Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

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承黒寺の乱

龍神族急襲

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四天王、武僧達はみんなしばらく涙を流していた。

クリスはみんなに掛ける言葉も見つからず、その光景を眺めていた。

その沈黙を破ったのはジークだった。
「四天王のみんな、ヤオ老師を寺の中に運んでやりな。いますぐに!」

ジークの真剣な表情と言葉のトーンに、四天王は涙を拭い、すぐにヤオ老師を寺の中に運んで行った。

「コソコソ隠れてないで、そろそろでて来たらどうだ??」

ジークがそう言うと、広場の中央に突如強烈な雷が落ちた。
落雷によって砂埃が巻き起こり、その砂埃が晴れてゆくと、そこには6人の男が立っていた。

1人は見覚えのある男。
龍神族の刺青の男だ。
他の5人も片目が金の瞳をしている。

「やはり気付いていたか」
刺青の男が言葉を発する。

「殺気がプンプンと漂ってたからな。それにしても、わざわざジジイとリガンの戦いが終わるのを待っててくれるとは、意外と良いとこあるじゃねーか」

「これから始まる、貴様らと私達の戦いの前座にはちょうど良いと思っただけだ」

「自信満々だな。前はコテンパンにやられたくせに。しかも俺たちは新しい武器を手に入れて、前より遥かにつえーぞ?」

「強くなったのは貴様らだけではない!」

そう言うと刺青の男はいきなりジークに襲いかかった。
凄いスピードだ!!

クリスは身体能力強化で動体視力が上がっていても龍神族の動きは微かにしか捉えられなかった。

次の瞬間には刺青の男の斬撃をジークが白夜で受け止めていた。

「今のを防ぐか…。さすがだな
だがこれならどうだ!!」

刺青の男は私の目には見えないスピードでジークに対して嵐のような攻撃をくりだしている。

全ての攻撃は見切れないが、所々見える動きもある。刺青の男は剣だけでなく、時に蹴り、時に魔法が放たれ、ジークは守り一辺倒となっていた。

「くくくく!どうだ!
これが俺の力だ!どう足掻こうと私達龍神族に勝てる者などいないのだ!!!」

なおも刺青の男の攻撃は止まらない。

「ファルファーの末裔よ!貴様には感謝しているぞ!
私は今まで龍神族として生まれ、生まれつき他の種族よりも強かった。
それ故に努力、鍛錬などした事がなかった。
封印前にファルファーに敗れ、そして復活しては貴様にやられた。
私は悔しくて、初めて努力をした。
龍神族の中においては下っ端でしかなかった私が、努力をすることで四龍貴族の直属の戦士にまでなることができた。
貴様のおかげで私は強くなる喜びを覚えた。
俺はもう負けたくない。
もっと力を増して龍神族の中でももっともっと地位をあげてやるんだ。
その前にますばお前を血祭りにあげてやる!!」

攻撃はどんどんと勢いを増してゆく。
ジークはギリギリで躱しているものの、躱しきれていないのか、小さな切り傷が少しずつ増えていった。
さすがにジークでも龍神族の戦士相手では勝てないのか……。

先ほどの龍神族の手下達との戦いで、誰もがジークとマオさんの戦闘力の高さを知った。
それ故にもしジークが負ければ、今の自分達など歯が立たないことは明白。
誰もが絶望しかけていた。

「思い知ったか!これが龍神族の力だ!」

刺青の男が剣を大きく振りかぶり、トドメを刺そうとする。

「あ?なんか言ったか?」

ジークは白夜で刺青の男の剣を弾き、腹部に強烈なパンチが突き刺さった

「ぐはぁーっ」

「あんまり調子にのるなよ?」

一撃で刺青の男の動きを封じた。

「確かにお前はかなり強くなった。以前よりもな。だけど、それでもまだ俺には届かない。」

「でも…避けきれていなかったじゃないか…」

「1対1ならまだしも、周りにまだ5人の龍神族がいるんだ、下手に避けて隙を見せたくなかったんで、最小限の動きで避けてただけだ」

「くっ。それなら何故急に反撃に……」

「マオちゃんがそれに気付いて、他の5人を牽制してくれたからだよ」

「なっ!」

いつの間にかマオさんは他の龍神族5人の前に1人で立っていた。

「サンキュー。マオちゃん、でもさすがに5人同時相手はきつくないか?」

「ジークがそんな心配するなんて珍しいじゃない。いつもならめんどくさいって私に押し付けるのに」

「相手が相手だからな。一応」

「これぐらいの相手なら問題ないわ。
多少強いかもしれないけど、一人一人の強さはリーナにも劣るわ」

マオさんは黒椿を抜き、龍神族5人の中に飛び込んでいった。

「おぉー。さすが元魔王さん。勇敢だなぁ。
さて、こっちも早いところ終わらせるか」

「きさまら……我々龍神族を舐めるのもたいがいにしろ!」

刺青の男が凄まじい程の乱撃を繰り出すが、今度はジークにかすりもしない。

「何故だ。何故!
俺はこんなにも強くなったのに、何故攻撃が当たらない!
前回はもっと実力が拮抗していたはずなのに」

「前回の戦いが俺とマオちゃんの全力とでも思ったか??」

「なんだと?!手を抜いていたとでも?」

「前の戦いの時は、お前らの他に龍神族の仲間がいる可能性があったからな。俺もマオちゃんも体力も魔力も温存していたよ」

ジークは刺青の男の背後をとり、蹴り飛ばした。刺青の男は吹き飛ばされながらも、すぐに態勢を整えた。

「そんな馬鹿なことがあってたまるかーー」

刺青の男は両手を前に出し炎、氷、雷の魔法をマシンガンのように無数に繰り出した。
なんという速さと数だ!!
自分でも魔法を覚えてみて、改めて龍神族の凄さがわかった。
私とリガンでは、魔法を使うと次の魔法を発動するまでに、1秒か2秒程の溜めを要する。

しかしこの刺青の男は数発を同時に、しかも放った直後に溜めもなく次の魔法を発動させている。それだけ無数に連発しておきながら、魔法の威力も1発1発がかなり高い。
クリスは遠目から戦いを眺めながら、格の違いを思い知った。

ジークに無数の魔法が襲いかかる。
しかしジークも手を前に差し出すと、刺青の男と同様に魔法を連射し、全て相殺してゆく。
いや!ジークの方が連射スピードが速い。
ジークには1発も魔法が届いていないが、刺青の男の方には数発の魔法が届いていた。

刺青の男は咄嗟に攻撃魔法をやめ、防御壁を作った。
ジークは連射の手を緩めず、防御壁にはどんどんと魔法が打ち込まれてゆく。

「そ……そんな馬鹿な!」

ついに魔法壁は破れ、刺青の男に無数の魔法が叩き込まれてゆく。

魔法が着弾するたびに大きな爆発が起こった。
しばらくしてジークが魔法を放つのをやめると砂煙が晴れてゆき、衣服がボロボロになった刺青の男の姿が浮かび上がってきた。

「さすがにタフだなぁ。」

「はぁ…はぁ…はぁ…。貴様…一体どれほどの力を……?」

「敵わないのはわかっただろ?大人しく観念して、四龍貴族とやらの居場所を吐きな」

ジークが刀を刺青の男の首筋につきつけた。
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