Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

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ブァルファーレ奪還戦争

反乱軍の作戦

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私達はブァルファーレから数キロ離れた森の中に連れていかれた。
そこにはキャンプが敷かれており、数十人が生活をしていた。

うちらはその1番奥にあるテントに案内をされた。
テントの中には15、6歳の青年が正座をして座っていた。

「ライザス。その方々は?」

「この方々は旅の者で、先ほどブァルファーレに訪れてきたばかりの者です。
私が王国軍に追われているところを助けて頂きました。
私をはるかに凌ぐ強者です」

「そうか。本来ならそう簡単にこの場所は他の人達に教えるべきではないが、ライザスが信頼するのであれば、きっと大丈夫でしょう。
旅の方々、ライザスを救って頂きありがとうございます。
どうぞお掛けになってください」
青年は礼儀正しく、私達を迎え入れてくれた。

「私はブァルファーレ王国王子のグレンと申します」

「王子?
王族はみんな殺されたんじゃないのか?」
ジークが不思議そうに聞く。

「龍神族の手下の襲撃があった日、ライザス達が王家の血を絶やしてはならないと、姉と私だけを逃してくれたんです」

「その姉は?」

「姉さんは僕とは別のルートで逃亡の途中で、やつらに捕まってしまいました。
龍神族の手下達は僕の存在に気づいてなくて、姉が最後の王族だと思っています。
4日後にこの国最後の王族の処刑と称して、姉の公開処刑が行われるみたいなんです。」
グレン王子はぐっと歯を食いしばり俯いた。

「私達反乱軍は王女を助けるために6日後に王国へ戦いを挑むつもりでいます。
どうかそれに力を貸してもらえないでしょうか?」
ライザスが言った。

「お願いします。
どうか、姉とブァルファーレを救うのに力を貸してください」
グレン王子はうちらに頭を下げた。

私はどうしても放っておけなくて、私からもマオさんとジークにお願いをした。

リガンとユウナさんはこちらの世界の住人として、龍神族は放っておけないと快諾してくれた。

マオさんもユウナさんがいないと元の世界に戻れなくて困るというので協力してくれることになった。
が、ジークは龍神族の手下ならマオさんだけで充分だと言って力を貸す気はないようだった。

今回のジークの態度に私は心底がっかりした。
ジークはなんだかんだと言いながらも、困っている人には力を貸して助けてあげる人だと信じていた。
それなのに……。


来たる決戦の日に向けて、私達は反乱軍の人達に修行をつけていた。
反乱軍の総数はたった46名。
しかも、全員がめちゃくちゃ弱い。
唯一まともに闘えそうなのは、元騎士団長のライザスぐらいだ。
とはいえ、トワイザランにいた頃の私にも敵わないぐらいの実力だった。

これじゃあ龍神族の手下の襲撃が防げなかったのは納得だな。

だが、この元ブァルファーレの騎士達の救いは、日頃からちゃんと体を鍛えていたことだ。
戦闘に必要な最低限の筋力はある。
戦い方、技術、戦術をあと6日でどこまで詰め込めるかが、鍵となっていた。

最近はジークやマオさん、トシキさんなどから教わることの方が多かったが、こうやって久々に人に戦い方を教えると、かつて騎士団長だった頃を思い出して懐かしい。

そして時間はあっという間にすぎ、王女救出作戦の日がやってきた。

私達は反乱軍と共にミーティングに参加していた。
ジークはやる気がないとか言っておきながらも、ミーティングにだけはちゃんと参加した。
なんだかんだ言って助けに来てくれるのかな?
淡い期待を胸に抱いた。

「これより作戦を伝える」
ライザスが緊張感漂う口調で言った。

「まず、作戦の詳細の前に大事な事を言っておく。
この作戦は王国の奪還が目的ではなく、あくまで王女救出が1番の目的だ。
敵の数は龍神族の手下が100人程、その他に王宮内には元々いたブァルファーレの騎士達が約1000人。
多勢に無勢だ。王女救出が成功次第、我らはすぐにブァルファーレから離れる。
そして、いつかブァルファーレを奪還するために地下に潜り、力を蓄えるのだ」

おぉーー!という反乱軍全員の気合の入った返事が響いた。

「では詳細を伝える。
まずはマオさんと私、そして第1部隊の20名が王国正面から突撃をかける。
正面の警備はかなり厳重だろうが、マオ殿がいてくれれば、まず問題はないだろう。
次にクリスさん、リガンさんと第2部隊の20名は裏手から攻撃を仕掛けてください。
きっと奴らは正面に気を向けて、この裏手からの攻撃がうちらの本当の目的だと考えるでしょう。

しかし、正面と裏手からの攻撃はどちらもブラフ。

ユウナさんと第3部隊の4名が我らが騒ぎを起こしている間に下水から王国内の地下牢に忍びこみ、王女を救出します」

ちゃんと考えられた作戦だ。
はっきり言って、マオさんさえいれば1人で敵全員をノシて王国の奪還までしてしまいそうだが、私達はあくまで助っ人。
これは他国の問題であって、そこまで深く関わりすぎるのもよくないとマオさんは言っていた。

「王子はどうすんだ?」
突然ジークが聞いた。

「王子は護衛を2名つけて、ここで待機だ。
もしこの作戦に失敗し王女様が殺害されれば、グレン様はブァルファーレ王国王族の最後の生き残りとなる。
ブァルファーレ王国の王族の血筋を絶やすわけにはいかないんだ。
だからグレン様だけは危険にさらせない」

その言葉を聞き、ジークは暫く押し黙った。

「ふーん。まぁいいや。
どうせ俺はその作戦には参加しないわけだし」

ジークはそういうとミーティングの場から離れていった。

「なんだあの男は…
あんなに強いのに全く協力もしてくれんし。
……とにかく作戦決行は1時間後の正午に決行する。
各自準備を整えておけ」

おぉーー!
反乱軍全員の気合の入った返事が再度響いた。
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