16 / 25
平行世界からの脱走前夜
しおりを挟む
「どうやら彼女は眠ったらしい、気配がない」
「はぁ・・・・・・」
檻の前でボロボロの恰好をした男性が地べたに腰を下ろしながら言う。僕は精神的にボロボロだったのは言うまでもない。彼の話を聞こうとすると彼女の邪魔が入り、彼の妄言が連発。それが終わると続きの話が始まるのだが、また彼女の邪魔が入り、妄言が続く。それを繰り返して今、夜の12時を回った。
それでも、僕の目の前にいる男のおかげで多くの情報を得ることが出来た。彼はフォルネウスの弟で、本名はローズルというらしい。
ドゥルジについても情報を得れた。彼女は他者から向けられる信頼を失うことに快感を覚えており、元いた世界では、日本でいう総理大臣レベルの役人であり旦那であった男を策略で失脚させたのちに、彼女自身で殺害したことで罪に問われた。その殺害現場で、彼女は裸で失神、失禁、痙攣を起こしており、駆けつけた役人はドン引きだったそうだ。
彼女の能力は切り離された細胞であっても、集中することでその細胞から位置、音、振動の情報を得ることが出来るそうだ。彼女の細胞を取り込んだ者の声はもちろん、近くにいる人の声まで聴くことが出来る。ターゲットに髪の毛を飲ませ、本当に彼女のことを心から信用しているのかを確かめるのに使ったそうだ。いわゆる盗聴だ。
ローズルの話に戻るが、人を操る方法は人間の脳に振動を伝えることで催眠をかけているそうで、世界中の人を一度に洗脳できる納得がいった。また、彼は振動に敏感であり、ドゥルジがこっちに集中していることに気づけたのは、微弱な細胞の振動の違いを感じ取ることができるからだそうだ。
ローズルは元いた世界で裁判を受けてから、悪魔の名をつけられた兄とまとめてフォルネウス兄弟と呼ばれ、それ以降この世界で兄の言う事を守りながらひっそり暮らすつもりだった。しかし、神の使命と感化された兄が暴走し、再び殺人に関わることになる。
「あの、ローズルさん。どうして、フォルネウス兄の言う事を聞いたんです?」
「私には人を操る力がある。生まれ持った強力な力だ。もし、お前がその力を手にしたらなんにつかう?私たちはそれを欲を満たすために使ったのだ。わかりやすく言おう。女を騙すのに使った」
「あぁ・・・・・・」
「罪の意識がなかったわけではない。どうしても我慢ができなかった場合にのみ、力を使った。兄も同じだった。だから、あの日もそうだと思っていた。だが違うかった。兄はその女をミキサーでぐちゃぐちゃにし、アートという名を借りた殺人を犯したのだ」
しばしの沈黙。日常生活で経験したことがない出来事のため励まそうとしても、どんな言葉をかけてよいかわからなかった。
「私は、日々怯えていた。私が連れてきた女達が殺されていたということがバレれば、危険人物だとして私も永久追放にされる。そして、あの日、兄は私の存在を悪びれもなく明かした。恥ずかしい話だが、精神が病んだ振りをして、兄に脅迫されて手伝ったかのように見せかけようとしたが、その努力もむなしくここに堕とされた。それから私は、兄の言う通りにする日々を送った。兄を止めることは出来ない。だが、君は関係ない。これまで殺されてきた人々の罪滅ぼしといえば都合がよいかもしれないが、君を助けてやりたい」
「ローズルさん・・・・・・」
ローズルは腰のポケットから小ぶりのハンマーを取り出す。
「ローズルさん?」
「今からここを開ける。離れてろ」
「いや・・・・・・冗談でしょ?あの、ほかに方法は・・・・・」
「檻の鍵の場所を私は知らぬ。兄には洗脳は効かぬ。ドゥルジを起こすわけにもいかぬ。これが最善だ」
カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン。
ローズルは一切の迷いなく、力強く、鉄の柵を叩く。柵が凹んでいるかいないのかすぐには分からない。
「ローズルさん・・・・・・」
これでは、ここから出るころには朝になってしまうだろう。仕方・・・・・・ない?
「はぁ・・・・・・」
檻の前でボロボロの恰好をした男性が地べたに腰を下ろしながら言う。僕は精神的にボロボロだったのは言うまでもない。彼の話を聞こうとすると彼女の邪魔が入り、彼の妄言が連発。それが終わると続きの話が始まるのだが、また彼女の邪魔が入り、妄言が続く。それを繰り返して今、夜の12時を回った。
それでも、僕の目の前にいる男のおかげで多くの情報を得ることが出来た。彼はフォルネウスの弟で、本名はローズルというらしい。
ドゥルジについても情報を得れた。彼女は他者から向けられる信頼を失うことに快感を覚えており、元いた世界では、日本でいう総理大臣レベルの役人であり旦那であった男を策略で失脚させたのちに、彼女自身で殺害したことで罪に問われた。その殺害現場で、彼女は裸で失神、失禁、痙攣を起こしており、駆けつけた役人はドン引きだったそうだ。
彼女の能力は切り離された細胞であっても、集中することでその細胞から位置、音、振動の情報を得ることが出来るそうだ。彼女の細胞を取り込んだ者の声はもちろん、近くにいる人の声まで聴くことが出来る。ターゲットに髪の毛を飲ませ、本当に彼女のことを心から信用しているのかを確かめるのに使ったそうだ。いわゆる盗聴だ。
ローズルの話に戻るが、人を操る方法は人間の脳に振動を伝えることで催眠をかけているそうで、世界中の人を一度に洗脳できる納得がいった。また、彼は振動に敏感であり、ドゥルジがこっちに集中していることに気づけたのは、微弱な細胞の振動の違いを感じ取ることができるからだそうだ。
ローズルは元いた世界で裁判を受けてから、悪魔の名をつけられた兄とまとめてフォルネウス兄弟と呼ばれ、それ以降この世界で兄の言う事を守りながらひっそり暮らすつもりだった。しかし、神の使命と感化された兄が暴走し、再び殺人に関わることになる。
「あの、ローズルさん。どうして、フォルネウス兄の言う事を聞いたんです?」
「私には人を操る力がある。生まれ持った強力な力だ。もし、お前がその力を手にしたらなんにつかう?私たちはそれを欲を満たすために使ったのだ。わかりやすく言おう。女を騙すのに使った」
「あぁ・・・・・・」
「罪の意識がなかったわけではない。どうしても我慢ができなかった場合にのみ、力を使った。兄も同じだった。だから、あの日もそうだと思っていた。だが違うかった。兄はその女をミキサーでぐちゃぐちゃにし、アートという名を借りた殺人を犯したのだ」
しばしの沈黙。日常生活で経験したことがない出来事のため励まそうとしても、どんな言葉をかけてよいかわからなかった。
「私は、日々怯えていた。私が連れてきた女達が殺されていたということがバレれば、危険人物だとして私も永久追放にされる。そして、あの日、兄は私の存在を悪びれもなく明かした。恥ずかしい話だが、精神が病んだ振りをして、兄に脅迫されて手伝ったかのように見せかけようとしたが、その努力もむなしくここに堕とされた。それから私は、兄の言う通りにする日々を送った。兄を止めることは出来ない。だが、君は関係ない。これまで殺されてきた人々の罪滅ぼしといえば都合がよいかもしれないが、君を助けてやりたい」
「ローズルさん・・・・・・」
ローズルは腰のポケットから小ぶりのハンマーを取り出す。
「ローズルさん?」
「今からここを開ける。離れてろ」
「いや・・・・・・冗談でしょ?あの、ほかに方法は・・・・・」
「檻の鍵の場所を私は知らぬ。兄には洗脳は効かぬ。ドゥルジを起こすわけにもいかぬ。これが最善だ」
カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン。
ローズルは一切の迷いなく、力強く、鉄の柵を叩く。柵が凹んでいるかいないのかすぐには分からない。
「ローズルさん・・・・・・」
これでは、ここから出るころには朝になってしまうだろう。仕方・・・・・・ない?
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。


やってはいけない危険な遊びに手を出した少年のお話
山本 淳一
ホラー
あるところに「やってはいけない危険な儀式・遊び」に興味を持った少年がいました。
彼は好奇心のままに多くの儀式や遊びを試し、何が起こるかを検証していました。
その後彼はどのような人生を送っていくのか......
初投稿の長編小説になります。
登場人物
田中浩一:主人公
田中美恵子:主人公の母
西藤昭人:浩一の高校時代の友人
長岡雄二(ながおか ゆうじ):経営学部3年、オカルト研究会の部長
秋山逢(あきやま あい):人文学部2年、オカルト研究会の副部長
佐藤影夫(さとうかげお)社会学部2年、オカルト研究会の部員
鈴木幽也(すずきゆうや):人文学部1年、オカルト研究会の部員
奇妙な家
376219206@qq.com
ホラー
運転手なしのバスは、呪われた人々を乗せて、奇妙な黒い家へと向かった...その奇妙な家には、血で染まったドアがあった。呪われた人は、時折、血の門の向こうの恐ろしい世界に強制的に引きずり込まれ、恐ろしい出来事を成し遂げることになる... 寧秋水は奇怪な家で次々と恐ろしく奇妙な物語を経験し、やっとのことで逃げ延びて生き残ったが、すべてが想像とは全く違っていた... 奇怪な家は呪いではなく、... —— 「もう夜も遅いよ、友よ、奇怪な家に座ってくれ。ここには火鉢がある。ところで、この話を聞いてくれ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる