弱国コンサルタント

英雄ヴォルグ

英雄ヴォルグの最後？

王宮のVIP専用室のベッドに1人の老人がよこたわっている。

ベッドの周りには部屋を埋め尽くす程の多くの人が、涙を浮かべながら、老人を見守っている。


段々と呼吸がしにくくなってきた。
脈が弱っていくのも自分で分かる。
瞼も重く感じてきた

これが
死か…

老人は自分の死を受け入れ、今までの人生を振り返った。

生まれながらにして強い魔力を持ち合わせ、15歳の時にスレール王国の騎士団にスカウトされた。
そこからは生まれ持った魔力を磨き、肉体も鍛え上げ、20歳の時には世界最強の魔法騎士と呼ばれるようになった。

他国との大戦でも負け知らずで、私1人いるだけで、全ての戦況をひっくり返せた。

40歳の頃にはスレール王国は大陸統一を果たし、私は現役を引退した。
大陸を統一したものの、吸収した敗戦国の民を統治することは難しく、そこからは大臣として、統治した国をよりよくするために勉強をし、様々な施策を施し、民の幸せのために尽力した。

色々と苦労はしたが、大臣になってから今日までの40年間、スレール王国は平和だった。

順風満帆にして、無駄のない人生

本当に良き人生だった…。

老人はゆっくりと瞼を閉じてゆく

「ヴォルグ様！しっかりしてください！
まだあなたに教えてほしいことが山ほどあるんです」

ベッドの脇にいた男が涙を流して叫ぶ

「ヴォルグ様！まだスレールにはあなたが必要なんです」

「ヴォルグ様はずっと国の為に身を粉にして尽くしてこられたんだ。もうゆっくり休ませてあげよう」

部屋中に様々な声が上がる。


こんなおいぼれでも、まだこれだけの人達に必要とされ、これだけの人達に認められている。

もう思い残すことは何もない…

ヴォルグが完全に瞼を閉じる。

その瞬間

ヴォルグの体は強烈に発光をし始めた。

「なんだこれは！？」

突然の出来事に部屋中がざわつく。

発光し始めたヴォルグの体は無数の光の粒となってゆき、光の粒は1つ、また1つと消えてゆき、ヴォルグの体は病室のベッドから消えた。

「これは一体…」

「これはきっとヴォルグ様の新しい魔法では？」

「きっとヴォルグ様は天に召され、神となったのでは？」

「ヴォルグ様は実は神の子だったのではないか？」

またも部屋中が大きくざわめいた。

こうして、英雄ヴォルグはスレール王国から姿を消した。

亡くなったのか、神に昇華したのか、スレール王国の誰にも答えは分からなかった。