Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

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大武闘祭編

二回戦 クリスvsヨウゼン その1

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そして2回戦が始まる。
クリスは再度対戦表を眺めた。

私の次の相手は承黒寺四天王の1人『ヨウゼンさんだ。
今のところ実力では四天王の長『ジュウザ』さんが一番強いらしい。
しかし、ヨウゼンさんは四天王一の天才と呼ばれており、四天王の平均年齢が35歳なのに対して、ヨウゼンさんはまだ21歳の若さで四天王の1人となっていた。
承黒寺の中でも、ヤオ老師の跡を継ぐのはヨウゼンだという噂が流れる程の腕の持ち主だ。
一応油断は禁物だな。

私は武舞台の真ん中に立ち、ヨウゼンさんと目を合わせた。
ヨウゼンさんは身長は180センチ程。
腰まで掛かる長い後ろ髪をしている。
顔立ちも美しく、一見すると女性にしか見えないほどだ。

その容姿からか、ダンレン国内にヨウゼンさんの女性ファンは多く、会場からは黄色い声援が上がっていた。

「クリスさん。
よろしくお願いします。
フォンさんから聞きましたよ。今まで力を隠していたそうですね。
どれほどのお力をお持ちなのか、是非とも見せてください」

最初は魔法無しで戦おうと思っていたが、その言葉を受けクリスは腕輪を外した。
元より四天王相手には身体能力強化無しで勝てるとは思っていなかった。
私は身体能力強化魔法を発動した。

「試合はじめぇーーい」
審判の掛け声と同時に私は飛び出した。

ヨウゼンさんの目の前まで間合いを詰め、一瞬で右にステップをしてヨウゼンの視界から消える。

そしてそのままヨウゼンの左脇腹に蹴りを打ち込んだ。

「ぐはっ……」
ヨウゼンはクリスの動きについてこれず、モロに蹴りを喰らった。
ヨウゼンはその場に膝をついた。

ヨウゼンはすぐに立ち上がり攻撃を仕掛けてくる。
スピードもパワーもフォンさんとあまり変わりない。

なんだ……?
天才という割に大したことないじゃないか!

クリスは目にも留まらぬフットワークでヨウゼンさんを撹乱し背後を取った。
これで終わりだ!

首筋にチョップを繰り出すとヨウゼンは少し体をズラした。
首をめがけたはずのチョップはヨウゼンの右肩にヒットした。

「ぐっ。。」
ヨウゼンが苦痛の声をあげた。

完全に私を見失っていたのに、直前で避けた!?
何が起こった?
マグレか?

クリスは警戒しつつも再びフットワークを使い撹乱を始めた。

ヨウゼンは左右をキョロキョロとしている。
やはり私の姿を掴めていない。

懐に入り込み、右の拳でミゾオチを狙った。
ヨウゼンは後ろにステップし、今度はそれを完全に避けた。

「なに!?」
思わず驚きの声をあげてしまった。
一瞬の油断。
それをヨウゼンは見逃さず、クリスの胸に目掛けて右の突きをくりだした。

クリスは咄嗟に両腕を交差させ、その拳をギリギリで防いだ。

しかし次の瞬間、全身が震えるような激しい衝撃が体の内側から発生した。

「ぐはぁっ…」
私は口から少量の血を吐き出し、後ずさりした。
そこにヨウゼンは更に追い打ちを掛けようと、今度は左の突きを繰り出した。

これを喰らったらマズイ!
身体中の細胞が警鐘を鳴らしている。
私はこれを腕で受けようと思ったが、先ほどの右の突きが頭を過ぎった。
受けるのもマズイ…!
全力で回避しないと!!
クリスは身体能力強化を最大に発動して、死に物狂いでその突きを躱した。

一瞬体勢を崩したが、すぐに整えヨウゼンとの距離を取った。

何だったんださっきの突きは?!
まるで五臓六腑全てを鷲掴みにされ、左右に激しくシェイクされたような衝撃。
そしてその前も、私の動きを見失っていたはずなのに見事に躱していた。

「今のタイミングの突きを躱すとは。
予想以上にお強かったんですね」
ヨウゼンが穏やかな声で言った。
まるで戦いの最中とは思えない程に冷静で落ち着きはらった声だ。

「さっきのは一体…?」

「ははは。戦いの最中に敵に攻撃のからくりを聞くんですか?面白い方ですね。
でも同じ寺で修行している同門として特別にお教えしましょう。
先ほどの突きは承黒寺に伝わる奥義『水如全拳【すいにょぜんけん】』という仙気功を使った突きです」

「仙気功…」
承黒寺で修行をしていて噂で聞いたことがある。
体内に流れる『気』という力を操り、その気を放出し相手の体内に流し込むことで内臓を攻撃する技があると…。
まさかヨウゼンさんが使えたとは。

「私の仙気功を使った攻撃を受ければ、例え腕で受けようが、脚で受けようが、それは体内に振動となって流れてゆき、内臓にダメージを与えることができる。
これであなたは私の攻撃を完璧に避けるしか選択肢がない」

どうする…。
拳法の試合だ。近づかないことには攻撃が出来ない。
普通の戦いなら、遠距離から魔法を使ったり、剣を使えば対処できるが…。

クリスは悩みを構えたまましばらく時間が経った。
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