Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

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ブァルファーレ奪還戦争

勇者たる由縁

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ブァルファーレ奪還戦は反乱軍の勝利で幕を閉じた。

その奪還戦の翌日の夜。
クリス達は王宮の一室を借りて休んでいた。
男性陣と女性陣で1室ずつ豪華な部屋を用意したくれた。
私達は久々の野宿以外の生活に大喜びした。

グレンは国王を討った後はすぐに気絶をしてしまったが ライザスと王女が戦いの終わりを国民達に告げると、数少なくなった龍神族の手下達はブァルファーレから逃げ出して行った。

その瞬間 国中に歓喜の雄叫びが響いた。

戦争の中で亡くなった人も多くいて、悲しみを背負った人もいる。
だけど国民達はみんな自分達の力で国を取り戻したくて、笑顔を、幸せな日々を取り戻したくてあの戦いに挑んだはずだ。

だから悲しむのではなく、国を取り戻したことを素直に喜び、それを亡くなった者達への弔いとしようと街全体で夜通し宴が広げられていた。

1日経った今日もまだ宴は続いている。
ジークは疲れたと言い、戦争の後からずっとベッドでゴロゴロしている。
久々のベッドでの生活にとても喜んでいるようだ。
いつもならダラダラしていることを注意するのだが、今回 この人はそれだけの働きをしたから大目にみてあげよう。

私も少し横になろうと思った時、部屋の扉が開き、グレン王子が入ってきた。

「王子!もう体は大丈夫なのですか?」

「えぇ。もうすっかり。あと私のことはグレンで構いませんよ」
グレンはニコリと笑った。

グレンはジークのベッドの横に立つ。

「ジークさん。
今回は本当にありがとうございました。
あなたが私に決断する勇気をくれなければ、ブァルファーレの奪還はおろか、お姉様の奪還すら失敗していたかもしれません」
グレンが深々と頭をさげた。

「感謝の必要なんてないさ。
お前は自分で考えて、自分で行動した。
その勇気に俺も国民達も力を貸してやりたいと思った。
それだけだ」

私は初めてジークが勇者と呼ばれている理由が分かった気がした。

私は今まで勇者とは、勇気ある者。
勇気を出してどんな苦境も率先して切り開く者のことだと思っていた。

だけど
トワイザランの戦いで私が敵に敵わなくても付いて行きたいと言った時

マオさんにもう一度、人間と魔族の共存をする道を諦めかけた時

リガンが弱くても世界一強いモンスターになりたいという夢

ジャカンでのユウナさんの時

そして今回のグレン王子の時

ジークは必ず誰かに勇気を与えるか、その勇気を讃えてサポートしてきた。
きっと元のいた世界でもずっとそうやってきたんだろう。
人の勇気を奮い立たせる。
これこそがジークが勇者と呼ばれる由縁なんだ。

「ジークさん。ありがとうございます。
感謝の気持ちと言っては何ですが、今お姉様やジークさんのお仲間の女性陣が大浴場にて入浴中です。
秘密の覗き場所があるのですが、行きませんか?」

「グレン……お前、勇気あるな!
よし!お前の気持ち受け取った!行こう!」

…ジーク。
それは正しい勇気じゃないぞ!

数分後
女性陣の悲鳴が聞こえた後、ブァルファーレの夜空に消えて行くジークとグレンの姿が窓から見えた。




翌日の朝。
私達は王の間に呼ばれた。

本来、王と王妃が座られる玉座には、グレンとその姉のミラさんが座っていた。

数日後にグレンは正式にブァルファーレの王に即位するという。

「みなさん。この度は本当にありがとうございました。
皆さんのお力添えのお陰でブァルファーレにはかつての活気が蘇りました」
グレンが言った。

「昨日も言ったけど、グレンやライザス達が自分で立ち上がったからこそ、今回のこの結果が生まれたんだ。俺たちはその勇気を少し後押ししたに過ぎない」
ジークが答えた。

そんなシリアスな会話をしている2人の左頬は真っ赤に腫れ上がっていた。
昨日の浴場の覗きがバレてマオさんに思い切り殴られた跡だ。

「今後もし何かジークさん達のお力になれることがあれば、何でもしますので、困った事があれば言ってくださいね」

「あぁ。ありがとう」

「あっ!それなら!」
ユウナさんが話に割り込んだ。

「私達、ジークとマオの剣を探しているの。
もし良かったら、この王国からその剣を探す人を派遣してもらえないかしら?」

「そんなことなら容易いです。
兵士を何人か世界中に旅をさせて、情報を集めますよ。
でも、その情報はどうやってお伝えすればよろしいですか?」

「ふふん。それなら任せなさい!」

ユウナはガザガザと鞄を漁り、ジャカンで見た電話という機械を取り出した。

「これは魔力を使って遠方の人と会話ができる機械なの。
普通はジャカン内でしか使えないんだけど、ジークとマオの驚異的な魔力供給と、私の改造で世界中のどこにいても会話できるようになったものよ!」

「これは凄い!!
ジャカンの科学技術は噂には聞いておりましたが、こんな物があるなんて!!」
グレンは驚きで目を丸くした。

「わかりました。ではその剣の特徴を教えて頂けますか?」

「マオちゃん。うちらの剣の特徴を絵に描いて見せてあげて」

「えっ!!?私が……?」

「うん。俺描くのめんどくさいもん」

紙とペンが用意され、マオさんが絵を描き始めた。
完成した絵をマオさんが公開すると、辺りは一瞬で沈黙に包まれた。
時が止まったかのような

その原因はマオさんの絵にあった。
まるで幼児の落書きにしか見えない、剣なのかすら分からない絵が描かれていた。

「ぎゃはははははっ!なんだこれは!
マオちゃんもしかして、絵が苦手だったのか?ぎゃはははは」
ジークが転げ回って笑った。

「ねぇ、見て!見て!
この絵!ぎゃはははは」
ジークはその絵を手にして、色んな人の目の前に突きつけ、その度に爆笑した。

マオさんの魔力が上がっていくのが、分かった。
これはいつものパターンだな……。
案の定ジークはマオさんに思い切り殴り飛ばされた。

結局、剣の絵は両頬を真っ赤に腫らしたジークが描くことになった。

「わかりました。ではこの剣の手がかりが掴め次第連絡しますね」

「宜しく頼む」

こうして私達は剣の捜索をお願いして、ブァルファーレを後にし、トワイザランへの旅を再開した。
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