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レナルーラ攻防戦
勇者ジークVS勇者シグルド その2
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開戦当初は互角に近い様に見えたが、ジークの攻撃のスピードはまだ上がってゆく。
これ以上は抑えきれないと感じたのか、シグルドが距離を空け、離れざまに光魔法の光線を放った。
ジークがその光線を避けると、いつの間にかシグルドはジークの背後に回っていた。
シグルドがジークの背後から斬撃をしかける。しかしジークはそれすらも躱す。
背後に目でもついているのだろうか。
シグルドはすぐにまた距離を置き、今度は地面に氷魔法を放った。地面はみるみる凍りついてゆき、ジークの足元を襲う。
が、ジークの1メートル程手前でその氷魔法は止まった。
ジークが炎魔法か何かで対策したのだろう。
シグルドはその後も魔法を連発する。
しかしジークはそれらの魔法をことごとく打ち消し、避け、いなした。
「くそっ!これならどうだぁー!」
シグルド両手を前に突き出すと、赤い魔力が溜まってゆくのが見えた。
「人間相手にこんな危険な魔法は使いたくなかったけど、仕方ないわ。
くらいなさい!極大魔法『イグニジアス』」
炎の高速レーザーがジークを襲う。
シグルドがイグニジアスを放った瞬間に辺り一帯の雪は蒸発し、広場全体の気温が急上昇した。
これだけで この極大魔法の持つ威力は充分に感じられた。
「それが全力か?勇者様?」
ジークはぼそりと呟くと、右足が青白く光り始めた。
イグニジアスが直撃する寸前でジークは「はぁーーーっ!!」と叫び、青白く光った右足でイグニジアスを上空へと蹴り上げた。
イグニジアスを放ったシグルドは信じられないという表情をしていた。
いや。シグルドだけでなく、その場にいた誰もが驚愕していた。
「魔法の使い方がなってないな。シグルド」
ジークはこの後に及んでまだシグルドを挑発した。
「なんですって!!」
「真面目すぎんだよ。戦い方までな。
工夫が足りない。魔法ってのはこうやって使うんだよ!」
ジークが指をぱちんと鳴らすと、シグルドのすぐ近くで小さな爆発が起こった。
シグルドは爆風でジークを見失うまいと、横に移動した。
するとそこに雷魔法の矢が襲いかかる。
シグルドはそれを魔法の防御壁を作り受け止める。
その間にジークはシグルドの近くに接近していた。
ジークが白夜を振るう。シグルドは聖剣で攻撃を受け止めるも力負けし、後ろに弾かれる。
するとそのシグルドの背後で再び爆発が起こる。
一瞬シグルドの気が背後に取られる。
その気を取られた一瞬の間にジークは再度間合いを詰めていて、シグルドの腹部に強烈なパンチを入れた。
ジークは畳み掛けることはせずにバックステップし、また距離を取る。
今度は氷魔法を発動し、シグルドの足元から大きな氷柱が突き出してきた。
シグルドは間一髪でそれを躱す。
またもジークはその間に間合いを詰める。
そして白夜で斬りかかるがまたもシグルドは受け止める。今度は弾き飛ばされず、その場で数手の斬り合いが行われたが、どちらも1撃を入れることはできずに再び距離を空けた。
距離を空けたその瞬間にジークはまたも魔法を発動した。
今度は光魔法のビームだ。
シグルドはそのビームを避けながらもジークの動きを警戒した。
先程からジークは魔法を発動して、その隙に間合いを詰めて直接攻撃を決めにきている。
それを迎え討とうというシグルドの気迫が感じられた。
シグルドが避けたビームは先程ジークが発動した氷柱に直撃し、氷柱は砕け散り、砕けた無数の氷塊がシグルドの背後を襲った。
「なんだと!!」
シグルドが背後を振り向き、襲ってくる氷塊を剣で弾く。
「そんなのに夢中になってていいのか?」
ジークは間合いを詰め、シグルドの背後に立っていた。
ジークは蹴りを入れ、シグルドはまともにそれをくらい吹き飛ぶ。
シグルドはすぐに立ちあがりジークの方を睨む。
「貴様!さっきから何故追撃をしない!攻撃もその刀で切れば終わらせられるものを!!余裕のつもりか!?」
「そうだな。今のお前相手なら余裕だな」
「なんだと!?」
「シグルド。お前は確かにかなり強い。
だけど戦い方に意外性が何一つなく読みやすい。接近戦では剣術でゴリ押し、遠距離からはただ威力のある魔法を放つだけ。
読みやすい。避けやすい。
俺はさっきから同じ攻撃のパターンを仕掛けている。
遠距離から魔法を放ち、その隙に接近戦に持ち込む。たったこれだけのことだが、今見たように様々なバリエーションの攻撃方法がある。
実力差がかなりあれば、今のシグルドの戦い方でなんとかなるだろうが、もし本気で龍神族と戦うなら、そんなんじゃ返り討ちにされるぞ?」
「きさまになにがわかるって言うんだ!
まだ戦いは終わってない。私の戦い方が間違っていないことを証明してやる!」
「やれやれ。まだわからないか…」
ジークは右手と左手にそれぞれ魔力を集める。両手を合わせ前に差し出すと、またも氷魔法のビームが放たれた。
「こんなもの…打ち消してくれるわ!!」
シグルドが炎魔法を繰り出す。
2人のちょうど中間点で2人の魔法がぶつかり合う。
「きえろーー!」
シグルドの掛け声と共に、氷魔法と炎魔法は相殺され、どちらの魔法も消え去った。
ように見えたが、ジークの氷魔法は消え去った後に中から別の魔法が飛び出し、シグルドに襲いかかる。
「なんだと!!」
シグルドは意表を突かれ、回避も何も間に合わずにその魔法を喰らった。
「ぐわぁーー」
雷魔法のようでバチバチと音をたてている。
「これで終わりだ。シグルド」
雷魔法を受けて身動き取れなくなったシグルドにジークは魔力を込めた白夜を振り下ろした。
が、ジークはその剣先をシグルドの喉元で止めた。
「俺の勝ちだシグルド。お前は俺を止められなかった。だから俺はこのままウート族と王宮を目指すぞ」
「何故だ?!何故ウート族に力をかす!?」
シグルドが叫んだ。
「なら聞くが、お前は何故レナルーラに力をかす?」
「それはレナルーラがウート族の謎の襲撃で困っているからだ。意味も分からずに侵略をしてくるなんて許せないからな」
「意味が分からない……か。なら襲撃の意味がわかればどうだ?」
「えっ…?」
「おい!レナルーラの騎士達もこのまま話を聞け!!あんた達もウート族が何故こんなことをしているのか知らないんだろ?」
「一体なんなんだと言うのだ!?」
シグルドが声を荒げた。
「1ヶ月程前にレナルーラの王宮の者達にウート族の子供達が大量に誘拐されたんだ。
恐らく目的は奴隷としての人身売買だろう」
「なんだと!!?」
レナルーラの兵たちがざわついた。
「レナルーラは自給自足が難しく、貿易にて国が成り立っている。貿易国や提携都市は多く存在している。
そこに目をつけた王宮内の誰かが、ウート族の子供を攫ったんだ。
ウート族は力が強く頑丈だ。力作業させるにも戦力にするにしても、どこの国も欲しがるから高値で売れるはずだ」
「そんな……」
「彼らウート族はレナルーラ侵略なんかが目的じゃない。ただ、自分達の子供を救おうとしているだけなんだ」
シグルドは全身の力が抜け、両手をだらんと下げ俯いた。
「さぁシグルド。どうする?
レナルーラの騎士達はウート族に襲撃をされ困ってる。
かたやウート族はレナルーラに子供を攫われ困ってる。
お前は困ってる人救いたいんだろう?
どっちを救う?」
まさかウート族がそんな理由を抱えていたなんて。
レナルーラを助けるなら、ウート族を追い払わなければならない。そうなればウート族の子達は奴隷として売られる。
ウート族を助けるということは、助けると約束したレナルーラを裏切ることになる。
「私は……わたしは……」
シグルドは小刻みに震え始めた。
「私は………どっちも救いたい。
ねぇ。どうしたらいいの?ジーク?」
シグルドは涙を流し、声を震わせながらか細く言った。
「こんな状況でもどっちも救いたい……か。
お前らしいな、シグルド」
ジークは微笑みシグルドの頭をぽんぽんと叩いた。
「レナルーラの騎士達!いまの俺たちの会話聞いていただろう?ウート族はただ自分の子達を救いたいだけだ。
子供達が無事に保護できるなら俺たちはこれ以上の戦いを望まない!!
それでも俺たちの行く道を遮るなら容赦しないぞ!!」
ジークの言葉に王宮の兵達は道を開けた。
ジークとシグルドは先程の戦いで人智を超えた力を見せつけていた。レナルーラの騎士は自分達がどう足掻いてもジーク1人に敵わないことを悟ったのだ。
しかし2人の男は道を遮っていた。
たしか2人共レナルーラの騎士団長だ。
「どいてくれないのか?」
「我らは王宮の騎士だ。どんな理由があろうとも王宮を護らねばならんのだ」
「それもまた信念……だな。
だが一つだけいいか?」
「なんだ?」
「この件は恐らく国王も知らないはずだ。
国を挙げて奴隷商売をしているとは考えにくい。きっと王宮内のある程度高い地位の奴が首謀者だ」
「だからなんだ!?」
「そいつは自分の私利私欲の為に動き、ウート族の怒りを買った。そしてこうやってレナルーラ王国を窮地に追い込んだ。
負傷した兵は数千人。たった1人の私利私欲の為にだ!!
そいつこそ、この国を護るために討たなければならない奴なんじゃないのか?」
ジークの言葉に騎士団長2人は考え込んだ。
「確かにお前のいう通りだ…。だが一体だれが……」
「外交大臣のアスウィーという男よ」
王宮の方からマオさんが出てきた。
「おっ!マオちゃん。早かったね!」
ジークがニッカリと笑顔を見せる。
「こんな貿易出来る人なんて限られてるからね。ある程度目星つけてたし、証拠を探すのは簡単だったわ。これがウート族を取引するはずだった証拠よ」
マオさんが貿易の念書を騎士団長に見せた。
「こんなことが……アスウィー様が!!」
その後、騎士団長2人はその念書を手にウート族の族長を連れ、国王の元へ向かった。
国王はウート族の襲撃の理由を知るとそこからの展開は非常に早かった。
レナルーラはウート族への武装を解除し、すぐにアスウィーの捜索が始まった。
アスウィーは雲隠れをしていたがレナルーラ全兵を挙げた捜索の末2日後に領内で発見された。
アスウィーの屋敷の地下からは攫われたウート族の子供40人が発見され、ウート族の元へと返された。
アスウィーはウート族の売買で多額の金と近隣国の信頼を得て、レナルーラ国王の座を狙っていたらしい。
アスウィーは翌日に国家反逆罪によって処刑された。
これ以上は抑えきれないと感じたのか、シグルドが距離を空け、離れざまに光魔法の光線を放った。
ジークがその光線を避けると、いつの間にかシグルドはジークの背後に回っていた。
シグルドがジークの背後から斬撃をしかける。しかしジークはそれすらも躱す。
背後に目でもついているのだろうか。
シグルドはすぐにまた距離を置き、今度は地面に氷魔法を放った。地面はみるみる凍りついてゆき、ジークの足元を襲う。
が、ジークの1メートル程手前でその氷魔法は止まった。
ジークが炎魔法か何かで対策したのだろう。
シグルドはその後も魔法を連発する。
しかしジークはそれらの魔法をことごとく打ち消し、避け、いなした。
「くそっ!これならどうだぁー!」
シグルド両手を前に突き出すと、赤い魔力が溜まってゆくのが見えた。
「人間相手にこんな危険な魔法は使いたくなかったけど、仕方ないわ。
くらいなさい!極大魔法『イグニジアス』」
炎の高速レーザーがジークを襲う。
シグルドがイグニジアスを放った瞬間に辺り一帯の雪は蒸発し、広場全体の気温が急上昇した。
これだけで この極大魔法の持つ威力は充分に感じられた。
「それが全力か?勇者様?」
ジークはぼそりと呟くと、右足が青白く光り始めた。
イグニジアスが直撃する寸前でジークは「はぁーーーっ!!」と叫び、青白く光った右足でイグニジアスを上空へと蹴り上げた。
イグニジアスを放ったシグルドは信じられないという表情をしていた。
いや。シグルドだけでなく、その場にいた誰もが驚愕していた。
「魔法の使い方がなってないな。シグルド」
ジークはこの後に及んでまだシグルドを挑発した。
「なんですって!!」
「真面目すぎんだよ。戦い方までな。
工夫が足りない。魔法ってのはこうやって使うんだよ!」
ジークが指をぱちんと鳴らすと、シグルドのすぐ近くで小さな爆発が起こった。
シグルドは爆風でジークを見失うまいと、横に移動した。
するとそこに雷魔法の矢が襲いかかる。
シグルドはそれを魔法の防御壁を作り受け止める。
その間にジークはシグルドの近くに接近していた。
ジークが白夜を振るう。シグルドは聖剣で攻撃を受け止めるも力負けし、後ろに弾かれる。
するとそのシグルドの背後で再び爆発が起こる。
一瞬シグルドの気が背後に取られる。
その気を取られた一瞬の間にジークは再度間合いを詰めていて、シグルドの腹部に強烈なパンチを入れた。
ジークは畳み掛けることはせずにバックステップし、また距離を取る。
今度は氷魔法を発動し、シグルドの足元から大きな氷柱が突き出してきた。
シグルドは間一髪でそれを躱す。
またもジークはその間に間合いを詰める。
そして白夜で斬りかかるがまたもシグルドは受け止める。今度は弾き飛ばされず、その場で数手の斬り合いが行われたが、どちらも1撃を入れることはできずに再び距離を空けた。
距離を空けたその瞬間にジークはまたも魔法を発動した。
今度は光魔法のビームだ。
シグルドはそのビームを避けながらもジークの動きを警戒した。
先程からジークは魔法を発動して、その隙に間合いを詰めて直接攻撃を決めにきている。
それを迎え討とうというシグルドの気迫が感じられた。
シグルドが避けたビームは先程ジークが発動した氷柱に直撃し、氷柱は砕け散り、砕けた無数の氷塊がシグルドの背後を襲った。
「なんだと!!」
シグルドが背後を振り向き、襲ってくる氷塊を剣で弾く。
「そんなのに夢中になってていいのか?」
ジークは間合いを詰め、シグルドの背後に立っていた。
ジークは蹴りを入れ、シグルドはまともにそれをくらい吹き飛ぶ。
シグルドはすぐに立ちあがりジークの方を睨む。
「貴様!さっきから何故追撃をしない!攻撃もその刀で切れば終わらせられるものを!!余裕のつもりか!?」
「そうだな。今のお前相手なら余裕だな」
「なんだと!?」
「シグルド。お前は確かにかなり強い。
だけど戦い方に意外性が何一つなく読みやすい。接近戦では剣術でゴリ押し、遠距離からはただ威力のある魔法を放つだけ。
読みやすい。避けやすい。
俺はさっきから同じ攻撃のパターンを仕掛けている。
遠距離から魔法を放ち、その隙に接近戦に持ち込む。たったこれだけのことだが、今見たように様々なバリエーションの攻撃方法がある。
実力差がかなりあれば、今のシグルドの戦い方でなんとかなるだろうが、もし本気で龍神族と戦うなら、そんなんじゃ返り討ちにされるぞ?」
「きさまになにがわかるって言うんだ!
まだ戦いは終わってない。私の戦い方が間違っていないことを証明してやる!」
「やれやれ。まだわからないか…」
ジークは右手と左手にそれぞれ魔力を集める。両手を合わせ前に差し出すと、またも氷魔法のビームが放たれた。
「こんなもの…打ち消してくれるわ!!」
シグルドが炎魔法を繰り出す。
2人のちょうど中間点で2人の魔法がぶつかり合う。
「きえろーー!」
シグルドの掛け声と共に、氷魔法と炎魔法は相殺され、どちらの魔法も消え去った。
ように見えたが、ジークの氷魔法は消え去った後に中から別の魔法が飛び出し、シグルドに襲いかかる。
「なんだと!!」
シグルドは意表を突かれ、回避も何も間に合わずにその魔法を喰らった。
「ぐわぁーー」
雷魔法のようでバチバチと音をたてている。
「これで終わりだ。シグルド」
雷魔法を受けて身動き取れなくなったシグルドにジークは魔力を込めた白夜を振り下ろした。
が、ジークはその剣先をシグルドの喉元で止めた。
「俺の勝ちだシグルド。お前は俺を止められなかった。だから俺はこのままウート族と王宮を目指すぞ」
「何故だ?!何故ウート族に力をかす!?」
シグルドが叫んだ。
「なら聞くが、お前は何故レナルーラに力をかす?」
「それはレナルーラがウート族の謎の襲撃で困っているからだ。意味も分からずに侵略をしてくるなんて許せないからな」
「意味が分からない……か。なら襲撃の意味がわかればどうだ?」
「えっ…?」
「おい!レナルーラの騎士達もこのまま話を聞け!!あんた達もウート族が何故こんなことをしているのか知らないんだろ?」
「一体なんなんだと言うのだ!?」
シグルドが声を荒げた。
「1ヶ月程前にレナルーラの王宮の者達にウート族の子供達が大量に誘拐されたんだ。
恐らく目的は奴隷としての人身売買だろう」
「なんだと!!?」
レナルーラの兵たちがざわついた。
「レナルーラは自給自足が難しく、貿易にて国が成り立っている。貿易国や提携都市は多く存在している。
そこに目をつけた王宮内の誰かが、ウート族の子供を攫ったんだ。
ウート族は力が強く頑丈だ。力作業させるにも戦力にするにしても、どこの国も欲しがるから高値で売れるはずだ」
「そんな……」
「彼らウート族はレナルーラ侵略なんかが目的じゃない。ただ、自分達の子供を救おうとしているだけなんだ」
シグルドは全身の力が抜け、両手をだらんと下げ俯いた。
「さぁシグルド。どうする?
レナルーラの騎士達はウート族に襲撃をされ困ってる。
かたやウート族はレナルーラに子供を攫われ困ってる。
お前は困ってる人救いたいんだろう?
どっちを救う?」
まさかウート族がそんな理由を抱えていたなんて。
レナルーラを助けるなら、ウート族を追い払わなければならない。そうなればウート族の子達は奴隷として売られる。
ウート族を助けるということは、助けると約束したレナルーラを裏切ることになる。
「私は……わたしは……」
シグルドは小刻みに震え始めた。
「私は………どっちも救いたい。
ねぇ。どうしたらいいの?ジーク?」
シグルドは涙を流し、声を震わせながらか細く言った。
「こんな状況でもどっちも救いたい……か。
お前らしいな、シグルド」
ジークは微笑みシグルドの頭をぽんぽんと叩いた。
「レナルーラの騎士達!いまの俺たちの会話聞いていただろう?ウート族はただ自分の子達を救いたいだけだ。
子供達が無事に保護できるなら俺たちはこれ以上の戦いを望まない!!
それでも俺たちの行く道を遮るなら容赦しないぞ!!」
ジークの言葉に王宮の兵達は道を開けた。
ジークとシグルドは先程の戦いで人智を超えた力を見せつけていた。レナルーラの騎士は自分達がどう足掻いてもジーク1人に敵わないことを悟ったのだ。
しかし2人の男は道を遮っていた。
たしか2人共レナルーラの騎士団長だ。
「どいてくれないのか?」
「我らは王宮の騎士だ。どんな理由があろうとも王宮を護らねばならんのだ」
「それもまた信念……だな。
だが一つだけいいか?」
「なんだ?」
「この件は恐らく国王も知らないはずだ。
国を挙げて奴隷商売をしているとは考えにくい。きっと王宮内のある程度高い地位の奴が首謀者だ」
「だからなんだ!?」
「そいつは自分の私利私欲の為に動き、ウート族の怒りを買った。そしてこうやってレナルーラ王国を窮地に追い込んだ。
負傷した兵は数千人。たった1人の私利私欲の為にだ!!
そいつこそ、この国を護るために討たなければならない奴なんじゃないのか?」
ジークの言葉に騎士団長2人は考え込んだ。
「確かにお前のいう通りだ…。だが一体だれが……」
「外交大臣のアスウィーという男よ」
王宮の方からマオさんが出てきた。
「おっ!マオちゃん。早かったね!」
ジークがニッカリと笑顔を見せる。
「こんな貿易出来る人なんて限られてるからね。ある程度目星つけてたし、証拠を探すのは簡単だったわ。これがウート族を取引するはずだった証拠よ」
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「こんなことが……アスウィー様が!!」
その後、騎士団長2人はその念書を手にウート族の族長を連れ、国王の元へ向かった。
国王はウート族の襲撃の理由を知るとそこからの展開は非常に早かった。
レナルーラはウート族への武装を解除し、すぐにアスウィーの捜索が始まった。
アスウィーは雲隠れをしていたがレナルーラ全兵を挙げた捜索の末2日後に領内で発見された。
アスウィーの屋敷の地下からは攫われたウート族の子供40人が発見され、ウート族の元へと返された。
アスウィーはウート族の売買で多額の金と近隣国の信頼を得て、レナルーラ国王の座を狙っていたらしい。
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