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ルクスの惨劇
ルクス村の惨劇
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パルさん達の案内でしばらく歩くとルクス族の村が見えた。
他の町からも離れた静かな山の麓にその村はあった。
私はそのまま村に足を踏み入れるが、なにやら様子がおかしい。
人の気配はなく、家屋もどこもボロボロだ。
全壊している家も何軒か見えた。
「こ…これは一体」
3人の賢者の卵達は目の前に広がる光景に驚愕していた。
少しでもこの事態を把握しようと、しばらく誰もいない村の中を散策していると
「ん!こっちの方から人の匂いがするよ」
とリガンが鼻をクンクンとさせながら言った。
その方へ行ってみると、1人の銀髪の老人が女神を模した像に祈りを捧げているのが見えた。
「エンヤ爺!!」
パルとプルがその老人の元に駆け寄った。
「あの方はエンヤ爺。3賢者様の世話役で、村人全員から慕われているお方だ」
ポルさんが説明をしてくれた。
エンヤ爺はパル達に気づくと、目を大きくした。
「こ…これはパル様!!
お帰りになられたのですか!?
ご無事で何よりです。」
エンヤ爺と呼ばれた老人はパル達の姿を見ると目に涙を浮かべた。
「エンヤ爺。それよりも一体何が起こったのだ?村人が誰もいないではないか?」
パルがエンヤ爺の両肩を掴み、問いかけた。
エンヤ爺は目を閉じ、一度深く呼吸をし、ゆっくりと目を開けた。
「つい数日前に龍神族の襲撃を受けました。配下に入らなければ、我らルクス族を滅ぼす……と。
数日の間は3賢者様が和平交渉したのですが、龍神族は聞く耳を持たず、強行手段に出ました。
3賢者様を筆頭に、村の大人達で龍神族に応戦したのですが、あやつらの力は思っていた以上に強大かつ凶悪でした」
その時の惨劇を思い出たのかエンヤ爺と呼ばれた老人は顔を青ざめ、体を小刻みに震わせた。
「それで……3賢者様や村人は??」
パルは村人達の無事を神に祈るかのような表情でエンヤ爺に問いかけた。
「3賢者様はその戦いで命を落とされました。村の大人達もほとんどの者が……。
子供達は私が賢者様の命をうけ、山の洞窟に逃しております」
パルの願いも虚しく最悪の事態だった。
「そ…そんな。3賢者様が……」
パル、プル、ポルは言葉を失い立ち尽くしていた。
「エンヤ爺。とりあえず村人のいる洞窟まで案内してくれ」
パルが力無い声で言った。
エンヤ爺の案内で山の洞窟に向かう途中で、エンヤ爺は襲撃の時の状況を教えてくれた。
ルクス族の村を襲った龍神族は2人
1人は若い男で、腰まで伸びた長髪と、左頬から左目にかけてのタトゥーが特徴。
もう1人は村人を攻撃しながら、ずっと高笑いを続けていた残忍な女だという。
2人の力は圧倒的で、3賢者の最高の魔法を持ってしても全く歯が立たなかったという。
村人は50人以上で龍神族を迎え撃ったが、5分もしないうちに全滅させられた。その様は戦などではなく、ただの虐殺だったとエンヤ爺は語った。
話を聞きながら、3賢者の卵達はギリギリと歯を食いしばっていた。
「パル様、プル様、ポル様。
私達がいなかった時になどと自分を責めないでくださいね。
龍神族の力は私達の想像をはるかに超えていました。
あなた方がいても結果は変わらなかったでしょう。
むしろ、今後村を任されるはずだったあなた方が生き残れたのは幸運です。私達ルクス族にとってはあなた方は希望なのです」
エンヤ爺は穏やかに3人をなだめるように言った。
他の町からも離れた静かな山の麓にその村はあった。
私はそのまま村に足を踏み入れるが、なにやら様子がおかしい。
人の気配はなく、家屋もどこもボロボロだ。
全壊している家も何軒か見えた。
「こ…これは一体」
3人の賢者の卵達は目の前に広がる光景に驚愕していた。
少しでもこの事態を把握しようと、しばらく誰もいない村の中を散策していると
「ん!こっちの方から人の匂いがするよ」
とリガンが鼻をクンクンとさせながら言った。
その方へ行ってみると、1人の銀髪の老人が女神を模した像に祈りを捧げているのが見えた。
「エンヤ爺!!」
パルとプルがその老人の元に駆け寄った。
「あの方はエンヤ爺。3賢者様の世話役で、村人全員から慕われているお方だ」
ポルさんが説明をしてくれた。
エンヤ爺はパル達に気づくと、目を大きくした。
「こ…これはパル様!!
お帰りになられたのですか!?
ご無事で何よりです。」
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「エンヤ爺。それよりも一体何が起こったのだ?村人が誰もいないではないか?」
パルがエンヤ爺の両肩を掴み、問いかけた。
エンヤ爺は目を閉じ、一度深く呼吸をし、ゆっくりと目を開けた。
「つい数日前に龍神族の襲撃を受けました。配下に入らなければ、我らルクス族を滅ぼす……と。
数日の間は3賢者様が和平交渉したのですが、龍神族は聞く耳を持たず、強行手段に出ました。
3賢者様を筆頭に、村の大人達で龍神族に応戦したのですが、あやつらの力は思っていた以上に強大かつ凶悪でした」
その時の惨劇を思い出たのかエンヤ爺と呼ばれた老人は顔を青ざめ、体を小刻みに震わせた。
「それで……3賢者様や村人は??」
パルは村人達の無事を神に祈るかのような表情でエンヤ爺に問いかけた。
「3賢者様はその戦いで命を落とされました。村の大人達もほとんどの者が……。
子供達は私が賢者様の命をうけ、山の洞窟に逃しております」
パルの願いも虚しく最悪の事態だった。
「そ…そんな。3賢者様が……」
パル、プル、ポルは言葉を失い立ち尽くしていた。
「エンヤ爺。とりあえず村人のいる洞窟まで案内してくれ」
パルが力無い声で言った。
エンヤ爺の案内で山の洞窟に向かう途中で、エンヤ爺は襲撃の時の状況を教えてくれた。
ルクス族の村を襲った龍神族は2人
1人は若い男で、腰まで伸びた長髪と、左頬から左目にかけてのタトゥーが特徴。
もう1人は村人を攻撃しながら、ずっと高笑いを続けていた残忍な女だという。
2人の力は圧倒的で、3賢者の最高の魔法を持ってしても全く歯が立たなかったという。
村人は50人以上で龍神族を迎え撃ったが、5分もしないうちに全滅させられた。その様は戦などではなく、ただの虐殺だったとエンヤ爺は語った。
話を聞きながら、3賢者の卵達はギリギリと歯を食いしばっていた。
「パル様、プル様、ポル様。
私達がいなかった時になどと自分を責めないでくださいね。
龍神族の力は私達の想像をはるかに超えていました。
あなた方がいても結果は変わらなかったでしょう。
むしろ、今後村を任されるはずだったあなた方が生き残れたのは幸運です。私達ルクス族にとってはあなた方は希望なのです」
エンヤ爺は穏やかに3人をなだめるように言った。
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