美醜聖女は、老辺境伯の寡黙な溺愛に癒やされて、真の力を解き放つ

 彼は結婚するときこう言った。

「わしはお前を愛することはないだろう」

 八十を越えた彼が最期を迎える。五番目の妻としてその死を見届けたイザベラは十六歳。二人はもともと、契約結婚だった。
 左目のまぶたが蜂に刺されたように腫れあがった彼女は左右非対称で、美しい右側と比較して「美醜令嬢」と侮蔑され、聖女候補の優秀な双子の妹ジェシカと、常に比較されて虐げられる日々。
 だがある時、女神がその身に降臨したはイザベラは、さまざまな奇跡を起こせるようになる。
 けれども、妹の成功を願う優しい姉は、誰にもそのことを知らせないできた。
 彼女の秘めた実力に気づいた北の辺境伯ブレイクは、経営が破綻した神殿の借金を肩代わりする条件として、イザベラを求め嫁ぐことに。
 結界を巡る魔族との戦いや幾つもの試練をくぐり抜け、その身に宿した女神の力に導かれて、やがてイザベラは本当の自分を解放する。
 その陰には、どんなことでも無言のうちに認めてくれる、老いた辺境伯の優しさに満ちた環境があった。
 イザベラは亡き夫の前で、女神にとある願いを捧げる。

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