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41・友達
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「モーリィ!俺達はモーリィの事が好きで勝手についてきてるんだ!それは俺達の責任だ!だからそんな事考えなくていいんだ!」
「そうだよモーリィ!自分の家の事は自分の問題なんだからモーリィには関係無いよ!」
ヨーエンとダルトナムはそう言ってモーリタスを擁護している……が、そういう事じゃない。
「はぁ……何で二人はそんな風に他人事の様に言うんだろうね?そもそも友達ならモーリタスのやってる事を諫めなければいけないよね?それとも君達は上辺だけのつまらない関係なのかな」
二人はその言葉にカッとなってわたしの事を睨み付けた。
「違う!モーリィは俺達の大事な友達だ!」
「そうだ!お前なんか何も知らないくせに!」
「そうだね。君達の『友達』という都合のいい浅い関係なんて何も知らないし知りたくもない」
「なんだと!」
「お前に何がわかる!」
わたしの吐き捨てる様に言った言葉に、二人は怒りでいきり立つ。
二人がモーリタスの事をとても大事にしているのはわかった。だけど、大事にするという事は友達のしたい様にさせる事とは違う。
「だってそうじゃないか。君達の言う『友達』って何?ただ一緒に楽しく遊ぶだけ?友達が道を外しても注意もせずに一緒になって増長するだけ?君達の関係は他人からは浅いどうでもいい関係にしか見えない」
わたしは容赦なく畳み掛ける様に二人の事も攻撃した。
「君達は町の人達に迷惑を掛けているんでしょ?何で自分がされたら嫌だろうと思う事を友達がしているのに止めないのかな。それどころか一緒になって同じ事をしているんだよね?注意する事もしない、他人に迷惑を掛けても悪いと思わない、自分さえよければいい。今の君達はそんなくだらない奴等の集まりにしか見えない」
二人はわたしの言葉に固まる。
「君達はそれを『友達』って言うの?」
二人はわたしの言葉を聞きながら段々と顔色を無くしていく。
二人にはそんなつもりはなかったのだろうけど、その結果として今のモーリタスが出来上がってしまったのだ。
誰も注意せず助言もせず、ただモーリタスについていくだけの自分だったのだ。今初めて彼らはその事実と向き合う事になった。
二人からは何も反論は出ず、そのまま俯いてしまった。
「ヨーエン……ダル……」
モーリタスはそんな二人に声をかけたが、二人はモーリタスの声にぴくりと反応はしたけれど俯いたままだった。暫くすると二人から小さく嗚咽が聞こえてきた。モーリタスもそれを見て、小さく震えだす。
三人とももう言葉を発する事が出来なかった。
「君達が町で騒いで暴れて……被害を受けた人にだって守りたい友達がいるし家族もいる。君達はもう少し広い世界を見て、自分の行動の先を考えなければならないんじゃないかな」
「……ごめんなさい」
モーリタスは涙を流し、苦しそうにひと言絞り出した。
「ごめんなさい……」
「ごめんなさい……」
二人も泣いている顔を上げ同じ様に謝った。
「謝る相手が違うよね」
「はい」
「君達のご家族は本当に心配しているんだ。まず家族に謝るべきでは?」
「はい」
「後は町で迷惑をかけた人達にも」
「はい」
わかりましたと三人は大きく頷いた。
三人は先程とはうって代わって、神妙にわたしの言葉に頷いた。それを見計らってセルシュは彼らの拘束を解いていく。三人はその行動を戸惑いながら見つめていた。
「チャルシット様は情に厚いお方だ。何故一番近くにいるお前がそれをわからない?」
手首の紐を解きながらセルシュがモーリタスに諭す様に言うと、モーリタスは震えながらぽろぽろと涙を落とした。
「おれっ……俺だってずっと信じてたんだっ。でもツィードの言葉に、俺は……っ」
「俺達もちゃんと話を聞いて確認を取れば良かった……ごめんモーリィ」
「モーリィは大事な友達なのに、友達として諫める事も出来なかった。ごめん……」
ダルトナムとヨーエンは俯いて涙を流すモーリタスの背中をさすり、謝り慰めていた。
これでもう彼らは悪さをする事もなくなるだろう。
これで戦争への足掛りを少しでも食い止める事は出来ただろうか。
アイラヴェントへの断罪の可能性は減らせただろうか。
そうであってほしい。
扉の向こうで人の気配がする。誰かが廊下にいる様だ。落ち着いた気配なのでトニンかシュラフだろう。
セルシュもその気配に気付いた様で、何も言わずに扉を開けた。
扉を開けると知らない男が立っていた。
わたしは一瞬身構えたが、セルシュの態度が変わらなかったので敵ではないと緊張を解く。……この人は誰?
「ちっ、父上……!」
モーリタスが驚愕して声を漏らした。
これがチャルシット騎士団長なのか。
体格はいいが騎士団には不似合いとも言える、とても優しそうな顔立ちの人だった。
「モーリタス……」
その人は困ったような悲しそうな辛い表情でモーリタスを見た。多分先程までのわたし達の話を聞いていたのだろう。
チャルシット様はモーリタスの前に視線を合わせる様に跪いた。
「仕事にかまけてお前のその辛さを、私は気付いてやれなかった……済まない……」
「父上っ…ごめんなさい、俺っ……」
チャルシット様の謝罪にモーリタスは更に涙を流し俯いた。そんなモーリタスをチャルシット様は優しく抱き締める。
「本当に済まなかった。私がきちんとお前と話をしなかったばかりに私の事情に巻き込んでしまった」
「ちっ、違いますっ!俺がっ……俺が父上の事をちゃんと理解できていなかったのです。何も知ろうとしないで勝手に疑った俺が悪いんです!ごめんなさい!ごめんなさい父上‼」
モーリタスは父親の腕の中でわんわんと泣いてしまった。
……ん?何かこういうの、前にも見た事あったっけ?
何処かで見た様な光景だなと思い視線を巡らせると、気まずそうにしているセルシュと目が合った。
あ!そうだ、小さい時のセルシュだ。
理由は違うけど父親を認めて安心して泣いている姿はこっちまで何だか嬉しくなる。
わたしは何か懐かしい気持ちになりこの親子を温かい目で見つめた。
モーリタスはもう大丈夫だろう。
彼らを残してわたし達はそっとその部屋を出た。
◆ ◆ ◆
読んでいただきましてありがとうございます。
「そうだよモーリィ!自分の家の事は自分の問題なんだからモーリィには関係無いよ!」
ヨーエンとダルトナムはそう言ってモーリタスを擁護している……が、そういう事じゃない。
「はぁ……何で二人はそんな風に他人事の様に言うんだろうね?そもそも友達ならモーリタスのやってる事を諫めなければいけないよね?それとも君達は上辺だけのつまらない関係なのかな」
二人はその言葉にカッとなってわたしの事を睨み付けた。
「違う!モーリィは俺達の大事な友達だ!」
「そうだ!お前なんか何も知らないくせに!」
「そうだね。君達の『友達』という都合のいい浅い関係なんて何も知らないし知りたくもない」
「なんだと!」
「お前に何がわかる!」
わたしの吐き捨てる様に言った言葉に、二人は怒りでいきり立つ。
二人がモーリタスの事をとても大事にしているのはわかった。だけど、大事にするという事は友達のしたい様にさせる事とは違う。
「だってそうじゃないか。君達の言う『友達』って何?ただ一緒に楽しく遊ぶだけ?友達が道を外しても注意もせずに一緒になって増長するだけ?君達の関係は他人からは浅いどうでもいい関係にしか見えない」
わたしは容赦なく畳み掛ける様に二人の事も攻撃した。
「君達は町の人達に迷惑を掛けているんでしょ?何で自分がされたら嫌だろうと思う事を友達がしているのに止めないのかな。それどころか一緒になって同じ事をしているんだよね?注意する事もしない、他人に迷惑を掛けても悪いと思わない、自分さえよければいい。今の君達はそんなくだらない奴等の集まりにしか見えない」
二人はわたしの言葉に固まる。
「君達はそれを『友達』って言うの?」
二人はわたしの言葉を聞きながら段々と顔色を無くしていく。
二人にはそんなつもりはなかったのだろうけど、その結果として今のモーリタスが出来上がってしまったのだ。
誰も注意せず助言もせず、ただモーリタスについていくだけの自分だったのだ。今初めて彼らはその事実と向き合う事になった。
二人からは何も反論は出ず、そのまま俯いてしまった。
「ヨーエン……ダル……」
モーリタスはそんな二人に声をかけたが、二人はモーリタスの声にぴくりと反応はしたけれど俯いたままだった。暫くすると二人から小さく嗚咽が聞こえてきた。モーリタスもそれを見て、小さく震えだす。
三人とももう言葉を発する事が出来なかった。
「君達が町で騒いで暴れて……被害を受けた人にだって守りたい友達がいるし家族もいる。君達はもう少し広い世界を見て、自分の行動の先を考えなければならないんじゃないかな」
「……ごめんなさい」
モーリタスは涙を流し、苦しそうにひと言絞り出した。
「ごめんなさい……」
「ごめんなさい……」
二人も泣いている顔を上げ同じ様に謝った。
「謝る相手が違うよね」
「はい」
「君達のご家族は本当に心配しているんだ。まず家族に謝るべきでは?」
「はい」
「後は町で迷惑をかけた人達にも」
「はい」
わかりましたと三人は大きく頷いた。
三人は先程とはうって代わって、神妙にわたしの言葉に頷いた。それを見計らってセルシュは彼らの拘束を解いていく。三人はその行動を戸惑いながら見つめていた。
「チャルシット様は情に厚いお方だ。何故一番近くにいるお前がそれをわからない?」
手首の紐を解きながらセルシュがモーリタスに諭す様に言うと、モーリタスは震えながらぽろぽろと涙を落とした。
「おれっ……俺だってずっと信じてたんだっ。でもツィードの言葉に、俺は……っ」
「俺達もちゃんと話を聞いて確認を取れば良かった……ごめんモーリィ」
「モーリィは大事な友達なのに、友達として諫める事も出来なかった。ごめん……」
ダルトナムとヨーエンは俯いて涙を流すモーリタスの背中をさすり、謝り慰めていた。
これでもう彼らは悪さをする事もなくなるだろう。
これで戦争への足掛りを少しでも食い止める事は出来ただろうか。
アイラヴェントへの断罪の可能性は減らせただろうか。
そうであってほしい。
扉の向こうで人の気配がする。誰かが廊下にいる様だ。落ち着いた気配なのでトニンかシュラフだろう。
セルシュもその気配に気付いた様で、何も言わずに扉を開けた。
扉を開けると知らない男が立っていた。
わたしは一瞬身構えたが、セルシュの態度が変わらなかったので敵ではないと緊張を解く。……この人は誰?
「ちっ、父上……!」
モーリタスが驚愕して声を漏らした。
これがチャルシット騎士団長なのか。
体格はいいが騎士団には不似合いとも言える、とても優しそうな顔立ちの人だった。
「モーリタス……」
その人は困ったような悲しそうな辛い表情でモーリタスを見た。多分先程までのわたし達の話を聞いていたのだろう。
チャルシット様はモーリタスの前に視線を合わせる様に跪いた。
「仕事にかまけてお前のその辛さを、私は気付いてやれなかった……済まない……」
「父上っ…ごめんなさい、俺っ……」
チャルシット様の謝罪にモーリタスは更に涙を流し俯いた。そんなモーリタスをチャルシット様は優しく抱き締める。
「本当に済まなかった。私がきちんとお前と話をしなかったばかりに私の事情に巻き込んでしまった」
「ちっ、違いますっ!俺がっ……俺が父上の事をちゃんと理解できていなかったのです。何も知ろうとしないで勝手に疑った俺が悪いんです!ごめんなさい!ごめんなさい父上‼」
モーリタスは父親の腕の中でわんわんと泣いてしまった。
……ん?何かこういうの、前にも見た事あったっけ?
何処かで見た様な光景だなと思い視線を巡らせると、気まずそうにしているセルシュと目が合った。
あ!そうだ、小さい時のセルシュだ。
理由は違うけど父親を認めて安心して泣いている姿はこっちまで何だか嬉しくなる。
わたしは何か懐かしい気持ちになりこの親子を温かい目で見つめた。
モーリタスはもう大丈夫だろう。
彼らを残してわたし達はそっとその部屋を出た。
◆ ◆ ◆
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