2 / 3
ループ
しおりを挟む
『速報です。今日の午前八時、新宿でトラックと軽乗用車の衝突事故があり…』
また、事故のニュースだ。最近増加しているらしい。
今、俺は車で家に向かっている。あの後いろいろ聞いてみたところ、どうやら俺は柳田実鶴という名前の高校生らしい。なんでも医者が言うには、友人の家族と旅行してた際に、交通事故で大怪我をして二十日以上昏睡状態だったとか…
「実鶴、大丈夫か?無理するなよ?」
運転席から心配そうに優しく声をかけてくれるのは、俺の父親の柳田聡一。なんでも小説家で意外にも有名人らしい。俺が目覚めたときすぐに駆けつけてくれた人だ、きっと良い親なのだろう。…煙草さえやめてくれれば。
「記憶喪失らしいけど…とにかく元気になってくれて良かったわ」
助手席からは母親の柳田香織が笑顔で俺の退院を喜んでくれている。どうやら俺は家族から愛されているらしい。
そんなやり取りをしていると、少しでかい家の駐車場に駐まる。
「ここが僕達の家だよ。お帰り実鶴」
「おぉ…」
想像してたよりでかいな…やっぱ有名な小説家ってだけあって金持ちなのか…。聡一さんが家に入って、手招きしてくる。
「ただいま…?」
「お帰り」
やっぱり記憶がないから変な感じだな…。辺りを見渡すと所々に俺の写真が飾ってあった。だが、写真の中には必ず俺の近くにある女の子がいた。
「聡一さん、この女の子って誰ですか?」
「…この女の子は隣の家の西村小夏ちゃん、実鶴とは同じクラスで幼馴染みの子だよ」
幼馴染み、か…写真を見る限りさぞ仲が良いみたいだな。俺のことを思い出すきっかけになるかもな…
「ちょっと小夏さんの家に行って来ます」
ふたりともなんか言おうとしてたけど…まぁいいか、思い立ったが吉日だ。でも…なんだろう小夏さんの家に近づくにつれて足しが重い感じがする…いいや、気にするな俺。インターホンを押してみると、十秒後か細い声が聞こえてきた。
「…はい…?」
「すみません。小夏さんいらっしゃいますか?」
玄関から俺より少し背が小さい女の子が出てきた。写真と似てるしこの人が小夏さんかな?
「あの、実鶴です。ちょっとお話いいですか?」
…あれ?なんか震えてる?寒いのかな…。いや違う泣いてるじゃん!
「ぅ…ぅうううっ…!」
「ど、どうしたの?」
ヤバイ全然泣き止まない…えっと、ど、どうすれば……
「一旦落ち着こう?」
俺は小夏さんを彼女の家の中へと連れ戻して、俺もおじゃまする。…なんか俺めっちゃ図々しいことしてない?勝手に人ん家上がり込んでるし…
「…ごめん、取り乱しちゃって…」
俺がいろいろ悩んでる間に小夏さんは泣き止んでいた。
「それで実鶴、どうしたの?」
あっ…すっかり目的忘れてた。
「俺、記憶喪失になっちゃったのでいろいろ教えてください」
俺はこの場でこの選択をしたことを後悔した。
「えっ…記憶、喪失…?…私、忘れ……覚えて、ないの?」
「はい…」
俺の言葉を聞いた小夏さんは、震えながら台所に行ってしまった。…どうしたのか?そのまま台所に入ると…
「………ぅ」
小夏さんは泣きながら包丁で自分自身を刺していた。心臓、肺、首…そして、俺の前で事切れた―
「……ぅ」
目を開けるとそこはあの病院だった。
「実鶴さん、目が覚めましたか?」
あの時のあの医者が俺に近寄ってくる。
「…そ、んなことより…小夏さんは?」
「小夏さんはあなたが事故に遭っていたときにはいなかったはずですよ?」
事故…?一体何を言ってるんだ?事故なわけない…だって小夏さんは自分で自分を刺して…
「実鶴!」
病室に勢いよく飛び込んできた聡一さんが、俺が横たわっているベットに駆け寄ってきた。
「実鶴っ……目覚めてくれて、良かった…本当に良かったっ…」
なんだ…いったい何があったんだ?
「先生、いったい何が…?」
「あなたは交通事故に遭い、二十日以上昏睡状態だったんです」
…は?何を言ってるんだ?おかしい…何かがおかしい…いや、俺がおかしいのか?
「……今日って何日ですか?」
「今日は九月六日だよ」
う、嘘、だろ…?だって九月六日って俺が起きた日……まさか…
「…戻ってる?」
また、事故のニュースだ。最近増加しているらしい。
今、俺は車で家に向かっている。あの後いろいろ聞いてみたところ、どうやら俺は柳田実鶴という名前の高校生らしい。なんでも医者が言うには、友人の家族と旅行してた際に、交通事故で大怪我をして二十日以上昏睡状態だったとか…
「実鶴、大丈夫か?無理するなよ?」
運転席から心配そうに優しく声をかけてくれるのは、俺の父親の柳田聡一。なんでも小説家で意外にも有名人らしい。俺が目覚めたときすぐに駆けつけてくれた人だ、きっと良い親なのだろう。…煙草さえやめてくれれば。
「記憶喪失らしいけど…とにかく元気になってくれて良かったわ」
助手席からは母親の柳田香織が笑顔で俺の退院を喜んでくれている。どうやら俺は家族から愛されているらしい。
そんなやり取りをしていると、少しでかい家の駐車場に駐まる。
「ここが僕達の家だよ。お帰り実鶴」
「おぉ…」
想像してたよりでかいな…やっぱ有名な小説家ってだけあって金持ちなのか…。聡一さんが家に入って、手招きしてくる。
「ただいま…?」
「お帰り」
やっぱり記憶がないから変な感じだな…。辺りを見渡すと所々に俺の写真が飾ってあった。だが、写真の中には必ず俺の近くにある女の子がいた。
「聡一さん、この女の子って誰ですか?」
「…この女の子は隣の家の西村小夏ちゃん、実鶴とは同じクラスで幼馴染みの子だよ」
幼馴染み、か…写真を見る限りさぞ仲が良いみたいだな。俺のことを思い出すきっかけになるかもな…
「ちょっと小夏さんの家に行って来ます」
ふたりともなんか言おうとしてたけど…まぁいいか、思い立ったが吉日だ。でも…なんだろう小夏さんの家に近づくにつれて足しが重い感じがする…いいや、気にするな俺。インターホンを押してみると、十秒後か細い声が聞こえてきた。
「…はい…?」
「すみません。小夏さんいらっしゃいますか?」
玄関から俺より少し背が小さい女の子が出てきた。写真と似てるしこの人が小夏さんかな?
「あの、実鶴です。ちょっとお話いいですか?」
…あれ?なんか震えてる?寒いのかな…。いや違う泣いてるじゃん!
「ぅ…ぅうううっ…!」
「ど、どうしたの?」
ヤバイ全然泣き止まない…えっと、ど、どうすれば……
「一旦落ち着こう?」
俺は小夏さんを彼女の家の中へと連れ戻して、俺もおじゃまする。…なんか俺めっちゃ図々しいことしてない?勝手に人ん家上がり込んでるし…
「…ごめん、取り乱しちゃって…」
俺がいろいろ悩んでる間に小夏さんは泣き止んでいた。
「それで実鶴、どうしたの?」
あっ…すっかり目的忘れてた。
「俺、記憶喪失になっちゃったのでいろいろ教えてください」
俺はこの場でこの選択をしたことを後悔した。
「えっ…記憶、喪失…?…私、忘れ……覚えて、ないの?」
「はい…」
俺の言葉を聞いた小夏さんは、震えながら台所に行ってしまった。…どうしたのか?そのまま台所に入ると…
「………ぅ」
小夏さんは泣きながら包丁で自分自身を刺していた。心臓、肺、首…そして、俺の前で事切れた―
「……ぅ」
目を開けるとそこはあの病院だった。
「実鶴さん、目が覚めましたか?」
あの時のあの医者が俺に近寄ってくる。
「…そ、んなことより…小夏さんは?」
「小夏さんはあなたが事故に遭っていたときにはいなかったはずですよ?」
事故…?一体何を言ってるんだ?事故なわけない…だって小夏さんは自分で自分を刺して…
「実鶴!」
病室に勢いよく飛び込んできた聡一さんが、俺が横たわっているベットに駆け寄ってきた。
「実鶴っ……目覚めてくれて、良かった…本当に良かったっ…」
なんだ…いったい何があったんだ?
「先生、いったい何が…?」
「あなたは交通事故に遭い、二十日以上昏睡状態だったんです」
…は?何を言ってるんだ?おかしい…何かがおかしい…いや、俺がおかしいのか?
「……今日って何日ですか?」
「今日は九月六日だよ」
う、嘘、だろ…?だって九月六日って俺が起きた日……まさか…
「…戻ってる?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる