Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

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ジャカンからの出発

時魔道士の小島

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ジャカンを出発して10日が経った。

私達はトワイザランに向かう前にユウナさんの提案で寄り道をしていた。

ここはルクスの村があった大陸の外れにある、地図にも載らないような小さな島だ。

ユウナさんの話ではここには時魔法に詳しいというクロノス族という種族がいるらしい。
私達はそのクロノス族の族長のレナールという人を尋ねる為に来た。

ジーク達が元の世界に戻る時に、別の時代に飛ばされないように、時に詳しい人に話を聞いた方がいいと考えたからだ。

「あの山の中腹辺りに小さな集落がある。
そこにクロノス族はいるはずだ」
ユウナさんが言った。

私達はユウナさんの先導の元に登山を始めた。

海に囲まれた小さな島にある山だけに そんなに大きな山ではない。
山は新緑の木々に覆われて、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
遠くには川の流れるせせらぎの音も聞こえてくる。

自然に囲まれたいい島だ。
クリスはこの島の穏やかな雰囲気に心癒されていた。


「ルクス族は自分達より魔法に詳しい種族はいないって言ってたけど、そのクロノス族ってのはそんなに凄いんですか?」
登山の途中でリガンがユウナに聞いた。

「魔法全般での知識や実用、応用に関してはルクス族に勝る種族はいないでしょうね。
それにクロノス族は時魔法には詳しいけど、それ以外の魔法知識は乏しいし、戦闘能力もほとんどない種族だからね。
何より今は数が少な過ぎて、その存在を知ってる人もほとんどいないぐらいだから」

「時魔法ってことは、時間を戻したり、止めたりできるのかな?」
リガンが目をキラキラと輝かせている。

「それは会って直接聞いてみるといいわ」

しばらく歩くと、小さな木製の小屋が何件か見えてきた。

小屋の近くには、リガン程の背の大きさをした人達が何人かいた。
みんなローブを纏っていて、大きな三角帽子を被っている。

私達はクロノス族の族長の家を尋ねた。
以前にユウナさんが来たこともあるということで、すんなりと族長に会わせてくれた。

族長も見た目は他のクロノス族となんら変わりないように見えた。
違うのは被っている三角帽子が他の人より大きいということぐらいだ。

ユウナはまずは簡単な挨拶と、研究の成果が報われたことなどを報告し、しばらくは雑談が続いた。

「ところで、今日お伺いしたのはレナール様に教えて頂きたいことがあったからなんです。
亜空間ゲートでもし異世界へのゲートを開いたとしたら、行き着く先の異世界の時間はこちらで指定することは可能なんでしょうか?」
ユウナが質問をした。

「亜空間ゲートのことはようわからんが、時空間ゲートなら指定した時に行くことは可能じゃよ」

「本当ですか?!」

「うむ。
それもとても簡単にじゃ。
方法は2つ。
1つは異世界から召喚されること。
当然召喚魔法じゃから、その召喚魔法が使われた時代にいく。
もう1つの方法は行き先の異世界の、行きたい時代の物を何か持っておればよい」

「それはどういうことですか?」
ユウナが尋ねた。

「服でもアクセサリーでもなんでもよい。
行く先の異世界の物を身につけておれば、その物があった時代にいくようになっておる。
時は矛盾を無くそうとする力の働きがあってな。
その時代に存在したものは、極力そこに戻そうという働きをするのじゃ。
だからお主らがこっちの世界に来た時に持っていた物が何かあれば、それが元の時代にナビゲートしてくれる。
恐らくはお主らがこちらに消えた直後の時間に戻るじゃろうな。
それがなければランダムにどこかの時代に飛ばされてしまうじゃろ」

「そうか。魔族の先祖は何もうちらの世界の物を持ってなかったから時間の指定が出来ずに大昔に転移してしまったのか。
ってことはうちらはこのまま、元の世界に戻るゲートさえ開ければ、マオとの最終決戦をしてた時間に戻れるのか!?
よかった!こっちと同じだけの時間が流れてて、数ヶ月経った世界に戻ったらどうしようかと思ってた!
俺とマオがいなくなったことで、人間と魔族の争いが悪化してると思ってたから」
ジークの表情が明るくなった。

自分の世界のことを本当に心配していたのだろう。
ふざけていてもやっぱり勇者なんだな。

「待て!ジーク!喜ぶのは早いぞ」
マオさんが喜ぶジークを制止した。

「なんだ?」

「お前……何か持ってるか??
うちらの世界のもの」

「………あっ!!
そういえば。服はボロボロだったから、トワイザランで新しい服もらったし、アイテムは元々何も持ってないし、アクセサリーとか何も着けてない!
マオは?」

「…私もだ……」

「おい!!どーすんだよ!
お前一応女なんだし、魔族の王だったんだから高級アクセサリーの1つぐらい身に付けろよ!」

「私のせいにするのか!!それに一応女とはどういうことだ!!
一応じゃなくて正真正銘の女だ!」
マオさんがジークを殴った。
せっかくの喜びムードが一瞬で消えてしまった。

「僕とクリスが着けてる呪いの腕輪は?」
リガンが言った。

「実はそれはトワイザランの道具屋で格安で買ったものなんだ…」
みんなすっかりと静まり返ってしまった。

「あの…」

「なんだ?クリス?」

「お2人が失くされた剣はこの世界のどこかにあるのでは??」
2人がいつも言っている、勇者と魔王専用の武器。たしか、覇王剣と魔王剣と言っていた。

「それだ!!」
ジークとマオさんの声がハモった。

「でかしたぞクリス!」
ジークの表情が再び明るくなった。

「でもまだ問題は山積みだぞ。
異世界転移の方法もまだ分かってないし、何処にあるかもわからないジーク達の剣も探さなきゃいけないなんて」
ユウナが喜びに水を差すような一言を発した。

「まぁ、そこはのんびり探そう!
こっちでどれだけ時間が経っても、マオとの最終決戦の時間に戻れるってわかったから焦る必要はなくなった」
ジークは軽くウィンクをした。
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