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君が繋いだエンドロール

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「ごめんね、待たせて」
「うん」

 駆け寄ると、高橋くんがにこっと優しく笑いかけてくれる。隣に並んで笑い返すと、高橋くんが誰も見ていないのを確認してからわたしの手をとった。

「帰ろう」

 軽く繋ぎ合った手を引かれて、心臓がバクバク音をたてる。

 高橋くんは、こういうの慣れてるのかな。

 そっと横目に見上げたら、足元に視線を落とした高橋くんの頬もほんのり赤くなっている。

 それを見たら、慣れてるわけじゃなくて、勇気を出してわたしの手をつかんだんだってことがすぐにわかった。心臓バクバクなのは、高橋くんもきっとおんなじ。

 嬉しくなって、ふふっと笑う。そのとき。

『しあわせにね、紗良ちゃん』

 風にのって、優しい声が聞こえたような気がした。

 知らないはずなのに聞き覚えがあるような。なつかしい誰かの声。

「ユーコ……?」 

 ハッとして振り向いたけど、もちろんそこには誰もいない。

 自分が「ユーコ」という名前を口にした理由もわからない。

 ユーコって誰だっけ。

 とてもよく知っていた名前だったはずなのに、なんだかピンとこない。頭の一部分にだけ靄がかかったようで、思い出せない。

 それは、わたしにとってとても大切な《なにか》だったはずなのに……。

 突然、校舎のほうを振り向いたわたしを、高橋くんが不思議そうな目で見てくる。

「武部さん、どうかした?」
「うぅん、なんでもない……」

 たぶん、気のせい。首を横に振って、高橋くんに笑いかける。

 ありがとう。しあわせだよ。

 誰に伝えるでもないけど、そんなふうに思って胸の奥がきゅっと熱くなった。


Fin.
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