Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

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ルクスの惨劇

3賢者の戦い

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クリスは傷ついたリガンを抱え、戦いの場から離れた場所にきた。
とは言っても、さほど離れてはいない。
目視でみんなの戦いは見える程の距離だ。
敵はみんなジークやマオさん、3賢者の卵達に目がいっているので、この位置でも安全だろう。
万が一、数人こっちに来たとしても、今の私ならなんとか出来るはずだ。
クリスは少し自信を取り戻せていた。

しかしその自信もジーク達の戦いを見ていると一瞬にして打ち崩される。

やはりジークとマオさんの強さは圧倒的だった。
次々と敵を倒していく。

それにパル、プル、ポルさんも強力な魔法を主軸として、それぞれの武器を使って、上手く敵と戦っている。

パルさんは、攻撃魔法で遠距離からの攻撃が多い。敵に合わせて火、氷、雷、風など様々な属性の魔法を使い分けている。武器は杖を持っていて、敵に接近された際にはその杖に魔力を込めて応戦している。

プルさんは攻撃魔法を使うこともあるが、基本的には補助的な役割をこなしている。
魔法壁をだして、パルさんとポルさんを護ったり、回復魔法で傷の手当てもしている。
武器は小型の銃を持っている。
魔力を弾としているのか、弾切れを起こさない。

ポルさんは典型的な魔法戦士のタイプだ。少し短めの剣を両手に持ち、その剣に炎や雷などの属性を付与して攻撃している。

この3賢者の卵のコンビネーションは絶妙だった。
トワイザランの騎士達が全く歯が立たなかった龍神族の手下達をどんどんと倒してゆく。
あの3人がこれ程までに強かったとは。
クリスはつくづく井の中の蛙であったことを思い知らされる。

あっという間に残す敵はこの群れを束ねていたリーダーの女だけとなっていた。

敵の女リーダーは細身の身長160センチほどの女性でパーマがかったボブカット。
身動きが取りやすいようにか、ノースリーブでヘソ出しのウェアとショートパンツ姿だ。
よく見るとその女リーダーの肘から先と、膝から下はリガンたち獣人族のように茶色い毛で包まれている。
武器は両刃の巨大な戦斧を持っている。
戦斧の両刃は深い紫色をしており、天使の羽のような形をしている。


「あとはあいつだけだな」
とジークが言うと

「ここまで手伝っていただいて申し訳ありませんが、これは私達ルクス族の問題です。私達に決着をつけさせてください」
とパルが言った。

その言葉を聞いてジークとマオは やれやれという表情をして その場を退き、クリスの所へとやってきた。

「龍神族はどこ??」
パルが敵のリーダーを睨みつけ言った。

「あの方々はもう別の地へ行った。
ルクス族の主要な戦士達は既に殲滅していたからな。残りのカスなど、あたし達だけで十分だと思っていたが、まだこれ程の奴らが残っていたとは」

「龍神族の居場所を教えなさい。
さもないとただじゃおかないわよ?」

ポルがそう言い、両手に持った短剣の片方を突きつけた。

「きさまら勘違いしてないかい?もう勝ったと?
きさまらの始末など、あたしだけいれば充分なんだよ!」

というとその女は持っていた巨大な斧を振り回した。
華奢な体つきをしているのに、斧を軽々と振り回す。

パルが中距離から、炎の魔法を放った。
巨大な業火は敵に近づくに連れ、周りの大気を飲み込み更に大きくなってゆく。

パルさん達までの距離はかなり離れているのに辺り一帯の気温が上がっているのが分かる。
それ程の業火を放つとは。
ルクス族はやはり凄い。

しかし、敵はその炎を斧で軽々と両断し、搔き消した。

敵はパルに突進していき、斧を振りかぶった。
プルがパルの前に魔法壁を作り護ろうとする。
が、敵の斧の一振りは魔法壁を軽々と打ち破った。

パルは咄嗟に杖で斧の一撃を受け止めるが、そのまま吹き飛ばされた。

敵がパルを攻撃した一瞬の隙をついて、ポルが背後から、魔法付与した剣で斬りかかるが、敵はその攻撃さえも瞬時に反応し、ポルの二刀流での連撃を全て斧で防いた後に強烈な一撃で弾き飛ばした。

あの巨大な斧でポルの二刀流のスピードすらも凌ぐなんて……
今までの雑魚とは比べものにならないぐらい強い。
トワイザランを襲ってきた、ハヨネイ達なんかよりも遥かに。

「まずいな」
マオが呟いた。

「あぁ、あの3人には一番苦手なタイプだ」
ジークが答える。

「一体どういうことですか??」
リガンが質問した。

「あの女、どうやってるかはわからないが、魔法を全て無効化している。
しかも力とスピードのゴリ押しで戦う接近戦タイプ。
魔法メインで戦うあの3人には一番やりにくい相手だよ」
マオさんが説明した。


吹き飛ばされたパルとポルがプルの元に集まった。

「やはりルクス族なんて魔法に頼るばかりで、魔法が使えなくなれば大したことないね!
あたし達のように素直に龍神族の配下になっていればこのようなことにはならずに済んだのにな」

女は笑いながら言った。

「それだけの力があるのに龍神族のいいなりか」
ポルが言った。

「ふん。あんた達に何がわかる?
私達アーブルグ族は古来より自身達で魔法を使うことはできぬが、神に与えられし力によって皆その武器に込めた一撃で魔法を自体を攻撃し、無効化することができた。
それ故に我らは神に仕えし戦士族として、名を馳せてきた。

龍神族が私達に配下に入らないか選択を迫ったときも、私達は最初は断って戦闘になったのさ。
私達は神以外を信仰するつもりはないとな。
だが、その戦闘の中で私達はどうやっても、龍神族の魔法を掻き消すことができず、一族の屈強な戦士達は次々と殺された。
私達の力を遥かに超えているが故なのか、何か特別な魔法なのかはわからないがな。

その時に我らは思ったのだ。
神に与えられし力を打ち破る、この方々こそ本当の神なのだと!
神に仕えし戦士族として、この方々にお仕えすることが、我らの使命なのだと。
だから私はアーブルグ族の族長として喜んでこの身を龍神族に捧げたのだ」


「こんな惨劇を各地で起こすような者が神であってたまるか」
普段は大人しいパルが険しい表情をし怒鳴った。

「神も神話では愚かな行いをした者を粛清してきたではないか。
時には洪水を巻き起こし、時には隕石を衝突させ。
あの方々は神に代わり、この世の浄化をしているにすぎない。
あの方々は言いました。
ルクスは不要の種族だと。
だから…ここで大人しく滅びなさい」

女は再び襲い掛かった。
パルが攻撃魔法を繰り出し、プルが防御魔法で幾重にも防御壁を作るが、やはり敵の攻撃は魔法を無効化し距離をどんどん詰めてゆく。

斧の一振りが3人を襲ったその時
ジークが3人の前に現れて、剣で斧の一撃を剣で受け止めた。
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