54 / 78
54・お肉
しおりを挟む
わたし達はこっそり会場に戻ってきた。
会場はさっきと変わらず貴族の子供達でごった返している。この中では誰がいて誰がいないのか確認する事は難しそうなので、きっとわたし達がいなかった事など誰も気に止めてはいないだろう。
「さぁて、これからどうする?」
「うーん」
セルシュにそう質問され、わたし達は少し考えこんだ。
周りを見ても人数が多すぎて、誰かに挨拶なんて言うのも探すところから挫けそうな感じ。と言ってもわたしには他に知り合いがいる訳ではないんだけどさ。本来ならここで人脈を広げるのが一番なんだろうけど、元々面倒くさがりのわたしにはここで開拓する根性なんてないんです。その辺は学園に入学してからでもいいかなーなんて横着な事を思っている。せめてもう少し相手を見極められる環境じゃないと…色々と面倒くさそう。
しかもセルシュ以外はこれ程の規模のパーティーには初参加なので、この雰囲気に圧倒されてしまっている訳で。これからと言われても何をして良いのやら全く見当も付かない。
「あ!そうだ」
急にアイラは何か閃いたのかぱあっと笑顔になって声をあげた。
「アイラ、何か思い付いたの?」
「あ、あの…お肉、食べたいな、って……」
皆がアイラを見たのが恥ずかしいのか、内容が令嬢らしくないからなのか段々俯いて小声になりながらも主張した。
さっきアイラがわたし達と別行動をした時に見せたお肉への熱い視線を思い出した。そうだ。アイラはデザートよりお肉の方が好きなんだっけ。
「アイラヴェント様、それでしたらセルシュ様がとてもお詳しいですわ。一緒におすすめを教えていただきましょう」
その提案にリーンが優しくアドバイスをすると、アイラは大きな瞳をキラキラさせてセルシュの事を見た。するとセルシュはニッと口角をあげた。得意分野に興味を持たれたのが本当に嬉しそうだ。
「おう!一番旨いの教えてやるぞ。あっちのコーナーの肉の方ががっつり食えるぞ」
「よろしくお願いいたします」
楽しそうに颯爽と歩くセルシュの後をアイラとリーンはうきうきしながらついていく。
今は何故かセルシュとアイラが楽しそうにしていても気にならなかった。
さっきのもやもやはなんだったのだろう。
「ほら、クルーディスも行くぞ!早く来い」
考え込んでいたらセルシュに急かされたので、この事は後回しにして皆の後を追う事にした。
確かにセルシュの薦める肉料理はどれも見た目からして最高のものだとわかる。もしかして全部を確認済なのかと思う程ハズレがないんだよね。
アイラは本当に幸せな顔をして取り分けられるお肉を目をキラキラさせて見つめている。アイラが幸せそうな顔をしているのを見ると、何だかこっちまで嬉しくなった。
わたしはそんなに食べられないし、セルシュの盛り付けたお皿からお薦めの中でも更に厳選して選んで食べればいいかな。どんだけ量が多くてもきっとセルシュがぺろりと平らげるだろうしね。わたしはそのおこぼれだけで多分お腹いっぱいになるんだろうし。
「お前の食事の方がよっぽど令嬢っぽいよな」
セルシュはわたしの肩に腕を回し、わたしが持たされたお皿からお肉をつまんでいた。
「何かそれ酷くない?僕は女の子じゃないんだけど」
「いや、あれを見てからだとなぁ」
その指さした先にはお上品に食事をしているリーンとアイラ……なのだが、アイラのお皿にはちょっと多目のお肉があった。セルシュに勧められたお肉をうんうんと頷きながらそのまま受け入れるものだから、お皿の上は片手で持つのが辛そうな量になっている。でもその重そうな肉山を幸せそうに抱えて食べているのは、見た目はともかく何だか微笑ましかった。
「食べ方はちゃんとお上品だし、あれはあれでいいんじゃない?」
「そこだけはレイラが頑張ったんだろ」
「うーん、惜しい!」
予想外にアイラの食べ方はその肉山にそぐわずとても綺麗で上品だった。お皿の中身がお上品な量だったら百点だったのに。残念!今度アイラの家に行ったらお上品に食事を口に運んでいた事だけレイラに教えてあげよう。
「ほらお前はもっと食えって。お嬢に負けてるぞ」
セルシュはそう言って自分のフォークのお肉をわたしの口元に持ってきた。
アイラの中身は食べ盛りであろう男の子、だけど見た目は可愛い年下の女の子だ。何だか負けるのは悔しい気がしてそのお肉を口に入れた。その肉料理は柔らかく、味付けも思った以上に素晴らしい。流石セルシュセレクトだね。
「セルシュ、これ凄く美味しい」
「だろ?これは俺の中でも一番の肉料理なんだよな」
素直に褒めるとセルシュは本当に嬉しそうに答えてくれた。よっぽどこの料理を気に入っているんだろう。
それにしてもセルシュってばやっぱり全部の味を知ってるでしょ。いつ食べたのさ?
「ほらまだあるぞ。もっと食えよ」
いや、次から次へと口に入れられても飲み込む暇がないってば!爽やかな笑顔で何してんだっ!
「むーっ!」
流石に口いっぱいにお肉を入れたまま話す事は出来ないので、その皿ごと身体をセルシュから反らした。セルシュこそやってる事、貴族のご子息じゃないからね!食べ物で遊んでんじゃない!
「お?どした?」
まだお肉を飲み込み切れず、口はもぐもぐしながらも目だけでセルシュに抗議する。
「ぷっ。食うか怒るかどっちかにしてくれ。面白すぎるから」
誰のせいだっ!どっちも譲れない状態だってば。
「ほら飲み物」
セルシュが飲み物を渡してくれたので流し込む様に飲んだ。はぁ、やっと喋れる。でも公の場なのでおおっぴらに怒れない。
多分セルシュはそれをわかっててからかっているのだろう。くーっ!ムカつく!
「……後で覚えてなよ」
「おーこわ」
小さい声でセルシュに文句を言ったらおどけた様に肩を竦めて逃げて行った。
ほんとにもう!人を使って遊ぶのは止めてくれないかな!いつもこういう時には上手くかわされて逃げられてしまう。
「お兄様ってばセルシュ様にからかわれてぷんぷんしていますわ」
「……そうですね」
リーンはいつもの事なので面白そうにそれを見ていたが、それをアイラが複雑な表情で見ていた事にわたしは気付かなかった。
◆ ◆ ◆
読んでいただきましてありがとうございます。
会場はさっきと変わらず貴族の子供達でごった返している。この中では誰がいて誰がいないのか確認する事は難しそうなので、きっとわたし達がいなかった事など誰も気に止めてはいないだろう。
「さぁて、これからどうする?」
「うーん」
セルシュにそう質問され、わたし達は少し考えこんだ。
周りを見ても人数が多すぎて、誰かに挨拶なんて言うのも探すところから挫けそうな感じ。と言ってもわたしには他に知り合いがいる訳ではないんだけどさ。本来ならここで人脈を広げるのが一番なんだろうけど、元々面倒くさがりのわたしにはここで開拓する根性なんてないんです。その辺は学園に入学してからでもいいかなーなんて横着な事を思っている。せめてもう少し相手を見極められる環境じゃないと…色々と面倒くさそう。
しかもセルシュ以外はこれ程の規模のパーティーには初参加なので、この雰囲気に圧倒されてしまっている訳で。これからと言われても何をして良いのやら全く見当も付かない。
「あ!そうだ」
急にアイラは何か閃いたのかぱあっと笑顔になって声をあげた。
「アイラ、何か思い付いたの?」
「あ、あの…お肉、食べたいな、って……」
皆がアイラを見たのが恥ずかしいのか、内容が令嬢らしくないからなのか段々俯いて小声になりながらも主張した。
さっきアイラがわたし達と別行動をした時に見せたお肉への熱い視線を思い出した。そうだ。アイラはデザートよりお肉の方が好きなんだっけ。
「アイラヴェント様、それでしたらセルシュ様がとてもお詳しいですわ。一緒におすすめを教えていただきましょう」
その提案にリーンが優しくアドバイスをすると、アイラは大きな瞳をキラキラさせてセルシュの事を見た。するとセルシュはニッと口角をあげた。得意分野に興味を持たれたのが本当に嬉しそうだ。
「おう!一番旨いの教えてやるぞ。あっちのコーナーの肉の方ががっつり食えるぞ」
「よろしくお願いいたします」
楽しそうに颯爽と歩くセルシュの後をアイラとリーンはうきうきしながらついていく。
今は何故かセルシュとアイラが楽しそうにしていても気にならなかった。
さっきのもやもやはなんだったのだろう。
「ほら、クルーディスも行くぞ!早く来い」
考え込んでいたらセルシュに急かされたので、この事は後回しにして皆の後を追う事にした。
確かにセルシュの薦める肉料理はどれも見た目からして最高のものだとわかる。もしかして全部を確認済なのかと思う程ハズレがないんだよね。
アイラは本当に幸せな顔をして取り分けられるお肉を目をキラキラさせて見つめている。アイラが幸せそうな顔をしているのを見ると、何だかこっちまで嬉しくなった。
わたしはそんなに食べられないし、セルシュの盛り付けたお皿からお薦めの中でも更に厳選して選んで食べればいいかな。どんだけ量が多くてもきっとセルシュがぺろりと平らげるだろうしね。わたしはそのおこぼれだけで多分お腹いっぱいになるんだろうし。
「お前の食事の方がよっぽど令嬢っぽいよな」
セルシュはわたしの肩に腕を回し、わたしが持たされたお皿からお肉をつまんでいた。
「何かそれ酷くない?僕は女の子じゃないんだけど」
「いや、あれを見てからだとなぁ」
その指さした先にはお上品に食事をしているリーンとアイラ……なのだが、アイラのお皿にはちょっと多目のお肉があった。セルシュに勧められたお肉をうんうんと頷きながらそのまま受け入れるものだから、お皿の上は片手で持つのが辛そうな量になっている。でもその重そうな肉山を幸せそうに抱えて食べているのは、見た目はともかく何だか微笑ましかった。
「食べ方はちゃんとお上品だし、あれはあれでいいんじゃない?」
「そこだけはレイラが頑張ったんだろ」
「うーん、惜しい!」
予想外にアイラの食べ方はその肉山にそぐわずとても綺麗で上品だった。お皿の中身がお上品な量だったら百点だったのに。残念!今度アイラの家に行ったらお上品に食事を口に運んでいた事だけレイラに教えてあげよう。
「ほらお前はもっと食えって。お嬢に負けてるぞ」
セルシュはそう言って自分のフォークのお肉をわたしの口元に持ってきた。
アイラの中身は食べ盛りであろう男の子、だけど見た目は可愛い年下の女の子だ。何だか負けるのは悔しい気がしてそのお肉を口に入れた。その肉料理は柔らかく、味付けも思った以上に素晴らしい。流石セルシュセレクトだね。
「セルシュ、これ凄く美味しい」
「だろ?これは俺の中でも一番の肉料理なんだよな」
素直に褒めるとセルシュは本当に嬉しそうに答えてくれた。よっぽどこの料理を気に入っているんだろう。
それにしてもセルシュってばやっぱり全部の味を知ってるでしょ。いつ食べたのさ?
「ほらまだあるぞ。もっと食えよ」
いや、次から次へと口に入れられても飲み込む暇がないってば!爽やかな笑顔で何してんだっ!
「むーっ!」
流石に口いっぱいにお肉を入れたまま話す事は出来ないので、その皿ごと身体をセルシュから反らした。セルシュこそやってる事、貴族のご子息じゃないからね!食べ物で遊んでんじゃない!
「お?どした?」
まだお肉を飲み込み切れず、口はもぐもぐしながらも目だけでセルシュに抗議する。
「ぷっ。食うか怒るかどっちかにしてくれ。面白すぎるから」
誰のせいだっ!どっちも譲れない状態だってば。
「ほら飲み物」
セルシュが飲み物を渡してくれたので流し込む様に飲んだ。はぁ、やっと喋れる。でも公の場なのでおおっぴらに怒れない。
多分セルシュはそれをわかっててからかっているのだろう。くーっ!ムカつく!
「……後で覚えてなよ」
「おーこわ」
小さい声でセルシュに文句を言ったらおどけた様に肩を竦めて逃げて行った。
ほんとにもう!人を使って遊ぶのは止めてくれないかな!いつもこういう時には上手くかわされて逃げられてしまう。
「お兄様ってばセルシュ様にからかわれてぷんぷんしていますわ」
「……そうですね」
リーンはいつもの事なので面白そうにそれを見ていたが、それをアイラが複雑な表情で見ていた事にわたしは気付かなかった。
◆ ◆ ◆
読んでいただきましてありがとうございます。
0
お気に入りに追加
709
あなたにおすすめの小説
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?
ラララキヲ
恋愛
乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。
学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。
でも、ねぇ……?
何故それをわたくしが待たなきゃいけないの?
※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。
◇テンプレ乙女ゲームモノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる