Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

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ルクスの惨劇

勇者の決断

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しばらくすると、ルクス族が逃げた洞窟に着いた。

中に入ると子供達の無邪気な声が聞こえてくる。

子供達は私達に気づくと

「パル様だぁー」
「プル様、ポル様おかえりー」

などとそれぞれに笑顔で迎え入れてくれた。
子供達は今の状況がまだ理解できていないのだろう。

洞窟の中を一通り回ってみる。
とても大きな洞窟で住むにはなんの支障もない。
家族毎に小さなテントを張って、そこで生活をしているようだ。

全体を周り終えたが村人は子供が30人ぐらいと、大人が6人しかいなかった。

もっと詳しく状況を知りたかったが、長旅の疲れもあるだろうと、エンヤ爺が気をしかしてくれ、今日は休むこととなった。
エンヤ爺が私達4人の為にテントを用意してくれた。

テントに入るも4人とも無言の状態が続いた。

これだけの惨状を目の当たりにしたこと。
元の世界に帰る希望だった3賢者が既に亡くなっていたこと。

ジークとマオさんは今、色んな感情がごちゃ混ぜになっているだろう。

「ねぇ。ジーク。
これからどーするの?」

マオさんが一番最初に沈黙を破った。

「どーするもこーするも、何もかわらねーよ。
俺たちは自分達の帰る方法を探しに行くだけだ」

ジークはあっさりと返事をした。

「それでも勇者ですか!?
見損ないましたよ!」

リガンが鼻息を荒くしながら言った。

「困ってる人を全て助けてたら、人生いくらあっても足りねぇよ。
こっちの世界のこの惨状にも同情はするけど、俺たちの世界も、俺たちが早く戻らないと血で血を洗う惨劇が起こる。
同時に全ての物を守れるほど、世の中甘くないんだ。
もしこっちの世界と自分のいた世界を天秤にかけるなら、俺は自分のいた世界を取る。
お前達だってそうだろ?
今のこの龍神族の脅威がある中で、うちらの世界を助けに来てくれと言われたらくるか??」

ジークはもっともなことを言う。
その言葉にリガンも反論できない。

「それに、そもそも龍神族ってのはどこにいるかも分からないんだ。
そんな奴らを一から探してる暇はないんだよ」

ジークは冷めたように言った。

「確かにジークの言う通りだ。
ここの民達には悪いが、私も王として、自分の世界の民達の方が心配だ。
出来ることなら、早く帰る方法を見つたい」

マオさんもジークの言葉に同意した。

この人達ならなんとかしてくれるかもと期待をしたが、この人達にも抱えている物がある。
これも仕方ない判断なんだ。

そう自分に言い聞かせ
今日はそのまま就寝をした。

…がその日の夜中

「みなさん!助けてください」

エンヤ爺が慌ててうちらのテントに入ってきた。

私とリガンはびっくりして飛び起きた。
が、ジークは何事もなかったように寝続けている。
マオさんはゆっくりと体を起こした。

「一体何があったんですか?」

私がエンヤ爺に聞く。

「実はルクス族の生き残りがいないかと、龍神族の手下達が私達の村を再度探索に来てるようなんです。
それを知ったパル様達が飛び出して行ってしまって…。
もしあのお三方に何かあったら、ルクス族は本当にお終いです。
どうかお助けください」

エンヤ爺が土下座をして、頭を地面に付けながら言った。

それを聞いたとたん、寝ていたはずのジークがガバッと起き上がり、何も言わずに走っていった。

なんだかんだ冷たいことを言っても、短い間だがパルさん達は一緒に旅をした仲間だ。
エンヤ爺の悲痛な願いを聞いてジークが立ち上がってくれたことを凄く嬉しく思った。

「リガン!うちらも付いていくぞ!」

「はい!修行の成果見せてやりましょう!」

うちらは危機的な状況にも関わらず、笑顔になっていた。
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