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リガンの大冒険
アレフ族
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それから2日。
僕とリリーさんは2人で協力をしながら山を登り、ついに標高3000メートルを超える所まで来た。
時折、凶悪なモンスターも出てきたが、いつの間にこんな実力が付いていたのか、僕は殆どのモンスターを倒すことができた。
ピンチになることもあったが、リリーさんも中級モンスターのブォルフ族というだけあって、最低限の戦闘は出来たので、度々手助けをしてもらってここまで来れた。
この2日間で僕はすっかりリリーさんに夢中になっていた。
「もうそろそろアレフ族の集落がある辺りね」
そう。
もうすぐだ。
ここでアレフ族を見つけて、リリーさんのお願いを聞いてもらえたら、そこでもうこの2人の旅は終わってしまう。
リリーさんの悩みを少しでも早く解決してあげたい気持ちと もっとリリーさんと一緒にいたい気持ちが同時に胸を締め付けてくる。
しばらく辺りを探していると、木々の奥からパキパキっと枝を踏むような足音が聞こえてきた。
僕とリリーさんは咄嗟に身を隠した。
この辺りのモンスターは今の僕の実力でも勝つのがギリギリのモンスターばかり。
できることなら戦闘は避けたかった。
身を隠して足音の方を見てみると、見覚えのある人が見えた。
「クリス!!!」
奥から歩いて来たのはなんとクリスだった。
「リガン!無事だったのか?!」
「クリスがいるってことは、ジークさんと、マオさんも近くにいるの?」
「いや。それが俺も2人から逸れてしまったんだ。
あの後しばらくリガンを探したんだけど見つからなくて、うちらはこの山を登ってるうちに会えるだろうと、登山を再開したんだ。
だけど途中に地面の脆い所があったらしく、私はそこから山中の洞窟に落っこちてしまって逸れたんだ」
「そうだったのか」
ジークさんとマオさんがいれば、この山でも安心して歩けると思ったが、そう上手くはいかなかった。
とはいえ、クリスが見つかったのはとても心強い。
「あの……この方は?」
隠れていたリリーが顔を覗かせた。
「リガン。そのこは?」
僕はクリスにこの2日間のことを説明した。
リリーのこと、アレフ族の集落を探していること、そして初めて戦いに勝った時の話。
初勝利の話をすると、クリスは自分のことのように喜んでくれた。
「そんなことがあったんだな。
それじゃあ、俺もそのアレフ族っていうのを探すの手伝うよ」
クリスはこの寄り道を快諾してくれた。
その後2時間程辺りを探していると、ようやく1匹のアレフ族のリカントを見つけた。
アレフ族はリカント族の中でも体が大型の者が多い。
2メートルを超える体長、隆々とした筋肉。
一目見ただけですぐに分かった。
会った瞬間にアレフ族のリカントは いきなり襲いかかってきたが、僕とクリスはあっという間にそのリカントを押さえつけた。
アレフ族は上級モンスターだけど、クリスと一緒なら負ける気はしなかった。
僕達はそのリカントから集落の場所を聞き出し、遂にアレフ族の集落にたどり着いた。
アレフ族の集落は山の中の洞窟内にあった。
かつてパル達が避難していた洞窟を思わせるほど中は広かった。
僕たちはアレフ族に気付かれると一瞬にして数十匹のアレフ族に取り囲まれた。
そして1匹のリーダーと思われるリカントが前に出た。
「きさまら何者だ?
よく見たら2人はリカント族じゃないか?」
リーダーのようなリカントは警戒した表情で問いかけてくる。
「私はリカントのブォルフ族の者です。
私達ブォルフ族は今謎の疫病に苦しめられていて、リカント族の病は何でも治せるという、族長のお力をお借りしたくて来たのです。」
リリーが咄嗟に僕達の前に出て説明をした。
「そうか。
リンダ様の血液を煎じて飲めば、リカント族であれば、どんな病でも治ろう。
ここまで来れた褒美だ。
リンダ様に会わせてやろう」
リーダーのような男は意外と物分かりがよく、快くリリーの話を聞いてくれた。
その男に連れられ、僕たちは洞窟の1番奥にある屋敷へと入っていった。
屋敷の中には1人の女性のリカントが座っていた。
アレフ族なのだろうが体は小柄だ。
リリーとは別のタイプだが、とても美人だ。
「わらわに何か用か?」
リンダ様が問いかけてきた。
リリーは再度リンダ様に状況を説明した。
「ほう。それでわらわの血液が必要なのか?」
「はい。是非ともお力添えを」
「断る」
リンダ様は無表情のまま返答した。
「そんな……なんで?」
リリーは何が起こったのか分からないような、パニックにも近い表情を見せた。
正直僕もこの返事には驚いた。
同じリカントという種族の仲間が困っているのだから、当然助けてくれるものだと思っていた。
「我らモンスターの世界は弱肉強食だ。
弱き種族は滅び、強き種族が生き残るのは宿命だ。ヴォルフ族などという弱き種族など滅びても何とも思わぬわ。
そんな種族にわらわの高貴な血を分け与えるなどもったいないわ」
その言葉にリリーはがっくりと肩を落とした。
何とかリリーさんの力になってあげたい。
「あの!!」
考えるより先に声が出ていた。
「ん?なんじゃ?」
「強い者が生き残るべきだと言うのなら、もし私達が貴方達と勝負をして、勝てたら力を貸してもらえないでしょうか?」
「ほほほほほほ!」
リンダ様は激しく笑った。
「最弱のベビーリカントの分際で我ら最強のアレフ族に戦いを挑むだと?
それは面白い。万が一お主らが勝てたらわらわの血液を分けてやろう」
こうして僕たちは洞窟内の広場でアレフ族と決闘をすることになった。
僕とリリーさんは2人で協力をしながら山を登り、ついに標高3000メートルを超える所まで来た。
時折、凶悪なモンスターも出てきたが、いつの間にこんな実力が付いていたのか、僕は殆どのモンスターを倒すことができた。
ピンチになることもあったが、リリーさんも中級モンスターのブォルフ族というだけあって、最低限の戦闘は出来たので、度々手助けをしてもらってここまで来れた。
この2日間で僕はすっかりリリーさんに夢中になっていた。
「もうそろそろアレフ族の集落がある辺りね」
そう。
もうすぐだ。
ここでアレフ族を見つけて、リリーさんのお願いを聞いてもらえたら、そこでもうこの2人の旅は終わってしまう。
リリーさんの悩みを少しでも早く解決してあげたい気持ちと もっとリリーさんと一緒にいたい気持ちが同時に胸を締め付けてくる。
しばらく辺りを探していると、木々の奥からパキパキっと枝を踏むような足音が聞こえてきた。
僕とリリーさんは咄嗟に身を隠した。
この辺りのモンスターは今の僕の実力でも勝つのがギリギリのモンスターばかり。
できることなら戦闘は避けたかった。
身を隠して足音の方を見てみると、見覚えのある人が見えた。
「クリス!!!」
奥から歩いて来たのはなんとクリスだった。
「リガン!無事だったのか?!」
「クリスがいるってことは、ジークさんと、マオさんも近くにいるの?」
「いや。それが俺も2人から逸れてしまったんだ。
あの後しばらくリガンを探したんだけど見つからなくて、うちらはこの山を登ってるうちに会えるだろうと、登山を再開したんだ。
だけど途中に地面の脆い所があったらしく、私はそこから山中の洞窟に落っこちてしまって逸れたんだ」
「そうだったのか」
ジークさんとマオさんがいれば、この山でも安心して歩けると思ったが、そう上手くはいかなかった。
とはいえ、クリスが見つかったのはとても心強い。
「あの……この方は?」
隠れていたリリーが顔を覗かせた。
「リガン。そのこは?」
僕はクリスにこの2日間のことを説明した。
リリーのこと、アレフ族の集落を探していること、そして初めて戦いに勝った時の話。
初勝利の話をすると、クリスは自分のことのように喜んでくれた。
「そんなことがあったんだな。
それじゃあ、俺もそのアレフ族っていうのを探すの手伝うよ」
クリスはこの寄り道を快諾してくれた。
その後2時間程辺りを探していると、ようやく1匹のアレフ族のリカントを見つけた。
アレフ族はリカント族の中でも体が大型の者が多い。
2メートルを超える体長、隆々とした筋肉。
一目見ただけですぐに分かった。
会った瞬間にアレフ族のリカントは いきなり襲いかかってきたが、僕とクリスはあっという間にそのリカントを押さえつけた。
アレフ族は上級モンスターだけど、クリスと一緒なら負ける気はしなかった。
僕達はそのリカントから集落の場所を聞き出し、遂にアレフ族の集落にたどり着いた。
アレフ族の集落は山の中の洞窟内にあった。
かつてパル達が避難していた洞窟を思わせるほど中は広かった。
僕たちはアレフ族に気付かれると一瞬にして数十匹のアレフ族に取り囲まれた。
そして1匹のリーダーと思われるリカントが前に出た。
「きさまら何者だ?
よく見たら2人はリカント族じゃないか?」
リーダーのようなリカントは警戒した表情で問いかけてくる。
「私はリカントのブォルフ族の者です。
私達ブォルフ族は今謎の疫病に苦しめられていて、リカント族の病は何でも治せるという、族長のお力をお借りしたくて来たのです。」
リリーが咄嗟に僕達の前に出て説明をした。
「そうか。
リンダ様の血液を煎じて飲めば、リカント族であれば、どんな病でも治ろう。
ここまで来れた褒美だ。
リンダ様に会わせてやろう」
リーダーのような男は意外と物分かりがよく、快くリリーの話を聞いてくれた。
その男に連れられ、僕たちは洞窟の1番奥にある屋敷へと入っていった。
屋敷の中には1人の女性のリカントが座っていた。
アレフ族なのだろうが体は小柄だ。
リリーとは別のタイプだが、とても美人だ。
「わらわに何か用か?」
リンダ様が問いかけてきた。
リリーは再度リンダ様に状況を説明した。
「ほう。それでわらわの血液が必要なのか?」
「はい。是非ともお力添えを」
「断る」
リンダ様は無表情のまま返答した。
「そんな……なんで?」
リリーは何が起こったのか分からないような、パニックにも近い表情を見せた。
正直僕もこの返事には驚いた。
同じリカントという種族の仲間が困っているのだから、当然助けてくれるものだと思っていた。
「我らモンスターの世界は弱肉強食だ。
弱き種族は滅び、強き種族が生き残るのは宿命だ。ヴォルフ族などという弱き種族など滅びても何とも思わぬわ。
そんな種族にわらわの高貴な血を分け与えるなどもったいないわ」
その言葉にリリーはがっくりと肩を落とした。
何とかリリーさんの力になってあげたい。
「あの!!」
考えるより先に声が出ていた。
「ん?なんじゃ?」
「強い者が生き残るべきだと言うのなら、もし私達が貴方達と勝負をして、勝てたら力を貸してもらえないでしょうか?」
「ほほほほほほ!」
リンダ様は激しく笑った。
「最弱のベビーリカントの分際で我ら最強のアレフ族に戦いを挑むだと?
それは面白い。万が一お主らが勝てたらわらわの血液を分けてやろう」
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