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37・提案
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「……なんで今二人はそんな危ない事に足突っ込んでんの?」
「俺が町に出てた時に、たまたま裏道でツィードとモーリタスの話を聞いたんだ」
ツィードはチャルシット様が保身の為に罪もない人を殺し、のうのうと暮らしているとモーリタスに言っていたそうだ。
セルシュはチャルシット様が毎年ささやかながら詫びと称して亡くなった部下の家に届け物をしていたのをロンディール様から聞いて知っていた。
だからツィードの話がおかしいと、疑問に思ったセルシュはロンディール家の者とシュラフを使ってモーリタスとその周辺を探り始めたとの事だった。
「そこからツィードとコランダムの繋がりが出てきて、コランダムとワイマールの繋がりも見えてきた。ワイマールを調べているうちに孤児院にいた子供達が院を出た後、何度か盗賊に襲われたって話を知ったんだ」
ワイマールが集めた子供達が新天地へ向かう時にはどれも全て乗合い馬車を巧みに使い、何度も乗り換えて移動しているそうだ。その手間と時間を掛ける手段をセルシュは不審に思ったらしい。
「乗合い馬車は何でか時々馬車ごと行方知れずになってるんだ」
「馬車ごと!?」
「消えた馬車は、表向きは盗賊に襲われて馬車ごとさらわれた扱いになってるけど、その盗賊が本当にいたのかどうかは誰もわからない」
「馬車ごとグルって事?」
「俺はそう思った」
聞けば聞く程怖い話だ。わたしは前の人生でも今の人生でもそんな経験はないし関わった事もない。テレビの向こう側の話でしか人身売買なんて聞いた事がなかった。
人を品物の様に扱って売るなんて、ましてや関わるなんてとても危険じゃないの。わたしもセルシュもまだ子供なんだからバレたら自分達が同じ目に合うかもしれない。
「それ、ロンディール様には言ったの?」
「言ったさ。でも証拠がないんだ。親父やチャルシット様は噂だけでは動けない立場だし、しかもコランダムが絡んでくる話になると貴族や派閥のしがらみですぐに動くのは難しいだろ」
「まぁ……そうだろうけど」
「だからシュラフに相談して俺なりに少しでも親父の協力をしようと思ったんだ」
「だからってそんな危ない事……」
「でもクルーディスだってモーリタスの事を調べたら同じ話にたどり着いたと思うぞ。そうなったらお前はどうする?」
そう言ってセルシュはわたしに問いかけた。
わたしなら?
どうするだろう。知ってしまったら何か出来る事をして早々に解決したい。そうなると……。
「……うん、多分セルシュと一緒だ」
わたしもきっとセルシュ程うまくはないけど自分が出来る範囲でなんとかしたいと思うだろう。アイラヴェントの為もあるけど、この話を知ってしまったら、これ以上苦しむ人が増えない様にとも思う。
「では話を戻しましょうか」
わたし達のやり取りを聞いていたシュラフは先程の話の続きをするようだ。
「モーリタス様はツィードの傀儡として今は町で悪童の大将となり、メルリス家、ソニカトラ家のご子息と共にたむろしております」
「そのツィードはモーリタスに何をさせたいのかな」
「おそらく侯爵家の家名を貶めるための駒ですね」
「そんな噂が広まれば騎士団も黙っていない。しかも今はコランダム派が力をつけてきてる」
「それじゃコランダムがモーリタスを使ってチャルシット様の追い落としを始めてるって事?」
「多分」
わたしの質問にセルシュは頷く。でもまだわからない事がある。
「でもチャルシット様を騎士団から追い出したところでコランダムがそこに戻れる訳じゃないよね」
一度解雇にまでなった人物をもう一度、なんてそれこそ騎士団の信用問題にまで発展しそう。他国からの印象だって良くない気がする。
もう同じ場所には戻れないだろうに何故コランダムは騎士団に固執するのか。
「コランダム様がチャルシット様を失墜させる事が出来たら、今までの実績もあり外からでも騎士団を掌握出来ると思われます」
「コランダムは騎士団を掌握したらどうするつもりなんだろう」
「騎士団を思いのまま使えるなら、国内だけでなく他国まで勢力を伸ばせるのさ。国民は騎士団を讃えているからそのまま国民まで思い通りに出来るし、その勢いで他国の侵略をしようとすると……」
セルシュの話を聞いてわたしはひとつの可能性に辿り着いた。
「……戦争?」
こっくりとセルシュは頷いた。
戦争なんて……とんでもない話じゃない!
他国との関係も良好で平和なこの国が戦争をするなんて駄目だよ!
「でっでもコランダムが戦争を起こして何のメリットがあるのさ!」
「クルーディス様、戦争で得をするのは商人でございます」
わたしはなんとかその考えを否定したくて質問をしたけれど、その答えは求めていたものではなかった。
コランダムとワイマールの繋がりはここまで見越したものなのか。
「それじゃワイマールが人身売買をしてる理由はなに?」
「多分コランダムへの資金調達なんだと思う。人身売買は元手がかからずに簡単に儲けが出るらしい。捕まったやつがそう言ってた……酷い話だよな」
セルシュはロンディール様とその捕まった人に会ったのだろう。それを思い出しているのか怒りを抑えた苦しい表情になった。
「だからさ、俺は早くなんとか出来る様に動いてるんだ」
いつもと違う真面目な表情でセルシュは答えた。
「セルシュ、僕に出来る事はなに?」
知った以上は何か出来る事をしたいと思う。でも何が出来るかわからない。
今優先してやらなきゃいけない事はなんだろうか。
コランダムがチャルシット様を貶めるのを阻止する為にこれ以上モーリタスが町で騒がない様にする事。
そのためにツィードから引き離す事。
モーリタスを更正させてコランダムの騎士団掌握を止める事。
もしも本当にワイマールが人身売買をしているのなら、コランダムへの資金が行かない様にワイマールの人身売買のルートを潰し、これ以上被害が出ない様にする事。
ワイマールとコランダムの事はわたし達には手が出せない。こんな子供の事など彼らは一捻りで潰すだろう。
だけどモーリタス相手ならばまだ子供同士という事でなんとかなりそうな気がする。
問題はどうやってツィードと引き離して問題行動を抑えるかだ。
「まずはモーリタスをツィードから引き離さなきゃいけないだろうな」
セルシュもわたしと同じ意見だった。セルシュも自分が出来る事を考えているのだろう。
「町へ出てモーリタスを説得しなきゃいけないんだけど……ツィードが邪魔だな」
「ねぇ、モーリタスの反抗的になってる理由は『チャルシット様の噂』が原因って事でいいのかな」
その理由次第でモーリタスは説得に乗るか乗らないか変わってくる。
「そのはずだ。モーリタスはツィードの話を聞いてから荒れ出したからな」
「じゃあ誤解が解けたら説得に乗る可能性は高いって事だね」
「ああ」
わたしの意見をセルシュは肯定する。
何とかなるかな。いや、何とかしなければいけない。その先にある戦争を避ける為にも。
「それじゃまずツィードから引き離さなきゃだね」
「どうやって?」
「名前を出して悪さしてるんだよね……なら、そ知らぬ顔で侯爵家子息を町で誘拐でもしたらいいんじゃない?」
町で『チャルシット様の息子』として騒いでいるならそれを逆手に取ってみるのもいい気がする。侯爵家の子息が誘拐されれば、一般的には金目当てに見えるだろうし。彼らがそれを隠していないのだからこの作戦は有りな気がする。
コランダムの思惑を知らない人が自分の都合でやらかしちゃうなら問題ないでしょ。ただそれをどうやって実行するか……。
「すげぇ提案……」
セルシュはわたしの言葉に呆れていた。
「では、私がモーリタス様をさらってきましょう」
「えっ!?」
わたしの発言に驚いているセルシュに対して、シュラフはさらりともっと凄い事言った!わたしまでびっくりしたよ!
でもどうだろう。
シュラフはきっと強いだろうけど、ツィードは遠目に見た限りシュラフよりも歳上だ。ツィードの方が強そうだしシュラフでは難しいのではないだろうか。
「そうは言ってもツィードだって強いだろうし、さらって来るのはモーリタスだけじゃないでしょ」
後の二人もついでにさらってこなければいけないのだ。きっと三人には抵抗されるだろうからシュラフだけでは無理な話だ。
「俺のところのも使ってくれればいい」
「セルシュの従者?」
「んー、厳密には親父が雇ってる従者だから俺のではないけどな」
実はわたしはセルシュについてる従者には会った事がない。外ではどうやらわたしやセルシュにわからないようにいつも誰かしらついているらしいのだが気付いた事は全くなかった。セルシュはいつもひとりで動いているのだと思っていたよ。
「大丈夫かな」
「問題ありません。彼等に協力してもらえましたら今日にでも動けますが」
「じゃあシュラフ、頼むわ」
セルシュは冷静で当たり前の様にシュラフに指示を出す。それを受けシュラフは部屋を出ていった。
「これでコランダムとワイマールがどう動くかだな」
「動いてくれるかな」
「チャルシット様を潰す為にモーリタスは欠かせないから、何かしら動くんじゃね?」
そうだといいんだけど。
「この事ロンディール様に伝えた方がいいんじゃないの?」
「それなら多分シュラフが報告してくれるさ」
「へ?」
「親父もだけど、おっさんもチャルシット様が動けない分、代わりにこの件では動いてるからな。シュラフもそれを知ってるから伝えてくれるだろ」
「ふうぅーん」
「なんだ?」
「あのさー、セルシュはシュラフとどういう関係なのさ」
二人を見ているといつもわたしは置いてきぼりな気がする。
わたしより信頼関係出来てんじゃないの?シュラフはうちの子なのに。ちょっとジェラシーしちゃいますよ。
「なんだお前羨ましいのかよ」
「くっ……言葉にされるとムカつく!」
そーですよ羨ましいですよ!わたしはシュラフに説教されてばっかりですから!そうやって対等でいられるセルシュ達みたいな関係は憧れますよ!
わたし達は暫くの間、先程の緊張を解す様にくだらない話をしてシュラフの帰りを待った。
◆ ◆ ◆
読んでいただきましてありがとうございます。
「俺が町に出てた時に、たまたま裏道でツィードとモーリタスの話を聞いたんだ」
ツィードはチャルシット様が保身の為に罪もない人を殺し、のうのうと暮らしているとモーリタスに言っていたそうだ。
セルシュはチャルシット様が毎年ささやかながら詫びと称して亡くなった部下の家に届け物をしていたのをロンディール様から聞いて知っていた。
だからツィードの話がおかしいと、疑問に思ったセルシュはロンディール家の者とシュラフを使ってモーリタスとその周辺を探り始めたとの事だった。
「そこからツィードとコランダムの繋がりが出てきて、コランダムとワイマールの繋がりも見えてきた。ワイマールを調べているうちに孤児院にいた子供達が院を出た後、何度か盗賊に襲われたって話を知ったんだ」
ワイマールが集めた子供達が新天地へ向かう時にはどれも全て乗合い馬車を巧みに使い、何度も乗り換えて移動しているそうだ。その手間と時間を掛ける手段をセルシュは不審に思ったらしい。
「乗合い馬車は何でか時々馬車ごと行方知れずになってるんだ」
「馬車ごと!?」
「消えた馬車は、表向きは盗賊に襲われて馬車ごとさらわれた扱いになってるけど、その盗賊が本当にいたのかどうかは誰もわからない」
「馬車ごとグルって事?」
「俺はそう思った」
聞けば聞く程怖い話だ。わたしは前の人生でも今の人生でもそんな経験はないし関わった事もない。テレビの向こう側の話でしか人身売買なんて聞いた事がなかった。
人を品物の様に扱って売るなんて、ましてや関わるなんてとても危険じゃないの。わたしもセルシュもまだ子供なんだからバレたら自分達が同じ目に合うかもしれない。
「それ、ロンディール様には言ったの?」
「言ったさ。でも証拠がないんだ。親父やチャルシット様は噂だけでは動けない立場だし、しかもコランダムが絡んでくる話になると貴族や派閥のしがらみですぐに動くのは難しいだろ」
「まぁ……そうだろうけど」
「だからシュラフに相談して俺なりに少しでも親父の協力をしようと思ったんだ」
「だからってそんな危ない事……」
「でもクルーディスだってモーリタスの事を調べたら同じ話にたどり着いたと思うぞ。そうなったらお前はどうする?」
そう言ってセルシュはわたしに問いかけた。
わたしなら?
どうするだろう。知ってしまったら何か出来る事をして早々に解決したい。そうなると……。
「……うん、多分セルシュと一緒だ」
わたしもきっとセルシュ程うまくはないけど自分が出来る範囲でなんとかしたいと思うだろう。アイラヴェントの為もあるけど、この話を知ってしまったら、これ以上苦しむ人が増えない様にとも思う。
「では話を戻しましょうか」
わたし達のやり取りを聞いていたシュラフは先程の話の続きをするようだ。
「モーリタス様はツィードの傀儡として今は町で悪童の大将となり、メルリス家、ソニカトラ家のご子息と共にたむろしております」
「そのツィードはモーリタスに何をさせたいのかな」
「おそらく侯爵家の家名を貶めるための駒ですね」
「そんな噂が広まれば騎士団も黙っていない。しかも今はコランダム派が力をつけてきてる」
「それじゃコランダムがモーリタスを使ってチャルシット様の追い落としを始めてるって事?」
「多分」
わたしの質問にセルシュは頷く。でもまだわからない事がある。
「でもチャルシット様を騎士団から追い出したところでコランダムがそこに戻れる訳じゃないよね」
一度解雇にまでなった人物をもう一度、なんてそれこそ騎士団の信用問題にまで発展しそう。他国からの印象だって良くない気がする。
もう同じ場所には戻れないだろうに何故コランダムは騎士団に固執するのか。
「コランダム様がチャルシット様を失墜させる事が出来たら、今までの実績もあり外からでも騎士団を掌握出来ると思われます」
「コランダムは騎士団を掌握したらどうするつもりなんだろう」
「騎士団を思いのまま使えるなら、国内だけでなく他国まで勢力を伸ばせるのさ。国民は騎士団を讃えているからそのまま国民まで思い通りに出来るし、その勢いで他国の侵略をしようとすると……」
セルシュの話を聞いてわたしはひとつの可能性に辿り着いた。
「……戦争?」
こっくりとセルシュは頷いた。
戦争なんて……とんでもない話じゃない!
他国との関係も良好で平和なこの国が戦争をするなんて駄目だよ!
「でっでもコランダムが戦争を起こして何のメリットがあるのさ!」
「クルーディス様、戦争で得をするのは商人でございます」
わたしはなんとかその考えを否定したくて質問をしたけれど、その答えは求めていたものではなかった。
コランダムとワイマールの繋がりはここまで見越したものなのか。
「それじゃワイマールが人身売買をしてる理由はなに?」
「多分コランダムへの資金調達なんだと思う。人身売買は元手がかからずに簡単に儲けが出るらしい。捕まったやつがそう言ってた……酷い話だよな」
セルシュはロンディール様とその捕まった人に会ったのだろう。それを思い出しているのか怒りを抑えた苦しい表情になった。
「だからさ、俺は早くなんとか出来る様に動いてるんだ」
いつもと違う真面目な表情でセルシュは答えた。
「セルシュ、僕に出来る事はなに?」
知った以上は何か出来る事をしたいと思う。でも何が出来るかわからない。
今優先してやらなきゃいけない事はなんだろうか。
コランダムがチャルシット様を貶めるのを阻止する為にこれ以上モーリタスが町で騒がない様にする事。
そのためにツィードから引き離す事。
モーリタスを更正させてコランダムの騎士団掌握を止める事。
もしも本当にワイマールが人身売買をしているのなら、コランダムへの資金が行かない様にワイマールの人身売買のルートを潰し、これ以上被害が出ない様にする事。
ワイマールとコランダムの事はわたし達には手が出せない。こんな子供の事など彼らは一捻りで潰すだろう。
だけどモーリタス相手ならばまだ子供同士という事でなんとかなりそうな気がする。
問題はどうやってツィードと引き離して問題行動を抑えるかだ。
「まずはモーリタスをツィードから引き離さなきゃいけないだろうな」
セルシュもわたしと同じ意見だった。セルシュも自分が出来る事を考えているのだろう。
「町へ出てモーリタスを説得しなきゃいけないんだけど……ツィードが邪魔だな」
「ねぇ、モーリタスの反抗的になってる理由は『チャルシット様の噂』が原因って事でいいのかな」
その理由次第でモーリタスは説得に乗るか乗らないか変わってくる。
「そのはずだ。モーリタスはツィードの話を聞いてから荒れ出したからな」
「じゃあ誤解が解けたら説得に乗る可能性は高いって事だね」
「ああ」
わたしの意見をセルシュは肯定する。
何とかなるかな。いや、何とかしなければいけない。その先にある戦争を避ける為にも。
「それじゃまずツィードから引き離さなきゃだね」
「どうやって?」
「名前を出して悪さしてるんだよね……なら、そ知らぬ顔で侯爵家子息を町で誘拐でもしたらいいんじゃない?」
町で『チャルシット様の息子』として騒いでいるならそれを逆手に取ってみるのもいい気がする。侯爵家の子息が誘拐されれば、一般的には金目当てに見えるだろうし。彼らがそれを隠していないのだからこの作戦は有りな気がする。
コランダムの思惑を知らない人が自分の都合でやらかしちゃうなら問題ないでしょ。ただそれをどうやって実行するか……。
「すげぇ提案……」
セルシュはわたしの言葉に呆れていた。
「では、私がモーリタス様をさらってきましょう」
「えっ!?」
わたしの発言に驚いているセルシュに対して、シュラフはさらりともっと凄い事言った!わたしまでびっくりしたよ!
でもどうだろう。
シュラフはきっと強いだろうけど、ツィードは遠目に見た限りシュラフよりも歳上だ。ツィードの方が強そうだしシュラフでは難しいのではないだろうか。
「そうは言ってもツィードだって強いだろうし、さらって来るのはモーリタスだけじゃないでしょ」
後の二人もついでにさらってこなければいけないのだ。きっと三人には抵抗されるだろうからシュラフだけでは無理な話だ。
「俺のところのも使ってくれればいい」
「セルシュの従者?」
「んー、厳密には親父が雇ってる従者だから俺のではないけどな」
実はわたしはセルシュについてる従者には会った事がない。外ではどうやらわたしやセルシュにわからないようにいつも誰かしらついているらしいのだが気付いた事は全くなかった。セルシュはいつもひとりで動いているのだと思っていたよ。
「大丈夫かな」
「問題ありません。彼等に協力してもらえましたら今日にでも動けますが」
「じゃあシュラフ、頼むわ」
セルシュは冷静で当たり前の様にシュラフに指示を出す。それを受けシュラフは部屋を出ていった。
「これでコランダムとワイマールがどう動くかだな」
「動いてくれるかな」
「チャルシット様を潰す為にモーリタスは欠かせないから、何かしら動くんじゃね?」
そうだといいんだけど。
「この事ロンディール様に伝えた方がいいんじゃないの?」
「それなら多分シュラフが報告してくれるさ」
「へ?」
「親父もだけど、おっさんもチャルシット様が動けない分、代わりにこの件では動いてるからな。シュラフもそれを知ってるから伝えてくれるだろ」
「ふうぅーん」
「なんだ?」
「あのさー、セルシュはシュラフとどういう関係なのさ」
二人を見ているといつもわたしは置いてきぼりな気がする。
わたしより信頼関係出来てんじゃないの?シュラフはうちの子なのに。ちょっとジェラシーしちゃいますよ。
「なんだお前羨ましいのかよ」
「くっ……言葉にされるとムカつく!」
そーですよ羨ましいですよ!わたしはシュラフに説教されてばっかりですから!そうやって対等でいられるセルシュ達みたいな関係は憧れますよ!
わたし達は暫くの間、先程の緊張を解す様にくだらない話をしてシュラフの帰りを待った。
◆ ◆ ◆
読んでいただきましてありがとうございます。
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