
その鍵を使い屋根に続く扉を解錠すると、セナはゆっくりとそれを押し上げた。
埃ばかりが溜まっている、と予測していたのに、不思議なことにその部屋は時間が止まったかのように、なにもかもが真新しく、この部屋に運び込まれたときのままで保存されているようだった。
「……どういうこと?」
「公爵家は聖女様から続く血筋だ。時間の進み具合を変えたのか、それとも何か特別な魔法を用意したのか……。空間だけをひずませているなら、そこでは時間の流れは止まったように感じるほど遅いというからな」
「ああ、空間魔法をうまく使えば、どんなに大きなものでも好きなように持ち運びできるって言う、あれね……」
仕留めた邪竜をポシェットに納めて、聖女は辺境から帝都へと運んだ、と記録にはある。
そういう系統の魔法が掛かっているのだろうと、なかを物色しながら、セナは思い出にある、あの写真を探した。
あれは左側の壁に、額に入って飾られていたはず。
両親とセナが写った、貴重な思い出の品だった。
その方向に向けて歩き出すと、先に奥へと走って行ったディーノが、目当ての写真の前で立ち尽くしていた。
息子が見上げているのは、高い屋根裏の壁にかけれた母親たちの写真ではなく、一枚の肖像画だった。
そこにはカーバンクル家を興したとされる、初代カーバンクル公爵夫妻が描かれていた。
ディーノは「誰?」とセナに視線で問いかける。
「聖女様よ。初代様と――あなたの最初のご先祖様たち」
「ママと……似てない、ね?」
息子の発言を耳にして、その肖像画を見たロバートは聖女の容姿はセナによく似ていると思った。だが、髪色が違う、瞳の色も。セナはシルバーブロンドで青い瞳だ。だが、聖女は栗色の髪に、緑の瞳をしている。
対して初代公爵は、セナとよく似た髪色に瞳の色をしていた。
どうやら公爵家は男系の家系らしい、と想像がつく。
彼女の手におさまろうとしている家族写真の人々もまた、母親以外はセナと同じ髪と瞳を持っていた。
(あなたが真実の愛を捧げるならば、家族は永遠に離れることがないでしょう)
そんな声をどこかで聞いた気に、ロバートはふと囚われた。
セナが家族写真を手にして、嬉しそうにしながらそれをディーノに見せ、自分へと見せてくれる。
今はここにいない彼女の両親の遺影に、ロバートは必ず最後まで愛してみせる、と心で固く誓った。
* * * *
読者様へ。
いつもお世話になっております。
長い話となってしまいました。
ここまで読み進めていただきまして、ありがとうございます。
最終話についてたくさんのご意見をいただきました。
終わり方が中途半端になっていると感じていたものの、どこまでを描くべきかということで随分長くお待たせしてしまいました。
このエンディングが最も良い形かどうかは、それぞれ選んでくださった方の判断によると思います。
作者としては、セナやロバート、ディーノたちがこれからも幸せに生きていてくれる、その姿を想いつつ、このエンディングに落ち着きました。
この物語を読んでくださった方が、ほんのひとときでも楽しんでくだされば、作者としては喜びに堪えません。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
彼に向かい手を伸ばす。
自分の涙を拭ってくれたその指先をそっと握りしめて、「行ってもらえる?」と訊いた。
「もちろんだ。俺の知らない君の過去を、一族の話をどうか教えて欲しい。俺もその一員となれるなら、これほど喜ばしいことはない」
ロバートはうなづいて、セナの手を握り返した。
セナたちはその夜、魔王の国を離れ、帝国へと戻った。
突然できた父親という存在に、喜びを感じながらもどう接していいのか考え疲れたらしく、ディーノは食堂車での夕食後まもなく、寝入ってしまう。
ベッドに早変わりした座席の上で、セナはすやすやといびきを立てる息子の寝顔を見つめては、はあ、と溜息を洩らした。
そのため息が漏れる度、セナとの間に眠る息子をどう扱っていいか分からず、ロバートも困惑したような、それでいて抱えていた大きな問題が一段落したことに、少なからずの安堵を覚えていた。
「……この子、こんな夜にさっさと寝てしまって。お母様は独りぼっちだわ」
「おいおい、俺がいるじゃないか。そんな言い方はひどいな」
「だって、あなたと最後に過ごしたのはもう数年前よ、ロバート」
「すまなかった。探し出せなかったのは、俺の手落ちだ」
「そんな話してないわ。これから、どうやってあなたとの時間を過ごせばいいのか、とっても困っているってこと」
じっとロバートを見つめるセナの瞳にはしかし、戸惑いはあっても恐れや悲しみというものは見えなかった。
ずっと離れていた二人の距離をどう埋めればいいのか、迷っている。
そういうことだろうと、ロバートは察しをつける。
「他の女性と婚約した俺だ。いまはもう婚約は破棄してきたが……責められても仕方ないと思っている」
「責めたいわけじゃない。私は男性なんて欲しくないと考えたこともあった」
「もう、埋められないのか? 二人が一人で歩いたその過去は」
「過去は無理でも、これからは……そうじゃないかもしれない。でも、距離感は大事かも」
「距離感?」
「息子と父親と母親の三人が一気に一つの家に住むようになるのよ?」
この発言には、ロバートが驚いた。
自分は彼女たちの家には招かれてもそれは一時的なもので、朝行けば昼には帰るだろうし、夜行けば食事をして去る、くらいの扱いが数年は続くと思っていたからだ。
「いい……の、か? 俺は君を――」
「捨てた、逃げた、探さなかった。もうこれは禁句ね。子供もそうだし、私たちのこれからに相応しい言葉じゃない」
「驚いたな。俺は数年は、いやもっと長くこれから孤独に住み、ときどき君たちの家に招かれる人生になると思っていたよ」
「結婚式は、ちゃんとしてもらいますからね? 愛のない生活なんてもう嫌なの。それだけは耐えられない。だから、周りのみんなに互いの口からきちんと言いましょう?」
「俺たちはやり直すことにした?」
「違うわよ、始めるの。今から始めるの。そうじゃなきゃ……この数年間を埋める方法なんて思いつかない」
「それは同感だ」
セナは奪われていたものが、自分のなかに戻ってきたことについて、まだ語られていない詳細を知った時、ロバートや女神に感謝することになるだろうと、なんとなく感じていた。
だけどそれを受け止められるだけの強さは自分のなかにあるの?
そう問いかけたとき、孤独でもやってきたでしょう。友人たちの手助けがあってこそだっあたけれど、ともう一人の母親としての自分が、心のなかで弱いセナを励ますように言った。
「まだあるかしら、あの屋根裏部屋の品々……エリンに捨てられてなければいいけれど」
「行ってみてのお楽しみ、だな」
「もう寝るわ」
そう言い、気のない素振りを見せてセナはロバートに背を向ける。
息子が寝たら二人はあの夜の二人に戻ってしまい、セナは幼い感覚を思い出してまだ彼に素直になれないでいた。
翌朝。
帝都の一角に、セナが取り戻した公爵家があった。
秋の風に吹かれながら、木の葉を散らして舞うその様は、本当の主人を待つ老いた忠犬のようにも見える。
長い長い不毛な時間を経て、カーバンクル公爵邸はようやく真実の主の手に、その身を委ねることができたことが嬉しいのか、仄暗い雰囲気に覆われていた屋敷は、セナが敷居をまたいだ瞬間から、太陽に祝福されるかのように、陽光を浴びて輝いていた。
数日前から不在になっていたエリンやレイナの代わりに、死亡したと思われていたセナが現れたことで、家人たちは一様に驚きを隠せないでいた。
エリンとレイナの断罪がセナたちの帰宅とともに伝えられ、それを聞いた執事長はメイド長と手を取り合って真っ先に、エリン派だった家人を解雇し、公爵家から追い出した。
折を見たかのように、皇弟のからの使者が公爵家を訪れ、正当なる家の後継者としてセナの復帰を認めることや、貴族籍にはセナの戸籍の再発行と、息子ディーノが新たに登記されたこと、ロバートをの結婚を祝う祝辞などが届けられた。
その中には義母たちに関する断罪の詳細も記録されていたから、使者がかしこまってそれを読み上げようとした瞬間、セナはディーノの耳を慌てて塞いで、執事長に息子を預け部屋から退出させた。
「僕だって聞きたかったのに!」
と息子はあとで怒っていたが、あれは子供に不必要なものだよ、とロバートが優しく言い聞かせると、「ふうん。分かりました」と賢そうに頷いて見せる。
普段は自分の言うことなんてたまにした訊かない息子がこんなにも大人しく振舞ったことに、セナは眉根を寄せてディーノを睨んでいた。
「裏切り者。いつからそんなに聞き分けが良くなったの?」
「知らないよ、僕、いつもこうだもの」
と、しらばっくれるディーノの頭を軽く撫でると、セナはロバートとディーノを連れて、思い出のなかにある、屋根裏への階段に足をかけた。
十二段だ。
それだけ上がれば、そこには天井がある。
記憶の通り、天井には鍵穴があって、その鍵はいつものように、父親が大事にしていた書棚の片隅に隠されていた。
その鍵を使い屋根に続く扉を解錠すると、セナはゆっくりとそれを押し上げた。
埃ばかりが溜まっている、と予測していたのに、不思議なことにその部屋は時間が止まったかのように、なにもかもが真新しく、この部屋に運び込まれたときのままで保存されているようだった。
「……どういうこと?」
「公爵家は聖女様から続く血筋だ。時間の進み具合を変えたのか、それとも何か特別な魔法を用意したのか……。空間だけをひずませているなら、そこでは時間の流れは止まったように感じるほど遅いというからな」
「ああ、空間魔法をうまく使えば、どんなに大きなものでも好きなように持ち運びできるって言う、あれね……」
仕留めた邪竜をポシェットに納めて、聖女は辺境から帝都へと運んだ、と記録にはある。
そういう系統の魔法が掛かっているのだろうと、なかを物色しながら、セナは思い出にある、あの写真を探した。
あれは左側の壁に、額に入って飾られていたはず。
両親とセナが写った、貴重な思い出の品だった。
その方向に向けて歩き出すと、先に奥へと走って行ったディーノが、目当ての写真の前で立ち尽くしていた。
息子が見上げているのは、高い屋根裏の壁にかけれた母親たちの写真ではなく、一枚の肖像画だった。
そこにはカーバンクル家を興したとされる、初代カーバンクル公爵夫妻が描かれていた。
ディーノは「誰?」とセナに視線で問いかける。
「聖女様よ。初代様と――あなたの最初のご先祖様たち」
「ママと……似てない、ね?」
息子の発言を耳にして、その肖像画を見たロバートは聖女の容姿はセナによく似ていると思った。だが、髪色が違う、瞳の色も。セナはシルバーブロンドで青い瞳だ。だが、聖女は栗色の髪に、緑の瞳をしている。
対して初代公爵は、セナとよく似た髪色に瞳の色をしていた。
どうやら公爵家は男系の家系らしい、と想像がつく。
彼女の手におさまろうとしている家族写真の人々もまた、母親以外はセナと同じ髪と瞳を持っていた。
(あなたが真実の愛を捧げるならば、家族は永遠に離れることがないでしょう)
そんな声をどこかで聞いた気に、ロバートはふと囚われた。
セナが家族写真を手にして、嬉しそうにしながらそれをディーノに見せ、自分へと見せてくれる。
今はここにいない彼女の両親の遺影に、ロバートは必ず最後まで愛してみせる、と心で固く誓った。
* * * *
読者様へ。
いつもお世話になっております。
長い話となってしまいました。
ここまで読み進めていただきまして、ありがとうございます。
最終話についてたくさんのご意見をいただきました。
終わり方が中途半端になっていると感じていたものの、どこまでを描くべきかということで随分長くお待たせしてしまいました。
このエンディングが最も良い形かどうかは、それぞれ選んでくださった方の判断によると思います。
作者としては、セナやロバート、ディーノたちがこれからも幸せに生きていてくれる、その姿を想いつつ、このエンディングに落ち着きました。
この物語を読んでくださった方が、ほんのひとときでも楽しんでくだされば、作者としては喜びに堪えません。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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