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大武闘祭編
二回戦 クリスvsヨウゼン その2
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くっ。
このままでは拉致があかない。
一撃で終わらせるんだ!
クリスは自分の出せる最大限のスピードでヨウゼンに向かった。
ヨウゼンはやはり私の姿を目で追えていない。
クリスはヨウゼンの懐に入り、しゃがみ込み蹴りでヨウゼンの足を払おうとした。
足払いをして、体が一瞬宙に浮き、身動きが取れない所にトドメの一撃を入れようとクリスは考えていた。
しかしヨウゼンは私の足払いを右足の裏で受け止めた。
しまった!!
何故ヨウゼンさんはさっきから私の動きについてこれないのに、攻撃を躱したり受けたりできるのだ?!
しゃがみ込んでいる所に、ヨウゼンが拳を振り下ろしてきた。
足払いの攻撃は完全に選択ミスだった。
しゃがみ込んでいたために、回避行動が遅れる。
避けきれない!!
クリスは咄嗟にヨウゼンの攻撃を腕で受け止めた。
しかし次の瞬間に先ほどと同じく、体の内側に激しい衝撃が走った。
クリスは激しい吐血をし、そのままその場に倒れこんだ。
苦しい…
呼吸も上手くできない。
内臓系を攻撃されるのはこんなにも苦しいものなのか?!
こんなの勝てっこない…。
このまま寝てしまおうか…
あまりの苦痛にクリスは心が折れかけていた。
その時
「クリス!!立てー!」
1つの叫び声が聞こえてきた。
この声は……リガン。
「クリス!俺と決勝で戦うんだろ?!
こんな所で諦めるな!」
そうだ。
私はリガンと戦いたい。決勝の舞台で。
クリスは力を振り絞って立ち上がり、すぐにヨウゼンと間合いを取った。
立ち上がったものの、どう対処すればいい。
攻撃は何故か避けられるし、相手の攻撃も1撃でも受けたらアウトだ。
どうする……?
早く対策を練らないとという焦りで頭はパニック状態になっていた。
「クリス!!」
再びリガンの声が聞こえた。
リガンの方を見るとリガンは自分の耳を指指していた。
耳?
耳がどうしたというんだ?
リガンたちリカント族は総じて聴力と嗅覚には優れている。
リガンは何か気付いたということか。
耳……
目で追えなくても、音で私の動きを察知しているということか?
でも何の音で?
早く考えないと、ヨウゼンが攻撃してくる…
ん?
そういえばさっきからヨウゼンから攻撃してくることがない。
さっき一度間合いを取った時も、私が悩んでいる間にも攻撃を仕掛けてこなかった。
そうか!
仙気功は全身の気を操る技だ。
集中し気をコントロールしなければならない。
動きながらでは使えないんだ!
しかもさっき、私の蹴りを足で受け止めた時に何も起こらなかったということは、きっとヨウゼンさんは仙気功を拳でしか使うことができない!
あとは私の攻撃をどう読んでいるかがわかれば……
音…
音…
わからない。
何の音を頼りにしているんだ。
その時、野外会場である武舞台に突風が吹いた。
びゅぉー
風の音が耳をつんざく。
風の音!?
そうか!
クリスは何かに気が付いた。
再びクリスは高速でフットワークを取り始めた。
自身が高速で動いているが故に風を切り裂く音が聞こえる。
クリスは少しずつヨウゼンへと近づいてゆく。
ひゅぉ!
ある一定の距離に入ると、風を切り裂く音が少し高くなった。
それと同時にヨウゼンの体がピクリと反応した。
コレか!!
綺麗な顔してなかなかエゲツないことをする。
しかしタネさえ分かれば対策は打てる!
クリスが掌をヨウゼンに向けた。
するとヨウゼンは表情を曇らせ、左右をキョロキョロし始めた。
ここだ!
完全にヨウゼンの虚をついた!
ヨウゼンの左側に回り込み、右の突きを繰り出した。
決まる!これは避けられないはずだ!
と私は確信した。
しかしクリスの拳がヨウゼンの頬に触れた瞬間、ヨウゼンは体を回転させて、拳をいなした。
「なに!?」
ヨウゼンはその回転の勢いを使って1回転し、突きを繰り出した。
マズイ!
クリスは拳をいなされた体勢で防御が間に合わず、ヨウゼンの拳を腹に喰らって、吹き飛ばされた。
「ぐはぁぁーー!」
しかし水如全拳は発動しなかったのか、ダメージは軽く、クリスはすぐに身を起こした。
そしてすぐに構えをとった。
「今の攻撃を見ると、どうやら気付いたようですね?」
「あぁ。まさか拳法の大会で魔法使ってるとは思わなかったよ」
「ふふふ。私達は既に身体能力強化魔法だって使ってるじゃないですか」
「たしかにな。
それにしても自分の周りに薄い風のカーテンのような結界を張って、私がそこを通った時の音で察知してたとは。魔法には色んな使い方があるもんなんですね。
勉強になります。」
「そこまで分かっていたのですね。さすがです。でもどうやってあれを破ったのですか?
クリスさんがどこにいるか全く察知出来なかった」
「目には目をだ。
私も風魔法を使って、四方八方からその結界に風をぶつけて音を発生させたのさ。
だけど、あんな防御がまだ残ってるとは思ってもみなかったがな」
「全神経を集中させて、貴方の攻撃がぶつかった瞬間に攻撃と同じ方向に回転することでいなす。これも承黒寺に伝わる奥義『浮雲』という技です」
「さすがに防御に集中をすると水如全拳は使えないようだな」
「えぇ。水如全拳もまたかなりの集中力を要しますからね」
さて、ヨウゼンの防御のからくりは分かったけど、どうしたものか…?
私が風のカーテンを見破ったことで、ヨウゼンはもう私の動きについてくることは難しい。
となれば、ヨウゼンは守りに集中をするはずだ。実質これで水如全拳は封じたも同然だ。
あとはあの浮雲をどうやって攻略する?
攻撃をいなされれば私は体勢を崩して、回転の遠心力を加えたカウンターの1撃をもらう。
水如全拳ではないとはいえ、ヨウゼンの拳は重い。そう何発ももらってはとてもじゃないが耐えられない。
となれば…
いなされても体勢を崩さない程度の攻撃を仕掛ける。ヨウゼンが回転してカウンターの1撃を撃ってきた所に、私が更にカウンターを仕掛けるんだ。
スピードは私の方が断然早い。
私の攻撃が先に当たるはずだ。
作戦が決まった私はすぐに攻撃を仕掛けた。
先ほどと同様に風魔法を使って、場所を撹乱する。
そしてヨウゼンの背後をとった。
背後ならもしかしたら浮雲が使えないかもしれないと思ったからだ。
クリスが囮の左の突きを繰り出すと、同時にヨウゼンがクリスの方を振り向いた。
「何!?」
「最後は必ず背後から攻撃してくると思っていましたよ」
さすがはヨウゼンさん。
読みだけで攻撃の方向を当てるなんて。
でも読まれたところで私の作戦は変わらない。
この左の拳がヨウゼンに当たり、浮雲を使ったところに本命の右の突きを繰り出すんだ。
クリスは振り向いたヨウゼンに動揺せずに左の突きをヨウゼンに放った。
さぁ。浮雲を使え!!
しかしヨウゼンはクリスの1撃を浮雲でいなさずに胸で受けた。
もともと囮の為の1撃。
そこまでの威力はなく、ヨウゼンは胸への1撃を耐えた。
「やはり、私に浮雲を使わせるために最初の1撃は囮できましたね!!
そう来ると思ってました!
この程度の攻撃なら耐えて、攻撃に専念できる!」
はぁーっとヨウゼンが息を深く吐きながら、右の拳を繰り出した。
これは…水如全拳!
まずい!
動きを読まれたことからの動揺で、反応が一瞬遅れた。
回避には間に合わない!!
こうなったら一か八か、ヨウゼンの拳が私に当たる前に、私の拳をヨウゼンに叩き込む!
クリスは元々2撃放つつもりだったため、体勢は既に整っている。
すぐに右の拳を突き出した。
タイミングは…ギリギリ。
どっちが先に当たってもおかしくない。
「うぉーーー」
2人の怒号が会場中に響いた。
2人の拳はほぼ同時にお互いの胸を貫いたように見えた。
2人は拳を伸ばしたまま、時が止まったかのような立ち尽くしている。
その膠着を破るようにヨウゼンがニヤリと笑った。
「私の拳の方が一瞬だけ早く届いたようですね」
クリスはガクリとし地面に膝をついた。
「…みたい……だな」
「だけど私はまだまだ修業が足りないようです。
貴方のカウンターに恐怖を感じて、心を乱してしまい、水如全拳が上手く発動しなかった……
この勝負、私の負けのようです」
ヨウゼンはそう言うと、その場にバタリと倒れた。
審判がカウントを取り始める。
ヨウゼンは立ち上がることができず、そのまま10カウントがされ、私が勝ち名乗りをあげた。
勝った…。
強かった。
スピード、パワーでは圧倒的に自分の方が優っていた。
それなのにヨウゼンさんは様々な工夫と技をもって、私と互角に戦った。
彼は本物の天才だった。
格上の相手でも、工夫次第で何とでもなるということをこの戦いで学んだ気がした。
私は舞台を降り、選手の合同待ち合い室に入った。
「クリス!やったな!」
リガンが私の元に駆け寄ってきた。
「リガン。さっきはありがとうな。
お前の助言が無ければ勝てなかったよ」
「へへへ。まさか魔法を使ってるなんてね。
風魔法なら視覚的に見えないから、審判や観客も気づかないし、紳士そうにみえて汚いことするよな」
「汚くなんかないさ。勝つための精一杯の工夫だ。とてもいい勉強になったよ」
リガンと普通の会話をしていたその瞬間
私の全身に大きな衝撃が走った。
私は吐血をし、その場に倒れた。
これは……水如全拳…。
発動してなかったわけじゃないのか…。
今になってその衝撃が襲ってきた。
「クリス!!!」
リガンが叫んだ
「大丈夫だ……。やっぱヨウゼンさんは天才だったな。恐怖に打ち勝って、ちゃんと水如全拳を使えていたようだ。
ちょっとダメージを受けすぎたな。
次の試合まで少し寝て回復させるから、リガンも2回戦頑張れよ」
私はリガンに待ち合い室の隅に連れて行ってもらい、微睡んだ。
このままでは拉致があかない。
一撃で終わらせるんだ!
クリスは自分の出せる最大限のスピードでヨウゼンに向かった。
ヨウゼンはやはり私の姿を目で追えていない。
クリスはヨウゼンの懐に入り、しゃがみ込み蹴りでヨウゼンの足を払おうとした。
足払いをして、体が一瞬宙に浮き、身動きが取れない所にトドメの一撃を入れようとクリスは考えていた。
しかしヨウゼンは私の足払いを右足の裏で受け止めた。
しまった!!
何故ヨウゼンさんはさっきから私の動きについてこれないのに、攻撃を躱したり受けたりできるのだ?!
しゃがみ込んでいる所に、ヨウゼンが拳を振り下ろしてきた。
足払いの攻撃は完全に選択ミスだった。
しゃがみ込んでいたために、回避行動が遅れる。
避けきれない!!
クリスは咄嗟にヨウゼンの攻撃を腕で受け止めた。
しかし次の瞬間に先ほどと同じく、体の内側に激しい衝撃が走った。
クリスは激しい吐血をし、そのままその場に倒れこんだ。
苦しい…
呼吸も上手くできない。
内臓系を攻撃されるのはこんなにも苦しいものなのか?!
こんなの勝てっこない…。
このまま寝てしまおうか…
あまりの苦痛にクリスは心が折れかけていた。
その時
「クリス!!立てー!」
1つの叫び声が聞こえてきた。
この声は……リガン。
「クリス!俺と決勝で戦うんだろ?!
こんな所で諦めるな!」
そうだ。
私はリガンと戦いたい。決勝の舞台で。
クリスは力を振り絞って立ち上がり、すぐにヨウゼンと間合いを取った。
立ち上がったものの、どう対処すればいい。
攻撃は何故か避けられるし、相手の攻撃も1撃でも受けたらアウトだ。
どうする……?
早く対策を練らないとという焦りで頭はパニック状態になっていた。
「クリス!!」
再びリガンの声が聞こえた。
リガンの方を見るとリガンは自分の耳を指指していた。
耳?
耳がどうしたというんだ?
リガンたちリカント族は総じて聴力と嗅覚には優れている。
リガンは何か気付いたということか。
耳……
目で追えなくても、音で私の動きを察知しているということか?
でも何の音で?
早く考えないと、ヨウゼンが攻撃してくる…
ん?
そういえばさっきからヨウゼンから攻撃してくることがない。
さっき一度間合いを取った時も、私が悩んでいる間にも攻撃を仕掛けてこなかった。
そうか!
仙気功は全身の気を操る技だ。
集中し気をコントロールしなければならない。
動きながらでは使えないんだ!
しかもさっき、私の蹴りを足で受け止めた時に何も起こらなかったということは、きっとヨウゼンさんは仙気功を拳でしか使うことができない!
あとは私の攻撃をどう読んでいるかがわかれば……
音…
音…
わからない。
何の音を頼りにしているんだ。
その時、野外会場である武舞台に突風が吹いた。
びゅぉー
風の音が耳をつんざく。
風の音!?
そうか!
クリスは何かに気が付いた。
再びクリスは高速でフットワークを取り始めた。
自身が高速で動いているが故に風を切り裂く音が聞こえる。
クリスは少しずつヨウゼンへと近づいてゆく。
ひゅぉ!
ある一定の距離に入ると、風を切り裂く音が少し高くなった。
それと同時にヨウゼンの体がピクリと反応した。
コレか!!
綺麗な顔してなかなかエゲツないことをする。
しかしタネさえ分かれば対策は打てる!
クリスが掌をヨウゼンに向けた。
するとヨウゼンは表情を曇らせ、左右をキョロキョロし始めた。
ここだ!
完全にヨウゼンの虚をついた!
ヨウゼンの左側に回り込み、右の突きを繰り出した。
決まる!これは避けられないはずだ!
と私は確信した。
しかしクリスの拳がヨウゼンの頬に触れた瞬間、ヨウゼンは体を回転させて、拳をいなした。
「なに!?」
ヨウゼンはその回転の勢いを使って1回転し、突きを繰り出した。
マズイ!
クリスは拳をいなされた体勢で防御が間に合わず、ヨウゼンの拳を腹に喰らって、吹き飛ばされた。
「ぐはぁぁーー!」
しかし水如全拳は発動しなかったのか、ダメージは軽く、クリスはすぐに身を起こした。
そしてすぐに構えをとった。
「今の攻撃を見ると、どうやら気付いたようですね?」
「あぁ。まさか拳法の大会で魔法使ってるとは思わなかったよ」
「ふふふ。私達は既に身体能力強化魔法だって使ってるじゃないですか」
「たしかにな。
それにしても自分の周りに薄い風のカーテンのような結界を張って、私がそこを通った時の音で察知してたとは。魔法には色んな使い方があるもんなんですね。
勉強になります。」
「そこまで分かっていたのですね。さすがです。でもどうやってあれを破ったのですか?
クリスさんがどこにいるか全く察知出来なかった」
「目には目をだ。
私も風魔法を使って、四方八方からその結界に風をぶつけて音を発生させたのさ。
だけど、あんな防御がまだ残ってるとは思ってもみなかったがな」
「全神経を集中させて、貴方の攻撃がぶつかった瞬間に攻撃と同じ方向に回転することでいなす。これも承黒寺に伝わる奥義『浮雲』という技です」
「さすがに防御に集中をすると水如全拳は使えないようだな」
「えぇ。水如全拳もまたかなりの集中力を要しますからね」
さて、ヨウゼンの防御のからくりは分かったけど、どうしたものか…?
私が風のカーテンを見破ったことで、ヨウゼンはもう私の動きについてくることは難しい。
となれば、ヨウゼンは守りに集中をするはずだ。実質これで水如全拳は封じたも同然だ。
あとはあの浮雲をどうやって攻略する?
攻撃をいなされれば私は体勢を崩して、回転の遠心力を加えたカウンターの1撃をもらう。
水如全拳ではないとはいえ、ヨウゼンの拳は重い。そう何発ももらってはとてもじゃないが耐えられない。
となれば…
いなされても体勢を崩さない程度の攻撃を仕掛ける。ヨウゼンが回転してカウンターの1撃を撃ってきた所に、私が更にカウンターを仕掛けるんだ。
スピードは私の方が断然早い。
私の攻撃が先に当たるはずだ。
作戦が決まった私はすぐに攻撃を仕掛けた。
先ほどと同様に風魔法を使って、場所を撹乱する。
そしてヨウゼンの背後をとった。
背後ならもしかしたら浮雲が使えないかもしれないと思ったからだ。
クリスが囮の左の突きを繰り出すと、同時にヨウゼンがクリスの方を振り向いた。
「何!?」
「最後は必ず背後から攻撃してくると思っていましたよ」
さすがはヨウゼンさん。
読みだけで攻撃の方向を当てるなんて。
でも読まれたところで私の作戦は変わらない。
この左の拳がヨウゼンに当たり、浮雲を使ったところに本命の右の突きを繰り出すんだ。
クリスは振り向いたヨウゼンに動揺せずに左の突きをヨウゼンに放った。
さぁ。浮雲を使え!!
しかしヨウゼンはクリスの1撃を浮雲でいなさずに胸で受けた。
もともと囮の為の1撃。
そこまでの威力はなく、ヨウゼンは胸への1撃を耐えた。
「やはり、私に浮雲を使わせるために最初の1撃は囮できましたね!!
そう来ると思ってました!
この程度の攻撃なら耐えて、攻撃に専念できる!」
はぁーっとヨウゼンが息を深く吐きながら、右の拳を繰り出した。
これは…水如全拳!
まずい!
動きを読まれたことからの動揺で、反応が一瞬遅れた。
回避には間に合わない!!
こうなったら一か八か、ヨウゼンの拳が私に当たる前に、私の拳をヨウゼンに叩き込む!
クリスは元々2撃放つつもりだったため、体勢は既に整っている。
すぐに右の拳を突き出した。
タイミングは…ギリギリ。
どっちが先に当たってもおかしくない。
「うぉーーー」
2人の怒号が会場中に響いた。
2人の拳はほぼ同時にお互いの胸を貫いたように見えた。
2人は拳を伸ばしたまま、時が止まったかのような立ち尽くしている。
その膠着を破るようにヨウゼンがニヤリと笑った。
「私の拳の方が一瞬だけ早く届いたようですね」
クリスはガクリとし地面に膝をついた。
「…みたい……だな」
「だけど私はまだまだ修業が足りないようです。
貴方のカウンターに恐怖を感じて、心を乱してしまい、水如全拳が上手く発動しなかった……
この勝負、私の負けのようです」
ヨウゼンはそう言うと、その場にバタリと倒れた。
審判がカウントを取り始める。
ヨウゼンは立ち上がることができず、そのまま10カウントがされ、私が勝ち名乗りをあげた。
勝った…。
強かった。
スピード、パワーでは圧倒的に自分の方が優っていた。
それなのにヨウゼンさんは様々な工夫と技をもって、私と互角に戦った。
彼は本物の天才だった。
格上の相手でも、工夫次第で何とでもなるということをこの戦いで学んだ気がした。
私は舞台を降り、選手の合同待ち合い室に入った。
「クリス!やったな!」
リガンが私の元に駆け寄ってきた。
「リガン。さっきはありがとうな。
お前の助言が無ければ勝てなかったよ」
「へへへ。まさか魔法を使ってるなんてね。
風魔法なら視覚的に見えないから、審判や観客も気づかないし、紳士そうにみえて汚いことするよな」
「汚くなんかないさ。勝つための精一杯の工夫だ。とてもいい勉強になったよ」
リガンと普通の会話をしていたその瞬間
私の全身に大きな衝撃が走った。
私は吐血をし、その場に倒れた。
これは……水如全拳…。
発動してなかったわけじゃないのか…。
今になってその衝撃が襲ってきた。
「クリス!!!」
リガンが叫んだ
「大丈夫だ……。やっぱヨウゼンさんは天才だったな。恐怖に打ち勝って、ちゃんと水如全拳を使えていたようだ。
ちょっとダメージを受けすぎたな。
次の試合まで少し寝て回復させるから、リガンも2回戦頑張れよ」
私はリガンに待ち合い室の隅に連れて行ってもらい、微睡んだ。
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