Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

文字の大きさ
上 下
55 / 117
ブァルファーレ奪還戦争

王の器

しおりを挟む
はぁはぁっ。
ようやく地下牢の突き当たりが見えてきた。
あそこにお姉様がいる。

「お姉様っ!!」
鉄格子の隙間から姉の姿が見え、グレンは叫んだ。

「グレン!!何故あなたがここに!」
牢屋の地面座っていたお姉様は僕を見ると驚いた表情をして立ち上がった。

鉄格子はよく見るとバチバチと電流のような物が流れているように見える。
あれがジークさんの言ってた結界か。
姉を牢獄から解放しようと扉に駆け寄ろうとするが、すぐにモンスターが1体鉄格子の前に現れ、グレンの視界を遮った。

こいつは……ナイトドラグル!
龍人型の上級モンスター。
ドラゴンの顔をしているが、体は人間と同じで2足歩行をしている。
体格も人間と同じ程の大きさで、モンスターとしては小柄な方だ。
ナイトドラグルは右手に剣を、左手に直径30センチほどのまん丸な鋼鉄の盾を持っていた。

さっきの大型の悪魔型モンスターなんかより遥かに高い戦闘力を持つモンスターだ。

「よくここまできたな。だが私がここにいる限り、王女は渡さんぞ」
ナイトドラグルが襲いかかってきた。

ナイトドラグルの振るった剣をグレンは剣で受け止める。

しかしナイトドラグルの力は凄まじく、思い切り踏ん張るが、受け止めた衝撃で1メートル程の後ろに引きづられた。

なんて怪力だ。
力じゃ敵わない。
スピードで撹乱するんだ。
ナイトドラグルの周りを軽快に動きまわり、隙を見計らって攻撃を繰り出す。

しかしその攻撃も通用せず、全て避けられる。

くっ。スピードも互角か、あいつの方が少し上か。

こうなったら一か八か。
全ての力を込めて斬りかかる!
この1撃に全てをかけるんだ!

「はぁーー!」
ナイトドラグルの目の前でジャンプをし、重量、体重の全てを乗せた1撃を放つ。

しかしその攻撃もナイトドラグルに盾で簡単に受け止められた。
ナイトドラグルの反撃を剣で受け止めるが、空中にいたために踏ん張ることができない。
グレンはそのまま吹き飛ばされて、通路の壁に激突した。
通路の壁はボロボロに壊れ、僕は隣にあった部屋に突き抜けていった。

牢屋などではない、広い空間に出た。

なんだこの空間は…。
地下に牢屋以外にこんな部屋があったのか。
だが今はそんなことを考えてる暇はない。
体勢を立て直してナイトドラグルの追撃に備える。

ナイトドラグルはすぐに私を追ってこの部屋に飛び込んできた。飛び込み様の一撃をくらい、私は再度壁に叩きつけられ、更に隣の部屋へと突き抜けた。

ダメだ…
まったく敵わない。
立つのもやっとな状態だ……。

僕は結局何も出来なかった。
王国もお姉様も救えないでここで死ぬのか!?

地面に倒れながら、ふと横をみると、女神を模した石像が立っていた?

女神像か…。
なんでこんな所に……。
でも今はそんなこと どうでもいい。
人生の最後を飾る場所にはちょうどいいなと思えた。

諦めようと体の力を抜くと、ふと上の階の物音に気付いた。
武器がぶつかる金属音と、戦っている人達の怒声が微かだが聞こえる。
みんな自分達の国を取り戻すために必死に戦っているんだ。

私が諦めちゃ駄目じゃないか!
戦う闘志が再び滾ってきた。
みんな…ありがとう。

みんなのおかげで僕はまた立ち上がることができる。

剣を支えにボロボロになった体を無理して立ち上がらせたその時

‘’汝、王の器と認める  選ばれし者よこちらへ”

頭の中に不思議な女性の声が響いた。
この声は……?

ふと女神像を見ると、女神像はぼんやりと青白く光を放っていた。

‘’早くこちらへ”

その声に導かれるように、僕は女神像の前に立った。

「あなたは一体?」

“わたしはブァルファーレの王の選定人
誠の王と認めし者に力を与えし者”

「王の…ちから?」
すると、女神像を取り巻いていた、青白い光が僕の方へ移動してきて、僕の体を包んだ。

なんだ…!
力が漲っていく。

「王の力って一体?」
僕が女神像に問いかけたその時、ナイトドラグルがこの部屋に飛び込んできた。
先ほどと同じく、私に飛び込み様の一撃を喰らわそうと、剣を振った。

私はまたも剣でそれを受け止めた。
しかし今度は吹き飛ばされない。

これは…!!

ナイトドラグルも驚いた表情をしたが、そのまま力任せに何度も斬りかかってくる。

ナイトドラグルの動きがさっきよりよく見える。
1撃、1撃もさっきまで程の重さを感じない。
グレンは全ての攻撃を受けきり、反撃を開始した。

体が軽い
さっきまでとは明らかに自分のスピードが違っている
いや!! スピードだけじゃない。
パワーも動体視力も全てが強化されてる。
これなら何とかなるかもしれない!

お互いの剣と剣がぶつかり合う金属音が高速で何度も響く。

攻撃を焦り つい大振りで剣を振るうと、ナイトドラグルは後ろにステップをして、攻撃を躱すと口を大きく開き炎を吐き出した。

あまりの熱さに、グレンは思わず大きなジャンプをしてよける。
すると上空ではそれを見越したナイトドラグルが待ち構えていた。
ナイトドラグルはまたも斬りかかってくる。
空中で身動きの取れないグレンは剣で受け止めるしか術がない。

グレンはナイトドラグルの一撃を剣で受け止めるも、そのまま地面に叩きつけられた。
ナイトドラグルは上空から降下してきて、地面に伏せているグレンを突き刺そうと剣を向けるが、それを身を捻って躱し、床に激突したナイトドラグルを蹴り飛ばした。

その後も暫く一進一退の攻防が続いた。
流石は上級モンスターだ。
僕がこれだけの力を手に入れてもまだ互角か…。
いや。最初に大きなダメージを喰らっている僕の方が部が悪い。
そろそろ体力も限界に近い。

だけど僕はここで負けるわけにはいかないんだ。
お姉様を、王国を、国民を救わなければならない。

「僕の邪魔を……するなぁーーー!」
全ての力を1撃に込めて、ナイトドラグルに突進をした。

剣を振り上げ、それをナイトドラグルに向けて降ろそうとした時、再び女神像を包んでいた青白い光がグレンの周りを包んだ。

「うわぁーーー」
ナイトドラグルは咄嗟に剣でその一撃を防ぐが、グレンの一撃はナイトドラグルの剣を折り、そのままナイトドラグルを斬り伏せた。


「はぁはぁはぁ……勝った…?
勝ったぞー」
全身の痛みも忘れてグレンは喜んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

隣国から有能なやつが次から次へと追放されてくるせいで気づいたらうちの国が大国になっていた件

さそり
ファンタジー
カーマ王国の王太子であるアルス・カーマインは父親である王が亡くなったため、大して興味のない玉座に就くことになる。 これまでと変わらず、ただ国が存続することだけを願うアルスだったが、なぜか周辺国から次々と有能な人材がやってきてしまう。 その結果、カーマ王国はアルスの意思に反して、大国への道を歩んでいくことになる。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...